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レポート:NLGR+2023

4年ぶりにして20周年を祝うNLGR+2023が5月27日(土)28日(日)の2日間、栄の池田公園で開催されました。全国から大勢のゲイ男子が集い、あたたかくも感動的な盛り上がりを見せました。

レポート:NLGR+2023

4年ぶりにして20周年を祝うNLGR+2023が5月27日(土)28日(日)の2日間、栄の池田公園で開催され、全国から大勢のゲイ男子が集い(GMPD系多数)、手作り感満載でほのぼのとしたお祭りを楽しみ、あたたかくも感動的な盛り上がりを見せました。1週間前の予報では、雨マークがついていたそうなのですが、雨が見事に1日ずれて(月曜から東海地方も梅雨入りしました)、見事に2日間、晴れました(NLGRは昔からそうでしたね。たとえ台風でもイベントが始まる直前に雨がやんだり)。ステージもオープンエア(屋根なし)で気持ちよく。お友達どうしトークがはずみ、和気あいあいとした光景にも癒されて。あちこちに笑顔があふれていました。そんなNLGR+2023のレポートをお届けします。
(取材・文:後藤純一)



1日目(5月27日)
 
 会場の池田公園に着いた瞬間、ちょっと泣きそうに…。ひとことでは言えないのですが、数々の思い出が詰まった池田公園にNLGR+が帰ってきたということの感慨もあり、オープニングから大勢の方たちが集まってくれていたのもうれしかったです。
 
 コロナ禍以降初めての、数年ぶりに会う友達も何人もいて、再会を喜びあったりしましたし、新たに知り合う方などもいました。みなさん早い時間からずっとお祭りを楽しんでいて、和気あいあいとした雰囲気で、がちむち系の素敵男子も大勢いて、非常に景色がよかったですし、「これは僕らのためのイベントだ」と思えるコミュニティ感がありました。そこが他のイベントにはないNLGR+の魅力だと思います。
 
 ステージの催しの前に、出展ブースをご紹介いたします(ステージでブース紹介の時間も設けられていたので、そちらの写真も使ってご紹介)。今回は愛知県や、HIV検査キットを配布&アンケート実施(2日間で500個の郵送検査キットが全部なくなったそうです。さすがはNLGR+)、全国のHIV予防啓発団体、名古屋レインボープライド、NPO法人ASTA、PROUD LIFE、レインボーなごや、僕らのゲイライフプロジェクトなど地元で活動している団体、依存症の方を支援する団体、名古屋のゲイバーのみなさん、出演アーティストさん、占いのブースなどがありました。





 
 ステージでは、緑区カナコさん(名古屋の古株ドラァグクイーンの一人。かれこれ10年以上もNLGR+を盛り上げてくれています。実は緑区に住んだことないそうです)と、樹梨杏さん(ずっとNSM=として活躍してきた方、現在は名古屋レインボープライド共同代表)が司会をつとめ、さまざまなアーティストの方々のライブやパフォーマンスが繰り広げられました。カナコさんは安定の面白さで、つつがなく進行しつつ、たくさん笑わせてくれました(カナコさんのMCは面白いだけじゃなく、決して誰かを傷つけたり怒らせたりしない、絶妙なバランス感覚が素晴らしいです。「私は好きです」とか)
 あと、出演者のみなさんにHIV検査やセクシュアルヘルスについてコメントを求めていて、それを聞いて、HIVについてリアルに感じたり、検査受けようかな、とか自分事として考えることができた方も多かったのではないかと思いました。
 すべてのMCに手話通訳がついていたのも、頭が下がります(2日間、すごく大変だったと思います。おつかれさまでした)

 
 オープニングのアルテミスさんのカラーガード・パフォーマンスに続き(写真が間に合いませんでした。すみません)、自称「史上初!女装アイドル」のぴこたん(以前、最先端ガールズの一員として東京や横浜、大阪のパレードにも出演してました)がライブを披露。元気にかわいく、パフォーマンスしてくれました。

 ReSTA★のみなさん(以前、TOYFULというグループ名で活動し、レインボーフェスタ!やNLGR+にも出演)は、全員歌って踊れる本格的なJ-POPカバー・グループで、キンプリとかなにわ男子のみんな知ってる曲を披露して盛り上げてくれました。



 名古屋が誇るハロプロコピーダンスユニット「DXハンター(デラハン)」のみなさん。あのステージで11人もが(段差もあるのに踏み外すこともなく、フォーメーションがどんどん変わっていく)一糸乱れぬパフォーマンスを、笑顔で、30分以上も見せてくれるという、スゴいステージでした。「泡沫サタデーナイト!」とかみんなが知ってる曲も交えて、ストーリー性も感じさせる構成で。ハローへの愛にあふれていて。本当に素晴らしかったです。





