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レポート:Midsumma Pride March @Melbourne

2月4日にオーストラリアのメルボルンで開催されたプライドマーチと、最近できたプライドセンターの様子をレポートします

レポート:Midsumma Pride March @Melbourne

 オーストラリアのLGBTQのお祭りといえば何と言ってもシドニーのGay and Lesbian Mardi Gras(以下マルディグラ)が有名で、マルディグラのフィナーレとして開催されるパレードは「世界一の華やかさ」と言われ、大規模なアフターパーティとセットで楽しむツアーも何度となく実施されてきました(昨年のマルディグラはワールドプライドとして開催されました。今年のマルディグラにも日本の方たちのフロートが出ています)。一方、オーストラリアのもう1つの大都市・メルボルンでもMidsumma Festival(以下Midsumma)という魅力的なお祭りが開催されていることはあまり知られていないと思います。以前お届けしたゲイ旅コラム:「住みたくなる街No.1」メルボルンの魅力で2006年のMidsummaの「Carnival」という公園でのフェスをご紹介しました(市内中心部のビル群を仰ぎ見る広大な公園に何万人ものLGBTQが集い、ピクニックをしながらステージイベントやたくさんのブースや「T Dance」を楽しむイベントです)。Midsummaはキックオフの「Carnival」と、フィナーレの「Victoria’s Pride Street Party」の間にプライドパレードが開催されるかたちで、パレード+アフターパーティがフィナーレのシドニーとは趣が異なっています。今年のMidsummaは1月21日の「Carnival」で幕を開け、2月4日に「Pride March」が開催され、2月11日の「Victoria’s Pride Street Party」でフィナーレを迎えるというスケジュールでした。
 今回、そのMidsummaのプライドマーチを体験することができましたので、2021年にオープンしたばかりのプライドセンターなどとともにレポートをお届けします。なお、ゲイ旅コラム:プライドシーズンのメルボルンでは、関連イベントやゲイシーンの様子などもお伝えしております。
(後藤純一)
 
 

空港や街中もお祝いムード

 空港に着いてまず感激したのは、メルボルン市内に向かう人がみんな乗る「スカイバス」がレインボーカラーに彩色され、「You are loved」というメッセージが書かれていたことです。ニューヨークにしても台北にしても、プライドシーズンにはLGBTQの観光客を出迎えるウエルカムメッセージが掲げられるのが普通になっていると思いますが、メルボルンもそうでした(東京もいつかそうなるといいですね)
 空港内のショップでも、アブソリュートなどいくつもの企業がプライドを祝うメッセージを出していて、素敵でした。




 市内でも、コリングウッドやフィッツロイというゲイタウン(二丁目のような感じではなく、ゲイの施設が点在している感じ)の街角にプライドの大きなビルボードが貼られていたりしました。


 
Midsumma Pride March

 前週までは真夏とは思えないパッとしない天気が続いていたというメルボルンですが、2月4日のパレードの日は最高気温39度の激的な暑さになりました。
 市内の交通の要所、サザンクロス駅からパレードが開催されるセントキルダ(メルボルン有数のリゾートタウン)までトラムの臨時便が出て、パレードに参加する人々で満員電車状態になっていました。
 
 午前11時にプライドマーチがスタート。セントキルダ駅の横の広場に集合したパレード参加者が、目抜き通りであるフィッツロイストリートを晴れやかに行進します。素敵なカフェやバーが並ぶアーケードの商店街や、通りの反対側(中央分離帯)から大勢の人たちが手を振ったり、応援していました(学生団体だったり医療関係の団体だったり、その一つひとつの名前を呼んで大きな声で大げさに声援を送るゲイの方がいて、最初は「ゲイっぽくてステキ」と思ってたのですが、3時間もそうやって盛り上げ続ける姿にジーンときてしまいました)
 この商店街の真ん中に、2021年に州政府が予算を出してオープンしたプライドセンターがあって、そのテラスからパレードを応援する方たちもいました。
 シドニーと違って有料の観覧席などはなく、観客が多すぎてパレードが見えないということもないので、自由に応援できる感じで、気楽でよかったです。私たちは初め、人が少ない中央分離帯のところで写真を撮っていたのですが、日差しが強くなってきて、あとでアーケードのほうに移動しました(それでもだいぶ日焼けしました)
































