g-lad xx

FEATURES

特集:衆院選2021 〜愛する場所を守り、希望をつなぐための一票を〜

10月31日の衆院選をめぐって、かつてないほどLGBTQ関連政策への言及が増えており、主要政党のほとんどが同性婚に賛成、初めて同性婚が争点の一つになっています。結婚できるようになってほしい、好きな人と安心して暮らしたい、ゲイバーやクラブを守ってほしい…そんな願いを国政に届けるためにも、ぜひ投票に行きましょう。

特集:衆院選2021 〜愛する場所を守り、希望をつなぐための一票を〜

(トップ画像は「目指せ!投票率75%」プロジェクトのバナーです)

 10月19日、衆議院議員選挙が公示されました。10月31日に投票日を迎えます。
 
 今回の衆院選では、いろんなところで投票を呼びかけ、投票率を上げるための動きが活発になっています。
 秋元才加さんや安藤玉恵さん、コムアイさん、二階堂ふみさん、橋本環奈さん、ローラさん、仲野太賀さんなど人気芸能人が一斉に投票を呼びかける「VOICE PROJECT 投票はあなたの声」という動画はすでにご覧になった方も多いのではないでしょうか。ほかにも、松中権さんや荻上チキさんらも参加する「目指せ!投票率75%」というプロジェクトが立ち上げられ、アンケートで寄せられた争点(同性婚などLGBTQの人権保障が7位にランクイン)について各候補者に考えを聞いて紹介しています。クリエイティブディレクターでアライの辻愛沙子さんと田代伶奈さんが立ち上げた「GO VOTE JAPAN」には、元アンジュルムの和田彩花さん、杉山文野さん、ロンブー田村さん、性教育YouTuberのシオリーヌさんらがコメントを寄せています。Twitter上では、#投票倍増委員会というハッシュタグがトレンド入りを果たしたりしています。

 各政党・候補者の公約・政策についても日々、様々なメディアで情報が届けられていますが、今回、かつてないほど同性婚やLGBT平等法のことが取り上げられており、もはや争点の一つになっていると言っても過言ではありません。主要な政党のほとんどがLGBTQのことを公約に掲げ、ほとんどすべての政党が同性婚に賛成しているという、衆院選始まって以来の状況になっているのです。これはスゴいことです。

 いつもはニュースでお伝えしていましたが、今回は衆院選関連のトピックのうちLGBTQに関するところを特集としてお伝えします。
 


同性婚・LGBT平等法などへの各党・候補者のスタンス
 
 ロイター「情報BOX:衆院選31日投開票、主要政党の公約一覧」や、日経新聞「衆議院選挙2021 与野党9党の公約特集」、時事通信「衆院選・各党公約要旨【公約比較】」などによると、LGBTQ関連の公約を前面に掲げている政党は以下の通りです(こちらの記事によると、公明、国民、れいわも同性婚に賛成しています)。主要な政党のほとんどがLGBTQのことを公約に掲げ、ほぼすべての政党が同性婚に賛成しているという、かつてない状況。ここまで支持が広がったのは初めてです。

・自民党
LGBTに関する理解増進議員立法の速やかな制定を実現
・立憲民主党
LGBT平等法を制定する。同性婚を可能とする法制度の実現
・日本共産党
同性婚を認める民放改正。LGBT平等法を制定
・日本維新の会
同性婚の法制化
・社民党
LGBT差別解消、同性婚の法制化

 
 様々な分野で活動する市民団体などの有志が主要政党に19項目計67問の公開質問状を送り、その回答を公開した「みんなの未来を選ぶためのチェックリスト -衆議院選挙2021-」というサイトが立ち上げられ、注目されています。この67問の中に、「同性婚の法制化に取り組みますか?」「LGBT平等法の制定に取り組みますか?」「トランスジェンダーの生活・労働環境の実態を調査・把握し、シスジェンダーとの格差・差別の解消に努めますか?」という質問が設けられています。このような一般の選挙アンケートでトランスジェンダーが直面するリアルな社会的課題に言及されたのはおそらく初めてで、画期的です。今の日本社会でトランスジェンダー(特に女性)が置かれている厳しい状況を踏まえたものと見られます。
※『△』については、詳細をクリックすると「補足説明」が表示されますので、そちらも読んでみてください。





