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ドラァグクイーンが活躍する舞台『Lipsynca~ヒールをはいたオトコ!?たち~』

本物のドラァグクイーンが登場し、ゲイテイストなショーを繰り広げる笑いあり感動ありの舞台『Lipsynca~ヒールをはいたオトコ!?たち~』が初日の幕を開けました。その華やかなショーの画像とともに、レビューをお届けします。

ドラァグクイーンが活躍する舞台『Lipsynca~ヒールをはいたオトコ!?たち~』

こちらのニュースでもお伝えしたドラァグクイーンが活躍する舞台『Lipsynca~ヒールをはいたオトコ!?たち~』が14日、新宿の「シアターサンモール」で初日の幕を開けました。その前に行われたゲネプロ(本番さながらのリハーサル)におじゃますることができましたので、このお芝居のレビューをお届けいたします。(後藤純一)

あらすじ


たくさんのクイーンたちが観客席から
登場し、お客さんを楽しませます 

そして華やかなオープニングショー!
 新宿の裏通りにある店『デズモンド・グレイ』。 ここは日本で唯一、ドラァグクイーンが常駐するカフェレストラン。 オーナーの鈴木(彦摩呂)は最近の売上げの低さに頭を悩ませていた。オープン当初は物珍しさも手伝って、連日満員の大にぎわい。しかし、3周年パーティが近づくにしたがい、客足が落ちて行き、赤字の日もあるくらい。 そこで、起死回生をねらい、素人を募集してドラァグクイーンとして舞台に立たせることを考えた。しかし、応募してきたのは、リストラされたサラリーマン(Kimeru)、陰気な中年女(鈴木蘭々)、アイドルオタク(井深克彦)、中国人留学生(別紙慶一)という、ひとクセもふたクセもある面々。しかもみんな募集広告を微妙に勘違いしてやってきた者ばかり。ドロシー(川原田樹)、ナジャ、フォクシーら古参のドラァグクイーンたちも呆然となり、当然反対。勘違いしてやって来た面々もドラァグクイーンのことを知って帰ろうとするが、オーナーの説得で引きとめら、そこからポンコツ4人のドラァグクイーン修行が始まる。 しかし、そこに立ち退きを迫る不動産業者(叶千佳、磯村洋祐)が現われ…果たして『デズモンド・グレイ』の3周年パーティは無事に開催されるのか?


本物のドラァグ・ショーがたっぷり味わえます!



ドロシー&ナジャ&フォクシーさんの
本格的なショーが素敵です!
 何と言ってもゲイ的にウレシイのは、ナジャさん十八番の『And I'm Telling You(I'm Not Going)』(『ドリームガールズ』でジェニファー・ハドソンが熱唱していた歌)、ドロシー役の川原田樹さん、ナジャさん、フォクシーさんによる‪スリー・ディグリーズの『Everybody Gets To Go To The Moon‬』(通称「MOON」。きっと聞いたことがあると思います)など、二丁目や堂山や栄のゲイナイトで繰り広げられている本物のドラァグ・ショーがふんだんに盛り込まれているところです。BGMも『バーレスク』だったりして、随所にゲイテイストがちりばめられています。
 ノンケさんが演じているドラァグクイーンの衣装も、コシノジュンコさんが制作したものだったり、本物の方から借りたものだったり。ウィッグ(かつら)もレディ・ガガ風にビール缶を巻き付けたり、フルーツが山盛りに盛られていたり。「女性」ではなく「ドラァグクイーン」らしい過剰さ、ゴージャス感が出るように努力されていました。

 TVによく出てくるゲイバーのママみたいな感じ(中途半端なメイクで青ひげが浮いてるような、あからさまに嘲笑を誘うような感じ)ではなく、ニューハーフのような女性美でもなく、ゲイテイスト以外の何者でもない、リアルなドラァグクイーンのパフォーマンスが、こうしたメジャーな商業演劇に登場するのは初めてではないでしょうか。それは、(これまでの世間の風潮に反し)ゲイカルチャーやゲイテイストをカッコいいものとして認め、賞揚することに他ならず、間違いなく快挙と言える出来事だと思います。


