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ゲイ旅コラム:プライドシーズンのメルボルン

プライドシーズンのメルボルンのゲイシーンや素敵な街のあれこれをご紹介します

ゲイ旅コラム:プライドシーズンのメルボルン

レポート:Midsumma "Pride March" @Melbourneでは、プライドパレードの様子やプライドセンターのレポートをお届しましたが、ここでは、関連イベントやゲイシーン、素敵な街や食べ物のことなどを旅コラムとしてお伝えします。(後藤純一)


はじめに

 メルボルンには鳴海貴明さんというお友達が住んでいて(1996年にオーストラリア人のパートナー・デヴィッドさんとともに渡豪した方です。こちらでお伝えしたように、豪州政府は1991年から外国人の同性パートナーを迎え入れる政策をとり、貴明さんもInter-Dependency Visaというパートナーシップに基づくビザで移住が可能になったのです)、私は『バディ』編集部を退職して時間ができた2006年の2月に初めてメルボルンに行き、デヴィッドさん&貴明さんのご自宅に泊めていただき、Midsummaの「Carnival」を体験しました。
 その後、2017年に豪州で婚姻平等(同性婚)が実現したことを受けて、お二人が結婚式を挙げることになり、2018年3月に再びメルボルンを訪れました(ゲイ旅コラム「住みたくなる街No.1」メルボルンの魅力でお伝えした通りです)

 今回、6年ぶり三度目のメルボルン行きを決めたのは、こういう事情です。私のパートナーが勤めている会社は(普段はほとんど休めないのですが)勤続10年ごとに2週間の長期休暇が取れる制度があり、2011年にその長期休暇を利用してアメリカ〜メキシコ西海岸の1週間のゲイクルーズに行きました。2021年もゲイクルーズ行きを計画して積立貯金をしたりマイルを貯めたりしていたのですが、コロナ禍で海外旅行が難しくなったため、休暇の取得を延長させてもらい、しかし、その延長も今年3月までという期限が切られたため、じゃあどうしようということで、アメリカは今ものすごく物価が高いし…ということで、私がメルボルン行きを提案し、一緒に行くことになったのです。真冬の日本を脱出して真夏の国に行くというのも魅力的ですし、Midsummaのイベントもありますし、現地にお友達もいますし、何よりメルボルンという街がとても素敵で、治安も良く、旅しやすく、物価もアメリカほどは高くないので、いろんな意味でいいと思ったのです。
 正直、円安の影響もあり、海外旅行には以前よりもだいぶお金がかかってしまうので大変なのですが、ダンナにとってはこれが最後の長期海外旅行かもしれないので(次の長期休暇の時には還暦を過ぎてるので行けるかどうか…)目一杯楽しもうという思いもあり、貯金を使って美味しいものを食べようと、私もこの旅行のために何年もマイルを貯めていたので、それぞれに出しあって、という感じでした。


街のあちこちがレインボーに

 空港に着いてまず、メルボルン市内に向かう「スカイバス」がレインボーカラーに彩色され、「You are loved」というメッセージが書かれていて感激したのは、特集でお伝えした通りです。空港内のショップでも、アブソリュートなどいくつもの企業がプライドを祝うメッセージを出していて、素敵でした。
 市内でも、スーパーが看板をレインボーにしていたり、パレード会場のお店がレインボーフラッグを掲げていたり。コリングウッドやフィッツロイというゲイタウン(と言っても二丁目のような感じではなく、ゲイバーなどが点在している感じです)の街角にはプライドの大きなビルボードが掲示されていました。
 道路がレインボーカラーに彩色されているところも何箇所かありました。
 それと、HIV予防啓発の広告がトラムストップ(電車の停留所)に出ていたりもして、モデルの人種・体型・年齢などが多様で素晴らしかったです。