 LGBT法連合会も、各政党・候補者にLGBT(SOGI)をめぐる課題に関する政策アンケートを実施し、調査結果を発表しました。SOGIに関する困難を解消するための施策について、SOGIに関する法整備をいつまでに成立させるべきか、教育、就労、福祉・医療、その他分野でのLGBT(SOGI)をめぐる課題に関する考え方、性同一性障害特例法の見直しについて、というきめ細かな質問をしています。ぜひご覧ください。

【衆議院選挙2021・政党】LGBT(SOGI)をめぐる課題に関する各党の政策と考え方についての調査結果報告〔各政党〕
 
【衆議院選挙2021・候補者】 LGBT(SOGI)をめぐる課題に関する各候補者の政策と考え方に関する調査結果報告 (各立候補者)


 
 全国会議員(および衆院選候補者)の同性婚へのスタンスについては、Marriage For All Japan(結婚の自由をすべての人に)が作成した「マリフォー国会メーター」で最新情報を知ることができるはずです(衆議院が解散されたため、以前の衆議院議員の情報がいったん削除されましたが、候補予定者の情報は10月19日の公示後できるだけ早く公開、とのことです) 


 2016年の参院選以来、候補者アンケートに同性婚についての質問を入れてくれている朝日新聞と東京大学谷口研究室の共同調査ですが、今回は「男性同士、女性同士の結婚を法律で認めるべきだ」のほかに「LGBTなど性的少数者をめぐる『理解増進』法案を早期に成立させるべきだ」という項目が盛り込まれています。
 NEWS ZEROの衆院選候補者アンケートでも「同性婚を法律に明記すること」という項目があります。
 毎日新聞の「えらぼーと」にも同性婚の項目がありました。
 今後も多くのメディアで、こうした調査結果や政策比較が発表されることでしょうが、おそらくそのほとんどで、選択的夫婦別姓とともに同性婚が取り上げられているだろうと予想されます。
 同性婚が選択的夫婦別姓と並び、争点の一つと見られていることは間違いありません。
 

衆院選で同性婚が争点になるまで

 このように、衆院選史上初めて、主要な政党のほとんどすべてが(取組意欲への濃淡や、方向性の違いはあれど)LGBTQのことを公約に掲げ、ほぼすべての政党が同性婚実現に賛成するまでになりました。
 東大名誉教授の上野千鶴子氏は、「夫婦別姓、同性婚などジェンダー課題が選挙の争点になったのは、国政選挙始まって以来ではないだろうか。ジェンダーは票にならない、と言われていた通念をくつがえす動きだ」と綴っています。
 
 ここで、この10年の国政選挙での政党・候補者のLGBTQへのスタンスの調査の足跡を振り返ってみます。10年でこんなに変わったんだ…という感慨を禁じえません。
 
 2000年代から東京メトロポリタンゲイフォーラム(TMGF)やフォーラムアクエリアスというゲイ団体が、大きな選挙のたびに政党や候補者へのアンケートを実施してきました。質問項目は同性愛者の人権、教育、同性カップルの権利保障、HIVのことなどで、意欲的な政党・候補者から回答がいただける感じでした(ご参考:2010年の参院選)。今は一般メディアがLGBTQイシューも盛り込んでくれますが、この当時は自分たちでやるしかなく、団体の方たちが各政党や候補者の連絡先を調べ、やり取りをして、サイトに結果をちまちまアップして…という地道な作業に取り組んでいたのです(もちろん無償で)。深く敬意を表します。

 2012年の衆院選では、当事者団体だけでなく、女性団体が中心の「『ジェンダー平等政策』を求める会」が、LGBT差別についての質問を盛り込んでくれました。

 2013年の参院選でも当事者団体やメディアによる候補者アンケートが行なわれました。

 2014年の衆院選の際は、社民党が同性婚実現を公約に掲げ、ニュースになりました。

 2016年の参院選では、LGBT法連合会が候補者アンケートを始めたほか、朝日新聞と東京大学谷口研究室の共同による候補者アンケートの設問の一つに「同性婚」が入りました。

 2017年の衆院選では、朝日新聞と東京大学谷口研究室の共同調査のほか、政党ごとに政策を比較する「JAPAN CHOICE」というサイトで「LGBT政策」という項目が立てられました。また、主要各政党の公約に「LGBT」や「性的指向・性自認」の文字が入るようになりました(多くが差別解消、自民は理解増進、社民は同性婚実現)

