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同性婚訴訟札幌地裁の弁論で感動のカミングアウトを果たした加藤丈晴弁護士へのインタビュー記事が弁護士ドットコムに掲載されました

2020年12月29日

 今年10月の「結婚の自由をすべての人に」訴訟・札幌地裁の弁論で、自身もゲイであるとカムアウトし、「愛する人と家族として共に人生を歩むという当たり前の権利を、性的マイノリティにも認めてほしい」と訴え、大きな反響を呼んだ加藤丈晴弁護士。いったいどんな方なのだろう?と気になっていた方もいらっしゃるかと思いますが、12月28日、弁護士ドットコムにインタビューが掲載されました。カミングアウトに至った経緯、日本の法曹界の多様性とは程遠い現状、同性婚実現への思い、などについて語られています。抜粋してご紹介いたします。

 まず、裁判でカムアウトしようと思った経緯について、加藤弁護士は、このように語っています。
「私がカミングアウトをしなければ、裁判官の目には、私があくまで当事者を支援している異性愛者と映るのではないかと思いました。しかし、実際は私もセクシュアルマイノリティで、自分が原告になってもおかしくない立場です。
 弁護士だろうが、裁判官だろうが、同性愛者はどこにでも存在します。裁判長だってそうかもしれない、右陪席や左陪席がそうかもしれない。当たり前にある人権の問題をめぐる裁判であることを、裁判官に伝えたいという思いがありました。
 当初、陳述は、別の弁護士が担当する予定でしたが、その弁護士が直前に辞退したので、弁論の2日前に私が意見陳述をすることに決まりました。
 ありきたりの意見陳述で違憲判決を求めただけでは、裁判官に響かない。それなりにインパクトのあることを言わなければと思いました。そこで、代理人が自分のことを話すことは、反則みたいなところがあるのは理解した上で、自分が同性愛者であることを交えて話そうと決めたのです。
(中略)
 裁判官に対して「若いLGBTの当事者が、あなた達が出す判決にどれだけ勇気づけられるかを考えてください」というメッセージを込めました」
 裁判官たちも「熱心に聞いていると感じた」そうです。「特に、右陪席は前のめりの姿勢でじっと聞いていました。どのような影響を与えたかは、まだわかりません」

 日本には、南和行さん&吉田昌史さんカップルや、永野靖さんのようにカミングアウトして活躍する弁護士さんもいらっしゃいますが、差別を恐れ、周囲には公表できずにいる弁護士さんもたくさんいらっしゃいます。加藤さんもその一人でした。
 加藤さんは2016年6月から1年3ヵ月間、ニューヨークに留学していましたが、ニューヨークでの生活がきっかけで、自身のセクシュアリティを肯定的に受け止められるようになっていったそうです。
「LGBTの問題は、アメリカでは重要な人権問題だと認識されていて、メディアでも頻繁に取り上げられています。ニューヨークでは、女性が「My wife is….(私の妻が)」と話すなど、会話の中で自然にセクシュアリティを知ることになります。「実は、僕はゲイで、男性と結婚していて」というような、面倒くさい前置きがない。アメリカでもニューヨークのような大都市においては、カミングアウトは、もはや大騒ぎするような問題ではないということを知りました。
(中略)
 カミングアウトをしない限り差別の対象にはされません。ただ、何も言わなかったから、同性愛者がいないことを前提として社会の制度が作られてきたのです。だから、私は「言わなきゃ社会が変わらない」「自分のスタンスをオープンにして発言することが必要」と思い、少しずつメディアも含めて、カミングアウトをするようになりました」
「今でも、自分の中のホモフォビア(同性愛嫌悪)には常にとらわれています。長年刷り込まれたことが、1年3ヵ月の留学できれいになくなることはありませんでした。しかし、「公言しても大丈夫だ」と、自分の中で確信を持てるまでには至りました」
 実は加藤さんが公にカムアウトしたのは、今回の裁判が初というわけではなく、2019年に北海道新聞で「ゲイを自認する」弁護士として、顔写真入りで掲載されたことがあるそうです。その翌日、顧問先から「顧問契約を終わりにしたい」と告げられ、「あの記事を読んだからだ。同性愛者の弁護士に顧問をしてもらいたくないんだ」と思ったそうです。後になって、それが理由でないことがわかりましたが、差別を受けるかもしれないという恐れは常に感じているそうです。

