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COLUMN

円山てのるのゲイゲームズ@ケルン開会式レポート

欧州を旅行中の円山てのるさんが、第8回ゲイゲームズ@ケルンの開会式をレポートしてくれました。ゲイゲームズは、4年に1度、世界中のゲイが一堂に会し、約1週間にわたってスポーツ競技やカルチャーイベント、クラブパーティなどを楽しむ大規模なゲイの祭典。セクシーだったりゴージャスだったりなお祭りでもあるのですが、そこには「みんなの願い」とも言うべきものが込められていました。

円山てのるのゲイゲームズ@ケルン開会式レポート

 731日から87日まで、ドイツのケルンで第8回ゲイゲームズ(Gay Games VIII)が開催されています。パートナーと僕は、731日、ケルンの「ラインエネルギーシュタディオン(RheinEnergieStadion)」(国際大会なども行われるサッカーのスタジアム)で行われた開会式を見てきました。生のゲイゲームズに接するのは、これがはじめてです。

 今回のゲイゲームズには、70を超える国と地域から約10000人のゲイ・アスリート(1)たちが参加。34の種目で競い合います。開会式では、日本から参加した約20名の参加選手たちが、黒地に白抜きで「侍」と記した揃いのTシャツ姿で入場。「JAPAN!!」の場内アナウンスに呼応した25000人におよぶ観客たちから、大きな声援と拍手を浴びていたのを僕は誇らしく感じました。


 開催国のドイツはもちろん、隣国のフランス、そしてスポーツ大国アメリカなどから、それぞれ数千人規模のゲイ・アスリートたちが入場行進。目を見張るものがありました。やはり、欧米の参加者が主体となっているのは明らかです。しかしアジアからも、日本をはじめ台湾、香港、タイ、フィリピンなど、それぞれ少数ながら堂々と参加しているゲイ・アスリートたちの姿に、僕らは感動。勇気を、たっぷりと分けてもらいました。パキスタンから、たった一人で参加した選手に、会場全体から特段の歓声が送られていたのが印象的でした。

 ゲイ・アスリートたちのオリンピックとも言えるゲイゲームズ。2006年以降、アウトゲームズとの分裂二重開催という不自然なかたちをとらなければならない状況となっているようですが、2018年には、両大会を統一することで双方の連盟が合意したとも聞こえています。せっかくの意義あるスポーツ祭典ですので、ぜひとも持続可能な安定した開催運営がなされることを期待します。

 なお、次回のゲイゲームズは、2014年にアメリカ・クリーブランドで、また次回のアウトゲームズは、2013年にベルギー・アントワープで開催されることになっているそうです。日本からも、これからどんどん参加者が増えてゆくと良いですね。

 ゲイゲームズがプライドパレードと異なる点は、おそらく開催にあたって世界じゅうから参加者が集まってくることではないかと思います。もちろん、プライドパレードも国際化していますが、ゲイゲームズは当初より「ゲイ・アスリートたちのオリンピック」を謳っていますので、開会式会場の内も外も、国の名前や国旗をアピールする参加者や観客たちで、いっぱいになるのです。


 たしかにはじめは、だれでも自分の国からきた参加選手を応援するかも知れません。でも、僕は思います。このスポーツ祭典の究極の目的は、参加者たちの、あるいは参加者が属する国の、優劣を決めることではないのです。選手宣誓をした参加者代表の言葉が、とてもさわやかでした。「We have no rivals. 僕たちは、ライバル同士ではありません」

 ゲイゲームズ連盟代表の開会式スピーチで強調されていたメッセージは、いまだ世界には、同性愛であることが罪とみなされ、迫害を受けたり処刑されたりする国や体制があることへの非難でした。
「どんな宗教も、人の命を奪うことなどできないはずです!」
 迫害を受け処刑されたLGBTの仲間たちが、スピーチの中でvictim=犠牲者と呼ばれていたのが、ずっと僕の耳に残っています。


 いっぽう、現在、多くの国で同性愛者への法的保障が認められてきていることについて、その「自由の達成」が後戻りすることなど、けっしてあってはならず、また「自由の価値」がいかに重いものであるか、その認識を新たにしようとスピーチで訴えかけられていたのも、深く僕の心に焼き付いています。

 僕ら日本の同性愛者は、同性愛者であることによって処刑されるような、恐ろしい社会で生活しているわけではありません。反面、同性愛者への法的保障を認めようという雰囲気も、日本の社会には芽生えていません。それゆえ、ゲイゲームズの開会式で語られた「犠牲者」だとか「自由の達成/価値」といった言葉には、ちょっと違和感がともなう方もあろうかと思います。ですが、いま世界のゲイムーブメントの潮流は、地球上すべての同性愛者解放のために、どう行動するべきかという挑戦段階にあることは、認識しておいたほうが良いかも知れません。

