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特集:2023年春のオススメ演劇作品

この3月〜4月、ゲイを描いた名作のリバイバル上演や、多様なマイノリティが登場する舞台、同性婚をめぐるコメディなど、素敵な演劇作品がいろいろと上演されます。情報をまとめてご紹介いたします。

特集:2023年春のオススメ演劇作品

(『月夜のからくりハウス『歌雪姫と七人のこびとーず』』より)

2月3日は立春(いろんな恵方巻を堪能した方も多いことでしょう)。まだまだ寒いですが、暦の上では春の始まりです。というわけで、少し早いですが、3月〜4月の演劇情報をお伝えします。ゲイを描いた名作のリバイバル上演や、多様なマイノリティが登場する舞台、同性婚をめぐるコメディなど、素敵な演劇作品がいろいろと上演されます。すでにチケットが発売中で、売り切れそうな作品もありますので、お早めにどうぞ。
日付順でご紹介いたします。 
(最終更新日:2023年2月3日)

 
3月5日 東京
月夜のからくりハウス『歌雪姫と七人のこびとーず』

 東ちづるさん率いる一般社団法人Get in touchが、まぜこぜ一座公演 月夜のからくりハウス『歌雪姫と七人のこびとーず』を上演します。2017年、車椅子ダンサー、全盲のシンガーソングライター、義足のダンサー、ドラァグクイーン、こびとレスラーなど、ふだん一堂に会することがない多様な個性をもつパフォーマーが集結し、「まぜこぜ一座」が結成されました。障害のあるプロのパフォーマーが活躍するチャンスをつくることにより、障害者のイメージを変え、社会にも好影響を与えることがこの公演の目的です。5回目となる今回は渋谷区との共催で、満を持して新作『歌雪姫と七人のこびとーず』をリリース。ネットハラスメントの被害者になり森に身を隠す謎のアーティスト歌雪姫と、姫を支える芸達者な7人のこびとたち、魔女と化し姫をディスる人々の善悪をかけた闘いを軸に、総勢30名以上のさまざまなマイノリティの方たちが鮮やかなパフォーマンスを披露します。注目すべきは、2017年にゲイであることをカムアウトした三ツ矢雄二さんやドリアン・ロロブリジーダさんに加えて、故ベアリーヌ・ド・ピンク(長谷川博史)さんの名前も出演者にクレジットされていることです。東ちづるさんはFacebookで「長谷川さんを敬愛していた「まぜこぜ一座」です。舞台公演「月夜のからくりハウス」の立ち上げから、苦楽を共にしてきた同志です。「ちづるさーん、アタシをこき使うわねえ」とよく言われていました。あの世でも働いてもらいます。「アタシにそんなこと言えるの、アンタぐらいよ〜」という声が聞けそうです。追悼シーン。華麗に偲びます」とコメントしています。ともに長谷川さんを追悼したい、偲びたいという方もぜひ、お出かけください。

まぜこぜ一座公演 月夜のからくりハウス『歌雪姫と七人のこびとーず』 
日時:2023年3月5日(日)13:00〜 / 17:30〜
会場:渋谷区 文化総合センター大和田6階 伝承ホール(渋谷区桜丘23-21)渋谷駅より徒歩5分
入場料:前売り券7,500円、当日券8,000円、高校生以下5,000円、障害者の介助のために障害者に同行する介助者 5,000円(前売りの場合は7,500円の一般席をご購入いただき、当日受付で差額を返金致します)
※手話通訳付き
チケットはこちらから ※一度ご購入されましたチケットは返金できませんのでご了承下さい。
定員:観客席 各回260席  全席自由
※車椅子席は客席後方になります。
※座席に移乗が可能な方は、お好きな席にスタッフがサポートいたします、一般席をご購入下さい。
※手話通訳の見やすい席をご用意しております、一般席をご購入下さい。
※立ち歩いたり、大きな声を出しても安心な、定員4名・ソファーありの「親子ルーム」が客席後方にあります。先着1組限定。一般席と「親子ルームチケット¥0」の両方をご購入下さい。
出演者(五十音順):
東ちづる、糸あやつり人形一糸座、えびさわなおき。、大前光市、奥野敦士、尾上秀樹、桂福点、かんばらけんた、KUMI、光陽師想真、GOMESS、後藤仁美、佐藤ひらり、笹野鈴々音、鈴木清貴、SOCIAL WORKEEERZ、DAIKI、ダンプ松本、だうんしょーず、ちびもえこ、ドリアン・ロロブリジーダ、西垣恵弾、野澤健、樋口真弓、藤平真梨、ベアリーヌ・ド・ピンク(長谷川博史)、マメ山田、三ツ矢雄二、森田かずよ、森本行雄、YANO BROTHERS、悠以
主催:一般社団法人 Get in touch
共催:渋谷区



