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劇団フライングステージ第42回公演『Family,Familiar 家族、かぞく』

11月2日に初演された劇団フライングステージの新作『Family,Familiar 家族、かぞく』。昨年上演されて感動を呼んだ『Friend, Friends』の続編です。初日レポートをお届けします。

劇団フライングステージ第42回公演『Family,Familiar 家族、かぞく』

2016年11月2日(水)に下北沢のOFFOFFシアターで初演された劇団フライングステージの新作公演『Family,Familiar 家族、かぞく』。昨年上演されて感動を呼んだ『Friend, Friends 友達、友達』の続編です。初日レポートをお届けします。(後藤純一)

(『Friend, Friends』の結末に触れる部分がありますので、もし『Friend, Friends』をご覧になっていない方は、先にそちらを観ていただいた方がよいかと思います)

 渋谷区の同性パートナーシップ証明書ももらい、晴れて両親に尚之との関係を認められた雅人。『Family, Familiar』は、前作『Friend, Friends』のラストシーンから始まります(昔気質なお父さんが彼氏に「息子をよろしくお願いします」と頭を下げる場面で、いきなり泣きそうに…)

 しかし、現実は(男女の結婚もそうであるように)「二人はいつまでも幸せに暮らしました」というふうにはいきませんでした。二人はもうつきあって4年。一緒に住んで、何度となくケンカもし、倦怠期もとっくに過ぎて、ほとんど家族のような関係になっていて…正直、尚之はもう雅人とはセックスできなくなっていたため、他にセックスする相手を見つけていたのです。雅人は激怒。尚之からオープンリレーションシップということを言われますが、聞く耳を持たず、別れを宣告します。ここには、本当に身につまされるというか、耳が痛いというか…ゲイのパートナーシップにありがちな問題がリアルに描かれています。尚之は雅人の両親にも謝るハメに…(怖っ!)。しかし、それでジ・エンドとはならないのが、フライングステージの面白さです。果たして、二人のパートナーシップの行方やいかに…?

 一方、前作で、パートナーの耕司が突然亡くなったために同居していた家を追い出されてホームレス状態に陥った二朗は、学生で一人暮らしが不安な耕司の甥っ子(妹さんの息子)を預かるという条件で家に居られるようになります。この甥っ子の健吾はイケメンでしかもゲイ。二朗は保護者のような存在として、また、ゲイの先輩として、面倒を見ます。この奇妙にして素敵な同居生活からは、やはり家族のようなそうでないような関係性が芽生えます。

 それから、彼らの友人であるレズビアンカップル、友理(関根さんが演じています)と英子の家族にも、大きな変化が生じます。映画『アゲンスト8』(または『ジェンダー・マリアージュ』)の原告のレズビアンカップルの子どもたち、その子どもたちの父親が一切描かれていないという批判には、ハッとさせられました。あの映画を心情的に受け入れ難いような人が世の中に存在しうるということに気づかされたのは、目からウロコでした。

 家族というものを拒絶する人物も登場します。独りがいいんだ、孤独死する権利というものだってあるはずだ、とその人は叫びます。ちょっと衝撃的でした。セクシュアリティを考える時、アセクシュアル(無性愛者)のことを忘れてはいけないように、パートナーシップや家族(関係性)のことを考える時、独りで生きたいと願う人もいるのだということを忘れないようにしたいと思いました。

「いい加減な家族より、出来のいい他人」「楽だから一緒に住むんじゃない、一緒に住むから楽になるんだ」この舞台には、実に深みのある、名ゼリフがたくさんありました。
 また、ひょんなことから一つ屋根の下に暮らすことになった赤の他人が一緒にご飯を作って食べる(その一連の流れがパントマイムで表現されていて、印象的でした。客席からお腹が鳴る音が聞こえました)という日常の一コマを通じて心の距離を縮めていく様にジーンときたり、素敵なシーンがいろいろありました。

 同性婚は当然のこととして、その先の、未来的とも言えるようないろんな家族のかたち(あるいはいろんなパートナーシップのありよう)が描かれます。ここに登場する人物の誰一人として、父・母・子の「伝統的な」家族じゃなきゃ不幸だ、などと思っていないところが素晴らしいです。これは家族の条件とは何か? 家族の本質とは何か? と問う作品ですが、決してそれは血縁ではないのです。

 全体として、ほのぼのしていて(笑いどころもたくさんありました)、最後にはしみじみとした感動がありました。それでいて、ハッとさせられたり、考えさせられたり、身につまされたり、胸が痛くなったりするところもありました。

 パートナーシップとか家族のことを掘り下げていくと、結局はその人にとってどう生きるのが幸せかということに尽きるのかな、と思いました。幸せのありようは人それぞれ多様で、幸せを追求する自由は権利として認められなければならない(セクシュアリティの多様さと同様、関係性の多様さも認められるべき。ポリアモリーとか、3人の結婚とか)、一方で、パートナーシップや家族が他者との関係性である以上、一筋縄ではいかない、お互いの求めるありようが異なる場合には擦り合わせも必要になるし、やっとの思いで築いた関係性もいつ壊れてしまうかもわからない(だからこそ、かけがえがないものだし、関係を続けようという不断の意志と気遣いがなければやっていけない)…そんなことを考えさせられました。

 今回も、関根さんの筆が振るい、素晴らしい作品となりました。役者さんも見事にそれを演じていました。関根さんや石関さんは(もはや当たり前のように)女性の役を演じて、全く違和感がありませんでした。雅人役の小浜さん、尚之役の岸本さんは、タイプの異なるゲイのキャラクターをきちんと的確に演じていました。健吾役の野口さんは、この舞台の華だったのではないでしょうか(きっと見とれてしまったた人、多数)。唯一の女性として参加した猫宮さんは、安定の演技でした(ジャンジさんは秀逸でした)。前作でホームレス同然となり、かわいそうなイメージがあった二朗役の阪上さんは、今回は頼もしさを感じさせました。雅人の父親役の若林さんは今回もフライングステージ作品では珍しい男っぽい男性として存在感を放っていました。そして、幽霊となった耕司と友理の息子(中学生)を演じ分けた中嶌さんは、とてもいい味を出していました(笑わせてくれました)。多様な家族観を持つ人たちがコミュニケーションしていくこの芝居は(一つの価値観に支配されている標準的な物語とは異なり)実は作り上げるのが難しい作品だったのではないかと思います。みなさんに拍手!です。



劇団フライングステージ第42回公演『Family,Familiar 家族、かぞく』
日程:2016年11月2日(水)-11月6日(日)(『Friend, Friends』も上演されます。詳しくは公式サイトをご覧ください)
会場:下北沢 OFFOFFシアター
料金:全指定席 前売・予約3,500円、学生2,500円(受付で要学生証提示)、当日券3,800円、当日学生券3,000円(受付で要学生証提示)、ペアチケット6,500円、トリプルチケット9,000円(チケットの予約はこちら
作・演出:関根信一
出演:石関 準、小浜 洋、岸本啓孝、阪上善樹、関根信一、中嶌 聡、猫宮さくら、野口聡人(劇団ひまわり)、若林 正