 すっかりNLGR+の定番となったドラァグクイーン企画「区立女装高校」。最初にKOTSUMIさん&レディ・バブリシャスさんが「校歌」(子どもが名古屋いいとこって歌う謎の歌)をパフォーマンスしました。そして「生徒」のみなさんがステージに上がって自己紹介した後、ショータイムへ。クリトリア・ジョローさんはデ○ズニーの『リトル・マーメイド』の名曲に乗ってホタテ貝美女に変身、という素敵ショーを披露(なぜか公園の鳥が大騒ぎしてました)、「ぽ」さんは、新人らしいアイドル系のショーを披露、ユリカ・アンダーシアさんは『グレイテスト・ショーマン』をやるのかと見せかけて、18禁の○ンボリミッキーを披露(事前にMCで「お子さんがいたら目をふさいでください」とアナウンスされていました)、そしてピシャさんは「Vogue Femme」を取り入れたアクロバティックなパフォーマンスを披露(床に倒れ込んだり)、最後に全員登場し、ゆる〜い感じで床に倒れたりして笑わせてくれました。名古屋のドラァグクイーンの層の厚さを再確認しつつ、その魅力を存分に堪能できました。拍手!







 以前虹組ファイツで活動していて、今はTikTokで1万件以上楽曲が使用されている「ごはんがおいしいナァ!」をはじめ、「バナナは腐りかけが一番うまい!」「一度くらい寝たくらいで信じることできない」など、個性的な楽曲を歌うジャパニーズ・ゲイ・アイドリスト、ボンバー☆チャマタソ。さんのライブ。アイドルと言いつつ、なんだかすっかり堂々とした風格のアーティストになった感がありました。


 熊系なルックスも素敵ななおとさんは、心洗われるような優しい歌を聴かせてくれました。「StagPartyShow」にも楽曲を提供している灯(ともし)さんが作った歌なども披露していました。


 アーティストのサポートやライブ活動もしているスーパーサラリーマン、KOHEYさんは、驚異のハイトーンボイスを駆使してマッキーやMISIAさんの歌などを披露。客席にいたアイカタさんに、愛を込めて歌うシーンなどもあって、素敵でした。

 
 MiNさんのライブ。すでにうちわを作って応援してくれるファンの方たちもいて、人気を感じさせました。ハロプロとかプリプリとか、なじみのある曲を歌って盛り上げていました。


 1日目のトリは、LGBT落語研究会の艶目家籠刃坊さんが「雪中の時鳥(ホトトギス)」という演目を披露してくれました。井原西鶴の『男色大鑑』を元にした創作落語で、理想を絵に描いたようなイケメンが目の前に…的なシーンもある、ゲイテイストなお話でした。

 

 この日の夜は(前夜の金曜にも)、いくつも大型のゲイナイトが開催され、東京や大阪などからも豪華キャストが来られて、たいへんな盛り上がりを見せました。池田公園は夜中でも人が結構たくさんいてにぎやかでした(たぶんナイトの会場のビルの前はたまってると怒られるので、公園に移動してしゃべってたんだと思います)。ゲイバーに飲みに行ってた方も多かったのでは?と思います。

 ちなみに、NLGR+というよりは6月3日(土)の名古屋レインボープライドに向けて、ということだと思いますが、松坂屋名古屋店が今年も大きなレインボーフラッグを掲げてくださってました。ライトアップされてとてもキレイでした。



 

2日目(5月28日)

 午前11時半頃、あの公園にブラスの音が響き渡っていて、なんだかジーンときました。
 池田公園に行く前に、コミュニティセンター「rise」に立ち寄りました(公園のすぐ近くです)。何人もの方が来られていました。コンドームのパッケージのイラストを手がけた黒助さんのたいへんセクシーな作品が展示されていました(残念ながら撮影NGでした。6/10までやってますので、名古屋のみなさん、ぜひ)。歴代のNLGRのパンフレットが展示されていて、懐かしさがつのりました(いろんな思い出が走馬灯のように…)



 青空の下、大勢の方が見守るなか、12時に名古屋の吹奏楽団「WING」の演奏が始まりました。名古屋だけでなく、大阪や福岡の吹奏楽団の方も参加されていました(大阪や福岡から楽器を持って来るのは結構大変だったと思います。おつかれさまでした)。個人的にはカーペンターズのメドレーがとてもよかったです。途中、団員の方がダンスを披露する場面もあって楽しかったです。プログラム最後の曲は「オーバー・ザ・レインボー」。そしてアンコールは「ドレミの歌」(マーチング的にアレンジされていて、カッコよかったです)。1時間近く、たっぷりと聴かせてくださって、拍手!でした。10月8日(日)に演奏会もあるそうですので、お近くの方はぜひ。


 13時半からは、意外にも初登場の、新宿エイサー「新虹(あらぬーじ)」が勇壮な演舞を披露しました。関西のメンバーを中心に、東京や沖縄からも参加していました。コロナ禍で「新虹」のエイサーを観る機会もすっかり減ってしまい、とてもひさしぶりでした。地方(じかた。三線を弾きながら歌う方)が4人もいたのが豪華だと思いましたし、いつの間にか「新虹」の大きな旗も作られていて、新鮮味や力強さがアップしていました。同世代の方たちも頑張ってました!



