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特集:2023年夏のLGBTQアート展

7月〜9月に開催されるLGBTQ関連のアート展をご紹介いたします。

特集:2023年夏のLGBTQアート展

(TORAJIRO 個展「UNDER THE BLUE SKY」より)
 

本当に暑い日が続きますね…。外出も避けたい今日この頃ではありますが、週末、ふらっとどこかにお出かけしたいときに、涼しく過ごせるアート展はいかがでしょうか? というわけで、7月〜9月に開催予定のLGBTQ関連のアート展をご紹介いたします。今年初め京都で展示されていた「甲斐荘楠音の全貌」が東京に来ました、英国のポップ・アートの旗手、ホックニーの過去最大規模の個展が開催、そしてTORAJIROさんの待望の個展が開催、といったトピックになります。
(新たな情報が入り次第、順次追加していきます)
(最終更新日 2023.9.17)



6月3日〜2024年5月6日
キース・ヘリング:NYダウンタウン・ルネサンス展

 中村キース・ヘリング美術館収蔵のキース・へリングコレクションを、彼が活動した1980年代ニューヨークを舞台に、「アンダーグラウンド・カルチャー」「ホモエロティシズムとHIV・エイズ」「社会に生きるアート」「ニューヨークから世界へ」という4つの視点でキュレーションし、彼の社会との関わりやその活動の今日的な意義をひもときます。1970年〜1980年代にヘリングが生きたニューヨークは、パンク・ロックやヒップホップファッションなど新しいカルチャーが注目され、成功を目指す人々が世界中から集まる可能性に満ちた街である一方、ドラッグや犯罪が蔓延する危険な状態でもあり、それらが危ういバランスで成り立っているスリリングな街でした。そのような社会状況の中で生まれたヘリングの作品は、命に関わる感染症との共生、児童福祉教育や人権問題をはじめとする持続可能な社会実現に向けた課題など、今日を生きる私たちにも強烈なインパクトを与えます。ヘリングが残したメッセージを、同時代を生きた写真家たちの記録写真など多くの資料が並ぶ展覧会を通して発信します。
 なお、同じ期間で「プラダを着た悪魔」や「セックス・アンド・ザ・シティ」の衣装も手がけたスタイリスト、衣装デザイナーであり、エミー賞受賞やアカデミー賞ノミネートなど華々しいキャリアを誇るパトリシア・フィールドが、半世紀の歳月をかけて蒐集したアートコレクションを紹介する「ハウス・オブ・フィールド展」も開催されています。

キース・ヘリング:NYダウンタウン・ルネサンス展
会期:2023年6月3日(土)〜2024年5月6日(月)
会場:中村キース・ヘリング美術館
開館時間:9:00-17:00(最終入館16:30)
休館日:定期休館日なし ※展示替え等のため臨時休館する場合があります
観覧料:大人1,500円、16歳以上の学生800円、障がい者手帳をお持ちの方600円、15歳以下無料




7月1日〜8月27日
甲斐荘楠音の全貌 絵画、演劇、映画を越境する個性

 様々な領域を越境した表現者、甲斐荘楠音(かいのしょう・ただおと)の創作の全貌を回顧する展覧会。甲斐荘は大正期から昭和初期に日本画家として活躍、通念としての理想美を描き出すのではなく美醜相半ばする人間の生々しさを巧みに描写し、戦前の日本画壇で高く評価されましたが、1940年代初頭に画業を中断して映画業界に転身するとともに画家としての成果を顧みられる機会は減り、再び評価されるのは亡くなる直前の1970年代半ばまで待つことに。今日では「京都画壇の異才」として知られますが、その活動の重要性はジャンルを超えた越境性にあり、映画監督・溝口健二らを支えた風俗考証家としての活動や、歌舞伎など演劇を愛好し、自らも素人芝居に興じた趣味人としての一面、女形としての演技や、異性装による「女性」としての振る舞い、そういったこれまでほとんど注目されてこなかった甲斐荘の側面にも光を当てるのが今回の展覧会の主旨です。異色の日本画家から「複雑かつ多面的な個性をもつ表現者」へと甲斐荘楠音を再定義する展覧会になる模様。なお、甲斐荘は生涯独身で、ゲイであったと見られています。

甲斐荘楠音の全貌 絵画、演劇、映画を越境する個性
会期:2023年7月1日(土)~2023年8月27日(日)
会場:東京ステーションギャラリー(東京都千代田区丸の内1-9-1)
開館時間:10:00-18:00(最終入場時間17:30)
休館日:月曜日、7月18日(火)
※ただし、7月17日、8月14日、8月21日は開館
観覧料:一般1,400円、高校・大学生1,200円、中学生以下無料
※障がい者手帳等持参の方は100円引き(介添者1名は無料)




