REVIEW
これまでにないクオリティの王道ゲイドラマ『あのときの僕らはまだ。』
ナイモンチャンネル presents オリジナルドラマシリーズ『あのときの僕らはまだ。』の配信がスタートしました。映像もキレイですし、何より、出演者の方の演技やリアリティがスゴいです。本格的な王道のゲイドラマになっています。レビューをお届けします
500万ダウンロード突破のコミュニケーションアプリ「ナインモンスターズ」がお届けするYouTubeのナイモンチャンネル。ドラァグクイーンやGOGO BOYなどゲイシーンの人気者が多数したり、数々の魅力的なコンテンツで人気を博し、コロナ禍の間にはずいぶんおうち時間を充実させてくれました。そんなナイモンチャンネルが満を持してオリジナルドラマを制作しました。題して『あのときの僕らはまだ。 A-NO-BO-KU 〜 Back When We Were Still 〜』。1月9日(木)に第1話の配信がスタートしましたので、早速レビューをお届けします。
全く前情報なしに観たのですが、まず出演者の方たちの演技がとても上手くてリアルで(棒読みだったり、過剰でクサかったりとかがほとんどなく)感心しました。また、これまで配信されてきたゲイドラマはイカニモ系とかクマ系とか特定のタイプのキャストで固める(特定のジャンルの方たちに訴求する)パターンが多かったと思うのですが、このドラマは見た目のジャンルを特定せず、脚本や演技や演出というドラマの王道のところで勝負しているように感じました。
ドリアンさんとよしひろさんの「あの僕」鑑賞会を観て知ったのですが、出演者のみなさんはオーディションで選ばれてるんですね。まずそこがスゴいと思います。本格的。
主人公のハルくんは、埼玉のたぶん田舎の方から上京してきたばかりで、二丁目のお店に入るのすら緊張するくらいの超がつく初心者です(でもアプリで周囲の人をチェックしたりとかはやってます。リアル)。そこにこのドラマのポイントがあります。うぶというか、スレてないというか。そういう(妙にこなれた友達はいたりするのですが)初心者なハルくんが、ちょっとファンタジー入ってる(ドラマですものね)恋を予感させる素敵な出会いのあと、その彼とバッタリ再会し、というところまでが第1話です。早く次が観たいと思わせます。
おそらく今までのように「タイプの人を探したい」という動機で観はじめた方や、「ナイモンチャンネルなんだからきっとGOGOとか出るんでしょ?」と思って観はじめた方は、短髪でもヒゲでもマッチョでもないハルくんにもしかしたらがっかりするかもしれません…が、観ているうちにきっとドラマに引き込まれ、気づけば彼に感情移入している自分を発見するんじゃないでしょうか。なぜなら、ハルくんは「あの頃」の自分そのものだからです。人によってゲイの世界に初めて足を踏み入れたときの体験っていろいろだとは思うのですが、それでも、イマイチ垢抜けてなかったり、二丁目に馴染んでなかったり、ゲイの世界のあれこれを知らずに戸惑ったりというハルくんの姿は、必ずや「あの頃」の自分と重なる部分があると思うんです。で、知らず知らずのうちに共感し、感情移入してしまうと思うんですよね。そういうところが上手いし、スゴイと思います。
これだけ世代も体型や見た目のタイプも趣味嗜好も多様なゲイの世界にあって、すべての人に共通するところを描き、共感を呼ぶようなドラマを作るのは至難の業だと思うのですが、そこのところにチャレンジし、見事に成功していると思います。
今後の展開が楽しみです。
『あのときの僕らはまだ。』は1月9日(木)21:00に第1話の配信がスタート。今後、毎週木曜日21:00に公開されるそうです(全10話)。ぜひご覧ください。
INDEX
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- 心からの拍手を贈りたい! 劇団フライングステージ 『こころ、心、ココロ -日本のゲイシーンをめぐる100年と少しの物語-』第一部
SCHEDULE
- 01.13「褌男児!和漢祭」vol.4