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ゲイ用語の基礎知識
ゲイ雑誌
ゲイ雑誌は、男性のヌードグラビアや通信欄、ゲイに関する情報、ゲイ小説、ゲイ漫画などを掲載したゲイのための雑誌。ゲイ雑誌といえば、主に月刊の商業ゲイ雑誌(紙媒体)のことを指します。
日本のゲイの歴史は、ゲイ雑誌によって大きく前進してきました。
そもそもは1960年代に『風俗奇譚』という同人誌があり、同性愛者のための通信欄やハッテン場の広告などが掲載されていました。その仕組みを、一般の流通に乗せることで大々的に展開したのが、1971年7月に創刊された『薔薇族』(第二書房)でした。町の本屋で『薔薇族』が売られるようになって、全国のゲイが通信欄を使って出会えるようになり、ゲイバーやハッテン場、売り専などの情報が浸透するようになり、ゲイ産業の発展を支えました。
続いて1972年には野郎系モデルやSM・露出などを前面に打ち出した『さぶ』(サン出版)が、1974年には低価格で学生を中心に支持された『アドン』(砦書房)が、1977年にはゲイの「上半身」を追求したファッショナブルな『MLMW(ムルム)』(砦書房)(~1980)が、1981年には東郷健プロデュースの『The Gay』が、1982年には太めや中年・熟年にターゲットを絞った『サムソン』(海鳴館)が相次いで創刊されました。
『薔薇族』『さぶ』は、そもそも出版元がゲイカンパニーではなかったのですが、ゲイとしてオープンに前向きに生きていこうとする人々が多くなってきた時代に合わなくなったこともあり、2001~2002年に相次いで休刊することとなりました。
一方、コミュニティ志向だった『アドン』は、積極的にゲイ団体の活動やHIV予防啓発についての情報を発信していました。そんななか、1994年に『バディ』(テラ出版)が、1995年に『G-men』(G-project)が相次いで創刊され、ゲイであることを肯定し(プライドを持ち)、オープンで前向きなゲイライフを提案し、シーンを盛り上げようとするスタンスを打ち出しました。1990年代から2000年代にかけて、日本のゲイの意識や生き方が大きく変わったのは、この2誌の影響によるところが大きいと言われています(特に『バディ』の功績は計り知れません)
その後、1999年にハイファッションなライフスタイル提案型雑誌『ファビュラス』(テラ出版)、老後やパートナーシップといったゲイライフの主要なテーマをアカデミックに掘り下げた『Queer Japan』(勁草書房)という画期的なゲイ雑誌が創刊されました。『ファビュラス』は4号で休刊となりましたが、『Queer Japan』は2005年、ポット出版から装いも新たに新創刊されました。また、2002年にはゲイライフをまじめに取り上げたコミュニティ誌『にじ』(にじ書房)が創刊されました(~2004年)。2006年には、タワーレコードがLGBT情報誌として『yes』を創刊し、ゲイマーケット的なエポックを画しました(~2007年)
しかし、インターネットの普及とともに、かつて出会いの主要な手段であったゲイ雑誌の通信欄がその役目を終え、情報提供もオンラインへと移行していきました。
2016年、『G-men』が休刊するというニュースは、驚きをもって迎えられました。ひとつの時代が終わった…そんな感慨を抱かせました。
そして2019年、ついに『バディ』も輝かしい25年の歴史に幕を下ろし、多くの方たちが残念に感じながら、感謝の言葉を送りました。
ゲイ雑誌で育った世代の方たちに支えられ、最後まで残っていた『サムソン』も、2020年4月、休刊を発表しました。
出会いも、エロも、情報も、今は完全にインターネット(ゲイサイト、掲示板、SNS、アプリなど)に取って代わられました。
しかし、それは時代の趨勢であり、媒体が変わっただけのこと、と言えるでしょうか。
ゲイ雑誌はただ出会いの場やセクシーなグラビアや漫画、小説などを提供してくれたというだけではありません。ゲイシーンが最も盛り上がり、一体感や夢や感動があった時代(2000年〜2002年頃)、間違いなくゲイ雑誌が大きな役割を果たしていました。ゲイ雑誌は、エロいこと、楽しいこととセットで、全国のゲイピープルに何かよいもの(ゲイである自分を受け容れられるようなこととか、希望とか、信頼とか、仲間意識のようなもの)を与えてくれていたと思うのです。
ゲイ雑誌が歴史に残した功績は決して小さくありません。ぼくらのコミュニティが窒息してしまいそうになったとき、もしかしたらそこに立ち返って考えてみることも大切なのではないかと思います。
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