3月8日~4月2日 東京
ミュージカル『RENT』

 ゲイやレズビアン、HIV陽性の若いアーティストたちを主人公に、切なくも熱い青春群像が素晴らしい音楽とともに描かれ、1996年の初演以来、ブロードウェイで12年4ヵ月のロングランヒットを記録し、世界40ヵ国以上で各国語版が上演され、2006年には映画化もされたミュージカル『RENT』――ゲイにとって記念碑的な、不朽の名作です。日本版公演も、ただ上演するだけでなく、これまでに『RENT』のキャストが何度もパレードや映画祭に足を運んで歌ってくれたり、独自にLGBTウィークを開催したり、ものすごい熱量でLGBTQコミュニティを支援してくれています(2012年にはLGBTQのアワード「Tokyo SuperStar Awards」を受賞しています)
 そんな『RENT』もコロナ禍で公演中止の憂き目にあったりしていたのですが、その悔しさを晴らすかのように7回目の上演を実現させたそうです。
 東京公演が3月8日~4月2日、大阪公演が4月7日〜9日、愛知公演が4月12日〜13日です。
 なお、『RENT』は故ジョナサン・ラーソンの遺言によって、各回とも若干数のエンジェルシートが設けられます。これは、まさに『RENT』の登場人物のように若くて貧しいアーティストであったり、ブロードウェイのチケットを買えないような方にも公演を観る機会を提供したいという趣旨の格安チケットで、毎日抽選で選ばれます。何時までに劇場に行けばよいかなど、詳しい情報は劇場にお問い合わせください。

<あらすじ>
1991年、NYイーストヴィレッジ。映像作家のマークは、友人で元ロックバンドのボーカル、ロジャーと古いロフトで暮らしている。夢を追う彼らに金はない。家賃(レント)を滞納し、クリスマスイヴにもかかわらず電気も暖房も止められてしまう。恋人をエイズで亡くして以来、引きこもり続けているロジャー自身もHIVに感染しており、せめて死ぬ前に1曲だけでも後世に残るような曲を書きたいともがいている。ある日、彼は階下に住むSMクラブのダンサー、ミミと出会うが、彼女もまたHIV陽性だった。一方のマークはパフォーマンスアーティストのモーリーンに振られたばかり。彼女の新しい相手は女性弁護士のジョアンヌだ。仲間のコリンズは暴漢に襲われたところをストリートドラマーのエンジェルに助けられ、二人は惹かれあう。季節は巡り、彼らの関係もまた少しずつ変わってゆく。出会い、衝突、葛藤、別れ、そして二度目のクリスマス・イヴ……
 
ミュージカル『RENT』
脚本・歌詞・音楽:ジョナサン・ラーソン
演出:マイケル・グライフ
出演:花村想太/平間壮一(Wキャスト)、古屋敬多(Lead)/甲斐翔真(Wキャスト)、遥海/八木アリサ(Wキャスト)、加藤潤一/SUNHEE(Wキャスト)、百名ヒロキ/RIOSKE(Wキャスト)、佐竹莉奈/鈴木瑛美子(Wキャスト)、塚本直、吉田広大、チャンヘ、長谷川開、小熊綸、ロビンソン春輝、吉田華奈、Zinee ※各役アルファベット順
日程:3月8日~4月2日 
会場:シアタークリエ
料金:全席指定:11,800円、エンジェルシート:5,000円(価格は全て税込)
チケットはこちら





