g-lad xx

NEWS

埼玉県の調査で性的マイノリティの65%が死を思ったことがあると回答、深刻な状況が浮かび上がりました

2021年02月24日

 埼玉県が行なった性的マイノリティの実態調査で、当事者の65.8%が「死ぬことができたら」と思ったことがあるという深刻な結果が明らかになりました。事態を重くみた県は、学校や職場での理解を促す活動や相談態勢の強化に着手します。


 埼玉県の大野知事は昨年1月、同性パートナーシップ証明制度も視野に入れながらLGBT支援に向けた実態調査を行なうと表明しました。都道府県によるLGBT支援に向けた実態調査は全国で初めてです。
 調査は昨年秋に実施され、県内の18歳以上64歳以下の1万5000人を無作為抽出してアンケート用紙を送付、回答を得た5606人のうち、性自認と性的指向に関する質問への回答から184人を性的マイノリティと分類しました。
 184人のうち、「死ぬことができたら」と思ったことがある人は65.8%、自身に「生きる価値がない」と感じたことがある人は60.3%に上りました。「家に引きこもった経験がある」も44.0%を占めました。学校などで不快な冗談を言われたり、からかわれたことがある人は82.1%、いじめを含む暴力を受けたことがある人は58.2%に上りました。
(調査結果はこちらからご覧いただけます)

 こうした深刻な実態が明らかになったことを受けて、県は対応を強化する構えです。
 県教育委員会が性の多様性に関する啓発資料を作り学校の授業で活用を図るほか、県による企業向けのオンライン研修を開催します。
 人間関係などの悩みを受け付ける相談窓口を担当する県や市町村の職員に対しては、性的マイノリティにも多様なタイプがあることを踏まえ、応対の仕方についての研修を実施します。
 また、性の多様性のシンボル「レインボーカラー」を活用したポスターなどを作製し、企業などに掲示を促すことで、性の多様性を認め合う社会の雰囲気の醸成を図るといいます。

 大野知事は知事選で性的マイノリティ支援を公約の一つとして掲げており、上記の実態調査のほか、2月には啓発パンフレット「LGBT基礎知識ガイド」を発行し、また性的マイノリティの方が相談できる窓口をまとめた「性的少数者(LGBT)のための相談案内カード」(令和2年度版)を作成しました。また、7月には埼玉県内の企業・事業所 2,870社に対して「LGBTQ(性的少数者)が働きやすい職場づくりに関するアンケート」を実施しています(詳細はこちら


 なお、今回の埼玉県の無作為抽出調査では、性的マイノリティは5606人中184人で、割合は3.3%でした。
 名古屋市で2018年に実施された市民1万人に対する無作為抽出調査では性的マイノリティだと回答した方が1.6%(「性的マイノリティの当事者ですか?」という質問に対し、「いいえ」ではなく「無回答」だった方が3.2%で、嘘はつきたくないけど当事者であると回答することもためらわれるような方だったと見ると、最大4.8%となります)
 大阪市で2019年、市民1万5000人に対して実施された無作為抽出調査では、アセクシュアルを含めた性的マイノリティが3.3%、「決めたくない・決めていない」と回答した方も含めると8.2%となりました。
 電通が2019年に発表した調査結果ではLGBTQの割合は8.9%、同年末にLGBT総合研究所が発表した調査結果では10%という数字でしたが(このような広告代理店系の調査は、モニター登録している方へのスクリーニング調査から導き出しています)、自治体が実施する郵送による無作為抽出調査では、もっとパーセンテージが少なくなる傾向がありました。今回、名古屋、大阪、埼玉での調査データが集まった結果、郵送による無作為抽出調査という方法では、性的マイノリティであると自認している方は3.3%くらいという数字が見えてきました(こうした自治体が実施する郵送でのアンケートでは、実家にいる方が正直に回答するのが難しいという指摘もあります。名古屋市の「無回答」の多さがそういう理由だとすると、3.3%に近い数字になると言えそうです)。これに対して「さすがに10%は多いと思ってた」「3.3%くらいが自分の実感に合ってる」という声も聞かれます。
 LGBTQへのアンケートは、時代や社会が寛容になればなるほど自分がそうだと認められる人が増えるということも言えますし、あくまでも自身がそうだと申告しなければカウントされないため、調査方法や回答のしやすさによって結果が違ってくるということも言えるため、なかなか難しいものがありますね…。
 ともあれ、今回の埼玉県の調査は、たいへん意義のあるものだったと言えます。
 
 
参考記事:
性的少数者の65%「死ぬことができたら」 埼玉県が実態調査、支援強化へ(産経新聞)
https://www.sankei.com/politics/news/210222/plt2102220034-n1.html

INDEX

SCHEDULE