g-lad xx

FEATURES

レポート:台南彩虹遊行

3月15日(土)、台湾の台南市で開催された台南彩虹遊行(Tainan Pride Parade)をレポートします。日本ではほとんど注目されていないように思われますが、台湾の伝統文化をフィーチャーしたフロートが出たり、今まで見たことのないような景色が見れたり、あたたかさと斬新さが感じられ、実に面白い、楽しいパレードでした

レポート:台南彩虹遊行

 台湾では、台北の台湾同志遊行(Taiwan LGBT+ Pride)だけでなく、台南や高雄でもプライドパレードが開催されています。春先の3月に開催される台南彩虹遊行(TainanPrideParade)は、今回が8回目となります(公式サイトはこちら台南市のホームページでも紹介されています)
 台北のパレードはかれこれ5回か6回参加していて(2019年のレポートはこちら)、実は昨年も手配済みだったのですが、大阪でのIGLTA総会と重なったため、泣く泣くキャンセルしたのでした。コロナに阻まれてもう5年以上も台湾に行けてない、その悔しさと、台南や高雄のパレードにも一度は行ってみたいという気持ち、そして、奇跡的にANAの特典航空券が取れたこともあり(こちらにも書いてあります)、台南行きを決めました。
 
 台南は「台湾の京都」とも呼ばれる古い史跡が数多く残る街です。人口は台湾で4番目に多いのですが、市内にゲイバーが1軒とサウナが1軒しかなく、ゲイシーンはとても小規模です。
 
 「台湾の京都」らしく、パレードは「八仙過海」というテーマで、イメージビジュアルも八人の仙人を描いた(あまりプライドイベントでお目にかかったことがないような)伝統的なイメージでした。公式によると「海を渡る旅は、謎を解き放つ過程であり、海の深くに横たわる危険と波を見せつけ、平等への道のりはまだまだ長く厳しいことに気付く。しかし、勇気を出すのは一人ではない。八人の不死鳥が海を渡るように、特技を持つ妖精が協力して海の波に立ち向かうように、団結して困難を突破する必要がある」「パレードの継続的な存在意義は、まさに社会的偏見の混乱を晴らし、性別や民族の多様性に対する皆の注意を目覚めさせることである。一部の権利獲得は終点ではなく、新たな出発点である。昔は結婚の平等のために立ち上がったが、今は、無視されたニーズと権利のために闘い、満たされない平等の問題に声を上げる」として、ジェンダーの多様性、中高年のクィア、障害を持つクィア、デジタル性暴力、若者、女性など8つのテーマが挙げられていました。よく考えられたコンセプトだなぁと感心しました。

 
 いざ、台南に来てみると、台北のパレードと違って、街中にレインボーフラッグを掲げるお店などもなく、ゲイがあちこちから集まってきている気配もなく、本当にパレードやるんだろうか…という感じでした。
 しかし、蓋を開けてみれば、すごい人の数でした。体感的には5000~6000人くらい。見たところ、8割方はゲイの方たちでした。
 3月15日(土)は最高気温27度くらいの暑い日でしたが、会場の「河樂廣場」(『Forbes』の「世界で期待される7つの公園」の一つにも選ばれたというアートな造りの公園です)の地下部分に人口の池があって、そこでパピーマスクの若者たちが水浴びしたりビーチボールで遊んだりしていた光景が新鮮で素敵でした。まるで天国のよう…。もし次に来る機会があれば、ここに参加したいです。





 
 メインステージの前で、いろんな団体の方たちが並んで、ステートメントを述べる時間がありました(言葉はわからないのですが、その表情や真剣な様子に胸を打たれ、ちょっと涙が出ました)
 そして13時半、メインステージでの催しが始まりました。司会はドラァグクイーンの方。フラのパフォーマンスがあったり、ドラァグショーやライブなどが繰り広げられました。





 とそこに、見たこともない、3階建のビルくらいある高さの巨大でド派手な、なんかスゴいフロートがやってきました。宙吊りではないのですが、専用の高い所にある席にお化粧して民族衣装を着た3歳くらいの子どもが座っていて、お菓子とかいろんなものを道ゆく人に撒きます。中には柔軟剤とかもありました。お母さんが下のほうにいてサポートしています。そのあとに二胡?胡弓?などで台湾の伝統音楽を奏でる楽団の車もありました。全くもって何なのかわからない、台北でも見たことない、想像をはるかに超えるインパクトのフロートが来たので、心底驚き、興奮しました。裏に回ってみると、GILEADの文字。ギリアドがスポンサーになってるフロートで、台湾のお祭りの山車をそのまま再現というか、まるごと借りてきてフロートとして出したんだな、と思いました。
 あとで気になって調べてみたら、この山車は3月の媽祖(台湾で広く信仰されている神様)の誕生日を祝うお祭りのパレードに出る藝閣(イーグ)という山車で、子どもたちが撒くお菓子やなんかを受け取れると神様のご加護があるんだそうです。
 これもあとで調べてわかったのですが、前のほうに女装メイクで乗っていたお二人は夫夫之道というゲイの人気YouTuberでした。