3月10日~12日 札幌
毛皮のマリー

 日本一ゴージャスな美貌の男娼・毛皮のマリーと、応接間の大草原を捕虫網片手に蝶を追いかける絶世の美少年・欣也という親子の壮絶な近親愛と近親憎悪を描いた寺山修司による戯曲『毛皮のマリー』は、1967年に丸山明宏主演で初演されて以来、美輪様の代表作として何度となく上演されてきた伝説的名作で、寺山幻想演劇×美輪ワールドの金字塔とも言うべき作品です。主役である男娼マリーは男優が女装して演じるのが常で、ドラァグクイーン的と言いますか、ゲイテイストであることは間違いありません。
 この名作を、札幌で寺山作品を上演してきた劇団「風蝕異人街」が、創立25周年記念公演として上演します。札幌にお住まいのみなさん、もしご興味があれば、ご覧になってみてください。

毛皮のマリー
日程:2023年3月10日(金)~12日(日)
会場:扇谷記念スタジオ・シアターZOO(札幌市中央区南11条西1丁目3-17 ファミール中島公園B1F)
料金:前売 3000円、当日3500円、U25(25歳以下)2000円
チケットはこちらから




3月31日〜 東京
ル・ゲィ・マリアージュ~愉快な結婚

 フランスのシナリオライター、ジェラール・ビトンとミシェル・マンズが手がけた戯曲で、2011年にモリエール賞の最優秀コメディ賞にノミネートされた作品です。女好きの主人公が「偽装の同性婚」をするコメディという、不安を禁じえない作品ですが(ちなみにフランスで同性婚が認められたのは2013年なので、この戯曲で「同性婚」と言っているのは、PACSという制度のことだと思われます)、さすがに2010年当時のフランスでゲイをバカにした作品がモリエール賞にノミネートされたりはしないと思いますし、演出の横内謙介さんも「ウソからまことが生まれる類のウェルメイドな喜劇なのですが、ここにはLGBTや人間性の解放、親子関係の回復など、現代的なテーマが堅苦しくなく散りばめられています」とコメントしていますので、おそらく観て不快に感じるような作品ではなく、偽装の同性婚のつもりだったけど本当に愛情が芽生え…というような展開になると想像されます。
 
<あらすじ>
女好きでモテモテのアンリ・ド・サシー。結婚する気はさらさらない独身のアンリだったが、死んだ叔母から「今年中に結婚する」という条件で遺産を相続することに。アンリは友人の弁護士・ノルベールの発案で、親友のドドと偽装の同性婚をするが……。

ル・ゲィ・マリアージュ~愉快な結婚
日程:2023年3月31日(金)~4月16日(日)
会場:六本木トリコロールシアター
脚本:ジェラール・ビトン&ミシェル・マンズ
翻訳:岩切正一郎
演出:横内謙介
プロデューサー:白樹栞
出演:今江大地、富本惣昭、緒形敦、清水麻璃亜(AKB48)、岡森諦
料金:7,800円(全席指定・税込)
チケットはこちらから ※2月19日より発売





4月1日〜23日 東京
ブレイキング・ザ・コード

 『ブレイキング・ザ・コード』は、英国のゲイの作家アンドリュー・ホッジがアラン・チューリングの暗号理論と同性愛の葛藤を描いた『Alan Turing:The Enigma』に基づき、ヒュー・ホワイトモアが戯曲化した作品です(同じ『Alan Turing:The Enigma』を映画化したのが『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』です)。1986年にブロードウェイで初演され、、1987年から(フランシス・ベーコンを描いたい『愛の悪魔』にも主演した)オープンリー・ゲイの俳優デレク・ジャコビが主演して上演され、トニー賞3部門、ドラマ・デスク賞2部門にノミネートされました。1996年にはデレク・ジャコビ主演で、BBCでTVドラマ化され、ブロードキャスティング・プレス・ギルド賞を受賞したほか、英国アカデミー賞、GLAADメディア賞にノミネートされました。日本では1988年に劇団四季によって創立35周年記念として上演されています。
 そんな『ブレイキング・ザ・コード』が33年ぶりに上演されることになりました。「一流のクリエイターと実力派のキャストが描く濃密な対話劇」となるそうです。

