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特集:2021年夏のアート展

海やプールやクラブやカラオケはまだ控えたい…でもちょっとどこかにお出かけしたい…という方のために、密を避けて静かに楽しめる、7月〜9月開催のクィアなアート展の情報をご紹介いたします。

特集:2021年夏のアート展

(「MALE ART 2021 男のフェチズム展⁠」より)

ようやく梅雨入りしましたね。今年の夏は始まりがちょっと遅めかもしれません。本当だったら海やプールやクラブやカラオケなんかも楽しめたら最高ですが、まだちょっと控えたい…でもちょっとどこかにお出かけしたい…という方も多いはず。映画やお芝居もよいと思いますが、ここでは密を避けて静かに楽しめる、7月〜9月開催のクィアなアート展をご紹介いたします。(新たな情報が入り次第、順次追加していきます)
(最終更新日 2021.9.23)



〜7月2日
snails×moriuo - 2021 Pride Month Special Exhibition @WeWork Iceberg

 GWに個展を開催し、評判を呼んだmoriuoさん。その個展の際、イラストだけでなくTシャツなども展示されていましたが、そのTシャツでコラボしていたsnails と共同で、原宿・明治通り沿いにあるシェアオフィス「WeWork アイスバーグ」のプライド月間の企画として展示が行なわれます。1階の広いロビースペースに、GWの個展の際の新作や以前の作品も含め、20点ほどが展示されるそうです。感染防止策として、人数制限を設けたうえでの予約制となりますが、前回行けなかった方など、ぜひ足をお運びください。

snails×moriuo - 2021 Pride Month Special Exhibition @WeWork Iceberg
会期:2021年6月21日(月)〜7月2日(金) 10:00-17:00
会場:WeWork アイスバーグ(渋谷区神宮前6-12-18、明治神宮前駅から徒歩3分)
お申込み:こちらから







〜7月10日 東京
松山智一「Boom Bye Bye Pain」

 伝統的な大和絵の構図や花鳥風月を引用しつつもポップアート的な色面構成のパターンを組み合わせる作風で注目を集め、NYの有名な(キース・ヘリングやバンクシーも描いた)バワリー・ミューラルの壁画を手がけたり、JR新宿駅東口駅前に大型パブリック・アートを製作するなど国内外で活躍している松山智一さんの個展が開催されています。
 この展覧会のタイトル「Boom Bye Bye Pain」は、1992年にリリースされヒットしたBuju Bantanのポップレゲエソング「Boom ByeBye」と「Pain」という2曲のタイトルを松山さんが融合したもの。銃撃音を表す「Boom」と、そこから連想される「Bye Bye」を掛け合わせたブラックミュージック特有のスラングは、アフリカ系アメリカ人たちがゲイに発した差別的なメッセージという意味も孕んでおり、発表当時は物議を醸しました。巨大都市に生きるマイノリティが自己肯定のために別のマイノリティを否定するという構造は、松山さん自身が人種差別を受けながらアメリカ社会でアーティストとして活動する中でも逃れることのできないものでした。
 本展を代表する作品『Spiracles No Surprises』は、カラフルな色彩や装飾とともに馬に乗る2人の人物を描いていて、1人が旗を持ち、もう1人が行く先を示すというもので、ゲイの男の子たちの未来や希望を描いた作品として観ることができます(『River To The Bank』という作品も、2人の男の子が描かれています。こちらからご覧いただけます)
 松山さん自身はゲイではありませんが、間違いなくゲイに対するエールが込められていますし、きっとその作風に魅了されることと思います。

松山智一「Boom Bye Bye Pain」
会期:5月22日-7月10日
会場:KOTARO NUKAGA(東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル2F)
アクセス:東京メトロ日比谷線、都営地下鉄大江戸線「六本木駅」3番出口より徒歩約3分
開廊時間:11:00−18:00 (火-土)
定休:日月祝
※国や自治体の要請等により、日程や内容が変更になる可能性があります
※感染症拡大防止のため、会場の混雑状況により入場を制限させていただく場合がございます。ご理解・ご協力のほど、何卒よろしくお願いいたします





