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アメリカにはゲイのためのもう1つの「エイズデー」があります

2010年09月30日

 12月1日は世界エイズデーですが、アメリカでは、ゲイのためのもう1つのエイズデーがあります。9月27日の「National Gay Men’s HIV/AIDS Awareness Day」がそうです。

 これは、NATIONAL ASSOCIATIONS OF PEOPLE WITH AIDS(全国HIV陽性者協会)が2008年に始めたもので、これまでに30万人以上のゲイ・バイセクシュアル男性がエイズによって命を落としたことを悼み、今も生きているHIV陽性者の人たちの生を寿ぎ、そして全国のゲイたちに検査を受けることを呼びかけるものです。

 「National Gay Men’s HIV/AIDS Awareness Day」にはファイザー、MTV、NBA、GBC(Global Business Coalition)などが協賛し、様々なHIV関連の団体や各地のゲイコミュニティなどが連携して開催されています。
 ワシントンD.C.では「National Gay Men's HIV Awareness Day Community Celebration」というコミュニティイベントが開催されたほか、全国各地で無料&匿名の検査会が行われたようです。

 多くのメディアがこの日のことを一斉に報じ、検査を受けることを呼びかけています。
 ゲイ雑誌『Advocate』には、元メジャーリーグのアンパイアで1990年にカミングアウトしたデヴィッド・パロン氏が寄稿していました。
「1990年以来、多くのことがいい方向に変化してきました。が、残念ながら、ある事柄は全く変わっていません。ゲイ・バイセクシュアル男性はまだ深刻なHIV感染に直面しています。いろんな理由があります。多くの人は感染していることに気づいていないため、知らずに感染させてしまうこともあります。若い人たちの間ではHIVは『何とかなる』病気だと思われているようです。ホモフォビアとスティグマが、予防のサービスへのアクセスを妨げているということもあるでしょう。プロの野球の世界に生きていた者として、私は職場や地域社会でどれだけ厳しい差別に遭うかということをよく理解しています。でも、健康に、元気に生きてこそ、こうしたことと闘えるのです。だからこそ、私たちはアウトして、自分自身や愛するパートナーを守るために行動を起こし、ゲイの仲間たちに『大丈夫だよ、僕らがついてる』と伝えることが必要なのです」

 この「National Gay Men's HIV Awareness Day Community Celebration」を目前に控えた9月23日、アメリカのゲイ・バイセクシュアル男性の5人に1人がHIV陽性であり、ほとんど半数がそれに気づいていないという、疾病管理予防センター(CDC)の最新の調査結果が発表されました。
 この調査は2008年、21都市の8000人のゲイ・バイセクシュアル男性に対して実施された調査で、同センターの調査の中では最も詳細なものになっています。異性愛者や薬物使用者の間では感染が減少しているのに、ゲイ・バイセクシュアル男性の間でだけは増加が続いています。そして、学歴や収入の高い層の人たちほど検査を受けている率が高いということ(異性愛者でも同様)、若い人たちや人種的マイノリティの人たちの間では自分が感染しているかどうかわからない(検査を受けない)傾向が強いということがわかりました。
 たとえば、黒人のゲイ・バイセクシュアル男性の59%が自身の感染に気づいていないそうです(ヒスパニック系は46%、白人は26%だそうです…アジア人はどうなのでしょう?)。また、30代未満の若いゲイ・バイセクシュアル男性の場合、HIV感染率が低い一方、感染に気づいていない人が63%と非常に多いそうです。
 同センターは、白人以外のゲイ・バイセクシュアル男性の間で検査を受ける人が少ないのは、差別や社会格差(貧困、ホモフォビア、スティグマ、予防やケアへのアクセス環境の悪さ)が原因ではないかと見ています。また、若いゲイ・バイセクシュアル男性の間で検査を受ける人が少ない理由については、最近感染したばかりだから、リスクを過小評価しているから、HIVの治療が進んでいるということが脅威を減じているから、といった予測を立てています。
 
 この7月、オバマ政権が「新・国家エイズ対策戦略」を発表しました。その中では「アメリカは、ゲイ・バイセクシュアル男性にもっと呼びかけないと、HIV感染を減らすことができない」と述べられ、ゲイ・バイセクシュアル男性に向けた施策に力を入れることが打ち出されました。
 国家エイズ政策室の室長、ジェフリー・S・クローリー氏(オープンリー・ゲイの方です)の手腕に期待します。
(後藤純一)

 

Study puts HIV rate among gay men at 1 in 5(The Washington Post)
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2010/09/23/AR2010092306828.html

CDC: 1 in 5 men who have sex with men in 21 U.S. cities has HIV; nearly half unaware(STEVE ROTHAUS' GAY SOUTH FLORIDA)
http://miamiherald.typepad.com/gaysouthflorida/2010/09/cdc-1-in-5-men-who-have-sex-with-men-in-21-us-cities-has-hiv-nearly-half-unaware.html

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