 加藤さんは2010年頃、「LGBT支援法律家ネットワーク」に加入し、勉強会などに参加しはじめました。このネットワークが母体となって「同性婚人権救済弁護団」が結成され、2015年7月に、日本弁護士連合会(日弁連)に同性婚法の制定を求める人権救済申立を行ないました(申立を受け、日弁連が2019年に政府・国会に同性婚法を求める意見書を提出するに至りました)。その弁護団が、「結婚の自由をすべての人に」訴訟の弁護団の母体になりました。

 加藤さんは、法曹界の現状について、「率直に言って、弁護士のLGBTに対する人権意識は不足しています」と指摘します。 
「4、5年前に、日弁連の刑事系の委員会で、強制性交罪の法定刑について、被害者が男性にも拡大されることとの関係で議論したことがありますが、ベテランの弁護士が、男性の性被害も重大であることの例として、「集団就職の時代に、就職したばかりの若者が、就職先の会社の社長に犯されてホモになってしまったという話を聞いたことがある。こんな悲劇はない!」と発言しました。「ホモ」という言葉は差別語ですし、同性と性交渉を持つことで同性愛者になるということには全く根拠がありません。そもそも同性愛者になることが悲劇だという決めつけ自体、大きな差別です」
「圧倒的な異性愛規範のある社会の中で、差別的な価値観や考え方を持ってしまうことは仕方ないと考えています。しかし、いまその価値観や考え方が間違いだということを、誰もが知らなくてはならない段階に来ています。批判され、間違いに気づくことで、弁護士業界の意識も変わります」
 
 そんな日弁連でも、2019年から「人権のための行動宣言」にLGBTの人権が盛り込まれるようになり、「LGBTの権利に関するプロジェクトチーム」が立ち上げられ、法律相談や出前授業などの取組みが広がっています。関心が低かった弁護士も、最近は勉強したいと言ってくれるようになっているそうです。
「私は日弁連がもっと率先して政策提言をやっていくべきだと感じます。反差別法の制定や、内縁保護の同性カップルへの拡大など、LGBTの人権について積極的に意見を発信することが、法律家の職能団体として必要だと考えています」
 
 記事の最後に、加藤弁護士の同性婚実現にかける思いが語られています。
「同性婚が認められるかという問題は、結婚したい人が結婚できるという意味だけではなく、同性愛者の尊厳にかかわる問題だと強く感じています。
 実は、同性カップルの当事者すべてが、(異性間には認められた)結婚ができないことに不便さを感じているわけではありません。異性愛者と同じように、好きだから結婚したい、それだけの理由です。「相続を受けたいから結婚しました」なんて答える人は、まずいません。
 いま全国の自治体で、パートナーシップ制度が整備されつつありますが、これを拡大して、相続や財産分与など法的拘束力のあるパートナーシップ制度を作り、異性愛者向けの婚姻制度とは別の制度として存在すればよいのではないかという議論があります。それではダメなのです。
 もし、権利的には平等な、(結婚とパートナーシップという)2つの制度を認めたら、当事者は確かに困ることはないかもしれません。しかし、愛する人と結婚する権利を否定し続けることに変わりはなく、同性愛者の尊厳は傷つけられたままです。
 黒人専用の学校と白人専用の学校、両方が同じだけの予算をかけた学校で、同じレベルの教育を施しているから「平等」という主張(分離すれども平等)に対して、黒人たちは当時、「(制度が2つに分かれていることに対して)二流市民扱いするものだ」と声をあげました。これを受けて、1954年の「ブラウン判決」は「差別」と判断しました。
 ブラウン判決の考え方からいくと、同性愛者用のパートナーシップ制度と異性愛者用の結婚制度があることは、同性愛者を二流市民扱いすることになるのではないでしょうか。同性婚を実現することは、まさに同性愛者が二流市民としてみなされないための尊厳をかけた闘いなのです」
 

 全国の「結婚の自由をすべての人に」訴訟の中で初となる札幌地裁の判決は来年3月17日に下されます。加藤弁護士の感動的な弁論や原告の方たちの心からの訴えに、裁判官の方たちも心動かされ、日本の歴史を変えるような、画期的な判決が下り、みんなで歓喜の涙を流しながら抱き合ったり…そういう「未来予想図」が見える気がします。
 
 
参考記事:
法廷で同性愛者を公言「言わなきゃ変わらない」 加藤丈晴弁護士の葛藤(弁護士ドットコム)
https://www.bengo4.com/c_18/guides/1862/

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