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AAAの與真司郎さんがファンに向けてカミングアウト、「希望はある、世界は変わってきている」
AAAの與真司郎さんが7月26日、渋谷公会堂で開催したファンミーティング「與真司郎 announcement」でゲイであることをカムアウトしました。感動の一部始終をレポートします
2005年にレコ大最優秀新人賞を受賞し、2010年から7回連続で紅白に出場、豊かな個性を持つ「スーパーパフォーマンスグループ」と称される人気音楽グループ「AAA(トリプル・エー)」のメンバー、與真司郎(あたえしんじろう)さんが7月26日、渋谷のLINE CUBE SHIBUYA 渋谷公会堂でファンミーティング「與真司郎 announcement」を開催し、満場のファンのみなさんに向けて、ゲイであることをカムアウトしました。時に涙を流しながらのカミングアウトに、ファンのみなさんが温かな声援を送り、AAAのメンバーのみなさんも応援し、本当に感動的なイベントになりました。レポートをお届けします。
都心も40度近い猛暑日となった7月26日(水)の夜、渋谷公会堂には與真司郎さんのファンの方たちが長蛇の列をつくっていました。
会場に入ると、ステージ中央のスクリーンに大きく「SHINJIRO / 與真司郎」の文字。19時過ぎ、與真司郎さんが机に向かい、手紙を書き、それをポストに投函する姿を描いたイメージビデオのようなショートフィルムが流れ、スクリーン下の幕の間から與真司郎さんがグレーのセットアップ姿で登場、ファンのみなさんに「来てくれてありがとう。落ち着きがなくてごめんね。デビュー前から含めて、今たがいちばん緊張してる。今から言うことは本当にびっくりすると思う」と語り、会場のファンから「えー何ー?」という声が上がり、続けて「けど、みんなのことを愛してると思って。最後まで聞いてくださいね。間違って伝わらないように、手紙で伝えます」と言いながら、緊張した面持ちで、静寂のなか、手紙を読み始めました。
「これから僕が話すことは皆さんが期待して望んでる内容ではないかもしれません。なかには理解するのに時間がかかる方もいると思います。でも、これから僕が話すことがきっかけで少しでもこのことについて理解が深まり、世界が変わってくれることを願っています。
今日、たくさんのファンの皆さんがここに参加することを希望していたのに、席に限りがあり、来られなかった方もたくさん出てしまったとスタッフさんから聞きました。
これから話すことをSNSやプレスリリースを通して発表するという選択肢も正直ありました。でも、今日はどうしても皆さんの顔を見ながら、直接伝えるべきだと思い、このようなかたちを取らせてもらいました。
僕自身、長い間この不安と闘ってきました。本当に何年もの間、自分の一部を受け入れることができませんでした。それでも、さまざまな葛藤を乗り越え、今やっと皆さんにこのことを、打ち明ける決意ができました。
それは、僕がゲイであるということです。
みんなたぶん、すごく驚いていると思う。でも最後まで聞いてください。
カミングアウトを決意するまでに、すごく時間がかかりました。自分ですら自分のセクシュアリティを受け入れることができませんでした。もし自分がゲイだということを認めてしまったら、今度は世の中が自分のことをアーティストとして認めてくれないのではないかという恐怖を感じることもありました。
でも、悩みに悩んだ結果、ファンの皆さんをはじめ、僕が大切にしている全ての人たち、そして僕自身のためにも本当のことを受け入れ、それをしっかりと皆さんに伝えることが僕なりの誠意だと思いました。そして、僕と同じ境遇に置かれている方々にも、勇気を持つきっかけにしてもらいたかった。自分は一人ではないということを、わかってほしかったんです。
カミングアウトを決意する前は二つの道しかないと思っていました。一つ目は、本来の自分を受け入れることなく、エンターテインメントの世界に居続けること。もう一つは、エンターテインメントの世界から退いて、世間から隠れてひっそりと暮らすことでした。
でも、たくさんたくさん考えて、三つ目の選択肢にたどり着きました。それはゲイということを公表したうえで、エンターテインメントの活動を続けるということです。ありのままの自分で生きていくことで、大好きなエンターテインメントの活動をあきらめたくなかったんです。
僕はこれを機に、全く違う人間になってしまうわけではありません。むしろ、このことを打ち明けたことによって、本来の自分をわかってもらえる、ファンの皆さんとの距離が縮まることを本当に願っています。
