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日テレがLGBTQスポーツメディア「Outsports」編集部にインタビューしていました

 LGBTQ×スポーツについて発信を続けてきたオンラインマガジン「Outsports」。g-lad xxでも2012年のロンドンオリンピックに出場するゲイ&レズビアンの選手は24人というニュースをはじめ、再三にわたってOutsportsの記事を紹介してきましたが、今回、東京五輪に参加したLGBTQアスリートが史上最多の183人に上ったというデータが注目されたこともあり、ついに日本の大手メディアが「Outsports」編集部への取材を行なうまでになりました。共同創設者のジム・ブジンスキさんのインタビューが日テレで報じられていましたので、ご紹介します。
 
 「Outsports」は1999年、まだWebサイトがそれほど発達していなかった時代に創設されました。ジム・ブジンスキさんと事業パートナーのシド・ジグラーさんは、スポーツが本当に大好きなゲイの方で、当時、ゲイの視点でスポーツの記事を書く人が誰もいなかったため、このサイトを立ち上げたそうです。今では女性やトランスジェンダーのライターも参加し、より包括的なLGBTQ×スポーツについての情報を発信しています。
 
 「Outsports」にとっての初の五輪は2000年のシドニーですが、当時公表していたLGBTQアスリートはたったの7人だったそうです。その後、アテネ(11人)、北京(10人)、ロンドン(24人)、リオ(56人)と少しずつ増えていきましたが、東京五輪は183人と一気に3倍以上になりました。このようにカミングアウトする選手が増えた理由についてジムさんは、「ソーシャルメディアのおかげで本当の自分を見せることが容易になったのだと思います」と語っています。「自分のプライベートな生活について語ることに慣れて、ポジティブな反応があると、もっとやるようになります」「多くの国で同性婚が承認されたことも挙げられます。飛び込みのトーマス・デイリー選手も結婚していて、彼のパートナーは、ボーイフレンドではなく「夫」なのです。そして、IOCが多様性を強調していることです。公表したからといって処罰されることはなく、IOCは喜んでくれます。みんなが隠さなければいけないことではないということに気づきはじめたのだと思います」

 カミングアウトして東京大会に参加した183名のうち、男性は約20人で、女性(やノンバイナリー)に比べてはるかに少ないのですが、その理由について、ジムさんは「社会の扱いが男性アスリートと女性アスリートで異なるからです」と指摘します。「全体的に女性のスポーツに対するメディアの取材が少なく注目されずに済むので、女性の方が気楽に公表できるのでしょう」「一方、男性アスリートはメディアに追われることを覚悟するか、黙っているかなのです。カミングアウトできる男性の選手がもっと多くなるようにすることが、我々が次に克服しなければならないことです」

 最大の選手団だった日本で一人もカミングアウトした選手がいなかったことについては、このようにコメントしていました。「公表した選手がいるのは、205の国と地域のうち30にとどまりました。同性愛が違法の国では、命に危険が及ぶ可能性もあるので隠さなければなりません。日本の社会に、声を上げることをできなくしている何かがあるのですか? 非常に顕著ですから、文化的な何かしらの影響があるのだと思います。日本で身の危険を感じることはないかもしれませんが、彼らに公表できなくさせている何かがあるのは明らかです。想像してください。日本で同性婚が認められれば、公表するのも楽になるでしょう。社会の構造がその大きな理由なのです」
(ちなみに、アジア全体でもOUTアスリートはとても少なく、フィリピン3名、インド1名、イスラエル1名のみです)
 
 それから、LGBTQアスリートのリストがどのように作られたか、についてです。
「まず、ロンドンとリオの選手リストを見ながら、エクセルのシートにLGBTQを公表している可能性がある選手の名前をすべて書き、イエス・ノー、出場、予選などの項目を作りました。ケガをして出場を断念したり、今回は新型コロナで参加をとりやめたりした選手もいました。最後の6ヵ月間は一人ひとりを丹念に調べて、かなり手間のかかる作業でした。
 一方で、読者が定期的に新しい情報を提供してくれることもあります。「この水球の選手を忘れているぞ」とか、「このブラジル人のバスケットボール選手も」とか。情報が英語でなければ私たちは見つけることができませんが、読者がポルトガル語で書かれたブラジル人選手の記事を見つけてくれて、記事が書けることもありました」「世界中から情報が寄せられます。すごいですよ。それが楽しいところですね。読者のみんなが教えてくれるのです」
 これまでなかったことだそうですが、「今、東京にいます。リストに加えてください」と連絡してきたアスリートが9人いたそうです。ある女性は、「私とガールフレンドをリストに加えてください」と言ってきたそうです。