クィア・アート展
 
 オーストラリアのビクトリア州(ちなみにシドニーはニューサウスウェールズ州)は州内のLGBTIAQ+コミュニティグループと協働し、地方も含め、LGBTIAQ+コミュニティのアートやカルチャーを祝福する「Victoria’s Pride」を毎年12月から2月にかけて開催しています。期間中、たくさんのアート展やカルチャーイベントが州内のあちこちで開催されます。
 私たちが行ったときも、市内のあちこちのギャラリーでアート展が行なわれていたのですが、場所がわりと郊外で、行くのに時間がかかるような場所だったりもして、結局、1ヵ所だけ、フリンダース・レーン・ギャラリーというシティ(市の中心部)のギャラリーで開催されているアート展だけ観に行きました。
 
 JANNE KEARNEYさんというフォトグラファーの「EYE CANDY」という個展で、レインボーカラーの極彩色の作品でした。ドラァグクイーンだったり、ゲイだったりレズビアンだったり、人種的にも多様で、とても素敵でした。




 ビクトリア国立美術館(ナショナル・ギャラリー・オブ・ビクトリア)にも行きました。なんと入場無料。オノ・ヨーコさんのインタラクティブな作品や、日本の間も観てきました。






クィア・プールパーティ

 3日土曜日はパレードの前日ということで、プライドを祝うスペシャルなクィア・プールパーティが「WET on Wellington」というバスハウス(ゲイサウナ)で開催されました。館内に25mプールがあり(小さいプールは、例えばコロナクラブとかにもありますが、本格的な25mプールは世界的に見ても珍しいのでは?)、カラフルな浮き輪やフロートやビーチボールがたくさん浮いてるプールの横でDJさんがプレイし、クラブっぽい照明も入って、ゲイだけじゃなくいろんな人が一緒に楽しむ感じのパーティでした(公式サイトを見てもわかるように、クィア・ミックス、つまりオールジェンダーなパーティでした)
 オーストラリアらしくて素敵!と思ったのは、ヌーディズムOKなイベントで(場所もゲイサウナですし)結構フリチンの人が多かったことです。浮き輪でプカプカ浮いてる女性やフリチンの男の子とビーチボールで遊んだりして楽しかったですし、階段を上ったところに屋上風のテラスがあるのですが、そこでも堂々とバースデースーツな男性たちがゴロゴロ寝そべってました。それから、プールサイドにある温水のジェットバスであったまってたら不意に全裸の女性が入ってきて…30年ぶりくらいに女性器を間近で見るはめに…ちょっとビックリしました。日本ではそもそもお風呂以外の公共の場所で全裸になると怒られる(場合によっては逮捕される)わけですが、オーストラリアはヌーディストビーチもあるし、こういうパーティも成り立っているので、自由で開放的でいいなぁと心から思います。
 1週間後は同じ場所でゲイだらけのプールパーティ(ポロリもあるよ)が開催される予定になっていて、たぶんそっちのほうが大混雑でセクシーに盛り上がったんだろうなと想像します。もしフリチンのプールパーティを体験してみたい方はぜひ、Midsummaのシーズンにお出かけください。

Wet On Wellington
162 Wellington St, Collingwood
 

多彩なゲイバー

 「WET on Wellington」の近くには老舗の「PEEL」というゲイバーがあります。最近改装したようで、6年前に行った時よりもさらにオシャレな空間になっていました。DJがプレイするダンスフロアと、座って飲みながらお話しできるフロア、プールバーなど、いくつものスペースがあります。そんなに混んでませんし、ゆっくりオシャレに過ごせる、一息つきたい時に最適なバーでした。

THE PEEL
Cnr Peel & Wellington St, Collingwood
 
 スミス・ストリートのゲイバー「Sircuit」は今、2階が「Mollie's Bar & Diner」というダイニングバーになっていて、ごはんを食べながらドラァグクイーンのショーを観ることができます。土曜日はプライド前夜のイベントで大賑わいでした。火曜日には「BIG GAY TRIVIA」というイベントをやってました。イントロ当てクイズ(シェールとかカイリーとか)や、ゲイテイストなクイズ(写真を見せてここはどのゲイタウンでしょう、とか、有名な絵のタイトルを当てるとか)をテーブルごとに回答して、優勝したチームはプレゼントがもらえるという趣向でした。
 1階の「Sircuit」はクラブ+プールバーという感じのお店になっていました。店内に裸の男性がビリヤードをやってるポスターが貼ってあったのですが、月・火はそういう趣旨のイベントをやってるようです(もし興味がある方はぜひ)