自分がゲイであるということを明確に理解するまでには時間がかかりましたが、今振り返れば、昔からその認識はあったような気がします。
僕が子どもの頃、テレビではLGBTQ+のことを面白おかしく扱っている時代でした。もちろん、その頃は今みたいにインターネットが普及していなかったので、自分のセクシュアリティについて疑問を持ったとしても、そのことについて知る機会がほとんどありませんでした。
だから、その頃は「自分が間違ってるんだ」「自分はおかしいんだ」と思っていました(ここで涙があふれ、しばらくしゃべれなくなり、必死に涙をこらえていました)。誰かにこのことを相談することもなく、自分の感情を押し殺していました。
そんななか、14歳でエンターテインメントの世界に入り、毎日仕事が忙しく、気づいたら自分の疑問や悩みが多忙な日々に紛れていました。
その頃から、本当にたくさんの方々に支えてもらってはいましたが、それでもどこかで自分は独りぼっちのような感覚でした(ここで再び、涙)。そんな生き方をしてるうちに、このままではメンタルにも影響が出てくると思い、あるとき海外に移住することを考え始めるようになりました。
海外に行き始めた頃の話ですが、ある日、男性どうしが街中でキスをしてるのを見て、僕は衝撃を受けました。周りの人たちで彼らの行動を気にしている人は誰もいませんでした。そのとき初めて自分は独りじゃないんだって、どこかほっとしました。LGBTQ+の人でも堂々と幸せになる道はあるんだと希望が湧いてきました。
完全に自分のセクシュアリティを受け入れるにはそこからさらに時間がかかりましたが、LGBTQ+であろうと、どんな人間でも、幸せに自分らしく生きる権利があるんだということに気づかされました。だから僕も自分らしく生きていこうと、この出来事がきっかけで自分と向き合っていくようになりました。
LGBTQ+の僕たちも同じ人間です。他の人と違う扱いをされたくありません。僕でさえ、このことを受け入れるまでに時間がかかりました。それと同じように皆さんにとっても時間がかかることだと思います。
日本では、あまりオープンにLGBTQ+について話し合うことも少ないと思うので、さらに難しいことなのも分かっています。僕自身も今日カミングアウトをしたばかりなので、これからもLGBTQ+について学ぶことがたくさんあると思っています。
さまざまな固定概念によって独りで抱え込み、悩んでいるLGBTQ+の方たちが世界中にいます。ハラスメント、いじめ、世間的なプレッシャーに苦しみ、それによって精神的ダメージを受ける人も決して少なくありません。
僕がとある記事を読んで得た情報なのですが、LGBTQ+と自認している方のうち、48%が自殺について考えたことがあり、さらにそのうちの12%は実際にそれを行動に移していたという統計を目にしました。
例えば、自分の性の対象が同性やどちらの性にも向いているというだけで、命を絶つ必要があるのでしょうか。理解されずに自分のことを責め続けて、最終的に耐えられずに追い込まれてしまう方がこれだけ多く存在するということを、一人でも多くの方に知ってもらいたいです。
今日僕がこの発表をしたことに驚いている方もいると思います。受け止めるのも難しいと思う方もいるでしょうし、受け止めるのに時間がかかることも理解しています。今、たくさんの情報を一度に発信してるので、それも当然のことだと思います。
母にカミングアウトしたとき、幸い、母はすぐに僕のことを受け入れてくれました。しかし、公にカミングアウトしたいと話したときに、母は僕がひどいバッシングを受けるのではないかと心配し、反対されました。でも、時間が経つにつれ、母もLGBTQ+の課題について一緒に考えてくれるようになり、僕が公にカミングアウトすることも賛成してくれました。
僕のWebサイトを見ていただくと、LGBTQ+に関するリンクがいくつか張ってあります。これを機に、知らないところで苦しんでいて、助けを必要としている人たちがいるということを、多くの方に知ってもらいたいと思いました。
LGBTQ+の方たちの多くは、セクシュアリティを理由にいじめられたり、平等でない扱いを受けています。でも希望はあると思いますし、世界は変わってきていると思います。何事も、ネガティブなことでも、みんなで力を合わせれば、ポジティブなことに変えていけると思います。
もしこの会場の中にも自分のセクシュアリティで悩んでいる方がいたら、僕のホームページをぜひご覧ください。あなたは絶対に一人じゃない。僕もあなたのことを全力で応援します。同じ悩みを抱えていた一人の人間として、LGBTQ+の方々には胸を張って、堂々と生きていってほしい。
