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栃木県が「性の多様性条例」を制定へ

2021年09月09日

 栃木県で、超党派の県議による「県議会条例作成検討会」が、LGBTQへの偏見や差別をなくそうと、基本理念などを定めた「性の多様性に関する理解の増進に関する条例(仮称)」案を公表しました。渡辺幸子県議は記者会見で、「差別偏見が起きる背景には知識がないことがあり、理解促進に重点を置いた」と話しました。


 「県議会条例作成検討会」は来年開催予定の栃木国体をきっかけに、東京2020大会が「多様性と調和」をビジョンの一つに掲げていたことも受け、今年4月からこの条例の検討を始めたそうです。有識者や関係団体から意見を聴き、条例案を作成しました。

 栃木県では県内の18歳以上3000人(有効回答率55.5%)を対象に今年1月に「人権に関する県民意識調査」が実施されましたが、「性的指向や性自認について本人に無断で他人に伝えられること」を人権上問題であると回答した人は48.4%にとどまりました。また、言葉の認知度では、「カミングアウト」の意味を知っている人は61.8%に上った一方、本人に無断で他人に伝える「アウティング」は9.3%にしか認知されていなかったそうです。
 
 条例案では、「性的指向や性自認を本人の意に反して表明されること(アウティングのことを指していると思われます)や、無理解に基づく誤解や偏見、いじめや差別が許されるものではなく、正しい理解を広めていくことが不可欠」だとしたうえで、「性の多様性に関する理解を深め、性のありかたにかかわらず、すべての人が自分らしく生きることのできる社会を目指す必要がある」と謳われています。そのための「性の多様性に関する理解の増進に関する基本理念」や、県や県民、学校教育に携わる者、事業者などの責務や市町村との連携、基本指針について規定する内容です。県の責務は必要な施策の策定と実施、教育や啓発、相談体制整備で、県民の責務は理解を深めて県の施策に協力するよう努めること、とされています。
 栃木県では、鹿沼市、栃木市、日光市で「パートナーシップ宣誓制度」が導入されていますが、今回の県の条例案では、同性パートナーシップ証明制度については特に何も触れられていません。
 
 県の公式サイト上の「栃木県性の多様性に関する理解の増進に関する条例(仮称)案に対するパブリック・コメント(県民意見の募集)の実施について」というページで、条例案の概要・主な内容が閲覧できるほか、所定の様式をダウンロードして電子メールなどで意見を提出することができます。パブリックコメントは10月4日まで受け付けています。

 条例案は、パブコメを参考にして検討が加えられたうえで、12月の県議会に上程し、2022年1月の施行を予定しているそうです。

 
 なお、性の多様性についての条例を制定している都道府県は、東京都茨城県大阪府三重県で、秋田県でも制定を目指しています。
 三重県の条例は、都道府県として初めてカミングアウトの強要やアウティングを禁止する旨を明文化しており、先進的な内容と言えますが、基本的に、いずれの都府県の条例も、LGBTQ差別は許されないと謳いながらも、罰則は設けていません(そういう意味では、いわゆる「理念法」的な条例です)。具体的な施策は、基本計画や指針などに定め、数年ごとに見直しが行なわれたりします(条例の改正には議会の承認が必要であるため、条文ではあまり細かく規定せず、基本計画などで具体的に策定、というやり方が合理的なのでしょう)
 ただし、同性パートナーシップ証明制度を条例に盛り込むか、要綱で定めるかという点は大きいため(条例は「法」ですので、法的な効力を持ちます)、その点は重要なポイントだと言えるでしょう。
 
 
参考記事:
性の多様性尊重する社会へ 県議会条例作成検討会がパブリックコメント実施へ(とちぎテレビ)
https://news.yahoo.co.jp/articles/063b0aa9aaea55b046a0c388bee169da590e5a21
性の多様性、理解増進へ条例案公表 県議検討会が意見募集 22年1月施行予定(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20210908/ddl/k09/040/080000c

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