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国会にLGBT差別禁止法の早期制定を求める署名キャンペーンが始まりました

2020年10月15日

 10月15日、LGBT差別を禁じる法律の制定を求める「Equality Act Japan 日本にもLGBT平等法を」署名キャンペーンが立ち上げられました。
 
 以前からLGBT差別禁止法の制定を求める動きはありましたし、現在も進められています。ざっとお伝えすると、2015年、LGBT差別の解消に向けた超党派の国会議員連盟が発足し、LGBT差別禁止法の制定を求めてロビーイング(国会議員への要望)を行う数あるLGBT団体がまとまって(コミュニティ側の窓口を一本化して)LGBT法連合会が設立されました。2017年からは、国会議員にLGBTへの差別をなくすための法律の制定を求める「レインボー国会」が、数回にわたって開催されてきました。今年5月には、医療現場や行政の施策で同性パートナーを家族として扱うことやLGBT差別禁止法の制定を求め、政府に要望書を提出しています。また、6月にはSOGIハラ・アウティングの防止を含むパワハラ防止法が施行されました(ようやく一部、LGBT差別禁止=LGBTを差別から守る法的な枠組ができ、ひとつの達成を見ました。LGBT法連合会のおかげです)
 一方で、超党派議連が発足して5年が経っても、LGBT差別禁止法は未だに成立を見ていません(公人による差別的な発言が繰り返されたり、学校などでいじめが起きても守られなかったり…という現状に歯止めがかかっていません)
 そうした、なかなか進まない状況の(おそらくは)打開策としての意味もあって、今回、LGBT法連合会、国際人権NGO「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」、スポーツとLGBTに関する活動をしている「アスリート・アライ」の3団体が共同で「多様性を掲げる東京五輪・パラリンピックのレガシーとして、日本でも法律を」と呼びかけ、「Equality Act Japan 日本にもLGBT平等法を」の署名キャンペーンが立ち上げられました。集まった署名を各政党の党首に提出し、国会で早期の「LGBT平等法」の制定を求めるということです。
 
 10月15日、文科省で記者会見が行われ、3団体のほか、現役アスリートとして唯一、同性愛者であることをカムアウトしているサッカー選手の下山田志帆さん(スフィーダ世田谷FC)や、東京レインボープライド共同代表の杉山文野さんらも出席し、スポーツ界での性的マイノリティへの差別や偏見が根強く、当事者のアスリートが置かれた厳しい状況についてお話しました。
 また、ヒューマン・ライツ・ウォッチ日本の土井香苗代表は、OECD諸国の中で日本は、「同性愛者への受容度」は36ヵ国中25位、「性的マイノリティに関する法整備状況」にいたっては35ヵ国中34位(ワースト2位)であり、国際的にもLGBTに関する法整備の遅れが目立つことを指摘していました。欧米の多くの国々でLGBT差別禁止法が整備されており、五輪憲章でも性的指向による差別の禁止が明記されているにもかかわらず、開催国である日本でLGBT差別禁止法が未だに制定されていないなんて…という話です。
 東京都や茨城県(と、現在検討中の三重県)では、条例でLGBT差別禁止を謳っていますが、「学校や職場で実際に起きている差別から、LGBTを守るための法律が日本にはありません。当事者が社会を生きるうえで、この法律が必要だとあらためて呼びかけたいです」と、LGBT法連合会の五十嵐ゆり共同代表は訴えました。

 今回の署名キャンペーン「Equality Act Japan」では、「LGBT平等法」という新しい呼び名が使われており、公式サイトでは「「LGBT平等法」は、性的指向や性自認による差別的取り扱いを禁止し、LGBTも、LGBTではない人も「平等に扱う」ための法律です」と述べられています。これは、今まで制定を求めて活動してきたLGBT差別禁止法とはまた別の考え方に基づく、何か別の法律なのだろうか? 「LGBT平等法」の具体的な中味はどのようなものになるのだろうか?と気になる方もいらっしゃることと思います。そこで、「LGBT平等法」という言葉でどういう法律を想定しているのか、LGBT法連合会の神谷さんに質問してみました。

<「LGBT平等法」についての質問>
1. LGBT差別を禁止する法制度の案としては、LGBT法連合会が示しているLGBT差別禁止法の私案(考え方)、20017年に日本学術会議が発した提言、2018年に野党が共同で提出した「LGBT差別解消法案」などもあります。大まかなイメージとして、どれに近いものを目指しているのでしょうか? 全く別物でしょうか?

LGBT差別禁止法の私案(考え方)を想定しています。差別を禁止した結果、平等になるということで、今回、広くキャンペーンを展開するにあたって、最終的にめざす社会を強調すべく「LGBT平等法」としました。

2. 依然として就業や職場における差別や、教育現場におけるいじめや差別など、生活の様々な場面でLGBTQへの差別事案が発生しているわけですが、それに対して何らかの措置(国からの指導や、あるいは罰則など)が取られるのでしょうか? 東京都や(中間案で見る限り)三重県の条例のように、罰則規定は特になく、「理解しましょう」という呼びかけに留まるのでしょうか? 当事者が(アウティングを含め)差別から守られるようにするための仕組みとして、どのような法制度を考えていらっしゃるのか、お聞きしたいです。

法連合会の考え方では、差別に対する刑事罰は想定していませんが、きめ細かな行政指導は想定しているところです。この点は、今回のパワハラ防止法と同じようなスキームを想定しています。

2-2.  パワハラ防止法では、企業に対してSOGIハラ・アウティングを防ぐための予防策を講じる措置義務(従わない場合、指導を行い、それでも改善されない場合、企業名を公表)を課していますが、同様に、企業だけでなく学校や自治体などにも防止の措置義務を課すということでしょうか?

パワハラ防止法は、学校や自治体であっても、そこで雇われている人には効力を発揮します。しかし、子ども同士のいじめや、公共サービスを受ける場合、企業でも不動産を借りるなど、雇われていない人には基本的に効力がないのです。
ちなみに、ハラスメントではない、差別的取扱いと呼ばれる異なるルールや制度の適用、ゲイを理由に合格点が人より高いとか、不当に異動させられたとか、そういうものにも効力がありません。
法連合会の考え方は、雇われていなくても、差別的取扱いについても、予防策はもちろん、合格点が違って落とされたことや、不当な異動という結果そのものを無効にしたり、損害賠償を請求できるようにする法律を求めています。また、従わない場合の刑事罰は想定していませんが、ご指摘のような指導、改善されない場合の企業名公表などは想定しています。


 以上です。
 中味としてはLGBT差別禁止法であり、別の何かを新たに作るということではない(キャンペーンとして、より広範に支持を広げるために「平等」を打ち出した)ということだそうです。
(なお、LGBT法連合会が目指す「LGBT差別禁止法」の考え方については、東京レインボープライド2016タブロイドにも掲載されたこちらがわかりやすいと思います)
 
 というわけで、ご賛同いただける方は、「Equality Act Japan」のサイトから署名をお願いいたします(SNSでの拡散などもぜひ)
 

参考記事:
LGBT平等法の制定へ署名開始(共同通信)
https://this.kiji.is/689376978296177761
LGBT法律めぐる状況、日本はOECDワースト2位。「LGBT平等法」求める国際署名が開始(Yahoo!)
https://news.yahoo.co.jp/byline/matsuokasoshi/20201015-00203115/
LGBT差別を禁じる法律がない日本、東京五輪きっかけに法整備求める署名活動スタート(弁護士ドットコム)
https://www.bengo4.com/c_23/n_11859/

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