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会社からアウティングを受けて豊島区に申立てを行なっていたゲイ男性に、会社が謝罪し、和解が成立しました

2020年12月01日

 性的指向を上司にアウティングされた20代のゲイ男性(Aさん)が今年6月、職場がある豊島区に対し、事業者への指導などを求める申立てを行ないましたが(詳細はこちら)、このたび、会社側が謝罪し、解決金を支払うことで男性と和解したことが明らかになりました。専門家によると、アウティング被害をめぐる争い自体が珍しく、和解に至るケースは極めて異例だそうです。

 Aさんは2019年に入社する際、自身がゲイであることを会社側にカムアウトしたうえで「同僚には自分のタイミングで伝えたい」と伝えていました。しかし、同年夏、同僚のパート女性が男性を避けるようになり、上司がアウティングしたことが発覚、「一人ぐらい、いいでしょ、と上司から笑いながら言われた」そうです。Aさんは精神疾患を患い、休職に追い込まれました。
 その後、パートナーの方の励ましもあって、支援団体とつながり、総合サポートユニオンという労働組合に加入し、団体交渉を行ないましたが、会社側は非を認めませんでした。今年6月、Aさんは、会社のある豊島区に申立てを行ない、区側のあっせんを受けていました。そして、Aさんを支援する労働組合「総合サポートユニオン」とともに会社側と交渉し、今年10月下旬、会社がアウティングを認めて和解し、精神疾患の発症についても会社側の責任を認めました。会社は共同通信の取材に対し、「真摯に受け止め、今後、再発防止に努めます」と述べました。
 Aさんは「和解まで長くつらい日々だった。社会や職場からアウティングをなくすきっかけになってくれればうれしい」と語りました。

 支援団体POSSEの今野代表は、「多くの当事者が諦めてしまうところ、NPOや労働組合につながった彼は、会社の不当な扱いに対して仲間とともに声を上げることを決意した。LGBTの労働問題に取り組む総合サポートユニオンに加入して団体交渉を行うとともに、会社前での宣伝行動、そして今年9月にはLGBTQへの差別反対のデモも開催した。このような差別をなくす「闘い」が今回の成果を生んだと言える。今の日本社会にはアウティング被害が蔓延しているが、もし、職場のアウティング被害で悩んでいる性的少数者がいたら、ぜひ支援団体へ相談を寄せて欲しい。一緒に闘う仲間がいる」とコメントしています。

 豊島区議会は(石川大我区議(当時)やレインボーとしまの会の尽力のおかげで)2019年3月、同性パートナーシップ証明制度のことを持ち込んだ改正男女共同参画推進条例を全会一致で可決しましたが、この条例は同時に、LGBT差別の禁止や、SOGIハラの規定、そして「本人の同意なくして性自認や性的指向を公表してはならない」というアウティング禁止規定も盛り込んだものでした(LGBTQにとっての「モデル条例」とも言われています)。罰則はありませんが、条例は苦情処理委員会の設置を規定しており、区民や区内に勤める人は苦情や救済を求めることができるようになっています。豊島区にこのような条例(法的根拠)があったおかげで、初めは非を認めていなかった会社も和解に応じるまでになったということも言えるでしょう。やはりLGBTQを守る条例や法律は大切です。
 LGBTQを守る法律といえば、今年6月からSOGIハラおよびアウティングの禁止を含むパワハラ防止関連法が施行されましたが(中小企業は2022年4月から)、共同通信の記事でも「まだ十分に浸透しているとは言えない」と指摘されています。今回のケースは、会社がアウティングの重大さを理解せず、LGBTQ従業員の個人情報を第三者に暴露してしまうと、報道による社会的制裁、謝罪、解決金の支払いを余儀なくされるという最初のケースともなりました。これによりアウティングについての認知が広まり、まだアウティング防止策を講じていなかった企業も速やかに動きはじめるのではないかと期待されます。
 
 
 
参考記事:
アウティング被害、異例の和解 企業側が謝罪、男性に解決金「なくすきっかけになれば」(東京新聞)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/71269

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