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レディ・ガガ、GLAADメディア賞で最優秀音楽アーティスト賞を獲得
6月5日、サンフランシスコで第21回GLAADメディア・アワード授賞式が開催され、レディ・ガガがアダム・ランバートを押さえて最優秀音楽アーティスト賞を獲得しました。そこで、3月のニューヨーク、4月のロサンゼルスも合わせ、今年のGLAADメディア賞を振り返る特集をお送りしたいと思います。
GLAAD(中傷と闘うゲイ&レズビアン同盟)は、1990年、まだエイズが猛威を奮っていた時代に、センセーショナルなメディアに翻弄されていたゲイたちの肯定的なイメージを向上させることを趣旨として設立された団体です。
GLAADは、メディアにおけるゲイの描かれ方(差別的表現)を監視しているほか、毎年盛大なメディア・アワードを開催し、ゲイのことをより公正に(より素敵に)表現したメディア(音楽、映画、TV、雑誌など)に賞を贈るという活動を展開してきました。
このGLAADメディア・アワードの授賞式は、ニューヨーク、ロサンゼルス、サンフランシスコの3都市の一流ホテルで開催され、多くの大手企業がスポンサーにつき、セレブも多数集います。
映画部門は特に、ゴールデングローブ賞などと並び、アカデミー賞の前哨戦の1つとして知られ、その結果が全世界にニュースで配信されるほどです。
GLAADは米国で大きな影響力を持つだけでなく、世界的にも最も有名なゲイ団体の1つなのです。
昨年の第20回記念GLAADメディア賞授賞式ではバネッサ・ウィリアムズやクリス・ノース(『SEX AND THE CITY』のMr.ビッグ)、ジェニファー・ホリデーらが出演しましたが、今年も負けないくらいスゴいセレブたちが多数出演しています。
こんな素敵なセレモニーがいつか日本でも開催されたら…と夢見ながら、2010年の第21回GLAADメディア・アワード授賞式の模様を3都市分を振り返ってお伝えしてみたいと思います。
(後藤純一)
21st Annual GLAAD Media Awards
http://www.glaad.org/mediaawards
GLAAD MEDIA AWARS in NEY YORK
3月13日、ニューヨークで第21回GLAADメディア・アワード授賞式が晴れやかに行われました。
開演を前に、会場のマリオット・マルキース・ホテルのレッドカーペットには、続々とセレブが現れました。『SEX AND THE CITY』のシンシア・ニクソンやマイケル・パトリック・キング監督、シガニー・ウィーバー、マイケル・ウーリー(『アグリーベティ』のマーク。写真右)、ダスティン・ランス・ブラック(映画『ミルク』の脚本家。写真右下)、スコット・エバンス&ブレット・クレイウェル(全米の人気昼ドラ『One Life to Live』でゲイの役を演じている俳優)、ブライアン・バット(ドラマ『マッドメン』の俳優)、ジェイ・マヌエル(『America's Next Top Model』でも活躍中のメイクアップ・アーティスト/フォトグラファー/モデル)などなど。
司会を務めたのは、舞台『キャバレー』でトニー賞などを受賞した個性派俳優、アラン・カミング。映画『X-Men2』やドラマ『Lの世界』にも出演しています。彼はバイセクシュアルであることをカミングアウトしていて、2007年にグラフィック・アーティストの男性と結婚したことでも話題になりました。
また、このステージにはトニー賞に輝いたリバイバル・ミュージカル『ヘアー』のキャストたちが登場し、躍動感あふれるパフォーマンスを披露しました(彼らはGLAADメディア賞の特別賞を受賞しています)
さて、ニューヨークでの受賞結果は?