<あらすじ>
第二次世界大戦後の英国。エニグマと呼ばれる複雑難解なドイツの暗号を打ち破り、英国を勝利へと導いたアラン・チューリング。しかし、誰も彼の功績を知らない。この任務は戦争が終わっても決して口にしてはならなかったのだ。そしてもう一つ、彼には人に言えない秘密があった。チューリングは同性愛者だった。ある日、空き巣被害にあったとチューリングは自ら警察に通報し、一人の刑事がチューリングの家にやってくる。あらゆる秘密を抱え、孤独に生きるチューリングが行き着く先とは。どんな暗号も解き明かしてきた彼が、人生の最後に出した答えとは…。
 
ブレイキング・ザ・コード
日程:2023年4月1日(土)~23日(日)
会場:シアタートラム
作:ヒュー・ホワイトモア
翻訳:小田島創志
演出:稲葉賀恵
音楽:阿部海太郎
出演:亀田佳明 水田航生 岡本 玲 加藤敬二 田中亨 中村まこと 保坂知寿 堀部圭亮
料金:1st 6,500円、2nd 6900円、3rd 7300円、U-25 3500円(全席指定・税込・未就学児童入場不可〉
チケットはこちらから




4月18日~5月28日 東京
エンジェルス・イン・アメリカ

 1991年の初演以来世界中で上演されてきたトニー・クシュナーの名作『エンジェルス・イン・アメリカ』二部作が一挙上演されます。エイズ禍が進行していた1980年代半ばのニューヨークを舞台に、ゲイに対する社会の根強い差別や偏見のなか、様々な立場のゲイたちの群像を描いた超大作で、舞台はピューリッツァー賞戯曲部門、トニー賞演劇作品賞を受賞、TVドラマはエミー賞史上最多11部門独占受賞と、3つの賞を獲得した史上初の作品で、20世紀最高の戯曲との呼び声高い名作中の名作です。
 今回は新国立劇場演劇部門の小川絵梨子芸術監督が就任とともに打ち出した支柱のひとつ「演劇システムの実験と開拓」の一環ですべての出演者をオーディションで決定する「フルオーディション企画」の第5弾として上演されます。新国立劇場での上演後、愛知・兵庫でも公演が行なわれます。

<あらすじ>
◎第一部
1985年ニューヨーク。青年ルイスは同棲中の恋人プライアーからエイズ感染を告白され、自身も感染することへの怯えからプライアーを一人残して逃げてしまう。モルモン教徒で裁判所書記官のジョーは、情緒不安定で薬物依存の妻ハーパーと暮らしている。彼は、師と仰ぐ大物弁護士のロイ・コーンから司法省への栄転を持ちかけられる。やがてハーパーは幻覚の中で夫がゲイであることを告げられ、ロイ・コーンは医者からエイズであると診断されてしまう。職場で出会ったルイスとジョーが交流を深めていく一方で、ルイスに捨てられたプライアーは天使から自分が預言者だと告げられ……
◎第二部
ジョーの母ハンナは、幻覚症状の悪化が著しいハーパーをモルモン教ビジターセンターに招く。一方、入院を余儀なくされたロイ・コーンは、元ドラァグクイーンの看護師ベリーズと出会う。友人としてプライアーの世話をするベリーズは、「プライアーの助けが必要だ」という天使の訪れの顛末を聞かされる。そんな中、進展したかに思えたルイスとジョーの関係にも変化の兆しが見え始める。

フルオーディション Vol.5
『エンジェルス・イン・アメリカ』
第一部「ミレニアム迫る」 / 第二部「ペレストロイカ」
日程:2023年4月18日(火)~5月28日(日)
会場:新国立劇場 小劇場
作:トニー・クシュナー
翻訳:小田島創志
演出:上村聡史
芸術監督:小川絵梨子
出演:浅野雅博、岩永達也、長村航希、坂本慶介、鈴木杏、那須佐代子、水夏希、山西惇
料金(税込):A席7,700円、B席3,300円、1部・2部通し券(A席のみ)13,800円
チケットはこちら ※2月4日(土)10:00から発売



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