6月29日〜9月23日 大阪
鷹野隆大 毎日写真1999-2021

 鷹野隆大さんは、「女か男か、ホモセクシュアルかヘテロセクシュアルか、といった人間の性にまつわる二項対立のはざまにある、曖昧なものの可視化を試みた」写真集『IN MY ROOM』(蒼穹舍、2005年刊行)によって木村伊兵衛写真賞を受賞した方で、ジェンダーやセクシュアリティをテーマとする写真家として認知されています。
 2005年頃、『バディ』などのゲイメディアも個展の様子を紹介していましたが、様々な男性(なかには女性にしか見えないような方も)のジェンダーやセクシュアリティを大胆なヌード写真で表現した(局部は見えないよう、真ん中を切り取って上半身と下半身の写真が組み合わされるかたちでしたが、それでも当時としては男性が撮った男性のヌード写真としてたいへんなインパクトがあった)作品を憶えている方もいらっしゃるはず。
 2014年には、愛知県美術館で開催された「これからの写真展」に出品した作品が"わいせつ物"に当たるとして警察が撤去を指示したのに対して、撤去に応じず、作品の一部をシーツで覆うなどの対処をしたことでも話題になりました。ある意味、最先端で闘い、道を切り開いてきた、リスペクトすべきアーティストです。
 そんな鷹野さんの美術館における初の大規模な個展が、大阪・中之島の国立国際美術館というたいへん立派な美術館で開催されます(同館の今年最初の展覧会は、ゴッホの『ひまわり』を含むロンドン・ナショナル・ギャラリー展でした)。鷹野さんは「1998年から毎日欠かさず写真を撮ることを自分に課し、様々な実験的撮影を試み、制度化された眼差しや、写真という媒体の特性とその限界について、考察を重ねてきました」。「毎日写真」と名付けられたこのプロジェクトが、今回の個展の主軸です。しかし、上述したジェンダー・セクシュアリティ系の作品も含め(ヌードは無いかもしれません…)、日本特有の無秩序な街並みの写真「カスババ」、定点観測的な「東京タワー」、東日本大震災が契機となり近年注力する影の作品など、約130点が時系列で展示されるそうです。「世代屈指の写真家・鷹野隆大の思索の変遷を顧みて、その実像に迫ります」とのことです。
こちらの記事も読んでみてください)

鷹野隆大 毎日写真1999-2021
会期:2021年6月29日(火)– 9月23日(木祝)
会場:国立国際美術館
開館時間:10:00-17:00(金土は20:00まで)
休館:月曜(ただし、8月9日(月休)、9月20日(月祝)は開館し、8月10日(火)は休館)






7月16日~21日 東京
MALE ART 2021 男のフェチズム展⁠

 男性をモチーフに絵を描くメンバー4名のグループ展です。日本画、油彩、水彩、アーティストそれぞれがそれぞれの方法で表現する男のフェチズム。ぜひ個性的な絵から、フェチズムを感じ取ってください。ホットなガイがあなたの心を温めます。

MALE ART 2021 男のフェチズム展⁠
会期:2021年7月16日(金)~21日(水)
会場:新宿眼科画廊スペースM
開廊時間:12:00-20:00(水曜日は17:00まで)
※木曜日休廊
出展作家:成瀬ノンノウ、Shinji Horimura、FUM、TORAJIRO

 

 


7月16日〜25日 東京
グループ展「colors in sight」

 こちらの特集でもご紹介した山乃モトキさんが企画・運営をつとめるグループ展です(今回、山乃さん自身は出展しないそうです)
「そもそもの出発点はクィアアートの定義とは何だろう、という小さな疑問からでした。LGBTQ当事者が作ればいいのか、当事者に好まれそうなものを作ればいいのか、どんな表現でどんなメッセージを込めればいいか、いまいちあやふやに感じたのです。私たちが属する社会は時代とともに変わっていきます。そんな中、LGBTQを取り巻く問題も広義の意味での差別問題から法律、婚姻、老後、人権…と詳細化されてきています。社会の在り様が変わる中で、もしかしたクィアートの訴えるべきものもアップデートしていかなければならないのかもしれないと考えました。
 レインボーフラッグのように色を使った表現の多いLGBTQから着想を得て、私たちがこれから見ていく世界の色はどんなものだろうか、どんなことに気づいて(insight)いけるだろうかという気持ちを展示タイトルに込めました。出展する3人のアーティストはセクシャリティも様々です(ゲイ、トランスジェンダー、ストレート)。それぞれの目線でそれぞれの色を探しながら作品を制作しました。来場いただいた方にも作品を通して今のジェンダー課題について考える機会になればと願っています」 
 
グループ展「colors in sight」
会期:2021年7月16日(金)〜7月18日(日)13:00-20:00
   7月22日(木)〜7月24日(土)13:00-20:00
   7月25日(日)13:00-17:00
会場:gallery201(品川区北品川6-2-10島津山ペアシティ201号室、JR五反田駅より徒歩約10分)
入場無料
出展作家:Nelson hor(日本画)、KIO YAMAGUCHI(テキスタイル)、Shota Abe(イラストレーション)





7月26日〜8月6日 東京
OUT IN JAPAN 写真展 in 杉並

 南阿佐ヶ谷の杉並区役所の中の区民ギャラリーで「OUT IN JAPAN 写真展 in 杉並」が開催中です。これまでレスリー・キーさんが「OUT IN JAPAN」プロジェクトで撮影してきたLGBTQのポートレートの中から展示を行なうものです。撮影風景の動画も放映されるそうです(ポートレートの撮影はございません)。お近くにお越しの際は、ぜひお立ち寄りください。

『OUT IN JAPAN 写真展 in 杉並』
あなたの輝く姿が、つぎの誰かの勇気となる。
〜 レスリー・キーさん撮影のポートレート展 〜
会期:2021年7月26日(月)〜8月6日(金)
開場時間:9:00-17:00(8月6日は13:00まで)
会場:杉並区役所区民ギャラリー(丸ノ内線南阿佐ヶ谷駅より徒歩0分)
主催:プライドグループ 、レインボーすぎなみの会
共催:特定非営利活動法人グッド・エイジング・エールズ
※ 新型コロナウィルス感染防止対策のもと展示しておりますが、開催前/期間中の感染状況により展示が困難となった場合、やむなく中止となる場合がございます。