最もLGBTの平等を推進することに貢献したオープンリーな当事者に贈られるヴィット・ルッソ賞を受賞したのが、シンシア・ニクソンでした(ヴィット・ルッソは「セルロイド・クローゼット」の著者として有名なアクティビスト。GLAAD誕生の立役者です)。彼女は昨年、ニューヨークで開かれた同性婚を求めるイベントに登場して同性のパートナーとの婚約を発表し、賞賛を浴びました。
また、『グレイズ・アナトミー』や『マッドメン』『スキンズ』『トゥルー・ブラッド』といった強豪を下して最優秀ドラマシリーズ(メジャー作品)賞に輝いたのは、『ブラザーズ&シスターズ』(ABC)でした。『ブラザーズ&シスターズ』は、ロサンゼルスに暮らすウォーカー家の兄弟姉妹を描いた作品で、ゲイの次男坊ケビン(マシュー・ライズ)とスコッティ(ルーク・マクファーレン)のパートナーシップが重要な要素となっています。2人はくっついたり離れたりを繰り返すのが、とうとう結婚式(正確には宣誓式)を行い、幸せになるというストーリーが感動を呼びました。(ちなみにルーク・マクファーレンは実生活でもゲイだそうです)
それから、TV映画部門では、シガニー・ウィーバーとライアン・ケリーが出演した『Prayers for Bobby』(Lifetime)が選ばれました。1970年代のゲイの息子をどうしても受け入れることのできない母親を描いた作品です。
ベスト・トークショー・エピソード部門には、エレン・デジェネレスとポーシャ・デ・ロッシが出演した「オプラ・ウィンフリー・ショー」が選ばれました。
映画(単館上映)部門には、スペイン映画の『Little Ashes』が選ばれました。これはサルバドール・ダリの若い頃の伝記映画で、親友ガルシア・ロルカとの愛のような友情のような絆を描いています。主演は『トワイライト』シリーズのロバート・パティンソンです。
最優秀演劇ニューヨーク・ブロードウェイ&オフ・ブロードウェイ部門には、『Boy and His Soul』でゲイの役を演じた俳優コールマン・ドミンゴが選ばれました。
ジャーナリズム部門は、『ニューヨーク・タイムズ』紙が最優秀新聞記事賞、最優秀新聞コラムニスト、最優秀新聞賞、最優秀雑誌記事賞の4つのカテゴリーを総なめにしました。
今回の授賞式でもひときわ観客に感動を与えたのが、TVジャーナリズム部門に輝いた11歳の少年、ウィル・フィリップスくん(写真右)。彼は昨年11月、CNNの『American Morning』に出演し、ゲイやレズビアンの平等が完全に達成されるまで「忠誠の誓い」(※アメリカの公立小中学校や幼稚園では毎朝、生徒が星条旗に向かって右手を左胸にあて「私はアメリカ合衆国の国旗と、その国旗が象徴する共和国、神のもとに統一され全ての人々に自由と正義が約束された不可分の国に忠誠を誓います」と唱えます)をしない、と訴えたのです。並外れて堂々とした小学5年生の主張は、全米の視聴者を驚かせました。両親とともに登壇したフィリップくんはこうスピーチしました。「僕の声はとても小さい。けど、遠くまで届く。そしてこの声が善いことにつながるようにと願います。僕は(オバマ大統領はじめ)権威ある公職の人々がもっと物事を前に進めることができると思います」
GLAAD MEDIA AWARS in LOS ANGELS
4月17日には、ロサンゼルスで授賞式が開催されました。
ハイアット・リージェンシー・センチュリー・プラザのレッドカーペットには、ジョニー・ウィアー、ソニー&シェールの娘でFTMカミングアウトを果たしたチャズ・ボノ、2008年に同性結婚式を挙げたジョージ・タケイとブラッド・アルトマン、カリフォルニア州のオープンリー・ゲイの下院議長ジョン・ペレズ、ゲイであることをカミングアウトしているロブ・ハルフォード(ジュダス・プリースト)、映画『バレンタインデー』で素晴らしくセクシーなゲイ役を演じたエリック・デインなどが登場しました。
この授賞式のハイライトは、ロサンゼルスを本拠地として活躍してきたオープンリー・ゲイのポップ・スター、アダム・ランバートのライブでした。メジャーデビューを前に『Rolling Stone』誌の表紙を飾り、ゲイであることをカミングアウトするという前代未聞の快挙を成し遂げ、アメリカの「紅白」的な国民的番組「アメリカン・ミュージック・アワード」でのセクシーすぎるパフォーマンスが物議を醸し、いろんな意味で注目を集めた破格の大型新人は、アルバム『Foy Your Entertainment』から「Music Again」と「Fever」の2曲をパフォーマンスし、会場を熱狂させました。アダムは最優秀音楽アーティスト賞にもノミネートされています。