 フロートは400もあって、15,000人が歩いたそうです。LGBTQの団体やサークルはもちろん、市の職員や消防隊や警察官やネイビーの人たちも参加していましたし、企業のフロートもたくさんありました。マルディグラほどショーアップはされていないものの、みなさん元気に笑顔で歩き、晴れやかでハッピーな祝福感に包まれた、手作り感やコミュニティ感もある、とても素敵な、いいパレードでした。なかでも、プライドの飾り付けをしたトラムがパレードのフロートとして走っていたのは拍手モノでした。全部で3時間くらいのパレードで、沿道で自由に応援できる感じも含めて、TRPに近いものがあると思いました。
 パレードのコース自体はフィッツロイストリートを数百メートル歩いて海辺のカターニガーデンにゴールするという、ごく短いものなのですが、その分パレードに全集中して一気にパワーを出しきってる感じでしたし、パレードの様子はABC(日本でいうNHK)で中継されていたので、歩きがいやアピールのしがいもあるだろうなと思いました。
 現地在住の方の話によると、企業のフロートで歩いている方たちはほとんど当事者の方だそうで(向こうでは企業が社員に動員をかけたとしても誰も来ないので、当事者じゃないとわざわざパレードに来ないという話でした)、それであんなにたくさん歩いてるの?と逆にビックリしました。そこが日本とは全然違うなぁと感じました。
 あと、大通りを歩行者天国にしているからだと思いますが、交通整理的な警官の方や隊列のボランティアの人が全くいないのも印象的でした。
















 終盤、なかなかフロートがやってこないな…もう終わったのかな…と思ったら、警察官の隊列に対して数十人の人たちがプロテストとしてパレード参加を妨害し、なかなか前に進むことができずにいて…という現場に遭遇しました。暴力行為などは全くなかったのですが、物々しい雰囲気で、しばらくして警察官の方たちは反対側の車線(パレードのコースではない道)にそれていきました。あとでこの抗議活動のことはテレビのニュースにもなっていました。コミュニティ内では以前から、LGBTQが警察から弾圧を受けてきた歴史がある以上、警察がパレードに参加することを決してよく思わない当事者感情が根強くあるそうです。警察も近年はずいぶん変わったし、このようにLGBTQコミュニティへの支援の気持ちの表明としてパレードに参加しようとしているので、主催者側は参加を認めているのですが、このような抗議を行なう人たちも現れ…ということのようです。ビクトリア州政府は、パレードでこのような揉め事が起こったことに対して双方を非難しているそうです(詳細はこちら。※英文です)












 その後も何事もなかったかのようにパレードは続き、シドニーのように最後にボランティアスタッフが登場してみんなで拍手、ということもなく、最後のフロートが歩き終えるとあっさり終わりました。
 ゴール地点のカターニガーデンではフェスが行なわれていて、ステージでコーラスなど様々なパフォーマンスが行なわれたり、いろんなブースが出たりしていました。なのですが、木陰が少なく(すでに木陰は大勢の人で埋まっていて)午後2時過ぎの強い日差しが照りつける会場にずっといると熱中症になってしまいそうだったので、程なくして会場を後にしました。

 念願の、大好きなメルボルンのコミュニティのプライドパレードを体験できて、パワーをもらえましたし、シドニーのマルディグラとはまた違う魅力があって、とてもよかったです。シドニーとかNYみたいにお金をかけて超巨大なフロートを出したりしなくても、プライドパレードってこれでいいのよね、と思えましたし、東京のパレードに近い感じもしました。日本のみなさんもぜひ、いつかメルボルンのパレードを体験してみてください。

★プライドマーチのフォトアルバムはこちら


 
ビクトリア・プライドセンター

 ビクトリア・プライドセンターはセントキルダのメインストリートであるフィッツロイストリートの中心にあり、壁が何箇所も丸くくりぬかれたようなひときわ目を引くデザインの真新しい4階建てのビルです(ビルまるごとがLGBTQセンター。超豪華!)。こちらの記事でも紹介されているように、ビクトリア・プライドセンターはビクトリア州政府が予算を出して2021年に設立されました。
 セキュリティの人が立っているエントランスを通って中に入ると、1階はカフェのような感じでくつろぐスペースがあり、写真展も行なわれていたり、何よりすごいのは、ホールが吹き抜けになっていて、大きな階段でパフォーマンスが行なわれたり、DJが音楽を流したり、奥にはバーもあるという、まるで商業施設のようなスペースだったことです。LGBTQ関連の書籍を集めた書店もあり、セクシーなゲイ雑誌も販売されていました。
 エレベーターで4階に上がると、屋上に出ることができ、そこではボランティアの人たちがお酒やソフトドリンクを売るカウンターがあり(ほとんど原価で販売)、DJがプレイしていて、素敵な「T DANCE」の会場になっていました。シティのビル群を眺めたり、広々とした芝生エリアでくつろいだりもできます。
 そのすべてが本当にゴージャスで、日本のLGBTQセンターとのあまりの違いに愕然とさせられました。






 このセンターでは、LGBTQに関する会議や集会、イベントが開催されるほか、LGBTQのリーダー養成プログラムなども行なわれているそうです。州政府は、オーストラリアで同性間性交渉が非犯罪化されて40周年の節目となった2022年、1600人以上の当事者に意見を聞き、2032年までの施策の計画を策定し、LGBTQを差別から守るさらなる法制度や健康福祉サービスの充実、安全を守る対策を強めていくことを決めたそうです。(ちなみにオーストラリアのペニー・ウォン外相は、オープンリー・レズビアンで、パートナーと一緒に2人の子を育てているそうです)
 プライドシーズンでなくても、このセンターは常にオープンしているので、もしメルボルンに行かれた方はぜひ足を運んでみてください。

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