ただ、カミングアウトをするかしないかは個人の選択の自由です。もしも、カミングアウトをしたいと思っているならば、僕もそうしましたが、周りにサポートしてくれる方を見つけてからの方が心強いと思います。
今は誰もいないと思っていても、支えてくれる方は必ずいます。僕も、今となっては周りに応援してくれる人がたくさんいますが、それも長い時間をかけて築き上げてきたものです。僕もそれを踏まえたうえで、今日、ここでカミングアウトをしています。
どんなセクシュアリティだとしても、ゆっくり時間をかけて、まずは自分を大切にしてあげてください。自分を愛することが一番です。
そしてもう一つわかっていただきたいのが、ゲイだからといって、これまでの自分が変わってしまうわけではありません。僕は今の自分のままで十分幸せです。これからも変わらず、與真司郎として生きていきます。
そして最近、僕はアーティスト活動を再開することについて考えるようになりました。
AAAが活動休止になって、自分はソロアーティストとして活動を続けていく意味はあるのかと悩んだ時期もありました。自分はアーティストとしてどんなメッセージを発信していけばいいのかが、わからなくなってしまったからです。
でも、LGBTQ+の課題にかかわらず、悩んでいる人を一人でも多く救いたいという気持ちがありました。そして、ありのままの自分を打ち明けようと決意したことによって、発信したいメッセージが明確になりました。本来の自分を表現しながら、聞いてくれる人を幸せにするということが、僕のアーティストとしてのいちばんの目標です。
そこで、一つ発表があります。アーティスト活動を続けていこうと決意したことによって、今回、新曲をレコーディングしました(大きな拍手)(再び涙)。タイトルは「Into The Light」です。日本語では「新たな光の指す方へ」という意味です。世界中にこの曲が届いたらいいなという思いを込めて、歌詞は全て英語になっていますが、日本語訳も考えました。のちほどここに来てくれた皆さんにいち早く、聴いていただきたいと思っています。そして、この曲の売上げの一部を日本のLGBTQ+の支援団体に寄付します。
「Into The Light」を通して、僕の経験だけではなく、僕と同じ境遇に置かれている方についても、理解を深めるきっかけになってくれればうれしいです。そしてLGBTQ+の方々に限らず、皆さん一人一人の経験と重ね合わせて、聴いていただきたいと思っています。
音楽は世界共通です。つらいトラウマを乗り越えた経験や、今、実際、人生で葛藤してる方々など、たくさんいると思いますが、僕がメンタルヘルスについて発信することで、世界のどこかで勇気づけられる人がいてくれたらいいなと、心の底から思っています。
人生いいときもあれば、うまくいかないときもあります。それでも諦めずに進み続ければ、新たな光の指す方へと導かれていくと思います。僕も正直この先どうなるのか、自分でもわかりません。でも、一度きりの人生、後悔したくないんです。世界がもっと明るくなり、どんな人でも生きやすい場所になってくれることを願っています。
そして最後にもう一つ、大きな発表があります。実は今、ハリウッドで僕の人生についてのドキュメンタリーが制作されているところです。プロデューサーは、『グリーンブック』や『メリーに首ったけ』で知られるピーター・ファレリーと、『タイガーキング』で知られるフィッシャー・スティーブンスです。2人ともアカデミー賞などを受賞してる偉大な方々です。彼らをはじめとしたハリウッドで活躍している方たちが、僕の人生経験や、これからやりたいと思っていることに共感してくれました。この機会に、感謝するとともに自分ができることを精一杯取り組みたいと思います。
本日は本当にありがとうございました」
読み終えると、與真司郎さんは前に出て、「みんな驚かせてごめんね」と素で語りはじめました。会場からは「大好きだよ」「ありがとう」との声援が送られました。周りを見渡すと、ハンカチで涙を拭っている女性ファンの方が大勢いらっしゃいました。真司郎さんは「世間からバッシングされるのは別によくて、でもSNSとかでみんながバッシングされるのが不安で」と語り、それでも「大丈夫だよ」と声援が送られ、「どんだけいいやつやねん、お前ら」と泣き笑い、「母と姉が応援してくれて、今日は友達もLAから来てくれて、スタッフのみんなも『きっとわかってもらえます』って応援してくれてて。それで、実は、今日、メンバーも来てくれてる」と言うと、3階席のいちばん奥に、笑顔で手を振ってくれているAAAの西島隆弘さん、宇野実彩子さん、日高光啓さん、末吉秀太さんの姿があり、会場からキャーッ!と歓声が上がりました。真司郎さんは「最初に実彩子に言ったんだよね。やっぱり女性のほうが言いやすくて」と言い、その後、男性のメンバーに向けて「絶対書かれるから言うけど、ごめん、タイプじゃない」と冗談っぽく語り、末吉秀太さんが大声で「俺は大好きなのに〜」と叫び、会場が沸きました。真司郎さんはメンバーに「大丈夫、俺がついてるから」って言ってもらえて、と感謝を述べ、それから最後に、ファンのみなさんに「本当にありがとう。夢のよう。もっと早く言えばよかった」と感謝の言葉を述べました。
