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オーストラリアで同性婚合法化の是非を問う国民投票が行われるかもしれません

 オーストラリアのターンブル政権は9月14日、同性婚合法化を問う国民投票を来年2月11日に実施する法案を議会に提出しました。
 昨年の自由党党首選でトニー・アボットに代わって新党首に選ばれ、首相になったマルコム・ターンブルは、アボット前首相のような強硬保守派ではなく、自由主義者として知られており、カトリック信者ながら同性婚を支持しています。そして今年7月の総選挙においては、選挙で勝ったら同性婚の国民投票を行うと明言していました。

 オーストラリアの世論調査では、すでに5年前から約3/4(7割強)の国民が同性婚を支持するという結果が出ており(例えばこちら)、国民投票が実施されれば同性婚が実現する可能性は高いでしょう。しかし、野党は国民投票に反対しています。
 
 今回の国民投票実施法案は、国民投票に1億7千万ドルの予算を投入し、同性婚支持派、反対派の双方に750万ドルの運動資金を提供する内容となっています。しかも、国民投票の結果は法的拘束力を持たず、単に参考とされるだけです。 
 労働党のビル・ショーテン党首は、「世論調査でも国民の大多数が同性婚合法化を支持しているにもかかわらず、支持反対の双方の運動資金として750万ドルを政府が負担するのは、少数の偏見に満ちた差別者に国税で援助するものであり、ターンブル政権が労働党と協力する意思がない証拠だ。また、自由党内の極右議員が同性婚合法化を否決させようと図っていることは明白だ。タンブル首相はこの合法化を実現するチャンスがあるにもかかわらず、極右議員にひれ伏している」と批判しています。
 緑の党のリチャード・ディ・ナターレ党首は、オーランドのゲイクラブでの銃乱射事件などを受けて、「国民投票を実施すれば、反対派によるネガティブキャンペーンが展開され、偏見がさらに助長され、ヘイトクライムにつながる可能性もある」と語っています。
 アイルランドでの憲法改正の国民投票の際に同性婚反対派のヘイトに近いキャンペーンが国中を席巻し、人々が多いに傷ついたという苦い経験もあり、労働党や緑の党は、国民投票を実施せず、今すぐ議会で同性婚承認(結婚法改正)の採決を行うべきだと主張しています。
 現状、国会(上院)は野党勢力が優勢となっています。国民投票実施法案は廃案に追い込まれるという見方もあります。


