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大阪地裁がトランス女性タクシー運転手の性表現の権利を認める決定を下しました

2020年08月31日

 トランス女性のタクシー運転手が、化粧を理由に乗務を禁じられたのは不当だとして、勤務先の淀川交通(大阪市淀川区)に賃金の支払いを求める仮処分を申し立てていましたが、大阪地裁は7月20日付で同社に月18万円の支払いを命じていたことが明らかになりました。

 決定文によると、運転手は、戸籍上の性は男性ですが性自認は女性のトランス女性で、2018年11月、性同一性障害であると伝えたうえで淀川交通に正社員として採用されました。しかし、今年2月に上司と面談した際、上司に「身だしなみで化粧はないやん。男性やねんから」「だいぶ濃いわ」「(性同一性障害は)治らんのでしょ。病気やねんから。うちでは乗せられへん」と言われ、乗務から外されました。月20万~40万円ほどあった賃金はゼロになり、運転手は運転手は3月、賃金の支払いを求める仮処分を地裁に申し立てていました。

 大阪地裁は訴えを認め、月18万円の支払いを命じました。溝口達裁判官は「外見を女性に近づけ、女性として社会生活を送ることは自然かつ当然の欲求だ」「個性や価値観を過度に押し通すものと評価すべきではなく、女性乗務員と同等に化粧を認める必要がある」と述べました。「客離れが起きる」という会社側の主張についても、「乗客の多くが不寛容とは言えない」と退けています。

 社会通念が形成されていないから(世間に性的マイノリティ差別があるから)支援は認められないとする名古屋地裁の判決とは真逆の、真っ当な判決です。

 性同一性障害の診断を受けたトランス女性が提訴したケースとしては、昨年末、経産省職員の訴えが認められ、「個人が自認する性別に即した社会生活を送ることは、重要な法的利益であり、国家賠償法上も保護される」という判決が下ったケースが記憶に新しいところです。また、性別適合手術を受けていながら男性の更衣室の利用を強要され、念書まで書かされるという差別的扱いを受けたトランス女性がコナミスポーツクラブを訴えていた裁判では、2017年に和解が成立しています。トランス女性に化粧をして女性の服装で出社する権利を認めた判決は、2002年のいわゆる性同一性障害者解雇事件に遡ります。

 毎日新聞の記事の見出しは「異例」とありますが、これまでの、性同一性障害の方の自認にするジェンダーに基づく性表現の権利を認める数々の判決に鑑みて、少しも「異例」ではなく、至極当然のことです。

 
 なお、トランス女性のドライバーも生き生きと働ける大手タクシー会社としては、日の丸交通が知られています。LGBTQのための求人サイト「JobRainbow」にも、日の丸交通で実際にドライバーとして働いているトランス女性の方と人事部の方のインタビュー記事が掲載されています。
 タクシーだけでなく、島根県益田市の石見交通では、トランス女性のバス運転手が高速バスを運転し、話題になっています。
 
 早く自認する性別での勤務(性表現の自由)が当たり前に保障される時代になってほしいですね。
 
 

参考記事:
「化粧理由に乗務禁止」は不当…大阪地裁、性同一性障害のタクシー運転手申し立て認める(読売新聞)
https://www.yomiuri.co.jp/national/20200831-OYT1T50109/
性同一性障害の運転手への乗務禁止 「化粧理由は不当」 大阪地裁が異例の決定(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20200830/k00/00m/040/126000c

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