Sircuit Bar / Mollie's Bar & Diner
103-105 Smith St, Fitzroy
 
 電車のコリングウッド駅に程近い老舗の「The Laird(レアード)」は、(法律的にお客を限定してはいけないのですが、古くからのゲイコミュニティの遺産という建前で特別に許可をもらっているという)メルボルンで唯一のメンオンリーのゲイバーです。以前行ったときは(アジア人だからだと思うのですが)誰にも話しかけられることもなく、寂しい思いをしたのですが、今回たまたま月曜日がアンダーウェアパーティだったので、何かしらコミュニケーションができるかもしれないと思い、その日に行ってみました。予想は大正解で、台湾から来てた人が話しかけてきて仲間の輪に入れてくれて、いろんな人と話せて楽しかったです。地元の白人のおじさんがEGDEのパンツを穿いていたので「え、これ日本のブランドでは?」と聞いてみたら、彼はEGDEの大ファンで、大阪に行った時に(迷いながら)ショップに行って買ったんだよ、と言ってて、なんだかうれしかったです。ちなみに店内にはダークルームもありました。
 「レアード」では毎月第1月曜にアンダーウェアパーティ、第2土曜にレザーナイト、第4土曜にベア系パーティが定期開催されているほか、8月の真冬にはレザーウィークが、MIDSUMMAではHIVチャリティとしてジョックストラップ・コンテストが開催されたりしています。

THE LAIRED HOTEL
149 Gipps St, Collingwood
 
 
リッチモンドのゲイコミュニティ

 着いた日(3日土曜日)の午前中、リッチモンド(ゲイの方が結構たくさん住んでるベッドタウン。東京で言うと中野区。『DT's』というゲイバーもあります)の高齢のゲイの方たちが集うお茶会に呼ばれました。これは貴明さんのパートナーのデヴィッドさんが始めたもので(実はデヴィッドさんは研究者で、同性愛が違法だった時代を生き延びた高齢のゲイの方たちへのインタビューをまとめた「Survivers and Thrivers」という本を出しています)、もう週末のクラブ遊びもほとんどしないような年のゲイの方たちが(多くはパートナーの方がいますが、死に別れてしまった方もいらっしゃるそうです)定期的に集まって近況を報告したりおしゃべりをしたりする、地域のコミュニティイベントです。
 アジア系の方が経営している素敵なカフェの、屋外のテラスのテーブル席が会場です。10人以上の方たちが集い、お茶をしたりサンドイッチを食べたりしながら、いろいろおしゃべりしていました。なかには貴明さんと同様、オーストラリア人のパートナーと連れ添い、移住した日本人の方もいました。
 日本でも若い人の居場所づくりというのはいろんな団体がやっていますが、こういう集まりは高齢者にとっても大切だと思いました。
 
 ちなみに帰る前の日、貴明さんとデヴィッドさんがご自宅に招いてくださり、素敵なお庭でBBQをして、ダンナの誕生日のお祝いもしてくれました。夢のようでした。本当にありがたかったです。


 
おまけ:メルボルンに恋して

 最後に、一般的な観光情報としてのメルボルンの魅力をお伝えします。
 『エコノミスト』誌の「世界で最も住みやすい都市」ランキングで7年連続で首位(世界一)に輝いたメルボルンは、美しい街、美食の街、そして住みやすい街No.1でもあります。
 
 メルボルンの旅のしやすさや街の魅力は以前のコラムで書いた通りなのですが、せっかくなので、今回初めて行った場所や、今回食べて美味しかったもの、泊まったホテルなどをご紹介します。
 