 2019年の参院選では、同性婚実現を公約に掲げる政党が立憲、共産、維新、社民と一気に4党に増えました。朝日新聞と東大谷口研究室の共同調査だけでなく、毎日新聞の「えらぼーと」などでも同性婚が盛り込まれました。LGBT法連合会は「#レインボー選挙」というキャンペーンを展開しています。国政選挙で初めて同性婚が争点として浮上した感があります。
 
 同性パートナーシップ証明制度のインパクトや「結婚の自由をすべての人に」運動、民間企業での社内LGBTQ施策の広がり、生命保険の受取や住宅ローンなどでのサービスの平等化(異性婚夫婦と同等の扱い)といった様々な世の中の動きの進展と相まって、次第に各政党が、同性婚実現やLGBTQ差別禁止法などを重要な社会的課題であると認識するようになってきたのでしょう。各地のプライドパレードの開催や、私たちが日々SNSで発信していることなども、世間の認識を変えることにつながってきたはずです。「どうせ世の中変わらない」などとあきらめてしまわずに、少しずつずっと続けてきた活動が、こうして今、花を咲かせているのです。


 
ヤシノミ作戦とは
  
 ソフトウェア会社・サイボウズの青野社長(今年の東京レインボープライドに出演したほか、オンラインブースも出展)が、「選択的夫婦別姓」と「同性婚」に反対する政治家に落選してもらおう!という趣旨の「ヤシノミ作戦」というちょっと奇抜で斬新なプロジェクトを立ち上げました。落選運動って穏やかじゃないな…と思われるかもしれませんが、こちらのページを読んでいただければ、きっと素直に納得していただけると思います。
 
 憲法学者の上脇博之・神戸学院大学法学部教授は、「落選運動は、これは許せない、当選させてはいけないという一点だけでよい。4年前の総選挙からこれまでに国会議員が起こした言動は忘れられているものも多い。ウヤムヤにされたり立ち消えになったりした問題は、国民にとって重要な論点です。落選運動はこうした過去を振り返り、検証することで『このままでいいのか』と考えるきっかけになるのです」と述べています。

 この文脈でLGBTQ的にまず思い浮かべられる議員の筆頭は、なんといっても杉田水脈衆院議員でしょう。「”生産性”のないLGBTへの支援は不要」などと述べ、YouTubeでは「同性愛者の自殺未遂率は異性愛者の6倍も高いって言われたんですよ〜」と笑いながら言っていた杉田議員。あのような差別発言をしておきながらきちんとした説明も謝罪もないままです(「生物学上の種の保存に反する」と述べた簗和生衆院議員なども同様です)。ちなみに杉田議員は『週刊女性』の「落選してほしい失言議員」第2位にも輝いています。




クラブ、ライブハウス、劇場、映画館、美術館などへの補償・支援

 LGBTQとは直接関係ないかもしれませんが、きっと多くの方たちがクラブやライブハウス、劇場、映画館、美術館などに愛着を持っていると思います。コロナ禍でダメージを受けているそうした文化施設・関係者に対する国による助成金を求め、あらゆる命と仕事を守るための活動も行なっている「SaveOurSpace」が、各政党に文化芸術分野を軸とした公開質問状を送付し、その回答をこちらのサイトに掲載しました。
 質問は以下の通りです。
【設問1】コロナ禍における国の文化芸術分野への支援と対応は十分だとお考えでしょうか。その理由をお聞かせください。いいえと答えた場合、必要だと思う具体的な支援についてもお聞かせください。
【設問2】ライブハウス、ミュージッククラブ、ミニシアター、小劇場、ギャラリーなどの文化施設及び、それらの場所で行われている文化芸術活動は、この国にとってどのような存在だとお考えでしょうか。
【設問3】コロナ禍収束後、文化芸術分野に対して国としてどのような支援が必要だとお考えでしょうか。
【設問4】文化芸術分野に関する政策について党としての公約があれば教えてください。
【設問5】緊急事態宣言が発出され、市民の活動が制限されている中で開催された東京オリンピック・パラリンピックをどのように評価していますか。
【設問6】コロナ禍における国民への支援と対応は十分だとお考えでしょうか。その理由をお聞かせください。また、店舗や企業への自粛要請に伴う損失に対して補償する考えはありますか。必要だと思う具体的な支援についてもお聞かせください。
【設問7】各政党への個別の質問です。

