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米軍がトランスジェンダーの従軍禁止措置を撤廃し、関連医療費も負担することに

2016年07月03日

 アメリカのアシュトン・カーター国防長官は6月30日、トランスジェンダーのアメリカ軍への入隊を禁じた規則を撤廃すると発表しました。

 カーター長官は「1年間にわたる検討の結果、今日からトランスジェンダーのアメリカ人が軍に入隊できないとしてきた措置を撤廃する。トランスジェンダー であることを隠すことなく従軍でき、除隊させられることはなくなるだろう」「われわれの任務は国防であり、任務を達成する能力がある人たちを資質とは関係 なしに兵士にさせないような障壁はいらない」「最も高い能力を持つ人々を採用し長く活躍してもらうことを確実にするための新たな一歩だ」と述べ、今後1年 以内に規則の撤廃に応じた態勢を整える考えを示しました。

 アメリカ国防総省は、約130万人のアメリカ軍の現役兵士のうち、少なくとも2500人がトランスジェンダーだと推定しています。これまでは、トランスジェンダーだと発覚すると、除隊を命じられたり、再入隊を禁じられたり、昇進できなかったりなどの差別を受けていましたが、今後はこうした差別が禁止され、すでに軍務に就いているトランスジェンダーは、性自認を隠さずに任務に当たることができ、今後、1年以内にトランスジェンダーの入隊も認められることになります。

 また、この新方針の下、性別適合手術が医学的に必要と認められた場合は、その手術費用についても同省が負担するそうです。カーター長官は、トランスジェンダーに関連する医療費負担の開始時期について、遅くとも今年10月1日までに支払いを開始すると明言しました。

 退役した陸軍歩兵隊大佐で、トランスジェンダーの退役米軍人の中で最も地位が高いシェリ・スウォコウスキさんは、この日を待ち望んでいた1人です。彼女は、2015年に国防総省がプライド月間のイベントを開いた際に、女性として登場することで公にメッセージを発しました。そのイベントで彼女は新しい制服ドレスを着ており、男性の時に来ていた制服に付いていた歩兵隊の階級章と編み紐をつけていました。その時に発言することはありませんでしたが、彼女は部屋にいた軍の指導者に、トランスジェンダーの軍人が実際に存在し、性自認を明らかにして勤務できるようにすべきというメッセージを伝えました。
「私は、国や愛する人々に奉仕するために自分に正直でいることができない人々にとって目に見えるシンボルとなりたいのです。嘘はつきません」とスウォコウスキさんは語っています。「彼らはとても勇気がある人たちです。彼らはできる限りのことをやろうとしていて、遅かれ早かれ、国防総省が動き出して、トランスジェンダーの人々を受け入れるようになるだろうと、願っているのだと思います」
 30日の発表の後、スウォコウスキさんは、実施プロセスが特に複雑になることはないと思っていると語りました。
「軍は私たちに『変化を予測せよ』と教えます。変化があった際にはそれを受け入れ、全力を傾け、任務を遂行するのです」「『聞くな、言うな』規定が撤回された時にも大したことは起きませんでした。私はその時と変わらないだろうと思っています」
 
 オバマ政権の下、国防総省は、同性愛者であることが明らかになると除隊させられる制度を撤廃したり、女性兵士が特殊部隊も含むすべての職種に就けるようにするなど、アメリカ軍での同性愛者や女性の地位をめぐる改革を進めてきました。今回の措置により、性的マイノリティの人たちの入隊を禁じる規則は実質的に取り払われることになります。

 世界全体では、英国、イスラエル、オーストラリアなど少なくとも18か国がすでにトランスジェンダーの人がオープンに軍務に就くことを認めています。

 UCLAのウィリアムズ・インスティテュートが発表した最新の調査結果によると、全米でトランスジェンダーであることを公にして生活している人の数は約140万人(アメリカ国民の0.6%)に上るそうです。ワシントンD.C.では14,550人(全体の2.77%)、州ではハワイ、カリフォルニア、ジョージア、ニューメキシコなどが最も多く、それぞれ0.8%を占めるそうです。

 アメリカでは現在、トランスジェンダーが自らの性自認に基づいてトイレを利用することを禁じる法律がノースカロライナ州などでまかり通っている(詳しくはこちら)ことをめぐり、差別的だとする批判の声が高まっています。今年3月にはニューヨークのビル・デブラシオ市長が市の施設で自認する性別に応じたトイレ使用を認めるよう義務付ける命令を出しました。5月には、オバマ政権が、全米の公立学校に対してトランスジェンダーの生徒・学生に自認する性別に基づいたトイレの使用を認めるよう要請する指針を通達しました(これを不服とする11の州が、オバマ政権を相手取り訴訟を起こしたそうです)
 約140万人という調査結果や今回の国防省の決定が、トランスジェンダーのトイレ利用の問題を考える有意義なきっかけとなり、差別的な状況が改善されていくことを願うものです。



米軍 トランスジェンダーの入隊禁止規則を撤廃へ(NHK)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160701/k10010579411000.html

米軍「トランスジェンダー」への制限撤廃(日テレNews)
http://www.news24.jp/articles/2016/07/01/10334182.html

米国防総省、トランスジェンダーの入隊を解禁(TBS)
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye2810435.html

米軍、トランスジェンダー入隊規制を撤廃(日経新聞)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM01H14_R00C16A7EAF000/

トランスジェンダー軍務容認=LGBTへの障壁なくなる-米軍(時事通信)
http://www.jiji.com/jc/article?k=2016070100135&g=int

米軍、「トランスジェンダー禁止」を撤廃 関連医療費も負担へ(AFP)
http://www.afpbb.com/articles/-/3092426

米軍、トランスジェンダーの入隊禁止規則を撤廃(The Huffington Post )
http://www.huffingtonpost.jp/2016/06/30/pentagon-lifts-ban_n_10764406.html

アメリカ、国民の140万人がトランスジェンダーであると予想(Saras)
http://saras-media.com/57964

米トイレ論争、NY市がトランスジェンダー擁護運動(AFP)
http://www.afpbb.com/articles/-/3089610

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