 シドニーのマルディグラを体験し、オーストラリアはゲイの天国だとか、世界でも有数のLGBT先進国というイメージを抱いている方や、お隣りのニュージーランドではすでに同性婚も認められているのにオーストラリアではまだだということを意外に感じる方もきっと、いらっしゃることでしょう。ここで、オーストラリアにおける同性パートナーの権利についての歴史、複雑な法制度の推移を、できるだけわかりやすく、まとめてお伝えいたします。
 1991年、同性婚はおろか、ドメスティック・パートナー法もデンマークでしか認められていなかった時代に、オーストラリアでは、Gay and Lesbian Immigration Task Forceの活動が実って移民法が改正され、オーストラリア人が外国人の同性パートナーを迎え入れる(政府がInter-Dependency Visaというパートナーシップに基づくビザを発行する)ことが認められました(詳しくはこちら)。アメリカでは結婚防衛法(DOMA)が撤廃される2013年まで認められませんでしたが、それに比べるとオーストラリアは本当に先進的でした。日本からも、1996年に鳴海貴明さんという方がこの制度を利用してメルボルン在住の同性パートナーの元に移住しました。二丁目の「Delight」で同性結婚式(おそらく日本初)とフェアウェルパーティが行われたことは日本のゲイ史の貴重な1ページとなりました(このオーストラリアにおける同性パートナーの権利についての記述も、法律の複雑な部分は鳴海貴明さんに教えていただきました)
 1994年、首都特別地域(キャンベラ)でドメスティックパートナー法が成立し、離婚や死別の際の財産の分与が認められました。2003〜2004年にかけて、さらにLGBT差別の禁止や養子縁組などを含む6つの法の改正が行われました。
 2003年、タスマニア州でドメスティックパートナー法が成立し、パートナーが意識不明の重体になった際の後見の権利や退職年金の支給、養子縁組などが認められるようになりました。
 2004年、カナダで同性婚を挙げたオーストラリア人のカップルがオーストラリアに戻ってきた際、他国で認められた同性婚をオーストラリアでは認めないようにするために、ハワード保守政権が、それまで特に謳っていなかった結婚の定義を「男女」と限定し、海外の同性婚も無効とする措置を下しました(アメリカのDOMAと同様)。これによってオーストラリアの同性愛者権利擁護は10年遅れ…とコミュニティは嘆きました。実際、同性婚はニュージーランドに先を越され、かつてのような先進的なイメージは失われることとなりました。
 2006年、首都特別地域で、同性カップルにも男女の夫婦と同等の権利を認めるシビルユニオン法が成立しました。が、ハワード政権によって、却下されました。
 2007年、南オーストラリア州でドメスティックパートナー法が施行され、養子縁組以外のほぼすべての権利が認められるようになりました。
 2008年、ヴィクトリア州でドメスティックパートナー法(事実上のシビルユニオン)が施行され、結婚以外のすべての権利が認められるようになりました。また、首都特別地域では、以前却下された(結婚に準じる)シビルユニオンではなく、タスマニア州に近いシビルパートナー法が成立しました。
 2008年、国会で、社会保障など様々な分野における連邦法の法文中の「事実上のパートナー(de facto partner)」「子ども」「両親」の意味を、同性カップルも含むように拡大する「同性関係法律の改革(Same-Sex Law Reform)」の審議が行われ、一部修正が加えられた後に上院・下院で採択されました(詳しくはこちら)。これはタスマニア州やヴィクトリア州などの動きを追認するもので、国として事実上のシビルユニオンの導入を行ったことになります。
 2009年、首都特別地域でシビルパートナー法の修正法案が可決され、初めてシビル婚を挙げることが認められました。
 2010年、ニューサウスウェールズ州でシビルユニオンが認められました(同性婚法も提出されましたが、認められませんでした)
 2012年、首都特別地域でシビルユニオン法が成立。ギラール政権(労働党)は、これを覆すことをしませんでした。
 2013年10月、首都特別地域で「結婚平等法(Marriage Equality Act)」が成立(詳しくはこちら)、12月にはオーストラリア初の同性婚カップルが誕生しましたが(詳しくはこちら)、その後、最高裁で、連邦法の結婚の規定(男女に限る)に照らして首都特別地域の同性婚が無効であるという判決が下されてしまいました。
 2015年、シドニーのクロバー・ムーア市長は、英国領事館内での同性カップルの結婚式を挙げることを認めました。
 2015年からタスマニア州、ニューサウスウェールズ州、クイーンズランド州、ヴィクトリア州で海外で同性婚を挙げたカップルを結婚していると承認するようになりました。
 2016年、クイーンズランド州でシビルユニオンが認められました。

 これらを総合し、整理すると、現状のオーストラリアの同性パートナーをめぐる権利は以下のようになります。
・国(連邦)としては、デファクト・パートナー(事実婚、内縁関係)に該当すると見なされた同性カップルは、(州がどう決めようと)ほぼ男女の夫婦と同等の権利が認められます。 
・州単位で見ると、首都特別地域、タスマニア州、ヴィクトリア州、ニューサウスウェールズ州、南オーストラリア州、クイーンズランド州では、シビルユニオンによって結婚以外のすべての権利が認められます。ただし、西オーストラリア州とノーザンテリトリーでは同性パートナー法がないため、連邦法上のデファクト・パートナーに該当しないような(生計を共にしていることを証明できない)同性カップルは無権利状態に置かれることになります。
・タスマニア州、ニューサウスウェールズ州、クイーンズランド州、ヴィクトリア州では、海外で同性婚を挙げたカップルを結婚しているものと認めますが、他の州では認めていません(州による違いは、このような悲劇を生み出します)
・たとえ海外で同性婚していなくても、海外在住のゲイやレズビアンがオーストラリア人とパートナーシップを結んでいる場合、相応の書類を用意して申請すれば、デファクト・パートナーとして移住の権利が認められます(Partner Visaがもらえます)
 
 こうして見ると、ほとんどの権利が認められていて、同性婚まであと一歩というところまで来ている、ということがご理解いただけるかと思います。シドニーのマルディグラは相変わらず国を挙げてのお祭りとして盛り上がりを見せています(カイリー・ミノーグをはじめとする著名人やクロバー・ムーア市長も参加してきました。ATMもこの通り)。筆者が知っているだけで10名以上のゲイの方がシドニーやメルボルンに移住していることも、オーストラリアの暮らしやすさを物語っていると思います。
 近い将来、きっと同性婚も認められることでしょう。
 
(後藤純一)



豪、同性婚合法化巡り国民投票案 与党が提出(日経新聞)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM14H5D_U6A910C1FF2000/

タンブル政権、同性結婚合法化国民投票日を発表(日豪プレス)
http://nichigopress.jp/ausnews/politics/131454/

同性婚問う国民投票は差別増す 緑の党(JAMS.TV)
http://jams.tv/Contents/news/view/25144

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