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特集:2019年上半期のミュージカル・演劇

2016年に「今年はミュージカルの当たり年」として特集をお届けしましたが、2019年(平成最後)の今、再び「当たり年」がやってきました。ゲイが主役の作品をいろいろご紹介します。

特集:2019年上半期のミュージカル・演劇

2019年の演劇界の話題といえば、渡辺謙さんの『王様と私』(2015年トニー賞で4冠に輝いた名舞台の凱旋公演)、米倉涼子さんの『シカゴ』(日本人女優として史上初となる3度目のブロードウェイ主演、8月の来日公演にも出演)、そして新橋演舞場で12月に上演される新作歌舞伎『風の谷のナウシカ』あたりかな?と思いますが、それだけでなく、ゲイが主役だったりドラァグクイーンをフィーチャーしたりというミュージカル・演劇もいろいろ上演されます(2016年の再演が多かったりします)。ぜひ気になる作品を観に行ってみてください。日付順にご紹介いたします。(後藤純一)

 


3月9日(土)〜30日(土) 東京
ミュージカル「プリシラ」


 ゲイ史上に燦然と輝くドラァグクィーン映画『プリシラ』(日本公開は1995年)。とにかく衣装と音楽が最高に素晴らしく(オーストラリア映画であるにもかかわらずアカデミー衣装賞を受賞)、バスの上に巨大なハイヒール型のオブジェを乗せて大きなシルバーラメの布をはためかせ、オペラのアリアに合わせてリップシンクするシーンや、宝塚みたいな衣装でヒールを履いてエアーズロックに登るラストシーン、エリマキトカゲの衣装やゴムサンダルをたくさんつけた衣装など、思わず「素敵!」と言いたくなるシーンのオンパレードで、これぞゲイテイスト!これぞドラァグクィーン!と世界中が賞賛しました。脚本(ストーリー)も本当によくできていて、ケンカしたり、ノンケに暴行を受けたりというシリアスな場面もありつつ、(まるで『SEX AND THE CITY』のように)クイーンたちの友情で困難を乗り越えていくところも感動を呼びました。
 そんな『プリシラ』が2016年末、日本でもミュージカル化されました。エスムラルダさんが脚本の翻訳を担当し、オナンさんが出演したのですが、演出の宮本亜門さんや制作サイドもきっと理解ある方ばかりだったのでしょうが、変なステレオタイプが感じられない、予想以上にちゃんとドラァグしたステージになっていて、素晴らしかったです(レビューはこちら
 2016年の初演が大好評を博したこともあって、『プリシラ』が今年、再演されることになりました。宮本亜門さんは「再演があるとは思わなかった」「初演では予想以上にお客様からドカンドカンと反応をいただけて、会場は異様な雰囲気でした!(笑)」「この2年で社会の意識が大きく変化した。皆さんの見る目も変わったと思いますし、作品が深いものになりました。時代の大きな変わり目に上演できてよかった」と語っています。カーテンコールでの写真撮影が可能なほか、一部上演回では出演者と一緒に歌って踊れるイベントや抽選会などが行われる「プリシラナイト」も実施されるそうです(詳細は公式サイトでご確認ください)

<あらすじ>
舞台はオーストラリア。仕事も私生活もうまくいかないドラァグクイーンのティックに、別居中の妻・マリオンから電話がかかってきた。最近、息子のベンジーがティックのことを知りたがっているのだという。ティックはベンジーと会ったことがない。ドラァグクイーンである自分には父親の資格がないではないかと悩んでいた。マリオンはそんなティックに対し、自らが支配人を務めるカジノでショーをやってほしいと依頼。そこでベンジーにも会ってほしいと伝える。内心迷いながらもティックは、誇り高いトランス女性・バーナデッドと、若くてエネルギッシュなドラァグクイーン・アダムの2人に声をかけ、共にカジノへと向かうことに決め、「プリシラ号」と名付けたバスに乗って、3000キロの旅を始める。向かう先に別れた妻子が待っていることを秘密にしたまま……

