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レポート:PON☆STAR AUTUMN LIVE TOUR 2024『栗と芋』&映画『髭桜』上映会

岡山レインボーフェスタの後、前夜祭でもレインボーフェスタでも活躍したちくわフィルム「PON☆STAR」のみなさんが、バー「AX」でライブを披露し、併せて『髭桜』という映画の上映+アフタートークも行なわれました。レポートをお届けします

レポート:PON☆STAR AUTUMN LIVE TOUR 2024『栗と芋』&映画『髭桜』上映会

10月7日(日)の岡山レインボーフェスタの後、前夜祭でもレインボーフェスタでも活躍したちくわフィルム「PON☆STAR」のみなさんが、バー「AX」でライブを披露し、併せて『髭桜』という映画の上映+アフタートークも行なわれました。激熱だったイベントのレポートをお届けします。



ちくわフィルムとは(PON☆STARとは)


 3年前、コロナの間にYouTubeでは様々な映像コンテンツが上がり、おうち時間を慰めてくれましたが、その中でも、僕が特にいいなと思ったのは『すいか』という短編映画でした。夏に彼氏と知り合って、9月にはもう飽きられ、浮気されている主人公の心情が、スイカをメタファーにして見事に、切なく描かれていました。同時期の『TIME』は、痛い失恋の後に、再び前を向いて新しい恋を始めようとする(もアクシデントによって新たな出会いを失いかける)主人公を応援したくなる素敵な短編でした。貫太さんや熊蔵さんというキャストの魅力も手伝って、ちくわフィルムの映画は世界中にファンを獲得し、今度はRainbowEventsとコラボし、GOGOさんなどもキャストに加え、クラウドファンディングによって本格的な自主制作映画『クロスローズ』を製作しました。ちくわ勢の熊さん系俳優と、RainbowEventsのGOGO系俳優がうまくミックスされ、ちくわフィルムの良さをそこなわずに、さらにファン層を広げるような映画になっていました。そしてヒゲポンさんという新たなタレントを発掘し、名作『幸運の犬』が生まれ、レインボー・リール東京などでも上映されました。
 「ちくわ」というのは鶯谷にあるリーマン系のハッテン場で、そこでは店員さんがちくわモデルだったり、YouTubeでは観れないセクシーな作品も上映されていました。ちくわフィルムに出演している方たちは「これは僕だ」「こういう人身近にいる」と思える人たちであり、「会いに行けるアイドル」でもあり、(全員ではないですが)ポルノスターでもあります。ちくわの世界には(ちゃんと映像とかはハイクオリティなのですが)どこか「雲の上」感ではなく親しみやすさやアットホームさが感じられますし、上映会やライブなどでのファンサービスも欠かしませんし、そうやって支持を厚くしていったんだと思います。
 2022年には熊蔵さん&しゅんくんの「眠れる森のくま」という熊系アイドルユニットが結成され、そちらも人気を博し、昨年末のイケオジアイドルユニット「PON☆STAR」の誕生へとつながります。若さが絶対的な価値を持つゲイシーンにあって、「シワが増えても 幾つになっても 叶えたい夢がある」と歌う「PON☆STAR」は、オジさん世代の希望であり、大げさじゃなく、生きる勇気すら与えるような素晴らしいユニットだと思います。
 そんなPON☆STARが岡山のパレードに参加すると知ったのは、うれしい驚きでしたし、俄然行くのが楽しみになりました。


 
レポート:PON☆STAR AUTUMN LIVE TOUR 2024『栗と芋』&映画『髭桜』上映会

 PON☆STAR AUTUMN LIVE TOUR 2024『栗と芋』&映画『髭桜』上映会は、PON☆STARのみなさんのライブと映画『髭桜』上映+アフタートークの二部構成で、10/6の岡山を皮切りに、11/24の新橋タウンハウス東京をファイナルとして北は札幌から南は那覇までを巡る全国ツアーです。PON☆STARは全員が全国を回るのが難しく、芋☆STARか栗☆STARのどちらかが参りますということだったのですが、初日の岡山は、パレード(岡山レインボーフェスタ)に出演したあとそのままPON☆STARの全員が出演するという豪華布陣でした。

 パレード終了が17時で、開場が17時半、開始が18時だったので、大慌てでホテルに戻ってシャワーを浴びて晩ごはんを食べて会場の「AX」に向かいました。予想通り、ファンの方たちの長蛇の列ができていました。
 18時になる直前、「AX」に入ると、すでにフロアは満員状態。壁にPON☆STARの大きな写真が貼られていたのがまずスゴいと思いました。お客さんが応援しやすいようにアイドルのライブでよく使われている光るスティック(サイリウム?)が配られ、否応なしに雰囲気が盛り上がるなか、PON☆STARのライブがスタート。芋☆STARが「SURVIVAL LOVE」を、栗☆STARが「LOVE SURVIVAL」、そして本家PON☆STARが「Smiling Traveling」と、レインボーフェスタではやらなかった「Golden Age」も聴かせてくれて、とてもよかったです(ゲンキマンさんが「パレードのフロートでこれがかかって、メンバーの姿に重なって思わず泣いてしまった」と語っていて、わかる、と思いました)。ゲンキマンさんもXに書いてたように、キラキラの幕が張られ、照明もちゃんとあるし、シャボン玉やスモークまで出てくる豪華なステージでした。
 ライブの後、みなさん口を揃えてレインボーフェスタのステージに立ててよかった、パレードも(初めてだったりしたけど)とても楽しかったとおっしゃっていました。