この授賞式でホスト(司会進行)を務めたのは、オープンリー・ゲイのヒスパニック系の俳優ウィルソン・クルズ(『パーティ★モンスター』『そんな彼なら捨てちゃえば?』等に出演)でした。(写真右)
長編映画(拡大公開)部門で最優秀映画賞に輝いたのは、トム・フォード監督、コリン・ファース主演の『シングルマン』。この作品で華々しく監督デビューを飾ったトム・フォードは、アイスランドの火山噴火の影響でロンドンに足止めをくらい、残念ながら出席できませんでした。
テレビ部門で最優秀コメディドラマ賞を受賞したのは人気学園ドラマ『Glee』。人気キャストがそろって舞台に登場し、製作総指揮をつとめるライアン・マーフィー(オープンリー・ゲイ)は、ゲイのカート役を演じているクリス・コルファー(彼もカミングアウトしました)と鬼コーチのスー役を演じているジェーン・リンチ(オープンリー・レズビアンで、この授賞式の後に同性婚しました)を讃えるとともに、「このドラマの中ではゲイのカートの葛藤が描かれている。彼をどう描写するかに自分たちは大きな責任を担っている。カートを絶対に周囲の目や行動による被害者にはさせない」とスピーチしました。
また、この授賞式では、2月に発表されていた通り、ゲイやレズビアンの平等の獲得に大きな影響をもたらした人に贈られるスティーブン・F・コルザック賞が女優のワンダ・サイクスに、ゲイやレズビアンの苦境に対する認知度に貢献した人に贈られるヴァンガード賞がドリュー・バリモアに授与されました。ドリュー・バリモアは同性婚の自由を訴える集会に参加したり、とてもゲイフレンドリーであることで知られていましたが、バイセクシュアルであることもオープンにしています。
そのほか、最優秀リアリティ番組賞を「RuPaul's Drag Race」のルポールが受賞しました(なんと、素顔で授賞式のステージに登場!)
GLAAD MEDIA AWARS in SAN FRANCISCO
6月4日にはサンフランシスコでツアーをしめくくる授賞式が開催されました。
注目の最優秀音楽アーティスト賞には、アダム・ランバートのほか、オープンリー・レズビアンでカリスマ的な人気を誇るベス・ディットー率いるバンド、ゴシップもノミネートされていました。が、そんな錚々たる候補者を押さえ、見事、最優秀音楽アーティスト賞に選ばれたのは、レディ・ガガでした。
レディ・ガガがバイセクシュアルであることをオープンにし、MTVのビデオミュージックアワードの受賞スピーチで「この賞を神とゲイに捧げます」とコメントするなど、ことあるごとにゲイへのアピールを行ってきたこと、『Telephone』のPVで女性とキスしたりビヨンセと恋人関係を演じたりしてレズビアンを表現したことなどもありますが、昨年のワシントンD.C.での全米プライドマーチに参加してライブを披露したり、LGBTの権利を訴えるなど、活動家からも高い評価を得ていたことが決め手になったのでは?と思います。いわば、ゲイにとっての最高のキャンペーン・ガールであり、心強い味方だったのです。
残念ながら、ツアー中であるレディ・ガガが会場に来て受賞の喜びを語ることはできませんでしたが、ほかにも様々な賞が発表され、セレブが登場しました。
GLAADメディア・アワードの最高賞にあたるデヴィッドソン/ヴァレンティーニ賞は映画『プレシャス』のリー・ダニエルズ監督に贈られました。彼は受賞スピーチでこう語りました。「僕が生まれたのは、ゲイだからという理由で毎日殴られるような世界だったんだ」「いじめられ、何度も死ぬことを考えたよ」
また、LGBTが平等に扱われる権利のために貢献した人物に贈られるゴールデンゲイト賞が、『Lの世界』で熟年カミングアウトするフィリス・クロール役を演じた女優シビル・シェパードに授与されました。実の娘クレメンタイン・フォードがカミングアウトしたこともあって母娘で『Lの世界』に出演し、昨年、ゲイの人権擁護団体Human Rights Campaign(HRC) が贈る「National Ally for Equality Award」にも輝いていました。
サンフランシスコ・ローカル・ヒーロー賞に輝いたのは、リーバイスの社長、ロバート・ハンソンでした。リーバイスはLGBTの平等に関するサポートという点で大きな貢献を果たしたということです。
パフォーマンスを披露してステージに華を添えたのは、最近カミングアウトしたことで話題になったカントリー・シンガーのシェリル・ライト、そして、オープンリー・ゲイのポップ・スター、サム・スパローでした。
また、ウェスティン・ホテルのレッド・カーペットには、あの『ヘアスプレー』の主役、ニッキ・ブロンスキーや、上記のクレメンタイン・フォードなども登場し、会場を虹色に彩っていました。
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