ミュージカル「プリシラ」
2019年3月9日(土)~30日(土)
東京 日生劇場
演出:宮本亜門
翻訳:エスムラルダ
訳詞:及川眠子
出演
ティック(ミッチ):山崎育三郎
アダム(フェリシア):ユナク / 古屋敬多(Lead)※Wキャスト
バーナデット:陣内孝則
DIVA:ジェニファー
DIVA:エリアンナ
DIVA:ダンドイ舞莉花
ミス・アンダースタンディング:大村俊介(SHUN) / オナン・スペルマーメイド ※Wキャスト
ボブ:石坂勇
マリオン:三森千愛
シンシア:キンタロー。 / 池田有希子 ※Wキャスト
シャーリー:谷口ゆうな
ほか


 


3月9日(土)~ 東京、大阪、金沢、愛知、神奈川
ミュージカル『ソーホー・シンダーズ』


 『ソーホー・シンダーズ』は、ミュージカル『メリー・ポピンズ』の音楽などを手がけてきた作曲家ジョージ・スタイルズと作詞家アンソニー・ドリュー、スタイル&ドリューとして海外では有名なコンビによって生み出された作品で、2012年にウェストエンド(ロンドンのブロードウェイ)で初演されました。原作でシンデレラに該当する主人公のロビーがレントボーイ(男娼)をしているゲイの男の子であるというところが斬新で、いつまでも幸せに暮らしましたというおとぎ話ではない、「クラシックなシンデレラとは大きくかけ離れた」物語になっています(スタイル&ドリューの公式サイトより)
 その『ソーホー・シンダーズ』が、日本版として初演されます。翻訳・訳詞は、『ビリー・エリオット』『メリー・ポピンズ』など数多くのミュージカルの訳詞を手がけてきた高橋亜子さん。演出は、劇団エムキチビートを主宰する元吉庸泰さん。出演は、ジャニーズJr.の林翔太さん、松岡充さん、大澄賢也さん、マルシアさんなど。こちらのニュースもご覧ください。

<あらすじ>
ロンドンのソーホーで洗濯屋を経営するロビーは、店のオーナーである義理の姉妹にしばしばいじめられ、家賃を上げられて追い出されてしまう。お金に困ったロビーは、経済界の大物・ベリンガム卿からお金の援助と求愛を受けるが、実はロビーには密かに本命の恋人がいた。お相手はロンドン市長選立候補者、ジェイムズ・プリンスである。ある日、ベリンガム卿は市長選のための資金集めパーティを企画する。ロビーは詳しい内容を知らないまま、高価な衣装やお金を贈られ、パーティに行くことになったが、友人たちの力を借りて夜中の12時に会場を抜け出す作戦を立てる。そして、気乗りしないまま向かったパーティ会場で、ロビーは、ベリンガム卿を前にして、ジェイムズと鉢合わせてしまう! 二人の仲がばれ、大スキャンダルとなり……

ミュージカル『ソーホー・シンダーズ』
Stiles & Drewe’s SOHO CINDERS
Music by George Stiles
Lyrics by Anthony Drewe
Book by Anthony Drewe and Elliot Davis
翻訳・訳詞:高橋亜子
演出:元吉庸泰
出演
ロビー:林翔太(ジャニーズJr.)
ジェイムズ・プリンス:松岡充
ジェイムズの選挙本部長:東山光明
ジェイムズのフィアンセ:谷口あかり
ロビーの義理の姉妹:菜々香
ロビーの義理の姉妹:青野紗穂
自転車リキシャ店主:マルシア
ベリンガム卿:大澄賢也
東京公演:2019年3月9日(土)~21日(木祝)
大阪公演:2019年3月23日(土)・24日(日)
金沢公演:2019年3月26日(火)・27日(水)
愛知公演:2019年3月28日(木)
神奈川公演:2019年3月31日(日)



 

4月2日(火)〜21日(日) 東京
舞台『毛皮のマリー』


 みなさんは、美輪様を間近でご覧になったことはあるでしょうか。私はあります。20年くらい前、PARCO劇場で『毛皮のマリー』を観たときです。たまたま通路に面した席に座っていて、美輪様が舞台から降りて来られて、私のすぐ横を通りました…その神々しいオーラと、御年からは想像できないような肌の美しさに圧倒され、畏怖の念すら覚えました。日本のゲイ史において「神」の高みに君臨する美輪様…その舞台は、美輪様のご尊顔を拝するまたとない機会です。ぜひ一度、ご覧になってみてください。
 『毛皮のマリー』は1967年、寺山修司が美輪様(当時は丸山明宏)のために「あて書き」した舞台作品。海外公演も行われ、伝説の名作として名高い作品です。寺山が亡くなった後も、美輪様が自ら演出・美術を担当し、再演を重ねています。妖しくも哀しい物語が、頽廃美あふれるゴージャスにして魅惑的な世界として描かれます。CMやTV番組での美輪様からは想像できないような、「娼婦」として、「母」としての鬼気迫る演技は、美輪様の真骨頂です。
「さあ、さあ、お立会い!
 鬼が出るか、蛇が出るか・・・何が出るかは、
 はいっ、見てのお楽しみ!」(公式サイトより)

