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ゲイ旅コラム:プライドシーズンのバンコク

プライドシーズンのレインボーカラーあふれるバンコクの様子やおまけの観光情報などを旅コラムとしてお伝えします

ゲイ旅コラム:プライドシーズンのバンコク

 レポート:バンコクプライドパレードでは、6月1日(土)に開催されたバンコクプライドのパレードとプライドステージの模様をご紹介しましたが、ここではプライドシーズンのレインボーカラーあふれるバンコク市内の様子や、ゲイタウンの様子、おまけの観光情報などを旅コラムとしてお届けします(バンコク通のみなさんには物足りないと思いますが…ご了承ください)


はじめに

※読み飛ばしていただいても結構です

 初めてバンコクに行ったのは20代の頃で、友達グループで行ったのですが、何しろ初めてだったので、見るもの聞くものすべてが新鮮で楽しかったです。涅槃仏が有名な「ワット・ポー」で108枚のコインを1鉢1枚ずつ入れていく作業を見事にクリアしたにもかかわらず煩悩を捨て去ったりはできず、GOGOバーでのアクロバティックなファックショーをキャーキャー言いながら楽しんだり、DJステーションで香港人のイケてる兄貴とちょっといい感じになったり(結局エッチはしなかった)、生まれて初めてマッサージボーイのお世話になったり(実はその時はお金を払ってセックスすることに対する罪悪感を払拭できず、悩んだのですが、友達に諭されて体験しました)、初めてトムヤムクンが美味しいと感じたり。で、友人たちはバンコクからパタヤに向かったのですが、私は長谷川博史さんの頼みを断れずHIV予防啓発イベント「ピンクベア・カフェ」に出ることにしていたため、一人先に帰国したので、いまだにパタヤは未経験なのでした(いつかパタヤやプーケットのパレードにも行ってみたいです)
 
 2回目は約10年前、ソンクランのときです。ダンナと友達が一緒だったのですが、今はなき伝説の豪華ゲイリゾート「バビロン」でのベアパーティに参加して、プールもあればジムもあるし、初めてフォーム(泡)パーティも体験できて、とても楽しかったです。
 なのですが、道を歩いてると知らない人に水をかけられたり白い泥を顔に塗りたくられたりするのがものすごく苦痛で(そういうお祭りなんですけどね)、もうこりごり…ソンクランには二度と行きたくない…と思いました。
 
 毎年、周りの友人・知人がウキウキしながらソンクランのバンコクに向かうのを尻目に、私はソンクランはいいや…という気持ちで、静かに彼らを見送っていました。が、2年前からバンコクでパレードが始まったのをニュースで知り、そして今年、ついにタイで同性婚が認められそうになっているということもあって、今年のプライドは熱く盛り上がるに違いないと思い、にわかにパレード欲が沸々と沸き上がり、バンコク行きを決めたのでした。
 
 円安のご時世ではありますが、タイならまだ(以前に比べたら全然高いですが)物価も安いし、そんなにお金を使わずにすむだろうという目算もありました。(実際、シーロムエリアのホテルを1泊3000円台で予約できましたし、食べ物・飲み物も安かったです)
 飛行機は、ふつうにLCCで往復でもよかったのですが、試しに探してみたらJALのプレエコの特典航空券の枠が空いていたので、ラッキー♪と思い、行きだけ予約しました(マイルは国際線のプレミアムエコノミー、ビジネス、ファーストクラスと引き換えるのが最もお得な使い方です。正規だとン十万円するチケットが2〜3万マイルで取れるので)。帰りは、とある日系のLCCを取ったのですが、まさかの事態が発生…(下記参照)。飛行機代はケチらず、ちゃんとFSC(大手航空会社)にするべきだと悟りました…。
 初めてのバンコク一人旅は予想外の出来事に翻弄されたりもしつつ、でも、人々はあたたかいし、マイペンライ(沖縄で言う「なんくるないさ」)の精神で状況を楽しもうと思えました。




