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オーストラリアで同性婚の賛否を問う郵送式の自主投票が実施されることになりました

2017年09月11日

 9月12日、オーストラリアで同性婚の賛否を問う郵送式の国民投票が始まります。結果に法的拘束力はありませんが、賛成が上回れば、ターンブル首相は年内にも同性婚を実現するための結婚法の改正案を国会に提出する見通しです(豪上院議会は野党が多数を占めており、議会にかけられれば法案は成立するとみられています)

 昨年、オーストラリアで同性婚合法化の是非を問う国民投票が行われるかもしれませんというニュースをお届けしていました。賛成多数になる可能性が高かったにもかかわらず、国民投票は実施されませんでした。この国民投票案は、法的拘束力はない(単に参考にされるだけ)にもかかわらず、同性婚賛成派/反対派の双方に750万豪ドルの運動資金を提供するというもので、「少数の偏見に満ちた差別者に国税で援助するものだ」「反対派によるネガティブキャンペーンが展開され、偏見がさらに助長され、ヘイトクライムにつながる可能性もある」「(アイルランドでの憲法改正の国民投票の際に同性婚反対派のヘイトに近いキャンペーンが国中を席巻し、人々が多いに傷ついたという苦い経験も踏まえ)議会の採決で同性婚を承認するべきだ」として、野党が強く反対したためです。日本ではその辺りの事情があまり詳しく報道されていないのですが、そもそも国民投票の内容に問題があった(ある意味、与党のいやがらせのような法案だった)ため、実施されなかったのでした。
 
 今年8月8日、ターンブル首相は再び、選挙権を持つ18歳以上の国民を対象に、同性婚合法化の是非を問う国民投票を実施する意向を表明しました。しかし、翌9日には議会で否決されたため、その代わり、郵便による「プレビサイト(Plebiscite)」と呼ばれる自主投票を実施することを発表しました(これは議会の承認なしに実施できるものです)。この自主投票は、9月12日〜11月7日に投票を行い、11月15日に結果が判明するというスケジュールで、豪選挙管理委員会ではなく豪統計局が運営することや、有権者が郵便投票に投票人登録手続きをする期間がわずか2週間しかないことなどが明らかになっています。
 
 この自主投票の実施に対しては、やはり批判の声が上がりました。
 労働党のペニー・ウォン上院議員は、政府がLGBTIコミュニティを憎悪の言葉から守っていないと非難しました。「同性カップルの親の家族や多くの若いLGBTIの子どもたちにとって、これは敬虔な議論ではない」
 
 投票のボイコットを呼びかける人もいます。
 前最高裁判事で50年もの間同性のパートナーと関係を結んでいるマイケル・カービー氏は、この自主投票を「ミッキー・マウスのようだ」と評しています。「奇抜で、自主的で、拘束力のない、義務のない、一部の市民による投票だ」と。「一市民として感じるのは、こうしたやり方によって二級市民扱いされているということだ。必要なのは議会での法改正だ」

 オーストラリアの有力なロビー団体である「Australian Marriage Equality」と、タスマニアのアンドリュー・ウィルキー下院議員はそれぞれ、問題のある自主投票の妥当性を問う裁判を起こしました。「議会の承認なしに進めることによって、政府は権力を超えて行動している」「これは、政府が権限を行使する方法や、民主主義における議会の役割に関する重要な問題である」「前例のない1億2千万豪ドルの予算は、税金の無駄遣いである」
 9月7日、この訴えに対する連邦最高裁判所の判決が下り、郵便による自主投票の実施が認められることになりました。労働党は、11月7日に投票が締め切られるまでの8週間、ゲイやレズビアンの人たちへの誹謗や中傷が過熱することを懸念し、コーマン金融相とともにキャンペーンに使用されるすべての資材について、当局から許可を得ることを義務付ける法案を準備するとみられています。
 
 一方で、 積極的に賛成を投じようと呼びかける人たちもいました。
 労働党の上院議員、サム・ダスティアリ氏は、「Mr&Mr」とデコレーションされたレインボーケーキを用意し、同僚の男性議員にキスする写真をアップして、若い人たちに投票を呼びかけました(写真右)
 自由党の下院議員で長年同性婚を支持してきたWarren Entsch氏は、「ぜひあなたの考えを表明してほしい。ボイコットせずに。結果に焦点を当てて。いい結果が出すためには賛成しないと」とコメントしています。
 8月13日、イアン・ソープが賛成票をへのキャンペーンへの参加を表明しました。「なぜこの件が重要かというと、若かった頃の自分自身へのメッセージなんだ。若い人たちやあらゆるLGBTIQが直面する可能性がある差別をなくしていくためにも、結婚の平等は大切だと思う」
 8月15日、オーストラリア出身で、映画『スーサイド・スクワッド』の主演女優をつとめたマーゴット・ロビーがインスタグラムで国民へ投票を呼びかけました(写真右)。「愛は愛。私みたいに海外に住んでいるオーストラリア人のみんなも8月24日までに投票のための登録をしようね」
 8月21日には、カンタス航空のアラン・ジョイスCEOが「私たちの従業員や顧客、株主にとって重要な問題。カンタスは結婚と性の平等、先住民の権利を支援をしている」と述べ、賛成票を呼びかけていく考えを示しました。アラン・ジョイス氏は2000年にカンタス航空に入社し、2008年からCEOを務めているオープンリー・ゲイの方で、今年3月に20人の著名財界人らで同性婚合法化を支持する運動を立ち上げました。5月には、ジョイス氏がパースで演説した際に、ケーキを顔にぶつけられる事件も起きています。
 
 そして9月10日、自主投票の開始を前に、シドニーで同性婚支持者らによる大規模な集会が開かれましたが、そこにターンブル首相がサプライズで登場し、賛成を表明しました。首相はすでに世界23ヵ国で同性婚が認められているとし、「これらの国では天地がひっくり返ったか? 生活が停止したか? 伝統的な結婚が傷つけられたのか? 答えは『ノー』だ」と語り、賛成を呼びかけました。

 世論調査ですでに5年前から約3/4(7割強)の国民が同性婚を支持するという結果が出ているにもかかわらず、なかなか同性婚が実現しなかったのは、トニー・アボット前首相や与党内の一部勢力、カトリック系の団体などが強硬に反対していたためです。ターンブル首相は同性婚に賛成を表明していましたが、与党内に根強い反対の声があったため、住民投票に諮ることで党内の議論を収拾したかたちです。
 
 


同性結婚合法化問題、郵便投票に持ち込まれる(日豪プレス)
http://nichigopress.jp/ausnews/politics/147914/

同性婚合法化問う住民投票、郵便で実施へ 豪州(朝日新聞)
http://www.asahi.com/articles/ASK894JT5K89UHBI01P.html

Australia same-sex marriage vote: Why is there talk of a boycott?(BBC)
http://www.bbc.com/news/world-australia-40883060

オーストラリア、同性婚の是非を問う国民投票実施へ(CNN)
https://www.cnn.co.jp/world/35105555.html

カンタスCEO:同性婚に「イエス」を(日豪プレス)
http://nichigopress.jp/ausnews/148252/

オーストラリアで同性婚の賛否問う国民投票実施へ 賛成多数なら法案提出の見通し(ハフィントンポスト)
http://www.huffingtonpost.jp/2017/09/10/same-sex-australia_a_23203616/

豪、同性婚の是非問う任意投票へ(日経新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXLASGM08H30_Y7A900C1FF8000/

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