 毎年、世界各都市で開催されるプライドパレードとあわせ、4年に一度のゲイゲームズが、地球上すべてのLGBTの連帯の証しとして……、さらに地球上すべての人たちが性的指向を超越し、いっしょになって喜びや楽しみ、そして興奮を分かち合うことのできるエンターテインメントとして……、欠くことのできない国際イベントとなりますように。

 その願いを胸に、パートナーと僕は、残りのケルン滞在中に一つでも多く(チケットが取れれば……)、ゲイゲームズの試合を観てまわりたいと思っています。 
(円山てのる)

円山てのるのblogてのる【Gay】タイムズ

☆開会式の画像はこちらからもご覧いただけます。

 

※1 ゲイゲームズ(Gay Games)がゲイだけでなくバイセクシュアル、レズビアン、トランスジェンダー、インターセックスの方たちなど、セクシュアルマイノリティの方なら誰でも参加できる、開かれている祭典であるのと同様、ここではゲイという言い方でそうしたセクシュアルマイノリティの方たちの総称を意味するものとしたいと思います。

 

※2 ゲイゲームズの歴史

 メキシコ五輪(1968)に出場した十種競技選手で薬学博士でもあるトム・ワデル氏によって「同性愛が禁じられているような国の人も安心して参加でき、世界中のゲイやレズビアンが自分を肯定的に受け容れられるようになり、一般社会の理解やリスペクトを促すような」ゲイ・オリンピックとして「ゲイゲームズ」が提唱され、1982年、サンフランシスコで第1回大会が開催されました。初めは「ゲイ・オリンピック・ゲームズ」という名称でしたが、アメリカのオリンピック委員会から訴えられたこともあり、「ゲイゲームズ」と名称を変えることを余儀なくされました。

 ゲイゲームズは回を重ねる毎に着実に参加者を増やし、94年にニューヨークで行われた第4回大会では競技参加者が世界44カ国から15000人、観客動員50万人を記録し、アマチュア・スポーツ大会としては本家オリンピックを抜いて世界一の規模を誇るまでに成長しました。98年のアムステルダム大会では競技参加者も2万人に上りました。(参照:北丸雄二さんのblogStill Wanna Say?」)

 そして、2006年、第7回ゲイゲームズがカナダのモントリオールで開催されることになっていましたが、ゲイゲームズ連盟(FGG)と主催者モントリオールとの間で、開催の規模や内容についての方針をめぐって交渉が決裂し、モントリオールは別組織「ゲイ&レズビアン国際スポーツ連盟(GLISA)」を立ち上げ、独自の大会「アウトゲームズ」の開催に踏みきりました。ゲイゲームズ側は、ほぼ同時期にシカゴで第7回大会を開催しました。(ほぼ同時期にゲイオリンピックが重なったことで参加者が分裂し、どちらの大会も赤字になったそうです)

 もともとゲイゲームズの無い年にはヨーロッパで「ユーロゲームズ」という大会が開催されてきましたが、モントリオール(フランス語圏のケベック州)は欧州との結びつきが強く、ユーロゲームズ(EGLSF)との連携によってアウトゲームズを開催したということも背景にあるようです。ちなみに、欧州でのユーロゲームズと同様に、2008年から「アジア太平洋アウトゲームズ」が開催されるようになりました(第1回はオーストラリアのメルボルンで行われました。来年、第2回大会がニュージーランドのウェリントンで開催される予定です)

 アウトゲームズが4年に1度のサイクルを続けると完全にゲイゲームズと重なってしまうため、1年サイクルを早めて2009年に第2回大会が行われました。が、現状、1年ずれて2つのゲイオリンピックが並行して開催される形となっています。

 そして今年3月、英国のマンチェスターで欧州ゲイ&レズビアン・スポーツ連盟(EGLSF)の会合が行われた際、ゲイゲームズ連盟(FGG)とゲイ&レズビアン国際スポーツ連盟(GLISA)の代表も同席し、別々に4年毎のゲイオリンピックを行っている現状に終止符を打つことに大筋で合意しました。しかし、この新たなイベントが新しい名称になる予定だと発表されたことで、長年ゲイゲームズの運営に携わってきた人たちや委員会のメンバーからは批判の声が上がっているそうです。話し合いが進み、両大会が納得する形でソフトランディングすることを願います。(編)

【年表】
1982 Gay Games @サンフランシスコ(USA
1986 Gay Games @サンフランシスコ(USA
1990 Gay Games @バンクーバー(カナダ)
1994 Gay Games @ニューヨーク(USA
1998 Gay Games @アムステルダム(オランダ)
2002 Gay Games @シドニー(オーストラリア)
2006 World Out Games @モントリオール(カナダ)
2006 Gay Games @シカゴ(USA
2009 World Out Games @コペンハーゲン(デンマーク)
2010 Gay Games @ケルン(ドイツ)
2013 World Out Games @アントワープ(ベルギー)
2014 Gay Games @クリーブランド(USA
2018 統一ゲイオリンピック(名称未定)@開催地未定

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