レインボーだらけだったバンコク市内

 スワンナプーム空港に到着すると、フロアにプライドを祝う大きなレインボーカラーの絵が施されていて素敵でした。NYや台北も空港で何かしら歓迎の演出をしてくれていましたが、バンコクは超特大でさすがという感じでした。


 プライドの会場だったセントラルワールドだけでなく、「DRAG BANGKOK」というバンコク(だけでなく全タイランドやアジア)のドラァグクイーンが大集合したショーイベントが開催されていたサイアムパラゴンと、隣接するサイアムセンターのショッピングモールもめっちゃレインボーでした。外の大きな階段状の道がレインボーカラーに彩色されていたり、建物自体がレインボーカラーにライトアップされていたり、中のお店とかも至るところレインボーでスゴかったです。











 MRTの車内でもプライドのCMが流れていましたし、ゲイバーやクラブが集まるシーロム地区でも「SILOM COMPLEX」のビルやMRTの入口など随所にレインボーが見られました。




 こんなに街中レインボーだらけってニューヨーク並みです。バンコク都が共催なので当然といえば当然ですが、東京でプライドに合わせて空港も地下鉄もレインボーに染まるっていうのはまだ先の話なのかなという気がしますし、やっぱりスゴいことだと思います。
 

バンコクのゲイシーン

 パレードとプライドステージを堪能した土曜の夜は、10年ぶりにゲイタウンで楽しもうと思いました。
 でも、どこに何があるか全然憶えてなくて、シーロムのエリアをGoogleMapを見ながら歩き回って、あれ、GOGOバーが集まる道ってここだったっけ?とか(実は以前のSoi Twilightにあったお店はパッポンのナイトマーケットの1本横のパッポンSoi2に移転したんだそう。詳細はこちら)、そうかここがSoi4だったか、という感じでした(ちなみにSoiは通りという意味で、Soi2はソイソン、Soi4はソイシーと読みます)
 Soi4はやはりたくさんの店が集まってて派手でゲイゲイしい賑わいでした。そこの入口から大通りにかけてものすごい行列ができていたのですが、それが噂の「BEEF.」の入店待ち行列でした(友達がソンクランのときに2時間待ったと言っていて、ソンクランはさすがに人が多いからそうなるのかな、と思ったのですが、プライドの日も変わらず大行列でした。100人くらい並んでたと思います)。そっかぁ、この蒸し暑いなか2時間並ぶのかぁ、厳しいなと思い、ちょっとだけ「HUGs」に行って(地元のクマさんが集まってカラオケをやったりしゃべったりしている感じでした)、とりあえずSoi2まで歩き、懐かしのDJステーションに行くことにしました。途中にチェックポイントがあり、パスポートを見せてお金を払うと、奥にあるお店全部を楽しめます。いちばん右奥がDJステーションで、ちょうどショーをやってました。20年前に見た太めの素敵なクイーンさんはいなかったものの、長年出演してきたと思われる方たちの年季の入ったショーを見ることができて、感慨深かったです。ダンスタイムに入ると、ステージに山のようにお客さんが上がり、身動きが取れないほどで、これがDJステーションの醍醐味だよなぁと思いながら、自分も汗だくになりながら気持ちよく踊ってました(若い子にちょっとちょっかいを出されたりもして)。疲れたら上の階に行って休んだり、ステージを見下ろしたり。通路でつながった隣の建物にもラウンジ的なお店があったりして、2時間くらい堪能しました。帰り道、まだ行列が減っていなかったので、「BEEF.」はあきらめてホテルに戻りました。
 GOGOバーは、ビルダー系のマッチョなボーイさんで売ってる「タワン」には興味があったのですが、閉店したと聞いていたので、今回はいいかな、と(こちらの情報によると、6月2日に「The One Club」という名前で再オープンしたそうです。もう少し早く開いてたら、行ったのに…)







