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レポート:岡山レインボーフェスタ2024前夜祭「レインボーキャッスル」

10月6日(日)、岡山市で第4回を数える岡山レインボーフェスタが開催されましたが、前夜には岡山城で前夜祭「レインボーキャッスル」も開催されました。前代未聞のお城の中でのLGBTQイベントをレポートします

レポート:岡山レインボーフェスタ2024前夜祭「レインボーキャッスル」

2年前に令和の大改修を終えて(初めてパレードが開催されたときはまだ改修中でした)、1フロアをまるごとイベント用に貸し出せる多目的フロアに改修された岡山城。今回、岡山市がレインボーフェスタを共催しているということもあり、岡山のシンボルの一つである由緒ある岡山城という場所で岡山レインボーフェスタ前夜祭「レインボーキャッスル」が開催されることになったのでした。前代未聞のお城の中でのLGBTQイベントの模様をレポートします。
(取材・文:後藤純一)



 岡山城の大きさに圧倒されながら中に入ると、2階のフロアに案内されました。お城の歴史を解説するパネルなどもありつつ、プロジェクターで白い壁に投影できたり、椅子もたくさん並べられたりというイベントスペースになってました。
 今回の前夜祭「レインボーキャッスル」はシンポジウムと映画上映会の2本立てでした。司会を務めてくださったのは、フリーアナウンサーの加藤昌美さんです。
 
 18時から「LGBTQが働きたい、戻ってきたい岡山に」というテーマで、職場環境や雇用について話し合うシンポジウムが行なわれました。四国学院大学教授で岡山のパレードにも参加してきた大山治彦さんがコーディネーターを務め、岡山市人権推進課の加藤恵一さん、社会保険労務士の谷川由紀さん、ビューティカウンセラーの高野晶さん(当事者の方)、日本生命の人事部の方、立岡靴工房の社長さんが登壇しました。
 日本生命さんの、トランスジェンダーの方が(生命保険自体入れなかったりするなか)加入後に性別変更した場合も希望する性別で保険料を選べるようにしているというお話やDE&Iを担当している「輝き推進室」のこと、立岡靴工房さんのトランス男性の靴の困り事の相談に乗ったり、経済団体の会合にスカートを穿いて行った話(いいねと言ってもらえたそうです)などが素敵でした。
 社会保険労務士の谷川さんは、企業から就業規則改訂の相談があったときにLGBTQの施策も盛り込むことを提案すると、最初はわからないと言うけど、だいたい9割くらいは導入してくれるとおっしゃっていて、なんてパワフルなアライの方だろう、と拍手したくなりました。
 一方、トランスジェンダーの高野さんは、働いているクリニックの先生がそれを前面に打ち出したくてどんどん周りに言ってしまって困ったという、アウティングの経験を語っていました。
 質疑応答では、会場から、経産省トイレ裁判の最高裁判決があったにもかかわらず国の動きが遅い、自分は制服のある公務員だけどまだ制服が支給されない、という当事者の方からのお悩みが語られ、そのお話へのお答えとして、岡山市の加藤さんが、庁内にはまだトランスジェンダーとカムアウトした人はいないが、多目的トイレは対応するし、全職員が中塚先生(岡山大教授で日本GI学会の理事長)の研修を受けている、と話していました。
 最後に大山さんが締めの言葉として、この企画はプライドの一環で行なっている、プライドとはかけがえのない自分を誇ることであり、自分を知ってもらう闘いである、と語っていて、素晴らしいと感じました。





 
 19時半からは、ちくわフィルムの『幸運の犬』の上映会が行なわれました。第1回からパレードに参加しているバー「AX」のRYUHEIさんがちくわファンで、代表の市川さんに『幸運の犬』を観てもらったところ、号泣…そして映画上映会が決定したんだそう。監督のまちょさんが岡山県出身だったり、映画の中でもTENさんたちが岡山に帰るシーンが描かれていたりもして、実は岡山に縁の深い映画でもあるんですよね。
 会場には、シンポジウムの時間からすでにちくわファンのみなさんが詰めかけてフロアに人があふれていたので、急遽、スクリーンを増やしての上映となりました。僕は(個人的に同じ映画を何度も観るのが苦手で)『幸運の犬』は3回目なので正直、どうしよう…と思っていたのですが、映画を真剣に観ているゲイのお客さんたちの姿に心が動かされ、また、映画自体も本当に魅力的なので、やっぱり観てしまいました。すすり泣いてる方、何人もいらっしゃいました。
 上映後のトークでは、監督のまちょさんが「まさか自分の映画が岡山城で上映される日が来るなんて思ってもみませんでした。感無量です。たくさんの方たちに感謝」「この映画はほぼドキュメンタリーで、“冴えないおじさん”が前向きに変わっていくお話です」と語り、主演のヒゲポンさんも「映画で描かれたのは現実の自分とほとんど同じです。幸運の犬の魔法というより、周りの人たちに助けられて変わっていく。ゲイのことというより、自分の成長のお話です」と語っていました。
 せっかくなのでちくわイベントの名MC・あゆさんとゲンキマンさんも一言お話を、ということになったのですが、あゆさんは、映画を観て感情が揺り動かされたのか、「私はトランスジェンダーとして生きづらかったことはないけれど、日々の生活のこととか、人として生きづらくて…」と涙ながらに話しはじめ、身につまされるものがありました。一方、ゲンキマンさんは、(代表の市川さんとダイニングバーを経営するパートナーさんが、会場のお客さんのためにカフェブースでサンドイッチやコーヒーなどを販売していたのですが、大量に余っていたようで)「僕はこんな美味しいサンドイッチ、食べたことないです。この卵がフワフワで本当に絶品。ぜひみなさん買って帰ってください」と語り、男気を感じさせました。夜食用に僕も1つ買ったのですが、なんと10個買っていた方もいて、お客さんもあったかい人が多いなぁとしみじみ。



 LGBTQ(ということだけでなく、人として)の生きづらさに寄り添おうとするような、あたたかい気持ちにあふれた、胸が熱くなる前夜祭イベントでした。
 よく考えると、お城の中で、感動の純愛ドラマとはいえちょっとセクシーなシーンもあったりするゲイ映画が上映されたのはスゴいと思いますし、このイベントを岡山市が共催してくれたことも本当に素晴らしいと感じました。

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