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『東洋経済』と『週刊ダイヤモンド』が同時にLGBTを特集

 日本最古の週刊誌『東洋経済』と、その『東洋経済』よりも販売部数が多い『週刊ダイヤモンド』という、大手経済誌3誌のうち2誌が、同時にLGBTを特集するという驚くべきことが起きています。


 まず、『東洋経済』7月14日号の特集「日本のLGBT」は、我らがマツコ・デラックスさんのインタビューをはじめ、LGBTの権利(法整備など)をいかに認めていくかという記事が14ページにわたって掲載されています。簡単にご紹介しましょう。
 まず、トビラページでは、「実は約30人に1人 国内最後の巨大市場か」「大切なのはメッセージ 先行企業はメリット大」といった見出しで、アメリカの例や、これまでの日本のLGBTマーケットの調査が報告されています。
 続く「優秀なLGBTに照準 先進企業の手厚い支援」という記事では、日本企業は知らぬ間に「人材の宝庫」を見逃しているとして、ソフトバンクの成功例や、ゴールドマンサックス、IBMなどでの社内の取組みが紹介されています(IBMでは役員クラスの社員がカムアウトし、毎年LGBT向けのリポートを作成しているそうです)
 「欧米で増える同性婚 日本では法的に『存在せず』」という記事では、横浜に住むヒロシさんと英国人のジョージさんというゲイカップルが在日英国大使館でパートナーシップを取得したというお話を糸口に、欧米の同性婚事情が紹介されています。同時に、日本の政界や法曹界がいかに遅れているかという実態が指摘されています。6月の衆議院法務委員会で井戸まさえ議員(民主党)が「LGBTという言葉を知っているか」と滝実法務相に聞いたところ「記憶していない」と答えたそうです。また、ある同性愛者が薬物使用容疑で逮捕された事件の裁判で、被告に執行猶予判決を言い渡した裁判長は「これで同性愛をやめますね」と諭したそうです。この記事は「憲法改正を伴う同性婚はハードルが高い。欧米式に合わせることは必ずしも説く作でないかもしれない。しかし、日本の社会風土に合った、日本型パートナーシップの検討を始める時期に来ているのではないか。それすらできないようなら、冒頭のカップルは日本を去っていくだろう。」と締めくくられています。
 それから上川あやさん、井戸まさえさん、「LOUD」の大江千束さんによる「LGBT私の提言」、「LGBTの家族が抱える医療・介護・住宅の問題」というコラム、NPO法人グッド・エイジング・エールズの代表である松中権さんへのインタビュー、「社会人&学生50人に聞いた 日本のエリートLGBTの本音」という記事が続き、最後はマツコ・デラックスさんへのインタビューとなっています(「今さらLGBT市場を狙えと言っても遅い。20年前に気づくべきだった」とバッサリ。「必要なのは法整備」とも言い切ります)

 それから『週刊ダイヤモンド』7月14日号の特集「国内市場5.7兆円『LGBT市場』を攻略せよ!」も、タイトルこそ「お金を持っている潜在的なゲイ市場を掘り起こし、攻略せよ」というスタンスに見えますが、企業が社内でLGBT支援(ダイバーシティ)に取り組む事例が豊富に紹介されていたり、『東洋経済』より多い18ページをさいた充実の特集となっています。
 たいへん興味深かったのは、今年2月に発表された「電通総研LGBT調査」というデータ。ゲイとレズビアンの消費傾向の違いが浮き彫りになっています。たとえば、日本のゲイが海外旅行に使う金額の一般男性との差は年間約25,883円(ゲイだからこその経済効果は年間183億円にも上ります)、同様に映画・演劇・美術鑑賞は月あたり1,903円(経済効果は年間161億円)と、ゲイだからこその消費傾向と経済効果が歴然と示されています。それから、世間一般の人たちから見たゲイのイメージは「意思の強さを持っている」「コミュニケーション力があり、人づきあいが上手」がトップですが、ゲイのセルフイメージは「優しい雰囲気がある」がトップで、その違いが浮き彫りになっています。この調査に携わった電通ダイバーシティ・ラボの方のインタビューも載っています。
 それから「10の事例から将来像を読み解く 日本におけるLGBT最新事情」という記事では、IBMが結婚祝い金の支給対象を同性カップルにも拡大したこと、ゴールドマンサックスがLGBT学生向け就職説明会を行っていることこと、プルデンシャルが同性カップルが唯一使える生命保険信託商品を開発したこと、ディズニーランドだけでなくパークハイアットでも同性結婚式ができることなどが紹介されています。
 オープンリー・ゲイの神戸総領事パトリック・リネハンさんらのインタビューも載っていて、「日本に来て10ヵ月、ゲイであることに対して差別的な発言をする人には出会っていない。年配の方でも説明すればわかってくれる。失礼なことを言ってくる人はいない」と語っています。
 最後に永易至文さんもゲイの老後について寄稿しています。
 
 ちなみに『週刊ダイヤモンド』は、この特集に合わせ、オンライン版で「LGBT座談会 私たちは特別な存在ではない」という記事を掲載しています。レズビアンのひろこさん(東小雪さんのパートナー)、グッド・エイジング・エールズの松中権さん、『G-men』誌でHIVについて連載している溝口哲也さん(『Queer Japan returns vol.0』の表紙にも)、トランスジェンダーの藥師実芳さん、Xジェンダーの佐々木笹さん、子育てをしているレズビアン・カップルの西川麻実さん&小野緑さんらが登場し、職場でなかなかカミングアウトできないこと、性的な存在である前に仕事を持つ普通の生活者であることなどを具体的なエピソードをまじえながら語るという、かなりボリュームたっぷりな充実の座談会です。 
 特集をきっかけにLGBTに興味を持ったビジネスマンたちが読んで、誤解や偏見を払拭したり、より身近でリアルな人として認識を新たにしたりということもあるでしょう。たった一人で大勢いる職場の人に対して理解を求めていくのは大変な作業ですが、こういう記事が浸透することでその一助にもなることでしょう。とても意義深い記事でした。

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