 愛知のベリーダンススタジオ「Amazigh(アマジーグ)」のみなさんによる、ATS.ファットチャンスベリーダンススタイルという、グループで即興で踊る新しいスタイルのベリーダンス・パフォーマンスが披露されました。幻想的で魅惑的、素敵なダンスでした。

 2016年のNLGR+がデビューだったというSongiL(ソンイル)さんは、一服の清涼剤のようなさわやかなポップソングでオーディエンスを魅了。ファンの方々の声援も受けてました。


 全国のLGBTQイベントを盛り上げてきたゲイのアイドルサークル「虹組ファイツ」。今回は関東、東海、九州のみなさんがオリジナルの楽しい楽曲(有名どころのアーティストを連想させる作りになっているのが楽しいです)を次々に披露し、最後に全員で「なんちゃって大奥」を元気にパフォーマンス。新たなメンバーも見受けられました(補聴器を着けたろう者の方もいらっしゃいました)







 16時から出演予定だったLGBTQフレンドリーなよさこいチーム「FLYDAY!」が出演できなくなったとのことで、その間、バルーンリリースのための風船の購入が呼びかけられたり(来年も開催できるように、というチャリティ的な趣旨であることを説明すると、みなさん続々と風船を買ってくれていて、胸熱…)、ブース紹介も拡大して行なわれました。みなさんこの時間に風船のチケットを買ったり、ブースを回ったり、トイレに行ったり、思い思いに楽しんでいた様子。ちなみに私は会場内に出店されていた屋台で名古屋風だと思われる甘辛ダレの唐揚げを買って、イマエビートさんとおしゃべりしていました。そこにボクパの川野邉監督も来られたりして。楽しかったです。
 
 大阪が誇るハロプロダンスカバーグループ「H-Pag!」が登場しました(4月の「つんパラ。」でも素晴らしいステージを見せてくれましたね)。今回は旅をテーマにして、札幌や福岡、東京(BEYOOOOONDSの『都営大江戸線の六本木駅で抱きしめて』でした。素敵)、大阪にちなんだ楽曲を披露して、最後に、名古屋を歩いて、会場に着いた!ということでモー娘。の『ここにいるぜぇ!』で締めるという、コンセプチュアルなショーを見せてくれました。夏らしいさわやかな衣装も素敵でした。





 大トリは占いブースでセラピストとして鑑定もしていたシンガー、ラジオパーソナリティのDaiskeさん。手話が付いた歌だったり、「レインボー」という歌だったり、NLGR+の最後を飾るにふさわしい、心に沁みるようなライブでした。

 2日間にわたって開催されたNLGR+もいよいよ大詰め。「ふぃなあも」を迎えます。ドラァグクイーンのみなさんがステージに上がり(NRPのライラさんもレインボーカラーのリボンで登場)、司会のお二人によるカウントダウンで、バルーンリリースが行なわれました。それぞれの思いや願いを乗せた風船が、パーっと夕暮れの空に浮かんでいき、みなさん、その様子を見守った後、拍手していました。この光景は何度見てもジーンときますね…。


 イベント終了後、毎回恒例なのですが、40〜50人くらいのボランティアスタッフのみなさんが集合して写真を撮っていました(心からのありがとうの気持ちを込めて、撮って差し上げました)
 名残り惜しげに会場に残って友達とお話する方たちもたくさんいらっしゃいました。
 
 
★NLGR+2023のフォトアルバムはこちら




NLGR+2023を振り返って

 正直、何度も泣きそうになりました。
 この日のためにものすごい練習を重ねて最高のパフォーマンスを披露してくれたみなさん、わざわざ県外から来てボランティアスタッフ(ゴミの係だったり)をしてくれていた方、僕らのゲイライフやセクシュアルヘルスのために働いてくださった方々(若い女性の方たちが検査キットを配ってくれていたり)、いろんな方たちが4年ぶりのNLGR+の開催を祝い、NLGR+の成功のために尽力してくださっていて…。感謝の念にたえません。ありがとうございます。
 