7月15日〜11月5日
デイヴィッド・ホックニー展

 アメリカでポップ・アートを牽引したゲイのアーティストといえば、アンディ・ウォーホールやキース・ヘリングが思い浮かびますが、英国で1960年代のポップ・アートムーブメントに最も貢献した人物で、最も影響力のある20世紀の英国の画家の一人とみなされているゲイ・アーティストが、デイヴィッド・ホックニーです。
 ドラァグクイーンの絵本読み聞かせなども行なってきた東京都現代美術館で、日本では27年ぶりとなるデイヴィッド・ホックニー大規模な個展が開催されます。
「ホックニーは60年以上にわたり、絵画、ドローイング、版画、写真、舞台芸術といった分野で多彩な作品を発表し続けてきました。本展は、イギリス各地とロサンゼルスで制作された多数の代表作に加えて、近年の風景画の傑作〈春の到来〉シリーズやCOVID-19によるロックダウン中にiPadで描かれた全長90メートルにもおよぶ新作まで120点余の作品によって、ホックニーの世界を体感できる機会となるでしょう」(公式サイトより)
 同性愛を主題とした作品(有名なのは《芸術家の肖像 -プールと2人の人物-》という1972年の作品)も描いているのですが、今回の個展でそうした作品があるかどうかはわかりません…。のちほど観に行った際、お伝えしたいと思います。

デイヴィッド・ホックニー展
会期:2023年7月15日(土)~11月5日(日)
会場:東京都現代美術館 企画展示室 1F/3F
開館時間:10:00-18:00(展示室入場は閉館の30分前まで)
※サマーナイトミュージアムの日(7/21、28、8/4、11、18、25)は10:00-21:00まで開館延長
休館日:月曜日(7/17、9/18、10/9は開館)、7/18、9/19、10/10
観覧料:一般2,300円 / 大学生・専門学校生・65歳以上1,600円 / 中高生1,000円 /小学生以下無料
※平日限定ペアチケット4,000円(オンライン限定)
オンラインチケットはこちら(前期分7/15~9/15)




8月25日〜9月6日
TORAJIRO 個展「UNDER THE BLUE SKY」

 今年のTRPの時期に渋谷パルコ1階LOEWEストア横アートウォールにその作品が描かれたことも記憶に新しいTORAJIROさん。待ちに待った個展が、8月25日から新宿眼科画廊で開催されます。
「青い空の真下で、私たちは日々生活する。
 遠い空の向こうで、毎日誰かが戦争によって、あるいは飢餓や病気によって死んでいる。
 日本は戦後78年。
 私たちの周りに戦争の足音が聞こえ始めていても、私たちはいつもと同じ日常を過ごしている。
 青い空の真下で、セクシャルマイノリティとして生きる。
 ただ「人が人を好きになる」という当たり前のことを、まだまだ私たちはこの日本という社会で主張し続けなければいけない。
 青い空の真下で、動物たちと共に生きる。
 地球温暖化が続き、動物たちの生きていく場所がなくなりつつある。
 人間のためだけの地球ではない。日々自分たちが意識すること。
 地球に何ができるのか、動物たちのために次の世代のために何をすべきなのか考える。」 
 こちらの記事にも少し詳しい情報や、展示予定の作品が掲載されているのですが(「EQUAL RIGHTS FOR ALL」と書かれた石版を持ったクマ系の男性と、オリーブの葉を加えた鳩などの動物と虹を描いた作品、本当に素敵です。現代のモーゼじゃないでしょうか)、観るのが本当に楽しみになります。

TORAJIRO 個展「UNDER THE BLUE SKY」
会期:2023年8月25日(金)~9月6日(水) 
会場:新宿眼科画廊 スペースS
開館時間:金曜〜火曜 12:00-20:00、水曜 12:00‒17:00、
定休:木曜(8月31日)
入場無料




9月2日〜10月1日
ナラッキー

 アーティストコレクティブ・Chim↑Pom from Smappa!Group(以下Chim↑Pom)の展覧会「ナラッキー」が歌舞伎町の王城ビルで開催されます。1964年に竣工され、名曲喫茶、キャバレー、カラオケ店、居酒屋と業態を変化させながら2020年3月まで営業、それ以降は試験的にあらゆるイベントが開催されてきた王城ビルは、来年以降、歌舞伎町のアートのハブとして、全館を使用して本格始動する予定だそうで、今回、そのお披露目を兼ねた展覧会として、ビルを丸ごと使ったChim↑Pomによる新作インスタレーション展が開催されています。TimeOutに詳しいレポートが掲載されていますが、ビデオインスタレーション『はじまり』ではChim↑Pomのエリィさんの口元をクローズアップした映像に「MISIAはメジャーシーンにおいてかなり早い段階でドラァグクイーンを起用していた」といった音声が重ねられ、ドラァグクイーンのMONDOさんがメイクスる映像が流れ続ける部屋に「顔拓」が展示されていたり、山田ホアニータさんもメンバーの一員である「もしもしチューリップ」の展示があったりと(下のイメージ写真は「もしもしチューリップ」のみなさんです)、随所にドラァグクイーンの要素が盛り込まれた作品になっているようです。(※12日にパフォーマンスイベントが開催されましたが、普段はパフォーマーの方がいらっしゃるわけではありません)

