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兵庫県議会で「同性愛者へのHIV指導必要ない」と発言した井上県議に対し、抗議の声が多数上がっています

2014年05月21日

多様な性にYESの日」である5月17日、同性間の性的接触によるHIV感染の予防啓発活動について、兵庫県議会常任委員会の席上、自民党の井上英之県議(44、加古川市選出)が「行政が率先してホモの指導をする必要があるのか」などと発言し、他党の議員らから「差別的で、見識がなさ過ぎる」と批判された、とのニュースが報じられました。

 兵庫県によると、昨年新たに届け出があった県内のHIV感染者は32人(うち同性間の性的接触によるものが21人)で、エイズ患者は21人です。県は民間団体などと連携し、定期検査の受診を促すよう対策を続けています。この日の常任委員会で、井上県議は県の取り組みについて「この人たちは、啓発しても、好きでやっている話だから放っておいてくれ、という世界だ」などと述べました。
 井上県議は取材に対しても、発言したことを認めたうえで、「偏った性嗜好で本来ハイリスクは承知でやっている人たちのこと。他にもがん検診の受診率向上といった重要課題がある中、少人数の啓発に行政が率先して対応する必要はない」などと述べました。所属の自民党の幹事長からも「発言を撤回するように」と促されたそうですが、発言の撤回や謝罪などは考えていないそうです。 

 これに対して、コミュニティ内からも、一般の方からも、たくさんの批判の声が上がりました。
 レインボーアクションは20日、厚生労働省の「後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予防指針」においても、国や都道府県が、個別施策層(感染の可能性が疫学的に懸念されながらも、正しい知識の入手が困難であったり、偏見や差別が存在している社会的背景等から、適切な保健医療サービスを受けていないと考えられるため、特別な配慮を必要とする人々。性に関する意思決定や行動選択にかかわる能力について形成過程にある青少年、性的指向の側面で配慮の必要なゲイ・バイセクシュアル男性など)に対して、人権や社会的背景に最大限配慮したきめ細かく効果的な施策を実施することが重要であると明示されていることを挙げ、発言の撤回を求めました(詳しくはこちら
 また、豊島区議の石川大我氏も20日、兵庫県入りし、HIV予防啓発団体「BASE KOBE」の繁内代表とともに健康福祉部疾病対策課、人権推進課、男女家庭課男女共同参画班、議会総務課、議会事務局(兵庫県議会議長、健康福祉常任委員会委員長、自民党幹事長宛て)、知事秘書課(井戸敏三知事宛て)に申入れ書を提出しました。また、ラジオ関西で井上議員の発言撤回を求める申入れを行ったことが報道されました。21日には県政記者クラブで「LGBTの家族と友人をつなぐ会」、「BASE KOBE」が記者会見を開きました。
 
 今回の井上県議の発言が怖いのは、世間(やネット空間)に散在する同性愛嫌悪(ハイリスクを承知で同性愛「趣味」に走っているという無知や偏見)、自己責任論(自業自得という見方)に作用して、同調の声が思わぬ勢いで広がっていきかねないからです(生活保護切り捨てやレイシストの跋扈などといった昨今の情勢を見るにつけ、決してその可能性は低くないのでは?と危惧されます)
 レインボーアクションが指摘している通り、HIV予防は国が責任をもって行うべき特別な感染症対策(国民の命を守るための施策)であり、社会的差別ゆえに同性間性的接触による感染が突出して多くなっている現状で、ゲイ・バイセクシュアル男性という個別施策層に向けた予防啓発が求められるという認識を国も共有してきたわけですが、せっかくこれまで先人たちが努力して築き上げてきたこの前提(土台)に、無知や偏見に基づく「くさび」が打ち込まれたわけで、今後それが大きな亀裂となって土台を突き崩す(ゲイ・バイセクシュアル男性の陽性者が見捨てられたり、ゲイ向け予防啓発が行われなくなる)ことがないようにしていかなければ。
 アクティビストの方たちの尽力に敬意を払い、支援しつつ、ぼくらも声をあげていくことが大事なのではないでしょうか。



「同性愛者のHIV指導必要ない」委員会で井上県議(神戸新聞)
http://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/201405/0006966351.shtml

「同性愛者へのHIV啓発、必要か」兵庫県議が発言(朝日新聞)
http://www.asahi.com/articles/ASG5K3DV7G5KPIHB004.html

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