 与党と野党とで明確に回答が分かれている部分もあり、これだけでも投票の動機になります。クラブを愛する方、ライブハウスを愛する方、映画館、劇場、美術館…すべてのエンタメやカルチャーを愛する方、そして店舗(ゲイバー含む)や企業への補償が必要だと思う方も、ぜひお読みください。Webサイトでは政党別に見ることができるようになっていますが、Twitterでは設問ごとに各党の回答を紹介しています(以下のTweetのスレッドをご覧ください)



合理的なコロナ対策ができる国へ

 これもLGBTQとは直接関係ないかもしれませんが、クラブやゲイバーや、いろんなお店・施設が影響を受けますし、私たちの生活や命にもダイレクトに関わりますし、国がきちんとしたコロナ対策を実行できるのかどうかということは本当に問題で、これを抜きにして今回の選挙は語れないと思います。
 
 台湾やニュージーランドがコロナ対策において世界でもトップクラスに優秀だったことは疑いがないと思います。台湾では、ずっと新規感染がゼロに抑えられてきたおかげで昨年、世界最大規模のパレードが開催されました(本当に素晴らしいニュースでした)。オードリー・タンさんがいたから、というだけでなく、政府が、科学的なエビデンスに基づき、検査・隔離・診断・治療という感染症対策の基本を徹底してやってきたからです。
 
 日本も台湾やニュージーランドと同じような地理的条件ですし、もし国が(政府の都合とかじゃなく、合理的に)大規模なPCR検査や徹底した水際対策、医療体制の強化などのきちんとした感染症対策を実施していれば、ほぼゼロに抑え込むことができたはず(こんなに優秀な国民なのですから)。にもかかわらず、頑なにPCR検査の拡充を行なわず(無症状の感染者を発見できないのでいつまで経っても…)、水際対策もザルだと言われ、コロナ禍にもかかわらず病床を削減するという信じられない愚策を強行し(しかも消費税を使って)、感染者が増えることがわかりきっていたのに(ワクチン接種も行き渡っていなかったのに)五輪を強行開催し、結果、入院できず、まともに治療を受けられないまま自宅で亡くなる方がたくさんいらっしゃいました…(亡くなった方たちのご冥福をお祈りします)。これは「コロナ人災」だとも批判されています(ほかにも、モデルナのワクチンが契約の3分の1しか納入されなかったのを2ヵ月間も黙っていたこと、ラムダ株流入が五輪期間中に知らされていなかったこと、これまでの失政を棚に上げて飲食店に恫喝めいた圧力をかけようとしたことなど、ひどいことが本当にいろいろと…)
 
 今はわりと落ち着いていますが、冬季には第6波の襲来も予見されていますし、ロシアでデルタ株より感染力が強い新たな変異株が出てきましたし、今後、もっと手強い○○株が広まる可能性も十分あるでしょう。無料でいつでもPCR検査を受けるということもできず(無症状感染者を発見できず)、医療体制も強化されず、給付金支給や減税などもなく、都合の悪いことは隠蔽され、今までと同じことがずるずると繰り返されたら…さらに人命が奪われ、経済活動もボロボロになり(「コロナ失策」の結果、日本は経済活動が停滞したまま世界経済から置いてけぼりになるという指摘もなされています)、すでに二丁目のお店も何軒もなくなっていますけれども、行きつけのお店もどんどんなくなっていき、私たちの生活も苦しくなるばかり…。私たちが安心して、希望を持って暮らせるようになるためには(憲法改正などではなく)まともなコロナ対策ができる国になることこそが最重要課題じゃないでしょうか。それが、愛する人たちや自分自身の命を守り、愛するお店や居場所を守ることのベース(土台)になるはずです。
 
 各政党のコロナ対策に関する公約については、こちらをご参照ください。
 
 なお、なすこさんという漫画家の方が「100日で収束しない日本のコロナ禍」というシリーズを毎日描いているのですが、真実をついていて「よき」です。少しご紹介します。


 
LGBTQの立候補者

 2019年の参院選では史上最多の3名のLGBTQが立候補しましたが、今回の衆院選の候補者の中にも性的マイノリティの当事者の方がいらっしゃいます。今わかっている範囲でお伝えします(ほかにLGBTQの立候補者がいらっしゃるようでしたら、わかり次第、お伝えします)
 