<あらすじ>
花咲ける四十歳の男娼・毛皮のマリーが暮らす部屋。下男にかしずかれ湯浴みをするマリーのもとに、“一人息子”の美少年・欣也がやってくる。マリーは彼を決して外に出さずに育てていたが、ある日、美少女・紋白が部屋に闖入し、欣也に外の世界を教えて一緒に行こうと誘惑する。一方、マリーは連れ込んだ水夫との寝物語に、欣也の出生にまつわる恐ろしい秘密を話しだす……

毛皮のマリー
2019年4月2日(火)〜21日(日)
新国立劇場 中劇場
作:寺山修司
演出・美術:美輪明宏
出演
毛皮のマリー:美輪明宏
欣也:藤堂日向
下男・醜女のマリー:麿 赤兒 
紋白:深沢敦
名もない水夫:三宅克幸
鶏姦詩人:大野俊亮  
下男2:プリティ太田
ほか



 

4月16日(火)〜5月12日(日) 東京
ミュージカル『キンキーブーツ』


 2016年のブロードウェイ来日版の『キンキーブーツ』は、今までいろんなミュージカルを(たぶん100本近く)観てきて、感動したり、スタンディングオベーションしてきた中でも最高級に素晴らしい作品の一つだと感じました。感動のポイントはこちらのレビューで書かせていただいてますが、「俺には『男らしさ』がある、女はそんな男についてくるんだ」と言い放ち、ホモフォビアをあからさまにする(イヤなノンケ像を凝縮したような)男が、少しずつ変わっていくところ、そして、社長のチャーリーとドラァグクイーンのローラの友情です。キャストに美女やイケメンがほとんどおらず、ほぼドラァグクィーンと太めの男女のみ、という潔さにも感銘を受けました(日本版は工場労働者たちが美女やイケメンに置き換えられています)
 今回は、2016年に上演された日本版の再演です。ブロードウェイ版に比べると、そこまでの感動は得られないかもしれません。それでも、『キンキーブーツ』という作品自体の素晴らしさは、きっと伝わるはずです。未見の方はぜひ!

<ストーリー>
イギリスの田舎町ノーサンプトンの老舗靴工場「プライス&サン」の4代目として生まれたチャーリー・プライス。父親の意向に反してフィアンセと共にロンドンで生活する道を選んだ矢先、父親が急死し、工場を継ぐことになってしまう。工場を継いだチャーリーは、父の工場が実は経営難に陥って倒産寸前であることを知り、幼い頃から知っている従業員たちを解雇しなければならず、思い悩む…。工場の若手従業員のローレンに「倒産を待つだけでなく、新しくニッチな市場を開発するべきだ」とハッパをかけられたチャーリーは、ロンドンで偶然出会ったドラァグクイーンのローラとの会話にヒントを得て、ドラァグクイーンのための“キンキーブーツ”を作ることにする。チャーリーはローラを説得して靴工場の専属デザイナーに迎え、試作を重ねる。ドンをはじめとする保守的な田舎の靴工場の従業員たちは、なかなかローラを受け入れられず、軋轢が生まれる。チャーリーはファッションの街・ミラノで行われる靴の見本市に“キンキーブーツ”を出展し、工場の命運を賭ける決心をするが…。
 
ミュージカル『キンキーブーツ』
2019年4月16日(火)〜5月12日(日)
東急シアターオーブ(渋谷ヒカリエ)
脚本:ハーヴェイ・ファイアスタイン
音楽・作詞:シンディ・ローパー
演出・振付:ジェリー・ミッチェル
日本版演出協力/上演台本:岸谷五朗
訳詞:森 雪之丞
出演:
チャーリー・プライス:小池徹平
ローラ:三浦春馬
ローレン:ソニン
ニコラ:玉置成実
ドン:勝矢
ジョージ:ひのあらた
ほか

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