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ジェイソン・ムラーズ、ブレンドン・ユーリー、マックス・ビーミス…ミュージシャンが相次いでカミングアウト

2018年08月23日

 今年の夏、アメリカで男性ミュージシャンのカミングアウトが相次いでいます。

 まずは、キリンビール グランドキリンのCMソングにもなっている「I'm Yours」で知られるシンガーのジェイソン・ムラーズ。2015年に一般人女性と結婚していますが、このたび、バイセクシュアルであることをカムアウトしました。
 きっかけは、アリアナ・グランデが参加したことで反響を呼んだ今年のプライド月間の「love letter to the LGBTQ community」というキャンペーンにジェイソン・ムラーズも参加し、以下のようなメッセージを贈ったことでした。
「We still have a long way to go
 But know
 I am bi your side.
 All ways」
 普通だったら「by your side(あなたのそばにいます)」と書くところを「I am bi...」と書いたことで、これはジェイソン・ムラーズのバイセクシュアル・カミングアウトなのか?とメディアに書き立てられることになりました。
(E!ONLINEによると、実は2005年にはすでに『Genre』というゲイ雑誌のインタビューで「僕はバイセクシュアル的にオープンマインドなんだ。でも、実際に男性とおつきあいしたことはないよ。もしふさわしい人が現れたら、喜んでつきあうけどね」とコメントしていました。事実上のカミングアウトですよね)
 先月、この件について『Billboard』誌がジェイソン・ムラーズにインタビューを行い、彼は自身のセクシュアリティについてあらためて語りました。
「正直言って、あのメッセージがこんなに話題になるとは思ってなかったよ」
「でも、僕は男性と関係を持ってきた、今は妻になった女性とデートしていた時期にもね。『待って、それでゲイってことになるの?』って感じだよ」
「そしたら、妻がこう説明した。ネイティブアメリカンにはTwo-Spirit※という人たちがいて、男性、女性、どちらにも惹かれるって。それだ!と思った」
 残念ながらTwo-Spiritの言葉の意味を誤って捉えていたことへの指摘はたくさん上がったものの、ジェイソン・ムラーズが正式にバイセクシュアルだとカミングアウトしたことは賞賛されています。
   
※Two-Spirit(トゥースピリット):男性、女性、両方の魂を持つ、という意味で、自分の体に「女性の魂と男性の魂が同時にある」と感じている人や、ある時は女性の格好、ある時は男性の格好をして生活したりしていた人たち。トゥースピリットの人たちは、ヒーラーであったり、預言者であったりして、先住民社会ではたいへん尊敬されていました。なお、先住民の社会では、女性、男性、トゥースピリットの女性、トゥースピリットの男性、トランスジェンダーという5つの性があるとされていたそうです。
 
 それから、10月の来日公演が決定しているパニック!アット・ザ・ディスコのフロントマン、ブレンドン・ユーリーも7月、『ペーパー』誌のインタビューでパンセクシュアルであるとカムアウトしました。
 ブレンドンはインタビュー中で、ファンたちが自分のセクシュアリティに向き合えるようになったことへの感謝を綴る「サンキュー、ブレンドン」というインスタグラムのファン・アカウントの存在を指摘されると、自身のセクシュアリティに言及して次のように語りました。
「15歳か16歳の頃に経験した初めての3Pについて書いた“Girls, Girls, Boys”っていう曲があるんだけどさ。元々は初めての3Pについての曲だったんだけど、最終的にはカミングアウトだったり自分自身を認めることについての曲になって、僕はそのほうが遥かに素晴らしいメッセージだなって思ったんだ」
「自分が元々書いていたテーマを取り除いて、もっと自分の目的にふさわしいものに変えたんだ。素晴らしいアイディアだと思ったね」
「僕は女性と結婚していて、彼女のことをとても愛しているけど、男性を拒否しているわけではないんだ。だって、僕からすれば、僕は人が好きなんだからね」
「僕をパンセクシュアルとくくってくれても構わないよ。まったく気にしないから。その人が素晴らしいのであれば、その人は素晴らしい人なんだよ。僕はいい人が好きなんだ。正しい心を持っているような人がね。僕は間違いなく男性にも心を惹かれるよ。僕は単に、人に心を惹かれるんだよ」
「僕は今、パンセクシュアルだとカミングアウトしているんだと思う」
 ちなみにブレンドンが初めて行ったバーは(17歳のとき)テキサスでのライブの後に元バンドメイトのライアン・ロスと一緒に行ったゲイバーだったそうです。
 ブレンドンは最近、アメリカ全土のLGBTQ+の若者を支援する活動に100万ドル(約1億1,006万円)を寄付していました。


