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レポート:青森レインボーパレード2021
12月11日に開催された青森レインボーパレード2021を、VENさんがレポートしてくれました。9月末、パレードを立ち上げた宇佐美翔子さんが亡くなったこともあり、彼女を偲ぶ方たちが県外からも駆けつけ、また、出発直前に虹が出るという奇跡が起こり、涙、涙のパレードとなりました。
2014年に青森市で、公にはたぶん初めて市役所に婚姻届を提出して歴史に名を刻み、パレードも始めた宇佐美翔子さんと岡田実穂(おかっち)さん。最初はたった3人でしたが、青森レインボーパレードはその後、24人、45人と参加者が増え、2017年には100人を超え、2018年には173人、2019年には200人を超えるまでになりました(昨年はオンライン開催でした)。翔子さんやおかっちさん、青森のコミュニティのみなさんは、東京レインボープライドにもブースを出展し、「故郷を帰れる街にしたい」というメッセージを掲げて歩き、多くの地方出身者の共感を得ました。
2018年の青森のパレードのときに、翔子さんが、がんを患っていることを公表しました。翌年の同性婚を求める院内集会では、「これは、命の問題です。早く同性婚を決めてください。私の命が尽きる前に」と訴え、涙を誘いました(私も泣きました)
数年間の闘病生活の末、翔子さんは今年の9月末、亡くなりました。10月開催予定だった青森レインボーパレードは延期を余儀なくされましたが、なんとか今年中に開催したいという思いで、(寒い時期ではありますが)12月11日に開催されることになったのでした。
諸事情で編集部の後藤が直接お伺いすることはできなかったのですが(せめて…と思い、青森レインボープライドにメッセージを送りました)、たびたび全国のパレードをレポートしてくれているVENさんに、取材を託しました。レポートをお届けします。
(文・写真:VEN)
12月11日、土曜日、青森レインボーパレードが開催されました。天気予報を見て安心していたのですが、パレード集会開催前から雨がパラパラ、時折少し強めの雨が降りました。参加者にふるまわれた筋子のおにぎりと煎餅汁をいただきながら、雨宿りしていました。
「今、雨が降っていると言うことは、後で晴れたら虹が出るかもしれません」
そんなことを共同代表の岡田実穂さんがマイクで話して、雰囲気を明るくしてくれました。
当初予定していた時間を少し過ぎて雨がパラパラ降ってきた中、集会が始まりました。共同代表の岡田実穂さんとハルさんのスピーチからスタートしました。
青森県出身の田名部匡代参議院議員、東京の石川大我参議院議員のスピーチが続き、知事や市町村長からのコメントも紹介されました。青森県として、パートナーシップ制度導入に向けて動いているそうです。
青森レインボーパレード恒例のラジオ体操も行なわれました。みんなでラジオ体操をして、体を温めました。
そして、どの辺りから現れていたのはわかりませんが、
「みなさん、虹が出ました」
と岡田さんがマイクでおっしゃって。
集合場所から桟橋の方向を見ると、お空に虹が現れていました。
シャッターを切りながら、レポートを忘れ、泣きそうになりました。
きれいな虹が確かに現れました。
天国の宇佐美翔子さんからのエールだったのかもしれません。
この文章を書きながらも、あの虹を思い出し涙がでてきました。
今年の青森レインボーパレードのテーマは「故郷を帰れる街にしたい」。
このメッセージは生前、宇佐美翔子さんがいろいろなところでおっしゃっていました。
故郷に住んでいたくても、セクシュアルマイノリティであるがゆえに、住みづらく、故郷から離れていく人が多い、そんな現実が今もあります。
今年は例年以上に「故郷を帰れる街にしたい」というプラカードが多く、実行委員会の方々も「故郷を帰れる街にしたい」トートバックを作成、販売されていました。
出発予定時間を少し過ぎ、パレードが始まりました。
先頭の、レインボーカラーの風船で装飾された軽トラックに共同体表の岡田実穂さんが乗り込み、マイクでアピールし、その後ろを参加者が歩きました。パレードの模様はリアル参加できなかった方のために、配信もされていました。
東北各地、東京、神奈川、長野、大阪、兵庫など、青森以外からも参加されていました。
「故郷を帰れる街にしたい」「宇佐美さんを忘れません」「宇佐美翔子さん、あなたの思いは絶対に消えません!」「トランスジェンダーの権利は人権です!」など、それぞれの思いがプラカードに表現されていました。
商店街では、レインボーフラッグや手を降って応援してくれたり、温かく見守ってくださる方たちがいました。青森のパレードは着実に地元に根付いています。今回もそれを感じました。
いろいろなお店に青森レインボーパレードのポスターが貼られていました。
パレードはいつものコースをゆっくりと進みます。途中、雨がパラパラ降ってくると、岡田さんが参加者を気遣った言葉をかけてくれます。
後半、アーケードの中をパレード隊は歩きました。
岡田さんも車から降り、パレードのフラッグを持って先頭から最後尾まで走りました。
雲が切れた青空にフラッグが映えました。
75名の参加者がパレードを歩ききりました。
エンディング。共同代表お二人のごあいさつ。そして記念撮影。
一週間前くらいには雪が降ったそうです。日陰には雪が残っていました。
雨には降られたものの、虹が出たり、パレードの途中には青空が広がりました。
参加者のそれぞれの思いが、しっかりとアピールできた素敵なパレードでした。
青森レインボーパレードは来年の開催に向けて早くも動き出すそうです。
★青森レインボーパレード2021のフォトアルバムはこちら
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