 


9月18日〜10月17日 京都
KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2021

 日本を代表する国際写真祭「KYOTOGRAPHIE」。「ECHO」をテーマに、京都文化博物館や京都BAL、建仁寺山内両足院、琵琶湖疏水記念館など、10を超える会場で展示が行われます。そのなかにはいくつかLGBTQに関連した展示もあります。
 河原町のフライングタイガーの3階スペースでは、西アフリカのシエラレオネ出身の写真家、ンガディ・スマートの展示「多様な世界」が行われていますが、ドラァグクイーンや異性装をテーマにした作品が展示されているそうです。「アビッサの顔」「バビのクイーンたち」「Metamorphosis(メタモルフォシス=変身)」「まず、私」の4つの展示で構成されていますが、「アビッサの顔」では、コートジボワールで「寛容と再生」をテーマに開催される同名のお祭りに出演している女装した男性や男装した女性の姿を写しだした作品が、「バビのクイーンたち」ではコートジボワールのドラァグクイーン文化を被写体とした作品が展示されていて、いまだにLGBTQ+への風当たりが強いことについても問いを発しているそうです。(美術手帖「KYOTOGRAPHIE 2021が開幕。響き合う写真表現を京都の街で」より)
 それから、三条高倉の旧日本銀行京都支店の建物である京都文化博物館別館では、オランダのゲイのフォトグラファー、アーウィン・オラフによる「アヌス ミラビリス─驚異の年」が開催されています。今回は気候変動により住む場所を追われた人などを中心に撮影されたポートレート作品からなる「Im Wald(森の中)」シリーズや、パンデミックによる自主隔離の様子をとらえた写真と映像作品「エイプリルフール」が展示されます。そういう意味では、作品のテーマがLGBTQというわけではないのですが、ポートレートのなかには男の子や、オラフ自身の姿も見られます。(展示作品がTRILL「「KYOTOGRAPHIE 2021」、写真家アーウィン・オラフの展示空間は遠藤克彦建築研究所がデザイン」でご覧いただけます)

KYOTOGRAPHIE
会期:9月18日〜10月17日

ンガディ・スマート「多様な世界」
会場:フライングタイガー コペンハーゲン 京都河原町ストアー3F
開場時間:11:00–20:00 ※入場は閉館の30分前まで
無休
料金:一般¥1,000、学生¥600(要学生証提示)

アーウィン・ オラフ「アヌス ミラビリス─驚異の年」
会場:京都文化博物館 別館
開場時間:10:00–19:00  ※入場は閉館の30分前まで
休み:9/21、9/27、10/4、10/11
料金:一般¥1,200、学生¥900(要学生証提示)





9月23日〜26日  東京
TORAJIRO個展「One Of Those Days」

 7月の「MALE ART 2021 男のフェチズム展⁠」にも出展していたTORAJIROさんの個展が品川区中延の展示スペースで開催されます。男の子の魅力を独特の透明感のある優しいタッチで描き、たぶんファンも多いのでは?と思われる作風です。2年くらい前の油絵から新作までを含めた20点前後の作品が展示される予定だそうです。連休中、足を運んでみてはいかがでしょうか?

TORAJIRO個展「One Of Those Days」
会期:2021年9月23日(木祝)〜9月26日(日)
開場時間:13:00-19:00(最終日16:00まで)
※展示スペースはTORAJIROさんが開けて閉めるので、会場中はずっと在廊します。かなり自由なので、この時間まで開けてほしいとか、もう少し早く開けてほしいとかあれば、無理ない範囲で時間のご相談可能だそうです。TwitterまたはInstagramのDMからあらかじめご連絡をお願いします。
会場:インストールの途中だビル インストジオ401号室(東京都品川区戸越6-23-21 浅草線中延駅より徒歩1分)





9月27日~10月2日 
稀人展VOL.2

 伝統的な日本画のタッチでセクシーな日本男児を描いてきた奥津直道さんが、『稀人展(まれびとてん)VOL.2』というグループ展に出品します。まだ詳細はわからないのですが、フライヤーを見る限り、他の作家さんたちも男性の姿を描いた作品を出品するようで、MALEアートがテーマなのかな?と思われます。会場は銀座1丁目の「柴田悦子画廊」というギャラリーです。銀座をブラブラしながらのMALEアート鑑賞、素敵な休日を過ごせそうですね。
 
稀人展(まれびとてん)VOL.2
会期:2021年9月27日(月)~10月2日(土)
会場:柴田悦子画廊(東京都中央区銀座1-5-1第3太陽ビル2F)
開廊時間:12:00-19:00(最終日は17:00まで)
会期中無休
出品作家:奥津直道、勝連義也、木村浩之、佐々木英俊

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