 そして、この8月、セイ・エニシング(2000年代にポップなオルタナ・ロックで人気を博したバンド)のフロントマンであるマックス・ビーミスが、とてもエモーショナルな長文の手紙の中で、バンドを解散することと併せて、双極性障害であること、そして、バイセクシュアルまたはクィアであることを明らかにしました。
「僕はいつもバイ的だった。またはクィア、または男の子も好きになるストレート。僕はいつも友達と冗談っぽくそういうことを話してた」
「僕はそのことでいじめられた。おかまって呼ばれて。これは、悲しいことに、僕だけの話じゃない、どこにでもある話だ」
「僕はできるだけ遠くまで届くように、男の子にも惹かれるよ、ということを何度も話してきた。人々はそれを僕の双極性障害のせいだと言って、とても傷ついた」 
「僕は人生の早い時期に気づいていたけど、人々は僕のセクシュアリティを否定しているか、または、少なくとも自分自身をバイセクシュアルだとかクィアだとアイデンティファイする権利を最小化していると思う」
「僕は男の子とフックアップ(その場限りのセックス)しようとは思ってない。女の子ともそうだ。女性と恋に落ちたかった。だからそうした」
「僕はずっとモノガミーで、僕のクィアな経験は限定的だ。ほとんどは感情のレベルだ」
「怖いと感じたことはなかった。だって、サポーティブでリベラルな家族の下で育ったからね」
「僕にとって、自身のセクシュアリティを受け入れることは難しくないことだったんだ」
「僕は、クィアで、ユダヤ人で、クリスチャンで、形而上学と「魔法」の実用を信じるエセ懐疑論者だ」
「僕のクィアネスやゲイネス、アセクシュアリティ、ちょっと女性的なスピリットや、誇りに思っているすべてのことについて、どう実践してきたかということは詳しく言うつもりはないんだ」

 マックス・ビーミスの手紙は、非常に詩的で、どういう意味なのかわからない箇所もあったりするのですが、率直で赤裸々で、胸に迫ってくるものがあります。興味のある方はこちら(PDFです)で読んでみてください。

 ちょっと前まではアメリカでも、現役のミュージシャンがゲイだとかバイセクシュアルだと公にするのはためらわれることだった、言わないでおこうとする方がほとんどだったと思いますが(アダム・ランバートのカムアウトがどれだけセンセーショナルに扱われてきたか、思い出しましょう)、こうして堂々と、さらりと言える方が多くなってきたというのは、それだけ社会が寛容になってきた、公表したとしても人気に影響を及ぼすことがなくなってきたということを物語っているのでしょう。
 1994年という人気絶頂だった時期に自身のセクシュアリティについて語っていたというR.E.M.のマイケル・スタイプは、カムアウトしてから20年後、このように語っています。(rockinon.com「元R.E.M.のマイケル・スタイプ、自身のセクシュアリティを公表した20年前を振り返る」より)

「21世紀は、僕たち全員に、そして特に若い世代の人たちに対して、一人一人の個人に表出されるセクシュアリティとアイデンティティがこれほど流動的であることを許されるということを、明確な考え方としてもたらすようになったのです。ジェンダーアイデンティティ、あるいはセクシュアリティやアイデンティティの多様さなどといったことは今では広く話し合われ、討議されるテーマになってきているし、ごくなにげなく会話にも登場する話題にもなってきています。これほど早く人々の概念が進歩的に変化していくのを見届けるのはとても刺激なことです」

 


 
ジェイソン・ムラーズがバイだと告白、妻と交際中に男性と関係を持った(フロントロウ)
https://front-row.jp/_ct/17192110

Jason Mraz Pens Love Poem to LGBTQ Community: "I Am Bi Your Side"(E!ONLINE)
https://www.eonline.com/news/944175/jason-mraz-pens-love-poem-to-lgbtq-community-i-am-bi-your-side

Jason Mraz Opens Up About Bisexuality in Billboard Interview(OUT)
https://www.out.com/news-opinion/2018/7/20/jason-mraz-opens-about-bisexuality-billboard-interview

パニック!アット・ザ・ディスコのブレンドン、パンセクシャルを告白(MTV)
http://www.mtvjapan.com/news/1bggc2/180709-07

パニック!アット・ザ・ディスコのブレンドン・ユーリー、パンセクシャルであることを告白(NME)
https://nme-jp.com/news/57973/

Say Anything rock singer comes out as queer(PinkNews)
https://www.pinknews.co.uk/2018/08/20/bisexual-comes-out-say-anything-rock-singer-max-bemis/

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