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REVIEW

幸せになれるコメディ『人生万歳!』

ニューヨークを舞台に、一癖も二癖もある人たちが、本当の自分に目覚めたり、ドタバタで「何でもアリ」な恋愛劇を繰り広げたり…コメディ映画の巨匠、ウッディ・アレンの40作目となる映画『人生万歳!』は、本当に幸せな気持ちになれる、都会派の素敵なコメディでした。

幸せになれるコメディ『人生万歳!』

 三谷幸喜さんが「日本のウッディ・アレンになりたい」と言うほどのコメディ映画の巨匠、ウッディ・アレン。饒舌な語り口の知的で都会派な、そしてちょっとシニカルなコメディをたくさん撮ってきましたが、この映画『人生万歳!』が、ウッディ・アレンの記念すべき第40作目になります(監督は現在75歳だそうです)
 

 ニューヨークを舞台に(と言っても『SEX AND THE CITY』のようなゴージャスさは全くなく、チャイナタウンの安アパートだったりします)、元ノーベル賞候補物理学者だった偏屈で気難しいおじいさん、男二人と同棲する女性、田舎から家出して来た常識知らずな小娘、ド貧乏な俳優志望の若者、ゲイのおじさん…一癖も二癖もある、都会じゃないと生きていけないような登場人物たちが、本当の自分に目覚めたり、ドタバタで「何でもアリ」な恋愛模様を繰り広げる様を描いたコメディです。
 「この街では、どんな人でも(その気になれば、そしてチャンスがめぐってくれば)自分らしく生きていけるし、幸せになれる」…そんな監督のメッセージが伝わってきます。 
 「マジで?」「ありえないから!」と叫びたくなるような展開のオンパレードには思わず笑ってしまいますが、そうやって映画を見ているうちに、観客は、ふだんもしかしたら無視したり嫌ってたりするかもしれない「変人」たちを、いつの間にか好きになると思います。たとえば主人公のボリス。イヤなことばかり言ってる最悪に偏屈なじいさんですが、きっとその恋を応援し、祝福したくなるはずです。そして、ふと「そう言えば近所にこんな人いたっけ…」と思い出し、ちょっとだけその人のことを見直してみたりするのです。(ゲイ嫌いなノンケの観客がゲイの登場人物を見た時も同様です)
 そこがこの映画の(あるいはニューヨークという街の)魅力であり、魔法なんじゃないかと思います。
 若くて美しくて頭がよくて性格がいい人なんていないよね、みんなどこか欠けてるし、強烈に変わり者。でも、それでいいじゃん。イッツ・ニューヨーク!

 ウッディ・アレン自身はゲイではありませんし(女性関係のゴタゴタも…意外にやるなあという感じです)、これまで作品にゲイが登場することもほとんどなかったと思います。が、前作の『それでも恋するバルセロナ』ではペネロペ・クルスとスカーレット・ヨハンソンが同性どうしで愛し合うシーンがありましたし(GLAADメディア賞にノミネートされました)、今回はゲイのキャラクターが登場しました(彼らはちゃんと仲間たちの輪に入って、幸せそうです)。素敵なことです。

 ちなみにこの『人生万歳!』は、名匠ウディ・アレン監督の40作目の記念作品なのですが、同時に恵比寿ガーデンシネマの有終の美を飾る作品でもあります。1993年、恵比寿にオープンし、ロバート・アルトマン監督の『ショート・カッツ』を皮切りに世界各国の良質な作品を上映し、ミニシアターブームを牽引し続けた映画館・恵比寿ガーデンシネマは、2011年1月28日の上映をもって休館することが決定し、17年の歴史に幕を閉じることになったのです。ガーデンプレイスの電飾が輝くオシャレな雰囲気とともに、最後のガーデンシネマでの映画鑑賞を味わってみてはいかがでしょうか。デートにも最適です。


<ストーリー>
かつてノーベル賞候補だった天才物理学者のボリスも、今では社会から孤立し、自堕落な日々を送る気難しい老人。ある夜、ボリスの家に南部の田舎町から家出してきた娘メロディが転がり込み、そのまま居座ってしまう。2人は生活をともにするうちに意気投合し、年の差を乗り越えて結婚する。しかし、2人の家をメロディの母親が訪ねてきたことから、状況は変わっていく…



人生万歳!
2009年/アメリカ/配給:アルバトロスフィルム/監督:ウディ・アレン/出演:ラリー・デヴィッド、エヴァン・レイチェル・ウッド、パトリシア・クラークソン、エド・ベグリー・Jr.、コンリース・ヒル、マイケル・マッキーンほか/恵比寿ガーデンシネマほか全国順次公開


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