ナラッキー Chim↑Pom from Smappa! Group
会期:2023年9月2日(土)〜10月1日(日)
会場:王城ビル(東京都新宿区歌舞伎町1−13−2)
開館時間:15:00-21:00(最終入館20:30)
※ただしイベントによって時間変更予定
火曜日休館
料金:2000円(併設されるレストランは入場無料)




9月15日〜10月15日 
TORAJIRO EXHIBITION at EAGLE TOKYO

 二丁目のEAGLE TOKYO BLUEでTORAJIROさんの個展が開催されるそうです。
 Tシャツやキャンバスプリントなどのグッズも販売します(オンラインショップもあります)。パネルの展示でオリジナル作品の販売はございません。とのことです。(また新たな情報が出ましたら、追記していきます)
 
Don't knock it 'till you've tried it
TORAJIRO EXHIBITION at EAGLE TOKYO
会期:9月15日〜10月15日(状況によって伸びる可能性あり)
会場:EAGLE TOKYO BLUE




9月16日〜10月1日
高価な壷

 「上海ラブシアター」や「DIAMONDS ARE FOREVER」などで黎明期から活躍してきたドラァグクイーンであり、アート的な方面でも活躍してきたシモーヌ深雪さんとD.K.ウラヂさんが参加するグループ展です。いったいどんな作品が展示されるのか…観てみたいですね。関西のみなさん、京都へお出かけの際は立ち寄ってみてください。
 
グループ展「高価な壷」
会期:2023年9月16日(土)~10月1日(日)
会場:ギャラリーソラト(京都市下京区風早町569-39ウインドファーストビル3階西側)(地下鉄烏丸線四条駅より徒歩10分、阪急京都線烏丸駅より徒歩10分、阪急京都線大宮駅より徒歩7分)
開館時間:11:00-17:00 初日及び火曜日は13時から営業、日曜日及び最終日の観覧は16時まで
月曜定休
入場料:200円




9月20日(水)〜11月5日 東京
THREE -Many a mickle, makes a muckle-

 八王子のブレインブルンギャラリーで開催される「『THREE -Many a mickle, makes a muckle-』David & Marc & Keeks3人展」に、ドラァグクイーン、DJ、コラムニスト、プロモーターなどとして活躍してきたデヴィッド・ホッジの作品が展示されます。デヴィッド・ホッジは、ロンド・ソーホーのクラブシーンで四半世紀にわたって活躍した伝説のドラァグクイーン「Dusty O」で、7年前にステージから遠ざかり、新たに自分を表現する手段として絵を描き始めたそうです。主にオンラインで作品を発表しながら着実に画家としての道を切り開いていき、ロンドン、バーミンガム、バルセロナなどで個展を開催、合計500作品以上をセールスしたといいます。また、オープンリーゲイの人物として初めて英国会議事堂で個展を開き、展示した作品が全て買い手がついたという大成功を果たしています。「ホッジの作品は、彼の過去の経験やライフスタイルを垣間みせ、彼の好き嫌い、弱点や奇行を反映し、パフォーマーとして、そして人間としての彼の現実の歪んだイメージで溢れている。カラフルな彼の作品は、通常の『良い』とさせる規範の色使いを完全に無視する方法で、エネルギー、活力、そして自発的な創造性で生み出されている」とのことです(詳しくはこちらの記事をご覧ください)

『THREE -Many a mickle, makes a muckle-』David & Marc & Keeks3人展
会期:2023年9月20日(水)〜11月5日(日)
会場:『BrainBrunnGALLERY』2Fメインギャラリー(東京都八王子市元横山町3-1-1)
無料
※ご予約していただけると優先的にご覧いただけます(予約はこちらから)




10月21日
dumb type「S/N」記録映像上映会&シンポジウム

 ダムタイプは1984年に京都市立芸術大学の学生を中心に結成されたアーティストグループで、ビデオ・アートやコンテンポラリー・ダンスを組み合わせた「マルチメディア・アート・パフォーマンス・グループ」と呼ばれることが多く、海外公演も多数行い、芸術的に高い評価を得ています。1994年に初演された『S/N』は、ハイパーメディアなダムタイプの作品の中でも異彩を放っており、故・古橋悌二さんの思いが強く反映された作品です。浅田彰さんをはじめ、多くの文化人が絶賛し、海外でも高く評価されています。90年代にゲイであること、HIV+であることをカムアウトした衝撃作であり、世界や人生や愛についての壮大な問いであり、全人類に贈る新たな「LOVE SONG」のような作品です(レビューはこちら)。DVD化はされておらず、ごく稀に今回のように記録映像の上映が行なわれてきました。たいへん貴重な機会ですので、ぜひご覧ください。

dumb type「S/N」記録映像上映会&シンポジウム
日時:2023年10月21日(土)13時10分開場、13時30分上映開始
会場:多摩美術大学八王子校 レクチャーホールA
入場無料
予約必須(予約はこちらから)、先着100名
 

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