 2000年代の初期のNGR〜NLGRでは、当時ゲイシーンで大活躍していたインディーズミュージシャンのライブや、補聴器を着けたろうのお二人によるユニット「ピンク・レゲイー」の笑えて泣けるパフォーマンス、感動の同性結婚式などが行なわれ、また、『四角い夏』『ひまわり』といったオリジナルの映画も製作され(号泣必至の名作でした)、数々のドラマが生まれました。HIV検査会も池田公園向かいのセントメインホテルで行なわれたりしていました。手作り感やあたたかさだけでなく、ゴージャスさも感動も味わえる2日間のお祭りとして、名古屋のNLGRは全国からゲイが大勢集まる一大フェスとして愛されてきました。NLGRや夜のクラブイベントで出会いがあったり、彼氏ができたという方もいらっしゃるでしょうし、NLGRのおかげで名古屋が好きになったという方も多いはず。そして、なかにはNLGRの検査会でHIV陽性であることがわかった方もいらっしゃると思うのですが、NLGRというゲイコミュニティのあたたかさを実感できるお祭りがあったからこそ、「独りじゃない」と思えたり、絶望感に苛まれることなく、友達やいろんな人たちに支えられ、前を向くことができたという方もきっといらっしゃったことと思います(2000年代は今以上にHIVのことが深刻に受け止められていて、ゲイコミュニティ内でもHIV/エイズに対する偏見や恐怖心が強かったので、こうしたイベントは本当に大切な意味を持っていました)

 ゲイライフにおいて、彼氏・パートナーももちろん大事なのですが、いざという時に助けてくれるような友達や相談できる場所もとても大事だと思います。それ以前に、自分自身がゲイであることを受け容れるというハードル(自分へのカミングアウト)もあります。「ゲイでよかった」と思えるような、ゲイコミュニティの素晴らしさを感じられるNLGR+のようなお祭りは、いろんな意味で大事で、かけがえのないイベントだと思います。
  
 会場は見渡す限りゲイだらけ(GMPD系多数)。たまに目の覚めるようなイケメン(がちむち兄貴)に目を奪われ、思わず目が釘付けに…でも、ちょっと勇気を出せば、声をかけて一緒に写真を撮ったりもできちゃう(運がよければ連絡先も…)、そんな奇跡が起こるのもNLGR+(や夜のクラブイベント)の魅力です。もしかしたらソンクランのベアプールパーティや、台北のパレードのベアパーティなどと並ぶ、アジア三大熊祭りの一つなんじゃないかと勝手に思ったりします(そういうふうに認定されてもおかしくないと思います。全国のハイクオリティな熊さんが大集結してるので)。そんな景色のよさだからこそ、大勢の方たちが集まるし、HIV検査の機会やセクシュアルヘルスの情報をしっかり提供できるのだと思います。

 個人的には、ひさしぶりの方に何人も会えて、うれしかったです。名古屋の市川先生※にもお会いできて、お元気そうでよかったです(※名古屋市立大学看護学部教授を経て、現在は金城学院大学消費生活科学研究所 教授を務める市川誠一氏。aktaやMASH大阪、ANGEL LIFE NAGOYAなど全国のHIV予防啓発団体は、市川先生が厚生労働省から委嘱されているエイズ対策研究の事業費によってまかなわれてきました。僕らのコミュニティの恩人です)
 
 今や全国で唯一のゲイの野外フェスであり(ゲイだけじゃなくレズビアンなどの方々も一緒に、という気持ちで「L」や「+」が加わりましたが、HIVがテーマなので、メインはゲイ・バイセクシュアル男性ですよね)、HIV検査を受けることもでき、セクシュアルヘルスのメッセージを受け取ることもできるNLGR+というコミュニティイベントが20年も続けられてきたこと、本当に素晴らしいと思います。今回、聞くところによると、HIV検査会がなかったため(以前はHIV検査会のために行政から予算が下りていました)、資金面で厳しく、名古屋のゲイバーのみなさんなどが協賛してくれて何とかなったんだそうです。イベントの最後に、参加者のみなさんに1個500円でバルーンリリース用の風船を買っていただいたのも、来年も開催できるようにするためのチャリティ的な意味でした。
 実行委員会のみなさんも、出演してくださったみなさんも、ボランティアでやってくださっていて(交通費とか食費とかいろいろ考えると、持ち出しだと思います)、それでも、公園の使用料、テントやステージ、音響機材などを借りる費用、パンフレットの印刷費など諸経費を合わせるとおそらく数百万円の予算が必要だと思われ、もし今後、赤字が続いてしまうと開催できなくなってしまうのでは…と心配になります。
 NLGR+というかけがえのない「僕らのお祭り」が、来年以降も、末永く続いていってほしいと、切に願います。


 

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