 2005年に大阪府議として初めて同性愛者であることをカムアウトし、2006年にIDAHOや関西レインボーパレードの立ち上げに携わり(事務局長を務め)、2007年に同性愛者として初めて国政にチャレンジし、2017年に衆議院議員に当選した尾辻かな子氏が、再び立憲民主党公認で大阪2区から出馬し、再選をうかがいます(比例は、近畿ブロックで名簿7位)。尾辻氏は参議院議員時代にHIVのことについて国会で質問したのを皮切りに、衆議院議員としては、2018年のLGBT差別解消法案の国会への提出や、同性どうしの結婚を可能にする民法改正案の提出に中心的な役割を果たし、今年2月には菅首相に「息子さんが同性のパートナーと一緒になりたいと言われたら何と答えますか」と尋ね、「非常に複雑な心境のなかで検討に検討を重ねる」との答弁を引き出し、また、衆議院法制局から同性婚の法制度化について「憲法上の要請であるとの考えは十分に成り立ち得る」との見解を引き出すなどしています。

 『月曜から夜ふかし』に出演し、「おつかレーシック、角膜ペリペリ~」などのギャグで有名になった二丁目のバー「BENCH」のゆっこママさんが、コロナ新(政権交代によるコロナ対策強化新党)の比例東京ブロックで出馬することが話題になっています。今回が初出馬だと思いますが、ゆっこママさんは「出馬したものの、政治まったくわかんない! とにかく同性婚実現させます! 彼氏いないけど!」とツイートしています。なお、「政権交代によるコロナ対策強化新党」についての情報がほとんどないのですが…わかりましたら追加でお伝えします。
 
 LGBTQの立候補と言えば、トランスジェンダーのプライバシーを守る観点から、全都道府県の選管が衆院選の選挙公報の候補者情報から性別の記載をなくすことが明らかになりました。総務省が昨年、都道府県の選管に通知を出していた措置に基づく対応です。選挙公報に性的指向は掲載されないため、LGBの候補者はカミングアウトの強制(アウティング)を受けずに立候補することができる一方、トランスジェンダーの候補者は戸籍上の性別が公報で晒されるというのは人権侵害的な問題だという意味です(なお、広報に性別が載らないからといって男女の統計が取られないわけではありません。また、多くの有権者は公報の氏名や写真などからジェンダーの情報を受け取るため、性別の記載がないからといって判断できなくなることはないでしょう)

 

最高裁判所裁判官国民審査

 衆院選の時にはもう一つ、最高裁判所裁判官国民審査という投票もあります。「社会の審判」である最高裁判所の裁判官たちがフェアでなければ、社会がゆがみます。それを私たちがチェックするのが国民審査です。今回審査対象となる11人の最高裁の裁判官たちがどのような判断を示してきたか?についてNHKがこちらにまとめてくれています。また、Yahoo!の「夫婦同姓、1票の格差、再審… 国民審査を受ける最高裁裁判官はどう判断した?」という記事でもつぶさに紹介してくれています。ジェンダー平等やLGBTQに関わる裁判について、11人の裁判官がどのように判断してきたかを以下にお伝えします(その裁判の当時、まだ就任していなかった人たちもいるので、人数の合計が11人未満だったりします) 

◎夫婦同姓を前提とした民法や戸籍法の規定は違憲か?(2021年6月23日決定)
合憲:深山卓也、林道晴、岡村和美、長嶺安政
違憲:宇賀克也、草野耕一、三浦守(ただし別姓の婚姻届不受理は正当)
(今回審査対象の11人のうち、判断に関わったのはこの7人だけです)

◎性同一性障害の男性が戸籍上の性別を女性に変更するように求めたのに対し、すでに女性と婚姻していることを理由に国が認めなかったのは違憲か?(2020年3月11日決定)
合憲:岡村和美、三浦守、草野耕一
(今回審査対象の11人のうち、判断に関わったのはこの3人だけです)

