REVIEW
映画『トゥルー・カラーズ 〜愛について考えた⼀年間〜』(TILGFF2015)
第24回東京国際レズビアン&ゲイ映画祭で観た作品のレビュー3本目は、『トゥルー・カラーズ 〜愛について考えた⼀年間〜』です。劇団「トゥルー・カラーズ」に所属する14歳〜22歳のLGBTQの若者たちの生き生きとした姿を捉えた青春ドキュメンタリーです。

第24回東京国際レズビアン&ゲイ映画祭で観た作品のレビュー3本目は、『トゥルー・カラーズ 〜愛について考えた⼀年間〜』です。劇団「トゥルー・カラーズ」に所属する14歳〜22歳のLGBTQの若者たちの生き生きとした姿を捉えた青春ドキュメンタリーです。


全米で初めて同性婚を認めたマサチューセッツ州のボストンでは、中学や高校で、生徒たちにお芝居を見てもらいながらLGBTQが直面する問題のことを知ってもらおうとする特別授業が行われていました。そういうお芝居を制作し、上演している劇団が「トゥルー・カラーズ」です。14歳〜22歳のLGBTQの若者たちが所属し、彼ら自身が実際に体験した事柄をもとにみんなで話し合い、お芝居を作っていきます。
この年の芝居のテーマは「クィア・ラブ」。舞台上で男の子どうし、女の子どうしがキスするシーンもあり、会場(学校の体育館)からはヒューヒューと歓声が上がりました。上演後には生徒との質疑応答もあり、「男の子と女の子、どちらが好きなんですか?」など、率直な質問が寄せられていました。
「トゥルー・カラーズ」には実にいろんな若者たちが参加しています。教会から「お前は悪魔の申し子だ。天国の門はくぐれない」と言われたというアフリカ系のゲイの男の子、アフリカ系のレズビアンの子(なかなか恋がうまくいかず、恋愛に臆病になっています。でも最後に…)、アフリカ系でレズビアンで性表現がクィアな(男の子みたいな格好をすると自分らしいと思える)女の子、その日によって性表現が変わるジェンダークィアな女の子、トランスを望んでいるのに母親に認められず、家出したアフリカ系のMTFの子(でも、学校で素敵なFTMの彼氏ができました)、近所のスーパーに買い物に行ってホモフォビアな男に殴られそうになった経験をもつゲイの男の子(彼も、学校で素敵な彼氏ができました)、ハイチ系のゲイの子は、アメフトをやっている素敵な彼氏がいたのに、いじめられている子を守ろうとして銃で撃たれて亡くなりました…みんな少しずつ心に傷や痛みは抱えているけど、生き生きして、とても幸せそうです。ここでは誰もがありのままの自分でいられるし、本当に生き生きと、のびのびと才能を発揮できます。
いじめられがちな子たちが放課後、仲間とワイワイやりながら自分らしさを表現できるという意味では、「glee」みたいな感じでした。まるでウィル先生みたいな演出の先生もいます。でもウィル先生と違って彼もゲイで、9年つきあった彼氏と結婚しました。
それから、NYのハーヴェイ・ミルク高校(いじめで学校に通えなくなったLGBTの生徒たちのための高校)のドキュメンタリー「ヴォイス・オブ・ヘドウィグ」を思い出しました。
自分が中高生だった頃に地元にこんな劇団があったらなんて素敵だろう…って、うらやましく思うと同時に、劇団の子たちのまぶしさにクラクラきました。カワイイ男の子もちらほら出てくるので、お見逃しなく!
7/18(土)16:45~@スパイラルホール
INDEX
- 映画『ノー・オーディナリー・マン』(レインボー・リール東京2021)
- 映画『恋人はアンバー』(レインボー・リール東京2021)
- 台湾から届いた感動のヒューマン・ミステリー映画『親愛なる君へ』
- 日本で初めて、公募で選ばれたトランス女性がトランス女性の役を演じた記念碑的な映画『片袖の魚』
- 愛と自由とパーティこそが人生! 映画『シャイニー・シュリンプス!愉快で愛しい仲間たち』レビュー
- 苛烈なホモフォビアに直面しながらも必死に愛し合おうとするけなげな二人…しかし後半は全く趣旨が変わる不思議な映画『デュー あの時の君とボク』
- かけがえのない命、かけがえのない愛――映画『スーパーノヴァ』
- プライド月間にふさわしい観劇体験をぜひ――劇団フライングステージ『PINK ピンク』『お茶と同情』
- 同性と結婚するパパが許せない娘や息子の葛藤を描いた傑作ラブコメ映画『泣いたり笑ったり』
- 家族的な愛がホモフォビアの呪縛を解き放っていく様を描いたヒューマンドラマ: 映画『フランクおじさん』
- 古橋悌二さんがゲイであること、HIV+であることをOUTしながら全世界に届けた壮大な「LOVE SONG」のような作品:ダムタイプ『S/N』
- 恋愛・セックス・結婚についての先入観を取り払い、同性どうしの結婚を祝福するオンライン演劇「スーパーフラットライフ」
- 『ゴッズ・オウン・カントリー』の監督が手がけた女性どうしの愛の物語:映画『アンモナイトの目覚め』
- 笑いと感動と夢と魔法が詰まった奇跡のような本当の話『ホモ漫画家、ストリッパーになる』
- ラグビーの名門校でホモフォビアに立ち向かうゲイの姿を描いた感動作:映画『ぼくたちのチーム』
- 笑いあり涙ありのドラァグクイーン映画の名作が誕生! その名は『ステージ・マザー』
- 好きな人に好きって伝えてもいいんだ、この街で生きていってもいいんだ、と思える勇気をくれる珠玉の名作:野原くろ『キミのセナカ』
- 同性婚実現への思いをイタリアらしいラブコメにした映画『天空の結婚式』
- 女性にトランスした父親と息子の涙と歌:映画『ソレ・ミオ ~ 私の太陽』(マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル)
- 女性差別と果敢に闘ったおばあちゃんと、ホモフォビアと闘ったゲイの僕との交流の記録:映画『マダム』(マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル)
SCHEDULE
- 05.17Love Dancin’
- 05.17GLOBAL KISS
- 05.18.XXX -Dress in BLACK-