 休憩を挟んで、映画『髭桜』の上映となりました。
 正直、朝早くからレインボーフェスタに行って、太陽をいっぱい浴びて、走り回って、この時点で眠気がすごかったのですが、映画が始まると、一気に目が覚めました。
 『髭桜』は今年のレインボー・リール東京のコンペに出品するために製作された30分弱の作品です(残念ながら、レインボー・リール東京自体が今年は開催未定なので、スパイラルで上映される日はまだ来ていませんでした)
 ストーリーはあまり詳しくお伝えしませんが、『幸運の犬』がヒゲポンさんという、監督曰く“冴えないおじさん”の実像をほぼそのまま描いた作品だとすれば、この『髭桜』は、マイクさんという、50代だけど演技をやりたいと切望する方のリアリティを描いた作品でした。マイクさんの芝居への情熱と、KOJIさんとの恋愛が複雑にからみあい、もつれ、やがて予想だにしなかった出来事が…といった内容です。『幸運の犬』以降の泣かせる恋愛ドラマ作品の系譜に連なる、オールスターキャストで本気で作ったこれまでの集大成的作品だと感じました(ソープくんのコミカルさはいいアクセントになってました)。終盤のKOJIさんの殺人的なまでの愛くるしさにヤラれました。この映画の成功(「泣かせ」の部分)を約束するあの表情の魅力…スゴいと思います。
 どこまで書いてよいのかわからないので、少しぼやかしますが、最後に、とある方にこの映画を捧げるというメッセージが書かれていて、まちょ監督がアフタートークで、ものすごく真剣に、熱く、この映画を捧げた方について語っていて、「そうだったのか…」と驚き、そこからヒゲポンさんやゲンキマンさんや、他の方たちもそのことについて涙ながらに語っていて、会場からもすすり泣きが漏れました。僕もその方のことは知ってたし、同じような経験を何度もしているので、ちょっともう、あふれる感情を抑えきれませんでした…。
 トーク後に「AX」のRYUHEIさんもご挨拶。やっぱり感極まっていらっしゃいましたね…そんな涙ながらのお話の続きで「これから究極のマッチングタイムです」と紹介して笑いが生まれ、キャストとファンのみなさんが自由にお話できるフリートークタイムとなりました。僕は眠かったのであまり長居はしなかったのですが、ヒゲポンさんやゲンキマンさんにご挨拶して、PON☆STARの中での推しのジョンさんや、あゆさん、荒川くんともお話して帰りました(なんだかんだしゃべって長居してましたね)。本当はもっとお話したい方もいたのですが(駆け寄って話しかけたかった)、また次の機会のお楽しみにとっておこうと思います。


 

ちくわファミリーの魅力と意義

 『髭桜』の上映と『髭桜』製作にまつわるアフタートークに立ち会って感じたのは、ゲイシーンで活躍するいろんなグループのなかで、こんなに「温かさ」や「情」を感じさせる集団もないな、ということでした。昭和生まれの人たちだからこその、と言ってよいのかどうかわかりませんが、古き良き時代の、今は失われつつある人情味や人懐っこさが、僕には懐かしく感じられました。
 
 そんなちくわファミリーのみなさんが今回、岡山のパレードに参加してくれて、おかげで、パレードを初めて歩いたという方たちもいらして、それはとてもうれしいことでした。たとえ白髪のおじさんでも、お腹が出ていても、シャイニーじゃなくても、性的に奔放でも、陽の当たる大通りを歩いていいし、セクシャリティやありのままの自分を誇っていい、ということをこれほどまでに雄弁に表現した方たちっていなかったと思います。歴史的かもしれません。
 レポート記事を上げる用にちくわフロートの写真や動画を見ていたら、あゆさん、黄色のドレスがとてもキレイだったし、ゲンキマンさんもカッコよかったし、ヒゲポンさんも一生懸命手を振ってくれてるし、フロートで一緒に歩いてるみなさんもいい笑顔で、生き生き、楽しそうにしていて…なんだか泣けて仕方がなかったんですよね。
 
 ともするとこの世界、(ルッキズムの問題もしばしば指摘されますが)どうしても若くて顔がよくて体も鍛えてるシャイニーな人たちにスポットライトが集まり、シミとかシワが目立つ体もたるみがちな白髪のおじさんたちは肩身の狭い思いをしたり、日陰者的な扱いを受けたりしがちですが(上野とか浅草とか駒込辺りに行くとまた違うと思いますが)、そんなおじさんでもアイドルになれるし、ステージで踊ってもいいし、パレードを歩いてもいいんだよ、とPON☆STARのみなさんが自ら輝くことで証明してくれた気がします。
 本当はふだんのお仕事とか私生活とかも決して輝いてないかもしれないし、人知れず苦労したり、孤独だったりするかもしれないけど、映像を撮ったりライブをやったりファンのみなさんと交流したりしてる間は、みなさんアイドルやスターの顔で生き生きと輝き、ファンの方たちに希望を与えています。
 ちくわができたおかげで、そういう場が生まれ、たくさんの素晴らしい映画ができ、こうしてパレードを盛り上げたりということにもつながりました。すべてはまちょ監督の思いから始まっています。感謝です。
 これからもいい映画が作られることと思いますし、何か楽しい素敵な企画も生まれることでしょう。僕はファンとしては中途半端ですが、今後も見守り、応援していきたいと思います。
 
(取材・文:後藤純一)

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