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全米オープンが有色人種やLGBTQに光を当てる「Be Open」キャンペーンを展開しています

2020年09月02日

 テニスの全米オープンが開幕した8月31日、1回戦の試合に臨んだ大坂なおみ選手が、ケンタッキー州で警官に射殺された黒人女性、ブレオナ・テイラーさんの名前が入った黒いマスク姿で入場し、注目を集めました。
 今回の全米オープンは、人種、ジェンダー、SOGIなどの公正や平等に光を当てる「Be Open」キャンペーンが展開されており、グランドスラム大会としては初めて、選手たちが「Black Lives Matter」「Gay Pride」などのメッセージを身に着けることがOKになっています。

 全米オープンの「Be Open」キャンペーンのページにはこう書かれています。
「テニスは人種、性別や性的指向、その他一切に関わらず誰もが参加し、楽しめるスポーツでなければなりません。そして今の時代に、アスリートも自身の信条をコート上でも表現できる機会を与えられるべきだと考えました」
「全米テニス協会は、他者へのリスペクトを涵養する努力に賛同し、人種的不公正、ジェンダーの平等、LGBTQ権利擁護など、いま急がれる社会的イシューに光を当てる取組みを進めています。その一部として、2020年の全米オープンでは、新しい社会的責任とインパクトを目的とした"Be Open"というキャンペーンを立ち上げました。これは、人々やコミュニティのストーリーをシェアし、『オープンであること』のスピリットを示すものです。私たちはみなさんに『オープンに』なっていただきたいですし、世界がいま必要としている変化への取組みにもっと参加してほしいと思っています。なぜなら私たちがより『オープン』になれば、より多くのことが可能になるからです」
 具体的には、アーサー・アッシュ・スタジアムに黒人のアーティストの作品を展示したり、女性のプロテニスを誕生させたレジェンドであるビリー・ジーン・キング※をはじめとする9人の女性たちを電光掲示板でフィーチャーしたり。そして「彼女たちの功績を、いま平等のために闘っている女性アスリートをフィーチャーしたショートビデオの中で祝福する予定です」と書かれていたのですが、そのショートビデオが8月29日に公開され、冒頭や中盤(レインボーカラーのたすきをかけてスピーチ)でビリー・ジーン・キングがフィーチャーされているほか、大坂なおみ選手も登場しています。
 
※ビリー・ジーン・キングは1943年、カリフォルニア生まれ。お金を貯めて11歳のときに初めてラケットを買い、1961年(17歳)にウィンブルドン女子ダブルスで初優勝を飾り、1967年(23歳)にはウィンブルドンと全米選手権の2大会連続で「ハットトリック」(同一大会で女子シングルス・女子ダブルス・混合ダブルスの3部門をすべて制覇すること)を達成、世界ランキング1位になりました。そうして1983年に40歳で引退するまで、20年以上にわたり第一線で活躍しました。
 1973年、女子の優勝賞金が男子の8分の1であるなど男女格差の激しいテニス界の現状に異議を唱え、仲間とともにテニス協会を脱退して「女子テニス協会」を立ち上げました。そんな彼女に、元男子世界チャンピオンのボビー・リッグスが男性優位主義の代表として挑戦状を叩きつけ、伝説の「男女間の戦い」が開催され、ビリー・ジーンはこの「負けられない戦い」に見事、勝利します(『Battle of the Sexes』という映画に描かれています)
 女子テニスの歴史を通じての最大の偉人の一人に数えられているだけでなく、ビリー・ジーンは1981年にレズビアンであることをカミングアウトしています(この時期のトップアスリートとしてのカミングアウトは、本当にスゴいこと。しかも現役時代です)
 女性や同性愛者の権利向上のために長年闘い続けた功績を認められ、2009年にはオバマ大統領から大統領自由勲章(アメリカの最高栄誉の勲章)を授与されています。


 なお、全米テニス協会がLGBTQ支援に取り組んだのは今年が初めてではありません。
 昨年は全米オープンの直前に初の「Open Pride」を開催しました。ファンウィークの一環として、ビリー・ジーン・キング・ナショナルテニスセンターをまる1日、無料で開放し、LGBTQのDJが音楽で楽しませたり、スマホにつける特製ポップソケットを無料配布したり、アンディ・ロディックとジェームズ・ブレイクという2人のLGBTQサポーターのレジェンド・マッチを開催、また、ジェイソン・コリンズやビリー・ジーン・キング、アダム・リッポンらが出演するスペシャル・トーク・イベントが行われました。
(今年は、大会自体が無観客で開催なので、「Open Pride」のようなファンイベントもありません。また来年に期待、ですね)
 
 

参考記事:
全米オープン、選手たちが社会的メッセージを身に着けることを許可(テニスデイリー)
https://www.thetennisdaily.jp/news/grandslam/us/2020/0041552.php
Be Open(US OPEN)
https://www.usopen.org/en_US/news/articles/2020-08-19/2020-08-19_be_open.html
U.S. Open will host Open Pride, featuring out athletes and more(Out Sports)
https://www.outsports.com/2019/8/9/20797874/us-open-gay-pride-day-lgbtq-fans-billie-jean-king-jason-collins-adam-rippon

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