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性的マイノリティに関する意識調査が実施され、同性婚支持が64.8%に上り、LGBTQ差別禁止法は87.7%が賛成しました

2020年11月30日

 11月29日、性的マイノリティに関して人々がどう認識しているかを尋ねた意識調査の結果速報が発表され、同性婚に賛成する人の割合が64.8%に上り(20代〜30代では8割)、性的マイノリティに対するいじめや差別を禁止する法律・条例の制定には87.7%が賛成していることが明らかになりました。

 
 この調査は、広島修道大学の河口和也教授(『同性愛と異性愛』『クィア・スタディーズ』などの著者)が研究代表者を務める研究班によって実施されました。2015年に無作為抽出による全国20〜79歳の男女に対して第1回「性的マイノリティについての意識」調査が実施され(有効回答者数1259人)、2019年に同様の方法で第2回調査が実施されました(有効回答者数2632人)。これにより、2015年時点と2019年時点での比較が可能になりました。結果、性的マイノリティに対して抵抗感を抱く人が前回に比べて減少していることが明らかになりました。
 仲の良い友人が同性愛者・両性愛者・性別移行をした人だとわかったら「抵抗がある」と回答した人の割合は、2015年の半数から3分の1に減少、年代別では特に40〜50代で大きく減少しました。
 「身近な人が同性愛者だった場合、どう思うか」を尋ねる質問では、2015年に比べて「近所の人」「同僚」「きょうだい」「子ども」、いずれも「いやだ」と答える割合が減少しましたが、「きょうだい」や「子ども」の場合は2019年でも半数以上が「嫌だ」「どちらかといえば嫌だ」と回答しています(女性より男性が高い傾向にあります)
 「身近な人が性別を変えた人だった場合、どう思うか」を尋ねる質問でも同様の結果が見られ、きょうだいや子どもだと依然として半数近くが「いやだ」と感じています。
 研究班の国立社会保障・人口問題研究所の釜野さおり氏は、「単に『悪いもの』『やめてほしい』というよりも、わからないことと向き合わなくてはならず、『どうしよう』という感覚があるのもしれません。拒絶的な気持ちだけでなく、『心配』もあると考えられます」と指摘します。
「親としてどうすればよいかわからないと考えたり、性的マイノリティである自分の子どもの人生を想像したときに心配という気持ちが重なったりして、否定的な選択肢を選ぶ可能性も考えられます。家族という簡単に切れない関係であるがゆえに、葛藤も大きくなるのではないでしょうか」

 同性婚の賛否を問う質問では、全体の64.8%が「賛成」「やや賛成」と回答し、2015年時点よりも13.6ポイント増加しました。賛成派は、20〜30代で81%に上り、40〜50代でも74%、60〜70代で47.2%となりました。前回と比べて賛成の増加幅が最も大きかったのは40〜50代で、19ポイント増でした。

 また、性的マイノリティに対するいじめや差別を禁止する法律・条例の制定について、87.7%が「賛成」と答えています。
 親が育てられない子どもを養子や里子として迎え、育てることのできる制度については、全体の69.9%が賛成と回答しました。
 「同性愛」「両性愛」「体の性別を変えたいと望む人」のことを義務教育で教えることについても、いずれも賛成が大幅に上昇し、過半数を超えました。

 それから、今回の調査では、ほぼ全ての項目で「無回答」の割合が減少したそうです。
 これについて、調査メンバーの平森大規さんは、「前回と比較して、『何を聞かれているのか、なぜ聞かれるのかがわからない、考えたことがないので答えられない』という人が少なくなった可能性がある」と見ています。
 さらに、前回に比べて性的マイノリティについて肯定的な意見を持つ人の割合が増加傾向にあることについて、釜野氏は「一つの施策のみが飛び抜けて支持されているのではなく、知識や感情の部分など、全般の意識において変化があったという印象」と評価すしています。
「調査への回答に表れる意識も性的マイノリティの置かれた社会環境の一部であると捉えると、性的マイノリティの置かれた社会環境が『改善した』と言えるのでは、と考えられます」

調査結果の出典:
釜野さおり・石田仁・風間孝・平森大規・吉仲崇・河口和也
2020 『性的マイノリティについての意識:2019年(第2回)全国調査報告会配布資料』 JSPS科研費(18H03652)「セクシュアル・ マイノリティをめぐる意識の変容と施策に関する研究」(研究代表者 広島修道大学 河口和也)調査班編
 

 2015年は渋谷区が同性パートナーシップ証明制度を盛り込んだ条例を制定したことを受けて、企業のLGBT施策もにわかに進展し、世の中の同性愛者に対する扱いが大きく変わる転機でした。今回の調査結果で、2015年以降の4年間で、世間の性的マイノリティの認知が大きく進んだ様子が見てとれます。
 家族が当事者だったときの嫌悪感はいまだに強いものの、LGBTQの権利保障については、同性婚で賛成が64.8%に上り、LGBTQ差別禁止法については87.7%が賛成、養子縁組についても69.9%が賛成と、海外と比べてもかなり高い数字です。
 社会がLGBT平等法や同性婚を承認する準備は十分整った(「社会通念」が形成された)、あとは国会で認めていただくだけ、というところまで来ているのではないでしょうか。
 
 
参考記事:
同性婚、20〜30代の8割が賛成。性的マイノリティの友人への「抵抗感」は40〜50代で大幅に減少【全国調査】
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_5fc23a1ac5b61d04bfaa0456

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