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「LGBTインバウンド・セミナー」レポート2 〜知られざるLGBTフレンドリー・タウン、別府〜

昨年、新宿と京都で「LGBTインバウンド・セミナー」が開催されましたが、今度は大分県の別府で同様のセミナーが開催されました。市長さんがわざわざ駆けつけて「私が先頭にたって取り組んでいく」と宣言するなど、熱い思いを感じさせました。レポートをお届けいたします。

「LGBTインバウンド・セミナー」レポート2 〜知られざるLGBTフレンドリー・タウン、別府〜

2015年、新宿と京都で「LGBTインバウンド・セミナー」が開催され、奈良市のIGLTA加盟にもつながったことをお伝えいたしましたが、今度は大分県の別府で同様のセミナーが開催されました。別府市の長野市長がわざわざ駆けつけて「私が先頭にたって(LGBTインバウンドに)取り組んでいく」と宣言するなど、熱い思いを感じさせました。また、あまり知られていないと思いますが、別府の方々はビックリするくらいLGBTフレンドリーでした。レポートをお届けいたします。(後藤純一)

 


オリジナルのレインボータオルに
地元の方々の本気を見ました
 2016年1月21日、大分県別府市で「LGBTフレンドリーな観光都市・別府を目指して」というセミナーが開催されました。LGBTインバウンドに取り組むアウト・ジャパンが主催し、市や商工会議所などでつくる別府市中心市街地活性化協議会が共催、別府市が後援について実施されたものです(毎日新聞大分版などでも紹介されました)

 会場のニューライフプラザ視聴覚室には市の職員の方や商工会議所の方、地元で旅行業や飲食店を営む方、立命館アジア太平洋大学(APU)の職員や学生の方たち、NPOの方など、街の人が大勢詰めかけ、約100席がほぼ満員になっていました。そして、驚いたことに、それぞれの席に、別府市中心市街地活性化協議会が作ったオリジナルのレインボータオルが置かれていました。地元の方たちの並々ならぬ力の入れように感銘を受けました。


思わず「ついて行きます!」と
言いたくなるような、力強い
スピーチをしてくれた市長さん
 セミナーが始まるやいなや、思わず感動させられたのが、初めにご登壇くださった別府市長の長野恭紘氏のスピーチでした。ちょっと長いですが、とても素晴らしかったので、全文をご紹介いたします。
「みなさん改めましてこんにちは。今日はLGBTフレンドリーな観光都市別府を目指してということで、このような貴重な場を開催していただきました。多くの皆様にご参集いただいてこのように盛大に開催されきることを、心よりお慶び申し上げたいと思います。今日は村木さん、池内さん、小泉さん、それぞれの専門分野の中でご講演いただいて、この別府にいろいろな知恵を与えていただくということでお越しいただきました。本当に感謝申し上げたいと思います。
 私はもとより、別府に住んでる人たちはおそらくほとんどの方はわかっていると思いますが、別府は多文化共生の町ということで。2000年に開学いたしましたAPUは、人種というものを超えた多文化共生の町と言えると思いますし、障がいを持っている方も生き生きと輝く、そういう生活を送っていただけていると思います。そもそも別府という町の歴史をひもといた時に、観光地の町はそういう町が多いのかなと思いますが、別府は四国から渡って来た方々によってほぼ形成された町というふうに言われています。たくさんの交流人口、海外から来られる方が年間約820万~830万人が訪れている町です。365で割ると、1日約2万人が滞留している。そういう意味で考えれば、日本人の特徴は外から受け入れたものをさらにオリジナルを超えていいものを作っちゃう、というところだと思いますが、それを時で行くのが私たちの別府市ということが言えるのではないか。
 LGBTと聞いて、最近こそよく聞くようになりましたが、第一にまだまだ多くの偏見や差別があるのは事実。少し前までは、そこに触れづらい課題だった。最近、ようやく、渋谷区では若い区長さんが活躍されて、証明書の発行という話も知っておりますし、これから、どんどん、目を背けるのではなくて、それを認識したうえで理解をしていくことが、これからはやはり大事なことなのかなあと、私自身は理解をさせていただいております。
 観光というところでも大きな可能性があると思いますし、すべてを受け入れ、もっと変化させていく町としては、このインバウンドを含め、観光というものの大きな可能性を見出せるのではないかと。大きな期待をしています。今日の講演会が、皆様にとって素晴らしい、意義のあるものになると思いますし、私が率先して、先頭に立って、この観光に対して取り組んでいくとう意気込みで今日はやってまいりました」
 「私が率先して、先頭にたって(LGBTインバウンドに)取り組んでいく」と宣言した長野市長の言葉に、2003年、レインボーマーチ札幌のステージに、行政機関の長として初めて上田市長が登壇し、スピーチした時の感動を思い出しました。この後、公務があって途中退席されましたが、長野市長は村木さんのお話も聞いて行かれました(本当は夜の懇親会にも顔を出す予定だったそうですが、急用で来られなくなりました)。若々しくて素晴らしい市長さんだなあと、惚れ惚れしました。