 今回初めて行ってみた場所でとてもよかったのは、サザンクロスステーションから電車で30分くらいの場所にあるウィリアムズ・タウンという港町でした(貴明さんがオススメしてくれました)。シティを対岸から眺められる絶景や、ビクトリア朝様式の建物が残っていることなどで人気の観光地です。海鳥がたくさんいる浜辺沿いを雄大な景色を眺めながら散策していると、タイムボールのついた古い灯台に行き当たりました。カフェやレストランが並ぶ商店街や、観光案内所などもあり(トイレにも行けます)、ゆっくり過ごせます。







 結局行ってないのですが、パレード会場となったセントキルダには「ルナパーク」という遊園地があって、木製ジェットコースターが名物になっています(1/28のナニコレ珍百景でも紹介されていました)



 
 以前はオーストラリアはごはんが不味いという偏見があったのですが、今回、メルボルンは美食の街であるということをはっきり再認識させられました。どこに行っても何を食べても美味しかったです。ビクトリアマーケットでは定番のハンバーガーとかフィッシュ&チップスを、「Mollie's」ではピザとチキンパルマ(メルボルンの名物で、薄い衣で揚げられたチキンカツの上にトマトソースたっぷりのチーズがのせられたもの)を食べてお腹いっぱいになりました。中華街では、貴明さんに教えていただいたお店「Supper Inn(宵夜店)」で絶品の中華をいただきました。中華街のKマートが入ってるショッピングモールの中の香港系のお店でお茶をしたら、店員さんがカタコトの日本語で話しかけてくれてうれしかったです。PEELストリートの「AKASHIRO」という日本人がやってるお弁当屋さんにも行きました。ビクトリアパレードのアジアン街ではベトナムのフォーを食べたり、ラーメンを食べたりもしました。最も素晴らしかったのは「和牛 ONE」という焼肉屋さんのランチです。高級な店構えなのにリーズナブルでサービスもよかったです。






 
 今回は初めて、JALの直行便で行きました。QANTASよりも全然機内食が美味しいです。味噌汁も選べます。朝食は中華丼(無印のやつ)でした。映画ももちろん日本の作品が多く、洋画も日本語字幕で観れます。何かお願いしたい時も言葉が通じる安心感があります。ただ、ものすごく朝早く(日本時間で3時半頃)着くのが難点です。あと、お尻が痛くなってなかなか寝れなかったです(毛布を敷きました)


 今回泊まったのは、ゲイエリアに近く、しかもイーストメルボルンという高級住宅街にある(向かいがテニスコートだったりする)「Comfort Hotel East Melbourne」というホテルでした。トラムストップや電車の駅からも近いですし、IGA(コンビニ)も近く、ちょっと歩くとアジア系のレストラン街やウールワース(スーパー)にも行ける、理想的な場所で、なのに、東京のホテルより安かったです(いま二丁目近くのホテルに泊まろうとすると2万円くらいしますからね…)。フロントのスタッフがアジア系だったり、たぶんゲイかトランスの人なんじゃないかな…という人だったり。1階にカフェがあり、日本で働いてたことがある店員さんが話しかけてくれて、なにかと親切にしてくれたのもよかったです。


 帰る日は朝早起きして空港バスに乗らないといけなかったので、前日、サザンクロスステーションの近くの「Courtyard by Marriott Melbourne Flagstaff Gardens」に移動しました(マリオット系列のホテルで、カードの無料宿泊特典を使えました)。泊まる予定の前の日に、チェックインのご案内のメールが来て、だいたい11時頃行きますと伝えたら、当日、事前チェックインへのご協力ありがとうございますと言ってアーリーチェックインでお部屋に入れてくれました(しかもアップグレードしてくれたっぽい)。10階の、窓が2つもあるシティビューのとてもいいお部屋で、サービスでスパークリングウォーターとナッツを持って来てくれたりして、ジムもあって、全てが快適でとても良かったです。また泊まりたいです。


 メルボルンから帰って何週間も経った今でも、まだ幸せの余韻が続いています。何とかしてまた行きたい、という思いを強くしています(お財布と相談ですが)













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