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ゲイ的名場面:MTVアワード授賞式

12日夜、ロサンゼルスのノキアシアターで行われたMTVビデオ&ミュージック・アワード。レディ・ガガがゲイの兵士たちとともに登場したこと、ビデオ・オブ・ザ・イヤーを含む全8冠に輝いたことなどを含め、この授賞式のゲイ的な名場面を紹介します。

ゲイ的名場面:MTVアワード授賞式

レディ・ガガ、「ビデオ・オブ・ザ・イヤー」含む全8冠に

 世界中が注目するホワイトカーペットに、レディ・ガガはアレクサンダー・マックイーンのゴージャスなガウン(赤とゴールドを基調とし、ボディにはダビンチの女性の絵があしらわれています)、同じくアレクサンダー・マックイーンのヘビ柄のアルマジロ・ブーツ、羽根をモチーフにしたフィリップ・トレイシーの王冠風のヘッドセットという、女王の風格を感じさせるいでたちで登場しました。

 プレゼンターのエレン・デジェネレス(オープンリー・レズビアン)から最優秀女性アーティストビデオ賞のトロフィー(Moonman)を受け取りました。そして、涙を流しながら「ありがとう、私のリトルモンスターたち。今夜のことは夢みたいよ」とスピーチしました。そして、プロデューサーやビデオディレクターのフランシス・ローレンス、デザイナーの故アレクサンダー・マックイーンに感謝を述べた後、「このビデオも何度も何度もリミックスしてくれたすべてのゲイたちにも感謝するわ」と述べました。

 最優秀ポップ・ビデオ賞は、人気ドラマ『Glee』のキャストであるジェーン・リンチ、クリス・コルファー、アンバー・ライリーがプレゼンターを務め、またしてもガガが受け取りました。この時のドレスは、胸のところにトゲがついたブラックレザーのドレス(なんと、アルマーニのデザインだそうです)にやはりトゲのような王冠のようなヘッドセット(ちょっと『Bad Romance』のようなイメージ)でした。


スゴい2ショットです!
 そして、この授賞式の白眉である「ビデオ・オブ・ザ・イヤー」。元祖「奇抜ファッションの女王」シェールが登場し(20年以上も前のヒット・ビデオ『If I Could Turn Back Time』で着用した衣装だったそう…64歳の今もそれを着れることがスゴイです)、現代の「奇抜ファッションの女王」であるガガ(こういう時に「肉ドレス」を着てしまうあたり、さすがです)にプレゼントしました。
「まさかあのシェールに私の『肉財布』を持っててもらうよう頼むなんて思わなかったわ」と言って笑わせたあと、ガガは感激で涙をうるませながら、「もし今夜この部門を受賞出来たらニューアルバムのタイトルを発表するって決めてたの」と語り、来年発売予定のニューアルバムのタイトルが『Born This Way』であることを発表し、アルバムタイトル曲『Born This Way』の一部を歌ったのでした。(動画はこちら


女性ファンとキスするガガ
 こうしてガガは、『Bad Romance』で「ビデオ・オブ・ザ・イヤー」や最優秀女性アーティストビデオ賞、最優秀ポップビデオ賞、最優秀ダンスミュージック・ビデオ賞、最優秀振付賞、最優秀監督賞、最優秀編集賞を受賞したほか、ビヨンセと共演した『Telephone』で最優秀コラボレーション賞を獲得し、全8冠に輝きました。8冠は、1986年のa-ha(アーハ)以来、24年ぶり。残念ながら1987年にピーター・ガブリエルが作った9冠という記録には届きませんでしたが、「総なめ」と言っても過言ではない、快挙です。

 ちなみに、『Vogue Homme Japan』の付録ポスター(生肉を裸に纏った写真)が動物愛護団体から非難されたガガですが、今回の「肉ドレス」はさすがに生肉ではなく、Franc Fernandezがデザインしたレッキとしたドレスでした。いったいなぜ「肉」にこだわるのかその意図について、MTVアワードの直後にその格好で「エレン・デジェネレス・ショー」に出演したガガは、こう語りました。
「決してベジタリアンを侮辱しているわけじゃないの。みんなが知ってるとおり、私は地上で最も審判を下すことのない人間よ。でも、もし私達が自分たちの信じることに対して毅然とした態度を取らず、自分たちの権利のために闘わなくなったら、私達はそのうち肉の塊に過ぎなくなる、その程度の権利しか持てなくなると思うの」