 東京では(二丁目だけじゃなく新橋、上野、浅草も総合して)短髪ヒゲGMPD系やイケオジが集まるゲイバーが多く、主流と言っても過言ではないと思うのですが、バンコクではサウナにしてもマッサージにしても若くてスリムな方〜細マッチョが主流で、GMPD・ベア系のお店が少なく、ごく限られている印象です。バーだったら「BEEF.」と「HUGs」、サウナだったら「Heaven」しかないのではないでしょうか。ガチムチ・太めが好きな方にはちょっと寂しいかもしれません。
 それでも、DJステーションのあのアジアらしい熱気や高揚感はぜひ味わっていただきたいですし(体型や年齢、国籍などいろんな方たちが混ざりあって楽しんでます。オールジャンルです)、バンコクの南国らしい風情や、日本とはまた違う趣のゲイシーンをぜひ体験していただきたいと思います。

 

おまけ:「微笑みの国」の悲喜こもごも

 例えば台北だったら、何度も行ってるせいか、パレードはこんな感じで西門や中山のゲイバーはこんな感じで、と地理的なことも含めてスラスラ説明できるのですが、バンコクはそうじゃありませんでした。スワンナプーム空港が新たにできて市内中心部まで超真っ直ぐな高速電車が走るようになったり、バビロンが無くなったり、以前とは状況が変わったこともありますし、10年も間が空いていること、グループ旅行だった(自分がしっかりしてなくても大丈夫だった)ことなどもあって、記憶がうすぼんやりとしていたのです。
 でも今回、一人で手配し、一人で出かけた(全責任が自分にのしかかる)こともあって、ようやく自分にとってのバンコクという街がはっきり、鮮明になりました。
 ちょっと屋台でごはんを食べたり、ちょっと露天商で買い物をしたりとかしても気さくに「日本から?」とか話しかけてくれたりするし、コンビニの店員さんでさえ愛想がいいし、人のあたたかさを感じました(さすがは「微笑みの国」)。何より、自由なのがいいです。ゲイだろうとトランスジェンダー(カトゥーイ)だろうと誰も気にしないし、GOGOバーでちんこ勃たせてファックしたり射精したりとかもふつうに見れるし、性風俗店もたくさんあって、大らかです(そういうお店で働いてる人の中には地方から出稼ぎに来たノンケさんも多いと聞いたことがあります)。道端にはホームレスの人たちもいるし、あまりお金持ちじゃなさそうな人たちも多いのですが、でも、ショッピングセンターで買い物してる人たちとか、日本とあまり変わらないなと思いますし、全体として人々が幸せそうに見えました(あまり暗い顔の人がいない印象)
 電子マネーがほとんど使えないので地下鉄に乗るにもいちいち小銭を用意しなければいけないとかそういう不便はありますが、物価は安いし、そこまで暑くないし(6月末の沖縄のほうが暑かったです)、いい所だなぁ、また行きたいなぁと思いました。リタイヤして移住する人が多いのもうなずけます。




 ゲイとは関係ないのですが、おまけ情報として、少し観光に関することをお伝えします。
 バンコクのお寺って20年前以来行ってなかったのですが、今回、とても気になっていた2箇所を訪れました。一つは、ワット・パークナムという、エメラルドに輝く仏塔がある寺院です。駅からちょっと歩くので汗だくでしたが、本当に神秘的で美しい空間で、行ってよかったと思いました。屋上からの眺めもよかったですし、金色に輝く巨大な大仏様もいたり、見所が多かったです。
 もう一つは三島由紀夫の「暁の寺」の舞台、ワット・アルンです。そこに行くというより、チャオプラヤ川の川沿いにたたずむ対岸からの有名な景色を見たかったのです。なので、ワット・ポーの周りをぐるっと回って(暑かったので王宮までは行かず)川べりに行き、「暁の寺」を感動しながら眺めて、しばらくその景色を目に焼き付けていました。
 本当はお寺だけじゃなく、チャオプラヤ川のクルーズとか、水上マーケットとか、いろいろ見所があると思うのですが、また次回のお楽しみということで。





