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自殺総合対策大綱が見直され、性的マイノリティに関する施策も引き続き盛り込まれました

2017年07月25日

 国の自殺対策の指針となる自殺総合対策大綱が5年ぶりに見直され、新たな大綱が7月25日、閣議決定されました。自殺者は減少傾向にあるものの「非常事態はまだ続いている」として、自殺死亡率(人口10万人当たりの自殺者数)を今後10年で30%以上減らすという数値目標が掲げられました。性的マイノリティへの理解の促進などを含む多様な施策が打ち出されています。
 
 自殺総合対策大綱は2007年に初めて制定され、「10年で20%減」という目標を掲げ、達成していますが、新大綱ではさらにハードルを上げました。
 日本の年間の自殺者数は2016年は2万1897人で、7年連続で減少していますが、自殺死亡率で見ると人口10万人あたり19.5人で、世界でワースト6位、先進国で最悪のレベルです(詳しくはこちら)。新大綱は、自殺死亡率を2025年までに米国やドイツなどの水準に並ぶ10万人あたり13人(自殺者数にすると1万6000人以下)にまで下げることを目標としています。
 そして、自殺対策を「生きることの阻害要因を取り除いていくこと」と定義し、長時間労働の解消や産後うつのケア、性的マイノリティに対する周囲の理解促進といった多様な施策が盛り込まれました。

 厚労省が今回発表した自殺総合対策における当面の重点施策(ポイント)では、「7.社会全体の自殺リスクを低下させる」の中に「ひきこもり、児童虐待、性犯罪・性暴力の被害者、生活困窮者、ひとり親家庭、性的マイノリティに対する支援の充実」と謳われています。
 また、自殺総合対策大綱(本文)を見ると、「第3 自殺を予防するための当面の重点施策」の「2.国民一人ひとりの気づきと見守りを促す」の中で「自殺念慮の割合等が高いことが指摘されている性的マイノリティについて、無理解や偏見等がその背景にある社会的要因の一つであると捉えて、理解促進の取組を推進する」と、また、「3.早期対応の中心的役割を果たす人材を養成する(2)教職員に対する普及啓発等の実施」の中で「自殺念慮の割合等が高いことが指摘されている性的マイノリティについて、無理解や偏見等がその背景にある社会的要因の一つであると捉えて、教職員の理解を促進する」と明記されています。
 
 ちなみに、新聞など大手メディアでは、今回初めて性的マイノリティに関する施策を打ち出したかのように報じられていますが、これらの文言は5年前、2012年の大綱の見直しの際に初めて盛り込まれ(ホワイトリボン・キャンペーンなど当事者の方の訴えのおかげで。詳しくはこちら)、今回もほぼ同じ文言が流用されているというのが真実です。毎日新聞の記事で「24時間365日無料の電話相談窓口を設置する」と書かれている件についても、すでに5年前から「よりそいホットライン」が開設されていますので、今回新たに実施するものではないはずです(なぜこのように報道されたのでしょうか…)
 
 この5年間で、渋谷区などで同性パートナーシップ証明制度が認められ、多くの企業がいわゆるLGBT施策に取り組むようになり、社会(世間)の性的マイノリティに対する姿勢は劇的に変わってきました。しかし、この間の国の施策を見ると、先日の学習指導要領(小中学校の教科書)の改定では多くの当事者の要望を(社会の理解が進んでいないからという理由で)無視してLGBTに触れず、セクハラ指針の改定でも期待に反してLGBT差別禁止規定は盛り込まれず(「LGBTもセクハラの対象です」という当たり前のことが明記されたのみ)、本当に国民にLGBTへの理解を促す気があるのだろうかと疑問に感じざるをえない対応が続いています。今回の自殺総合対策大綱の改定も、実は性的マイノリティに対しては特に何もしていない(前回の文言を流用しただけ)というのが実状です。
 
 しかし、性的マイノリティの間で自殺を考えたり実際に自殺してしまう人たちが多い実情を少しでも改善するために、国民一人ひとりに対して性的マイノリティへの理解促進の取組みを推進する、さらに学校の教職員にも理解を促進するという国の方針が(たとえお題目であっても)きちんと受け継がれ、今回も明記されたことは、とても重要だと言えます。LGBT差別禁止法がまだ実現していない現状で、学校や職場など日常生活の様々な場面で差別的な言動に直面しがちなLGBT(やアライの人たち)が自信を持って「国の方針はこうなってます」と言えること(論拠を持てること)の意義は決して小さくないと言えるのではないでしょうか。
 
 

自殺総合対策大綱 自殺率、10年で3割減目標 政府新大綱「非常事態続く」(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20170725/dde/001/010/045000c

10年で自殺率3割減目指す(ロイター)
https://jp.reuters.com/article/idJP2017072501001079

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