その後、「Into The Light」のMVが上映されました。手紙に綴られていたような、與真司郎さんの思いが詰まったカミングアウトソングで、NYなど米国の風景とマッチした、ポップでポジティブな、「光の射すほう」を感じられるような、素敵な曲、素敵なMVでした。上映後も長い間、大きな拍手が送られていました。
ファンの方には全く知らされていなかったカミングアウト。本当に驚いた方も多かったと思いますが、それでも、「大好きだよー」と叫んでた男性の方もいらっしゃいましたし、涙でしゃべれなくなったときも「頑張れー」と声援が飛び、大きな拍手を贈るファンのみなさんが本当に温かくて…感動しました。
活動休止中とはいえAAAというエイベックスの超人気グループのメンバーがカムアウトしたのは本当にスゴいことで、事務所はもちろん、メンバーのみなさんや、周囲のスタッフの方々や、関係する全員が認め、応援しなければ、ありえなかったことだと思います(事務所が無理解だと、柳喬之さんのように「現場では絶対言うな」「二丁目で働くしかなくなるよ」などと言われ、押さえ込まれてしまいます)。しかも、今回、おそらくそういう関係者のみなさんで、最善のかたちで公表しようと話し合い、プロジェクトを組んで、今日の日を迎えたはずです(手紙の内容も素晴らしかったですよね)。ですから、與真司郎さんだけでなく、関係者のみなさんにも心から拍手を贈りたいと思います。日本のエンタメ業界もようやくここまできたか…という感慨があります。
これは個人的な見方ですが、AAAって(意外と多くない)大所帯の男女混合グループで、男性だけ、女性だけのグループにありがちな「異性に性的にアピールしたり媚びたりする雰囲気」がなく、全員がルックスも実力もハイレベルでありつつ、どこか(ドリカムとかもそうですが)高校の仲良しグループみたいな空気感があって、独特のポジティブなポップさが魅力だったと思うんですが、そういうグループだったからこそ、温かく受け入れ、応援してくれたんじゃないかなと想像します。会場でAAAのメンバーのみなさんが笑顔で手を振る様子を間近で見てて、そんなふうに思いました(その姿もまた、涙を誘いました)
早速ネット上では、ゲイのAAAファンの方がblogで思いを綴ったり、Twitter(Xって言い慣れないので…いいですよね)でいろんな賛辞が贈られていました(「会場に来ていたメンバーに「絶対書かれるからいうけど、メンバーのみんなごめん!タイプじゃない(笑)」って言ったところで涙が止まらなった。メンバーとの信頼があるからこう冗談みたいに言ってくれたけど、世間のゲイへの偏見に対し、自分を挺してメンバーを守ったんだよね」というコメントに、そうか、あれは真司郎さんの気遣いだったんだな、と気づかされました)。真司郎さんのインスタにも、応援のコメントがたくさん寄せられています。本当によかったです。
先月の本当にひどかったプライド月間に続き、今月は本当に悲しい訃報もあり、SNSでは今もLGBTQへのバッシングが続いており、独りで落ち込んだり、苦しい気持ちになっているLGBTQの方たちもいらっしゃると思いますが、真司郎さんの、カミングアウトが少しでも生きづらさを感じている方たちへの励ましや生きる希望につながれば、という思いが伝わったらうれしいです。
来年のTRPに出てくれたらな…と思う方も多いことでしょう。出演は無理でも、メッセージをくださったり、きっと、何らかのかたちでLGBTQコミュニティに貢献してくださることと思います。
(TRPと言えば、真司郎さんの前に、清貴さんのカミングアウトがあり、先人としては田中ロウマさんなどもいらっしゃいました。ポップスターとしては1995年の笹野みちるさんの偉大なカミングアウトがありました。そうした方たちの積み重ねのおかげで、今日があるんですよね)
そして、AAAの與真司郎さんというビッグネームのカミングアウトが歴史上の大きな転機となって、メジャーなアーティストや俳優の方などがこれに続いてくれたら…と願うものです。
與真司郎さんの勇気に心から拍手を贈ります。
ドキュメンタリー映画の公開、楽しみですね!
(取材・文:後藤純一)
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