 

ゲイ&レズビアンの兵士とともに

 レディ・ガガはこの輝かしいイベントにおいて、ゲイにとってもっと重要なアピールをして見せました。

 たくさんのカメラがセレブの到着を今か今かと待ちかまえているホワイトカーペットに、ガガは軍服に身を包んだ4人のゲイの兵士とともに登場したのです。
 それは、「Don't Ask, Don't Tell」(同性愛者の軍務を禁じる政策)の撤廃がなかなか進まない(連邦上院が審議を先延ばしにしている)状況への抗議であり、ゲイの権利を支援するためのメッセージでした。

 有名な士官学校でトップクラスであったにも関わらず、「Don't Ask, Don't Tell」と闘うために士官候補から降りたケイティ・ミラー、空軍勤務で2006年に職を追われ、先日の連邦裁判でも証言を行ったマイク・アルミー、同様に同性愛者であることを理由に職を追われた前空軍軍曹デビッド・ホール、元陸軍一等軍曹ステイシー・バスケスの4人が、女王のようないでたちのガガをエスコートし、全世界にその姿が配信されました。

 Advocate.comによると、ガガは先週のワシントンD.C.でのコンサートに先立ち、Servicemembers Legal Defense Network(軍を追われた同性愛者たちの権利擁護団体)のメンバーと出会い、MTVアワードで彼らの支援を表明することを決意したそうです。

『Times Herald-Record』紙の「Lady Gaga's gay entourageという記事には、ケイティ・ミラー(白の軍服を着た女性)へのインタビューが掲載されています。
「私は突然、レディ・ガガといっしょにパパラッチに囲まれました」
 彼女の予期せぬ冒険は、先週の火曜日にガガのコンサートに行ったときに始まりました。世界のポップスターが、他の何人かのゲイの軍人たちとともにミラーを舞台裏に招待したのです。
「ガガは私たちのことにひどく心を動かされて、MTVアワードのカーペットをいっしょに歩こうと言ってくれました」
 それだけでなく、4人は軍服を着てイベントに臨み、静かなメッセージを発していました。
「制服を着ることは大きな決断でした。政治的なイベントと思われる場では決して制服を着ることはなかったから」
 彼女は「Don't Ask, Don't Tell」政策と闘うことを決意し、この8月、ウェストポイントを辞めました。現在はイェール大学に通っています。
「私は光の道を歩いています。すぐそこまで迫っているこの政策の撤廃という使命を、私は今、与えられているのです」

 ガガはMTVアワード終了後、「エレン・デジェネレス・ショー」でも再び「Don't Ask, Don't Tell」の撤廃について熱く語ったそうです。

 昨年10月には全米プライドマーチでスピーチもしたガガですが、またしてもゲイを支援する力強いパフォーマンスを見せてくれたことに拍手を贈りたいと思います。8冠達成というものすごい記録と並び、歴史にガガの名前が刻まれた記念碑的なMTVアワードとなりました。

 

プレ・ショーにニッキ・ミナージュが登場

 レディ・ガガが賞を総なめにしたMTVアワードでしたが、もう一人、ゲイ的に要注目!なアーティストがこのアワードに登場していました。

 全米最大規模の音楽の祭典がスタートする直前、ホワイトカーペットに続々と登場するセレブたちの姿をとらえ、授賞式に向けて高まる興奮を伝える「プレ・ショー」に今大人気の女性ラッパー、ニッキー・ミナージュが登場し、ステージ・パフォーマンスで盛り上げました。ニッキーは自身のトレードマークであるバブルガム・ピンクのウィッグ(かつら)とキラキラ輝くパープル&ピンクの宇宙服のようなキャットスーツでスマッシュヒット『Your Love』を披露した後、全身黒のレザースーツで頭にピンクのヘアピースをつけたウィル・アイ・アム(ブラック・アイド・ピーズのフロントマン)がステージに登場し、いっしょに『Check It Out』をパフォーマンスしました。(動画はこちら
(ちなみに、このプレ・ショーのステージでは、ウィル・アイ・アムの顔まで黒く塗ったいでたちに注目が集まり、ニッキーの影はすっかり薄れてしまいました…)