虹色ダイバーシティの村木さん

ホテルグランヴィア京都の
池内志帆さん

アウト・ジャパンの小泉さん

会場はほぼ満席でした
 市長さんのご挨拶の後、NPO法人 虹色ダイバーシティの代表をつとめる村木真紀さんがLGBTの基礎知識について解説。『日経ビジネス』や『AERA』のLGBT特集、ティファニーのゲイカップルの広告の紹介などから始めて、性自認や性的指向の話、企業での取り組み、レインボー消費の話など、多岐にわたっていました。
 続いて、海外向け同性挙式プランなど先進的な取り組みを進めてきたホテルグランヴィア京都の営業推進室担当部長・池内志帆さんが登壇し、LGBT旅行市場の概説や成功事例を紹介しました。ストーンウォールからゲイ解放運動の歴史を簡単に紹介したり、プライドイベントが強力な集客力を持っていることを強調したり、自身が海外でプロモーションした際の経験を語ったり(パンフレット類はLGBTフレンドリーってわかるものじゃないと受け取ってくれないと悟り、結婚式の写真を使用するようになったんだそうです)、さまざまなお話を聞けました。
 それらを踏まえた上で、アウト・ジャパン取締役の小泉伸太郎さんが、別府市でLGBTインバウンドを成功させるための課題と可能性について、「LGBTの特性を知り、効果的なプロモーションを行うことが大事」と語り、地獄めぐりなどユニークな観光資源をうまく活用し、地元(あるいは福岡など)のLGBTシーンとも協力するし、別府ならではのLGBTイベントの開催や、IGLTA(国際ゲイ&レズビアン旅行協会)への加盟をおすすめしていました。
 質疑応答の時間には、会場から「LGBTの方々に失礼にならないようにするためにどういうことに気をつければよいですか?」という質問がありました。これに対して村木さんは「カップル向けサービスは同性カップルでも利用できることが望ましいですね。トランスジェンダーの方向けには、男性/女性となっている宿帳などの性別欄を見直したり、家族風呂がついているお部屋がいいと思います」と回答。池内志帆さんからは「以前、ゲイカップルのお客様に京都のオールディーズのクラブをおすすめしたことがあったのですが、離れて踊ってもらえませんか?とお店に言われて、ひどくご立腹で帰って来られたことがありました。ホテルだけでなく、市内のお店の方にも認知を高めていただくことが大事だと思います」とおっしゃっていました。
 2時間にわたるセミナーでしたが、会場の参加者の方々は終始、真剣に話を聞いていて、熱気を感じさせました。
 終了後、質問をしていた別府市中心市街地活性化協議会エリアコーディネーターの樋口太さんに感想を聞いてみたのですが、「別府はベースとしてLGBTというかセクシュアルマイノリティの数が多い。観光地でもあり、近所にふつうにいました。なので、そんなにハードルが高いわけではなくて。ただ、世界的なうねりがどんな感じで、どう向き合うべきかという裏付けがほしかった。海外で何万人ものパレードがあるとか、実際の活動されている方の生の声が聞けて、とても参考になりました」とフレンドリーに語ってくださいました。


懇親会もすごい盛り上がり!
 その後、別府の中心街にあるお店で懇親会が催されました。市長さんは来られなかったものの、市議会議員の方、NPOの方、LGBTイベント開催に意欲を燃やすホテル経営者の方(実は以前、二丁目のイベントにも関わっていたそう。ビックリ!でした)、APUの職員さん、APUのLGBTサークル「APU Colors」を主宰する方なども来られて、盛り上がりを見せました。みなさん、こちらが思っている以上にフレンドリーで、熱く、やる気満々だったことにとても驚きました。
 その席で「なぜ別府はそんなにLGBTに熱心なんでしょう?」と聞いてみたところ、こういう答えが返ってきました。もともと別府は四国など他所から来た人たちがつくった街で、早くから障がいを持つ方などのダイバーシティも進んでいた(こちらの記事によると、別府市は約50年前、全国に先駆けて身体障害者のための自立支援施設「太陽の家」が設立された街なんだそうです)、また、観光都市として外国人にも慣れているうえにAPUができてさらに外国人が増えた(学生の半数が留学生で、人口当たりの留学生数は全国平均の26倍でダントツ1位)という背景がある。なので、どんな人が街を歩いてようと、誰も気に留めないんだそうです。そこにたまたま、アウト・ジャパンとのつながりが生まれ、「これからはLGBTだ」という話で盛り上がったということのようです。その場にいた某旅館経営者の方は、LGBTと聞いて、SNSを通じてタイのゲイコミュニティにプロモーションを投げたところ、たくさんゲイの方が来てくれるようになり、今では旅館の入り口にレインボーフラッグを掲げているそうです。


別府は観光スポットもなかなか
面白かったです。写真は無理め
でしたが、白い泥の温泉がゲイ
的にオススメ!と思いました。
 その後、別府のゲイバーにもおじゃましてみました。広めのお店で、マスターが気さくなトークでおもてなししてくれました。お店にはすでに海外のゲイの観光客が何組も来られているそうです(実はほかにも数軒、ゲイバーじゃないお店に行ったのですが、街の方が本当にあたたかくて、うっかり感涙する場面もあり、ぜひまた来たいと思いました)。また、中心街のライブハウスではゲイナイトも(しかも2つも)開催されてきたそうで、恥ずかしながら、別府に立派なゲイシーンがあることを今回、初めて知りました。

 池内志帆さんがNY出張の際、ブロードウェイで『キンキーブーツ』を観たとおっしゃっていて(『キンキーブーツ』はドラァグクィーンが倒産寸前の靴工場に派手な靴を作ることを提案し、危機から救うという実話に基づいたミュージカル)、なるほど!と思ったのですが、別府の方たちは今、LGBTの力を借りて「街おこし」をしようとしているんですよね。しかも『キンキーブーツ』と違って街の人たちに偏見があるわけではないので(むしろウェルカムすぎるくらい)、うまくいく予感しかしません。
 別府市が奈良市に続いてIGLTAに加盟したり、淀川区や那覇市に続いてLGBT支援宣言をする日もそう遠くはないと思います。また、きっと近いうちに、今までになかった素敵なLGBTイベントやツアーが別府で催されると思います。続報を楽しみにお待ちください。

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