 最終日はそんな感じでお寺巡りをして、ちょっと休憩、と思ってルンピニー公園に行って木陰で一休み。高層ビルを眺めながら池の畔でくつろげる素敵な公園でしたし、白い鳥もいたり(噂では大きなトカゲも棲んでるそうです)。これでバンコクの旅も終わりかぁと思うとちょっとセンチな気分になったりして。




 深夜発の某LCCの夜行便で帰国する予定にしていたのですが、少し早めに空港に移動して、マジックフードポイントというフードコートで晩ごはんを食べて(空港内のレストランは基本的にめっちゃ高いのですが、ここだけは素晴らしく安いです)、早めにチェックインして、検査所を通過し、少し余ったお金で機内で飲む用のジュースとか買って、準備万端で搭乗口に向かいました。

 ところが、出発時刻を過ぎても搭乗が始まりません。機材のトラブルか何かで少し遅れますと英語でアナウンスがあったと思うのですが、タイ語なまりなのであまりちゃんと聞き取れず。音楽を聴いたり、トイレに行ったりしながら時間をつぶします。1時間半くらい経って、再び英語でアナウンスがあり、お客さんが一斉にため息を漏らしたり、立ち上がったり、動き始めました。どうやら欠航になったようで、サーっと血の気が引く思いがしました。しばらくしてスタッフがパスポートを回収し、また、夜食用のサンドイッチと飲み物を配りました。これからホテルに移動するようです。乗客の中には、明日大事な仕事があるので、キャンセルして別の便で帰りたいと交渉している方もいました。ほとんどの乗客は、重い足取りで空港を再び出て、バスに乗り込み、航空会社が用意したホテルに向かいました。郊外の辺鄙な場所にあるホテル(一応世界各地に展開するラグジュアリーホテルです)に到着する頃には朝4時になってました。
 疲れて爆睡したはずなのですが、9時頃に目が覚めて、フロントに行ってみると、レストランでの朝食が無料だとわかり、せっかくなので、豪華なバイキングをいただきました。美味しかったです。周りに何もないし、勝手に外に出てもし何かあったらヤバいので(パスポートを持ってないので)おとなしくホテルの部屋で原稿を書いたりしてました。せっかくなのでちょっとだけ屋外プールで泳いでみました(意外と深くてビックリ。本格的なプールでした)。17時にディナーをいただき、18時にバスが出発、19時前に空港に到着しました。そこからチェックインできる20時45分までかなり時間があって、荷物も預けられないし…と言う状況したが、幸い、前夜の空港で知り合った日本人の方たちと一緒に行動して(私はバーツを使い果たしていたのですが)地下のセブンイレブンの前の椅子席に座ってビールをご馳走になったりいろいろお話して時間をつぶし(逆に私はお土産用に買ってたタイのスナックを提供)、22時頃にチェックインし、搭乗口に向かいました。不運なことに、その日の夜は落雷があり、出発が2時間くらい遅れ(また欠航になったらどうしよう…とヒヤヒヤしました)、でも無事に飛ぶことになって「こんなに飛行機に乗れるのがうれしいのは初めて」と言いながら乗り込みました。
 周りの人は誰も頼んでなかったのですが、私は機内食を頼んでいたので夜食として食べて(値段の割には…という感じでした。でもお腹が空いていたので、頼んでてよかったです。空港のレストランだともっと高いし)、あとは朝まで寝るだけでした。意外と足元も広くて寝やすかったです。




 行きはよいよい帰りは怖いじゃないですが、まさかのハプニングに見舞われ、とても疲れました…が、それでもまたバンコクに行きたいと思いますし、別にLCCでもいいかな、とも思ってます(懲りてない)。首尾よく2030年のワールドプライド開催が決まったら、必ず行こうと思います。

(文:後藤純一)

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