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REVIEW

映画『UNITED IN ANGER –ACT UPの歴史-』

ドキュメンタリー映画『UNITED IN ANGER –ACT UPの歴史-』のレビューをお送りします。アメリカのエイズ禍の時代、政府の無策に声をあげ、闘った方たちの姿がリアルに映し出されています。

映画『UNITED IN ANGER –ACT UPの歴史-』

1月5日(日)、ArcHで『UNITED IN ANGER –ACT UPの歴史-』の上映会が行われました。エンターテインメント作品ではなく、ドキュメンタリー映画(しかもかなりヘビーな)の上映会がArcHで行われること自体、あまりないこと(初めて?)ですが、新年早々このようなイベントが開催されたことも感慨深いものがありました。会場はほぼ満員で、熱気を感じさせました。上映後には、GCAP Japan/アフリカ日本協議会の稲場雅紀さん、ぷれいす東京の生島嗣さん、JaNP+の長谷川博史さん、aktaの荒木順子さん、そして張由紀夫さんによるトークショーが行われ(このような豪華メンバーが集まるのもスゴいことです)、この映画だけではわからないACT UPのいろいろや日本との比較、HIV/エイズについての今後の課題などについてのお話が展開されました。今回は、(記録をとっていなかったため)イベント・レポートではなく、映画のレビューというかたちでお届けします(トークショーの内容の詳細を知りたい方は、aktaにお問合せいただければと思います)(後藤純一)
 

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 1987年、薬もなく、情報もなく、すでに数万人もの方たちがエイズで亡くなっていたにもかかわらず、レーガン政権は何ひとつ対策を打ち出さずにいました。そうした状況に怒り、劇作家ラリー・クレーマーの呼びかけで「ACT UP」が立ち上げられました。「薬を体に」のワンイシューで集まった人たちは、国の政策を変えさせるために非暴力直接行動(ダイインなどの抗議活動)へと動き出しました。ニューヨークのゲイ&レズビアンセンターでは毎週月曜日、活動家でもなんでもない若いゲイの人や女性たちなども集まり、勉強会を開いたり、次のデモをどうするか、熱い話し合いが行われるようになりました。 
 その抗議行動は、「ACT UP(ハデにやれ、という意味)」の名の通り、警察と衝突し、逮捕されることも覚悟しなければいけないようなものでしたが、粘り強くラジカルな運動を続けていった結果、FDA(食品医薬品局)に治療薬の開発を急がせたり、AZTの値段を20%下げさせたり、様々なことを実現させました。それは、綿密な作戦会議と行動力、そして決してあきらめない意志の強さの賜物でした。
 国民皆保険制度もなく、治療法も確立されておらず、政府に見捨てられ、明日をも知れぬ命…という人たちが、絶望の淵から立ち上がり、あきらめずに闘い続けた結果、いろんなことが少しずつ前進していったのです。

 物々しい映像が続くなか、涙なしには観ることができない場面、思わずジーンとくるような場面もたくさんありました。
 1991年、湾岸戦争に抗議してニューヨークのグランド・セントラル駅を占拠した際の、ピンクと赤の風船とともに「MONEY FOR AIDS, NOT FOR WAR」と書かれた大きなフラッグがゆっくり浮かび上がっていくシーンには、感動せずにはいられませんでした。
 それから、このドキュメンタリーに映っていた活動家の多くは、名前と没年が表示されていたため、ああ、この人も亡くなったんだなあ…この人も…というように、1996年のHAART(カクテル療法)の登場に間に合わずに亡くなっていった方が本当に多かったということがひしひしと伝わってきて、胸が締めつけられるような気持ちになりました。
 集会で「ぼくはあと余命わずかです。今まで自分が生きて来られたのはACT UPのおかげです。本当にありがとう」と語る方もいました(涙を禁じえませんでした)
「ぼくはACT UPのおかげで治療にアクセスできた。もし何もせずにいたら、今こうして生きてないと思う」と語っていた方がいたのも印象的でした(この方は幸いにしてエイズ禍を生き延びることができたのです)。生きるための闘いが「生」につながることもあるのです。
 ACT UPの活動のおかげでアメリカ社会の同性愛への見方(偏見)も変わっていった、というコメントもありました。
 そして実は、ただ活動をしていただけでなく、ACT UPの集会は、ゲイがパートナーを見つける出会いの場でもあったのです(夢見るように「あの頃は本当に楽しかったよ」と語る方もいました)
 
 ただ、観る方によって、この作品は、実にいろんな反応を引き起こすだろうな…と思いました。熱い思いをたぎらせる方もいらっしゃるでしょうし、ドン引きする方もいらっしゃることでしょう。
 これからこの映画をご覧になる方の中には、ACT UPのスゴさに感染し、日本のHIV予防啓発活動ももっと直接行動に訴えるべきだと思ってしまう方もいるかもしれません。その点は冷静に、理性的に観てほしいと思います。
 映画の後のトークショーでも語られていましたが、ACT UPは非暴力直接行動だけをやっていたわけではなく、陽性者のケアに携わっていたGay Men's Health Crisisや、ロビー活動を行っていたGay and Lesbian Task Forceのメンバーも参加し、連携がとれていたからこそ、成果を上げることができた(どれか1つだけではうまくいかなった)のだそうです。
 そして、ACT UPが盛んに活動していた当時のアメリカの状況は、いまの日本のHIV/エイズをめぐる状況とは全く異なります。国民皆保険制度もなく、治療法も確立されておらず、政府に見捨てられ、打つ手もなく死を待つばかり…という状況と、検査を受けて早めにわかれば、薬を飲んで治療することでずっと元気に生きていける、そして全国に厚労省の予算でコミュニティセンターができている(国と対話・協調ができている)状況。雲泥の差があります。(もちろん日本はオールOKということではなく、予算が減らされているなど、様々な課題もありますが)
 ACT UPの手法はむしろ、3.11後の民主化運動(脱原発デモやレイシズムに対抗するムーブメント、特定秘密保護法への抗議運動など)の盛り上がりの方により親和性があるのではないでしょうか(過激という意味ではなく、いかに国を動かしていくかという点で参考になる部分が多いということです)
 
 ともあれ、もしこれからどこかで上映会が開催されるなら、ぜひ観てほしいと思います。
 また、ほとんど無料で全国どこでも上映会の開催が可能ですので、興味がある方はこちらをご覧ください。(世界エイズデーの時期は過ぎましたが、今後もロングランで上映されていったらいいなあと思います)
 
UNITED IN ANGER ーACT UPの歴史ー
2012年/アメリカ/言語・字幕:英語(日本語字幕)/93分/監督:ジム・ハバード

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