ゲイと家族の関係を描き、感動を喚び起こしました

 ドラァグクイーンとは(たまに女性の方などもいますが)ほとんどの場合、ド派手な女装をしたゲイのことですから、ドラァグクイーンのショーを見せる『デズモンド・グレイ』のオーナーである鈴木も当然、ゲイです。そしてもう1人、ある重要なキャラクターとしてゲイの男の子が登場します。『デズモンド・グレイ』の古参のクイーンたちを含め、『Lipsynca』の主要なキャラクターの多くがゲイなのです。
 世間一般の人たちが全員、こうした(派手に女装した)ゲイに対していきなり諸手を挙げて好意を示すということは考えにくいので、この芝居にも「ゲイに対する嫌悪感(ホモフォビア)」を表現するシーンが出てきます。中には「おかまのくせに!」という強烈なセリフも…。
 芝居の本筋は『デズモンド・グレイ』のパーティを成功させるために素人をオーディションし…という流れですが、ときどきそうしたホモフォビアをむきだしにしたセリフが飛び出し、ハラハラさせられます。でも、そんなひどいセリフを放つ人にもレッキとした理由があるということが、だんだん明らかになっていきます。

 オーナーの鈴木も、もう1人のゲイの男の子も、二人とも、ゲイであるがゆえに家族との関係が悪くなったという過去を持っています。鈴木のほうは、もういい年ですし、割り切った様子ですが、もう1人のゲイの男の子は、現在進行形で悩んでいます。後半、お店のパーティに向けたドタバタ劇の中で、そうした「ゲイとその家族の関係」の難しさが描き出されています。「男が男を愛して、女が女を愛して、いったい何が悪いのよ!」というセリフが観客の胸を打ちます。
 このセリフには、長年、ゲイを白い目で見たり嘲笑したり排除したりしてきた世間の風当たりを痛いほど感じてきた人の、本当は家族にゲイであることを理解してほしい、ありのままの自分を受け容れてほしいという、心からの叫びが込められています。
 キホン華やかなドタバタ劇ですので、あまりシリアスな場面はなく、このセリフを言うシーンが「効く」というか、ズシンと観客に響く、そういう重みを与えられていたように感じました。このセリフこそが芝居の中でいちばん大事だとみんなが思っていたんじゃないでしょうか。そんな作り手側の「思い」が感じられて、後からジワジワきました。

 * * * * * *



華やかなフィナーレ!
この『Lipsynca』を観た一般の観客は、おそらく、華やかなステージングや笑いというエンターテインメントに魅了され、家族の人情話というわかりやすい物語に感情移入していくうちに、いつの間にかゲイに対する見方が変えていくのではないかと思います。「バカにしてよい存在」「嫌悪される存在」から「カッコいい存在」「尊重されるべき存在」へ――そんなふうに作られている(価値観の転倒が図られている)芝居なのです。それは、TVや商業演劇などのメジャーなギョーカイでは非常に難しいこと、ある意味「離れ業」です。ゲイカルチャーを愛し、ゲイプライドを捨てず、とんでもない熱意を持ち、努力しつづけた末に、この「離れ業」が成し遂げられたに違いありません。

 『Lipsynca』は二丁目から程近い「シアターサンモール」で19日(祝)まで上演されます。この3連休の間にぜひ、お出かけください。


Lipsynca~ヒールをはいたオトコ!?たち~
日程:2011年9月14日(水)~19日(祝)
会場:シアターサンモール(東京都新宿区新宿1-19-10サンモールクレストB1)
料金 (全席指定・税込) :前売¥5,500、当日¥6,000
問合わせ:サンライズプロモーション東京 0570-00-3337 (10:00-19:00)