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国会で尾辻かな子議員が同性婚について質問、菅首相は「根幹に関わる、極めて慎重な検討が必要」と答弁

2021年02月17日

 2月17日、衆院予算委員会の集中審議があり、菅首相と与野党の間で論戦が交わされました。そのなかでレズビアンであることをカミングアウトしている尾辻かな子衆議院議員が、東京五輪が理念の一つに掲げる「多様性と調和」を取り上げ、同性婚について菅首相に「息子さんが同性のパートナーと一緒になりたいと言われたら何と答えますか」と尋ねました。以下、尾辻議員の質問と菅総理の答弁をお伝えします(こちらに動画も掲載されています)

尾辻議員
「この大会を契機に、日本が本当に多様性のある社会に変わることを私は切に願っています。
 私はレズビアン、女性の同性愛者の当事者です。日本で初めて同性愛者であるということを公表し、政治の場に居続けているということです。
 カミングアウトを実は多くの方はできていません。何かしら差別があるんじゃないかとか、そして何よりもまずこの日本社会においては、自分自身が当事者かもしれないと思った人たちは自分自身を受け入れられないんですね。「自分は独りなんじゃないか、この社会の中で」というなかで、例えばですね、ゲイ・バイセクシャル男性で自殺を考えたことあるという方が7割いるんですよ。
 この国会はどうかというと、「LGBTは生産性がない」というような投稿をしたり、「LGBTばかりになったら国が潰れる」とか、そういう発言をされるんです。
 否定されながら生き続けることがどれだけ辛いか、総理わかりますか。
 だからこそ、このオリンピック・パラリンピック大会を契機に「(全国の当事者の方に)あなたの居場所がここにある」と言いたいんです。
 そうするためには、やっぱりですね、私は法制度が必要やと思うんです。同性婚や、LGBTに対する差別解消法、これ全くない状態になってます。
 例えば総理のお子さんやお孫さんが、仮に当事者だったとして、同性のパートナーと結婚したい、そう言われたら総理は何とお答えになるでしょうか」

菅総理
「当事者双方の性別が同一である婚姻の成立を認めることは、まだわが国では憲法上これ想定されてないわけであります。同性婚を認めるか否かについては我が国の家族のあり方の根幹に関わることでありますので、極めて慎重な検討をする必要があるんだろうというふうに思います」

尾辻議員
「子どもが同性愛者であるということを受け止めるということなのか、受け止めないということなのか、どちらでしょう」

菅総理
「非常に複雑な心境のなかで検討に検討を重ねる、そういう立場になるだろうというふうに思います」

尾辻議員
「当事者がこの国で生きてもいいんだと思えるためには平等な権利が必要で、オリンピック・パラリンピックはそれを実は日本政府に求めています。オリンピズムの根本原則にわざわざ性的指向が入ったのは、そういうIOCの意味があるんだということをもう一度かみしめていただきたいと思います」

 
 ご自身のお子さんがもし同性婚を望んでいたとしても、それでも結婚の権利を認めないのですか?という問いに対してすら、認めたいとも、検討を始めたいとも言えないなんて…当事者だけでなく、自分の子どもが同性愛者である方や、同性愛者の親族や友人・知人を持つ方(おそらく全国に何千万人もいらっしゃると思います)の「結婚させてあげたい」と願う気持ちをも無にするものでしょう。
 SNSでは早速、「なら早く検討してください」「なぜ子どもが同性婚したかったら親が検討に検討を重ねる必要があるの?」「同性婚や夫婦別姓婚で幸せになれる人がいるなら、人の幸せを反対する権利はないよ」「多様性を認めない総理」「結婚を邪魔する合理的な理由があるのなら説明してほしい」「現実に同性婚を望んで声を上げている人々がいる。それに対し国は不誠実な態度を続けている」といった声が上がっています。

 今回の首相の答弁は、松岡宗嗣さんが指摘しているように、同性婚は憲法上想定されておらず、家族のあり方の根幹に関わるため慎重な検討が必要だとする従来通りの回答であると言えるでしょう。これまでも何度か同性婚に関するやりとりが国会でありましたが、政府の答弁は「慎重な検討が必要だ」の一点張りでした(2019年10月23日には「いつから同性婚導入の検討を始めるのか」と尋ねられた河井克行法務大臣(当時)が「検討するか否か、そのこと自体を含めて検討が必要」と答弁。また、2020年2月14日の閣議で、初鹿明博衆院議員の「同性婚が法律で認められていないことは憲法が定める『法の下の平等』などに違反しているのではないか」との指摘に対し「現時点で同性婚導入を検討していないため、憲法に適合するか否かの検討も行っていない」とする答弁書を決定しています)
 国が一向に同性婚について検討する姿勢を見せないため、(海外でもそうされてきたように)全国の同性カップルたちと支援者たちが、国に対して結婚の不平等(構造的差別)を正すよう求める「結婚の自由をすべての人に」訴訟という権利擁護運動を立ち上げ、今も進めているところです。
 
 2月14日には「結婚の自由をすべての人に」訴訟が2周年を迎え、オンラインで2周年イベントが開催されました。
 共同代表の寺原さんが、DV家庭に育ったなかで無力さを痛感し、「法的な知識があれば母親を助けられた」という思いから弁護士になり、女性問題とともに性的マイノリティの支援にも取り組みはじめたという感動的なお話、全国の弁護団や原告の方々のメッセージ、レスリーさん&ジョシュアさんなどの応援メッセージとともに、新しい試みとして同性婚・多様な家族についての短歌を公募するという企画もありました。
 歌人の鈴掛真さんは、「以前は独りでいいと思っていましたが、去年、人に会えないストレス、孤独がすごく体に悪いと実感し、家族がいてくれたらと切実に感じました。同性婚が認められてるなかで自分が結婚するしないを選ぶのと、そもそも選択肢がないというのは全く別のこと」と語り、文筆家の牧村朝子さん、司会のエスムラルダさんとともに、300作も集まった短歌を選びました。三人が3首ずつ選んで紹介した短歌、どれも素晴らしかったです(最優秀作品はこちら)。まるでLiving Togetherのように、本人がカミングアウトしなくても想いを表現でき、それを代わりに読んであげることでその方の生そのものを寿ぐような優しさがありました。
 清貴さんのライブも(エスムラルダさんの引き出し方が上手なのだと思いますが)いつになくかわいらしい、ナチュラルな語りで、これまで数えきれないくらい聴いてきたなかでもいちばんよかったかもしれないと思うような、とても素敵な弾き語りでした。
 本当に素晴らしいイベントでした。
 「結婚の自由をすべての人に」訴訟の全国で初となる判決は1ヶ月後、3月17日に札幌地裁で出される予定です。きっと画期的な判断が下され、みんなが歓喜する光景がニュースになるのではないかと思います。そう信じます。
 
 

参考記事:
同性婚「根幹に関わる、極めて慎重な検討が必要」菅首相(朝日新聞)
https://www.asahi.com/articles/ASP2K52SCP2KUTFK01B.html
菅首相、同性婚「極めて慎重な検討をすべき」(SankeiBiz)
https://www.sankeibiz.jp/macro/news/210217/mca2102171802014-n1.htm

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