 一方、「アウティング」にならないような細心の注意を払っていることも強調されていました。選手がメディアにインタビューでカムアウトしていたり、ソーシャルメディアでカムアウトしている人に限定し、かなり厳しい基準を設けているそうです。読者から「この人をLGBTQアスリートに加えてください」と言われても、本当にOUTしているかどうか確証が得られない場合は、掲載を断るといいます。選手に直接メールで尋ね、返事が来なければ、その人は掲載しません。東京五輪の出場選手の中にも確証が得らなかった人が20人いて、リストに入れていないそうです。これまでに、「自分の意志に反して記事によって勝手に公表された(アウティングされた)」と言われたことは一度もないそうです。
 当事者メディアとして、アウティングの危険性をよくわかっているからこそ、細心の注意を払ってリスト作りを行なうことができ、信頼を獲得してきたのだということがよくわかります。そういう意味で、(知名度という点も合わせて)五輪に参加するLGBTQアスリートのリストを作成できるのは、世界広しといえどもOutsportsだけなのです。
 
 インタビューの最後に、ジム・ブジンスキさんはこう語っています。
「OUTするアスリートの出身国は北米や欧州に偏っているのが現実です。リストに掲載された183人の中に、同性愛を違法とする国の選手はいません。でも、私たちが掲載したリストは全世界の人から見られていて、人々に希望を与えていると、私たちは実感しています。なぜなら、アスリートたちを見れば、OUTし、自分らしく生きることが可能だということがわかりますし、それは素晴らしいことだと思っています」
 

 g-lad xxとして強調しておきたいのは、Outsportsが偉大なのは、五輪におけるOUTアスリートの数やメダルの数を把握してきたからということだけでなく、日頃から情熱的にLGBTQのアスリートの動向を追いかけ、PRIDEに裏打ちされた確かな視点に基づいて記事を書くということを(おそらくお金の面でもかなり苦労としたと思いますが)20年超にわたって続けてきたということです。今ではLGBTQのアスリートについての情報はOutsportsを見ればすべてわかると言っても過言ではありません。唯一無二の存在であり、誰もなしえなかった偉業です。

 今回の東京大会では、一気に人数が増えて本当にたくさんになったOUTアスリートの活躍をきめ細かに報じていただけでなく、史上初のトランス女性という輝かしい歴史を作ったにもかかわらず誹謗中傷の矢面に立たされたローレル・ハバード選手を毅然と擁護し、彼女の出番が終わったあと、このように綴っています。
「スポーツ界でのメンタルヘルスの問題に注意が払われているなか、ハバードがどんな扱われ方をしてきたか、考えてほしい。トランスの若者たちが今、どんなふうに脅威にさらされているか、考えてほしい。スポーツに夢を持っている次世代のトランスに何をしてやれるか、考えてほしい」
「ローレル・ハバードは公式にはDNF(競技を完遂できていない)とされた。実際は、彼女はあの場に立つという偉業を成し遂げた」
「彼女はバーベルを持ち上げることはできなかったかもしれないが、スポーツそのものを持ち上げたのだ」
 間違いなく、世界中のスポーツメディアのなかでも最も素晴らしいコメントだと思います。心から拍手を贈りたい気持ちです。
 

参考記事:
“LGBTQアスリート専門メディア”が見た東京五輪「公表でパフォーマンス向上も」(日テレNEWS24)
https://www.news24.jp/articles/2021/08/14/07923369.html
東京五輪で注目“LGBTQアスリート専門メディア”「アウトスポーツ」編集部とは(日テレNEWS24)
https://www.news24.jp/articles/2021/08/15/07923823.html

 

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