◎浮気が原因で女性同士の事実婚カップルが破局した場合、男女の夫婦と同じく法的に保護される関係として、慰謝料の支払い義務が生じるか?(2021年3月17日決定)
生じる:岡村和美、三浦守、草野耕一
(今回審査対象の11人のうち、判断に関わったのはこの3人だけです)

 「三浦さんや草野さんは夫婦別姓は認めるべきって判断してくれたけど、結婚してる性同一性障害者の性別変更が認められないことは容認するのか…」というように、「×」にしてよいかどうか判断に困る方もいらっしゃるかと思います…。ぜひ当日まで考えてみてください。
 なお、最高裁判所裁判官国民審査では、不適格だと思う方だけに「×」を書くのがルールです。支持する人に「○」を書くと無効票になってしまうので、ご注意ください。

 

未来への一票を投じましょう


 選挙に行く理由は、人それぞれだと思います。能町さんのように、病気をしたことをきっかけに行くようになったという方もいらっしゃいます。これまでの政治への評価を下す機会として捉えている方もいらっしゃるでしょうし、国民の権利を行使し、どういう政治を望むかを示すのだという意気込みの方もいらっしゃるでしょう。「自分なんかが選挙に行っても行かなくてもどうせ変わらない」「誰も投票したい人がいない」などと感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、冒頭の秋元才加さん〜仲野太賀さんの動画などでも語られているように、そういう方たち(特に若い方たち)がみんなして投票に行くようになって投票率が上がれば、世の中を変える大きな力になりえます。特に衆院選は、これからの日本の行く末に大きな影響を与える選挙ですので、その一票がとても大きな意味を持ちます。
 この人には当選してほしくない、この政党にはお灸を据えたいという動機でも全然よいのです(首相とか閣僚とか与党と言っても、選挙によって一時的に選ばれて行政の主導権を与えられただけの人たちであり、国の主人公は私たちです。失政にNOを言うのは当然の権利ですし、せっかくの意思表示の機会を活用しなければもったいないです)。投票先の政党や候補者がBESTかどうかはわからないにしても(たとえ嫌いでも)「よりマシ」と思える政党や候補者に投票することが大事です。そういう方が大多数になればなるほど、この国がよくなっていきます。
 
 蔡英文総統の台湾にしても、アンダーン首相のニュージーランドにしても(どちらも女性総理ですね)、コロナ対策もLGBTQの権利擁護もうまく進んでいる国では、コロナ禍でも希望を失わず、安全に、自由に、幸せに生きていける人が多いことでしょう。国民の多くが選挙で投票したり、デモに参加したり、さまざまな方法で公に声を上げ、民主主義がきちんと機能している(市民の政治参加が進んでいる)からこそです。自宅で放置されて死んだり、全体の1割もの飲食店が倒産したり、国民が見捨てられたりしない国になるためには、もっと投票率を上げ、市民の政治参加を進めていくことが大切なのです。
 
 最後に、衆院選の投票のキホンについてリマインドを。衆院選は選挙区、比例区の2つの投票があり、選挙区はお住まいの選挙区の候補者の中から1名選んで氏名を書き、比例区は個人名ではなく政党名を書きます(例えば「山本太郎」ではなく「れいわ」と書かないと、票が無効になってしまいます)。10月31日に投票するのが難しそうな方も、期日前投票や不在者投票(住民票を実家などに置いている方も投票できます。お早めに、地元自治体に投票用紙を請求しましょう)を活用しましょう。

 10月31日、私たちの未来への一票を投じましょう。

(後藤純一)
 


参考記事:
衆議院選挙2021 与野党9党の公約特集(日経新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODL161J70W1A011C2000000/
情報BOX:衆院選31日投開票、主要政党の公約一覧(ロイター)
https://jp.reuters.com/article/japan-politics-manifest-idJPKBN2H40B1
とりあえずこれを見て…! あの政党はどんな意見? チェックリストが分かりやすい【衆院選】
https://www.buzzfeed.com/jp/sumirekotomita/choiceisyours-checklist
新しい落選運動 都議選で10人落選させた「ヤシノミ作戦」とは(NEWSポストセブン)
https://www.news-postseven.com/archives/20211014_1696625.html
夫婦同姓、1票の格差、再審… 国民審査を受ける最高裁裁判官はどう判断した?
https://news.yahoo.co.jp/byline/maedatsunehiko/20211020-00263929

INDEX

SCHEDULE