 そうこうしているうちに15時半になり(日本のように整列させるでもなく)おもむろにパレードがスタート。先頭は、台北と同様、活動家の方がマイクでスピーチするフロートです。日本だと先頭で実行委員の方たちが横断幕を持って歩いたり、著名人や議員さん、団体の方たちが続くと思いますが、台南はそういう、誰が先頭で歩くかといった仕切りがゼロで、完全に自由でした。台湾らしい装束の方やイカニモ系マッチョも歩いてました。




 次が「南方彩虹街6號月老大隊」(このフロートを含めステージパフォーマンスなども行なっていたチーム。「月老」は婚姻を司る神様なんだそう)のDJフロートです。BLACK PINK の「BOOMBAYAH」とかILLITの「Magnetic」とか、ガガの「BAD ROMANCE」とかみんな大好きな曲が次々にかかり、ドラァグクイーンやGOGOBOY、メイクはドラァグじゃないけどミニスカートをはいた男の子などいろんなキャストが乗って盛り上げてました。実はHIV予防団体のフロートでもあるようで、トラックの側面にPrEPとかU=Uと書かれていました。










 17世紀にオランダ人が築城し、鄭成功が台湾の首府とした「プロビンティア城」の跡である「赤崁楼」の前にやってきました。こちらにしばらく留まり、後続のフロートの様子を見ることにしました。
 國際特赦組織(Amnesty International)のフロートでは、お兄さんがレインボーのリボンを配ってました。が、それよりも、台湾らしい派手派手ビカビカの車だったのが印象的でした。これは結婚式のときなどに走らせるお祝い用の車のようです(彰化勝立の意味を調べたら、そういう車を配車する会社の名前でした)


 その次が、國立成功大學TO拉酷社という大学のLGBTQサークルのフロート。旗を振ってる方もいましたが、ほとんどの方はトラックにのんびり座ってるだけで、ちょっと不思議な感じでした。


 その次にやって来たのが、全身黒ずくめでアイドルっぽくも見える男性が車の屋根をステージにしてずっと音楽に合わせてクネクネ踊ってる(よく見ると赤い鞭も持っている)という謎なフロートでした。


 その次が、やっぱり派手派手ビカビカの車で、ドラァグクイーンがずっとマイクで語ってるフロートでした。





 そして、何かのお店のフロートに続き、大トリというかラスボス的にやってきたのが、ギリアドのフロート。ちょっと物悲しい音楽と、子どもたちのお菓子を無造作に撒く感じが何とも言えない郷愁を感じさせました。しばらく一緒に歩いてたら、付き添いのおじさんが熱々の煮卵をくれました(僕が「TAIWAN-JAPAN」と書いたTRPの日台友好的なTシャツを着てたせいかな、と思いました。「日本からわざわざ来てくれてありがとう」的なことを言ってたような気がします。うれしかったです)




 パレードは公園路を下り、湯徳章紀念公園を過ぎて、国立台湾文学館(旧台南州庁)にさしかかります。向かいには台南美術館があります。その先に孔子廟(台湾で最も古い孔子廟)があります。






 孔子廟の先の公園で右に曲がり、府前路という道を進みます。西門路から友愛街に入ってゴールを目指します。








 参加者の中には、褌パンツ一丁の人とか、貞操帯が透けて見えるようなパンツをはいた方など、かなりきわどい格好の人もいました。上裸、乳見せは普通です(ていうか暑いのでホント脱ぎたくなります。今度来たら褌で歩きたいです)
 市内中心部を練り歩き、赤崁楼武廟〜国立台湾文学館(旧台南州庁)〜台南美術館一館〜孔子廟〜台南美術館二館という名所を回るコースで、距離的には3〜4キロですが、かなりの長距離を歩いた気がしました。「河樂廣場」に戻って来たときには18時近くになっていました。
 暑さのせいもあって結構バテぎみで、途中のコンビニで栄養補給したりしながら。でもDJフロートのキャストのみなさんがずっと楽しませてくれて元気が出ました。
 自由で、アットホームで、世界一好きなパレードかも、と思いました。
 
 台北に比べると小規模かもしれませんが(公式サイトに収支表が掲載されてましたが、驚きの低予算でした)、台湾の伝統文化をフィーチャーした子どもがお菓子を撒くお祭りのフロートが出たり、水辺でパピーくんたちが戯れてたり、パレードの最中に煮卵をもらったり、今まで体験したことのない、なんとも楽しい、ローカルさとあたたかさと斬新さが感じられるプライドイベントでした。来て本当によかった!と思いました。
 
★パレードのフォトアルバムはこちら
 
 

INDEX

SCHEDULE