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台湾で年内にも同性婚法案が国会に提出される見通し

2016年08月08日

 性的少数者(LGBT)への権利擁護ではアジアで最も進んでいるといわれる台湾で、同性婚を合法化する法案が早ければ年内にも立法院(国会)に提案される見通しです。成立すればアジア初となります。

 台湾ではいち早く2003年に内閣が同性婚法案を作成し、ついにアジアで!と大きな話題になりました。が、閣僚や委員会などの反対で国会での審議を見ずにお蔵入りになっていました。
 しかし、これは突発的に起こった出来事だったのではなく、政治的社会的背景がありました。台湾では戦後、中国大陸からやって来た国民党政府が長らく戒厳令を敷き、無実の罪で投獄される人が相次ぐ暗い時代が続きましたが、その反省から、民主化後の台湾は、自由と人権、多様な価値観を尊重する社会に生まれ変わり、LGBT施策はそれを象徴するものとなっています。また、台湾の主体性を重視する立場からすれば、人権抑圧が続く中国との違いを明確に打ち出せるテーマでもあると見られています。
 台湾ではすでに職場や学校での性的指向に基づく差別は禁じられています。台北市はLGBT施策に予算をとっており、学校でもLGBTへの偏見をなくすような教育が行われていますし(市が啓発パンフレットを制作)、パレードにも後援しています。今では台北や高雄など主要都市のほとんどで渋谷区などと同様の同性パートナー証明制度が認められています。
 2011年には台湾の同性カップル約80組が結婚式を挙げ(詳しくはこちら)、年々規模を増す「台湾同志遊行(Taiwan LGBT Pride)」でも繰り返し同性婚実現が叫ばれるようになっていました。
 そして2013年、婚姻届の受理を拒否されたとしてゲイカップルが行政訴訟を起こし、台湾高裁が憲法解釈請求を検討すると発表したこと(詳しくはこちら)なども受けて、同性婚法案が民進党から提案されましたが、委員会採決に入れず、再びお蔵入りとなりました。
 昨年台湾の法務部が行ったオンラインの世論調査では、実に71%が結婚の平等に賛成という結果が発表されています。
 

 今年1月の総選挙で、民進党の蔡英文氏が女性として初めて台湾総統に就任し、いよいよ同性婚が実現するのでは?と目されるようになりました。蔡英文氏は昨年10月、台湾同志遊行への応援として、自身のFacebookで「愛の前には誰もが平等、私は婚姻の平等の権利を支持します」と語る動画メッセージを掲載し、同性婚支持をも明確にしていたからです。民進党は総選挙で立法院の定数113のうち68議席を獲得し、初めて過半数を制しました。LGBT支援を掲げる新党「時代力量」も5議席を得ました。今や政治環境が一変したのです。
 対立する国民党でも、LGBTに対して支援的な政治家は少なくありません。例えば今年5月まで台湾総統(首相)を務めていた馬英九氏は、前台北市長として2007年の台湾同志遊行に参加し、「私が総統になったら、同性愛者の権利を保障する」と激励していました。また、「新しい世代」を自認する議員をはじめ、「LGBTの権利は最優先課題であり、民進党議員との連携に値する」として同性婚法案に賛成する姿勢を示す人も少なくないそうです。
 立法院の9月に始まる新会期に向け同性婚法案提出の準備を進める民進党の尤美女・立法委員(国会議員)は「前回の法案は社会への問題提起が目的だった。でも今回は違う。あとはタイミング。総統1期目任期の2020年までには必ず成立させたい」と意気込んでいます。
 しかし、同性婚法案が賛成多数で採択されるかどうかについては、不透明な部分もあるようです。一部の宗教団体などは明確に反対しています。民進党の関係者も「民進党議員の8割は心情的には賛成だが態度は明らかにしていない議員が多い」と語っているそうです。蔡氏も就任後は積極的発言を控えています。

 8月1日には台北で、結婚の平等を求めるチャリティコンサート「愛最大〜其実我們都一様(Love is King It makes us all Equal)」が開催され、アーメイ(張恵妹)やジョリン・ツァイ(蔡依林)ら人気アーティスト10組以上がパフォーマンスを披露し、同性婚の実現に向けてエールを送りました。
 オープニングでは、ゲイであることをカミングアウトしている有名司会者のツァイ・カンヨン(蔡康永)がMCとして登場。「同性婚を認めないのは権利の剥奪。私たちは剥奪に屈すべきではない。だからこそここにいる」と語りました。
 ジョリンとヒビの2大歌姫は初の共演を果たし、女性同性愛者の気持ちを歌ったとされる名曲「明瞭」をデュエット。アーメイは性的少数者(LGBT)の応援歌「彩虹」を熱唱。アーメイの掛け声に合わせて、オーディエンスがレインボーフラッグを掲げ、会場が虹色に染まりました。アーメイはこれまでに何度も台北同志遊行に参加しています。

 台湾のマクドナルドは若い男性が自分の父親にカミングアウトするCM を流し、(一部の宗教団体などは反発したものの)Youtubeで1万近い「いいね」を、Facebookでも10万近い「いいね」を得るなど、圧倒的な好感度の高さを見せました。

 西日本新聞では、2012年から台湾に移住し、現地企業でデザイナーとして働く日本人、前和樹さんのことが紹介されています。語学留学を経て採用された今の職場では、ゲイであることを隠していない。人と同じであることが当然という日本社会にありがちな同調圧力、強いストレスを、台湾ではほとんど感じることがないといいます。「生活のすごく基本的なところが満たされてる感じなんですよね」「ここなら自分そのものでいられます」
 一橋大学でゲイの方が自死に追い込まれた事件のことも思い合わせると、台湾は日本よりもずっとゲイが暮らしやすい社会になっていると言えそうです。


 
台湾では、自分らしく LGBT 進む理解 同性婚合法化 年内にも法案(西日本新聞)
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/world/article/264841

台湾で同性婚合法化の機運、年内にも法案 アジア初実現か(CNN)
http://www.cnn.co.jp/world/35085307.html

アーメイら台湾人気歌手、同性婚の実現にエール=チャリティー公演開催(フォーカス台湾)
http://japan.cna.com.tw/news/aart/201608020003.aspx

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