 ニッキー・ミナージュはバイセクシュアルであることをカミングアウトしており、ちょっとドラァグクイーンっぽいハデなファッションでゲイの間でもファンを獲得しつつあります。

 彼女は現在発売中の『OUT誌の表紙も飾っています。

 MWZAの記事によると、ニッキー・ミナージュはゲイのオーディエンスとヒップホップの間の架け橋となる初のアーティストと目されています。ラップはまだまだゲイに受け入れられているわけではありませんが、彼女なら人気を得ることができるだろうと言われているんだそうです。

 

Ke$haやリンジー・ローハンも登場!


Ke$haも活躍!
 プレゼンターとしてエレン・デジェネレスや人気ドラマ『Glee』のキャストであるジェーン・リンチ(オープンリー・レズビアン)&クリス・コルファー(オープンリー・ゲイ)が登場したことはすでにお伝えしましたが、同じくプレゼンターとして、『ティック・トック』を大ヒットさせたKe$ha(バイセクシュアルであることをカミングアウトしています)も登場しました。Ke$haは残念ながら最優秀新人賞の栄誉をジャスティン・ビーバー(アメリカではレズビアン・アイコンになっているそうです)に譲ることになりましたが、それでも大いにメディアの注目を集めていました。


会場を沸かせたリンジー・ローハン(右)
 それから、授賞式のオープニングで流れた映像にリンジー・ローハン(オープンリー・バイセクシュアル)が出演したことが話題になりました。
 今年の司会者であるコメディエンヌのチェルシー・ハンドラーが、飲み物を入れたカップを片手に持って緊張した面持ちで廊下を歩いています。すると突然、リンジー・ローハンが現れ、カップをのぞき込みながら「ハロー、チェルシー。あなた、今までお酒を飲んでいたの?」と質問し、チェルシーがあせった様子で「いいえ」と答えると、リンジーが「じゃあなぜあなたの足首の装置が作動しているの?」(リンジーは先月までリハビリ施設にいて、アルコール探知機を足首に付けていました)とツッコミを入れ、チェルシーが「これは、レストランの席が空いてたって印よ」と答えると、ビンタしながら「目を覚まして! あなたはメチャクチャよ! 誰が酔っぱらいと仕事をしたいと思うの? 私から学んで!」と自虐ネタをかまし、会場から喝采を浴びました。


チェルシーのパフォーマンス。
ダンサーがゲイゲイしいです!
 ちなみにチェルシー・ハンドラーはアメリカで大人気なコメディエンヌですが、パレードに出たり、同性婚を支援したり、ゲイフレンドリーなことでも知られています。(wikipediaを見ると、LAプライドに参加している彼女の画像が掲載されていて、ちょっとスゴい、と思います)

 レディ・ガガ、ニッキー・ミナージュ、Ke$ha、リンジー・ローハン…2010年のMTVアワードはバイセクシュアル女性のパワーに圧倒された気がします。トニー賞やエミー賞が毎年ゲイだらけになるように、音楽界は当分バイセクシュアル・ウーマンのパワーが炸裂しそうですね!

 

MTVアワード放送予定

 MTVアワード授賞式の様子は、MTVジャパンで919日(日)11時から、2時間の特別番組として放送される予定です。ぜひ録画予約してご覧ください!

MTV VIDEO MUSIC AWARDS 2010
初回放送:919日(日)11:0013:00
再放送:919日(日)19:0021:00920日(月)21:0023:00926日(日)15:0017:00

MTV VIDEO MUSIC AWARDS 2010 PRE SHOW
初回放送:919日(日)10:0011:00
再放送:919日(日)18:0019:00920日(月)20:0021:00926日(日)14:0015:00

MTV VIDEO MUSIC AWARDS 2010受賞者ミュージック・ビデオ特集」
初回放送: 926日(日)18:0020:00

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