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トニー賞でゲイ演劇『インヘリタンス』が作品賞を受賞――その他トピック総まとめ

 米演劇界で最高の栄誉とされるトニー賞授賞式が9月26日、2年ぶりに開催され、エイズ禍の後のNYのゲイを描いた『インヘリタンス』が演劇部門作品賞をはじめ4部門で受賞しました。そのほか、今回のトニー賞のLGBTQ的なトピックをまとめてご紹介します。

 ブロードウェイは新型コロナウイルスのパンデミックの影響で史上初めて、1年半にわたって公演が中止されていましたが、今月になってようやく『ハミルトン』や『ライオン・キング』などの大型作品が再開され、活気が戻ってきたそうです。ブロードウェイの1年半の空白のおかげで、今回のトニー賞は異例中の異例で、たった4本のミュージカル、10本の演劇、4本のリバイバル作品が審査対象となりました。ミュージカル主演男優賞などは、ノミネートが『ムーラン・ルージュ』のアーロン・トヴェイト1名だけという前代未聞の事態となり、60%以上の得票で受賞が決まることになりましたが、見事に受賞できました。
 そのような一抹の寂しさを禁じえない授賞式だったにもかかわらず、レッドカーペットはゴージャスに彩られ、受賞者は思慮深いスピーチを行ない、涙なしには見られないパフォーマンスもありました。

 LGBTQ的に最も重要だったのは、『インヘリタンス』が演劇部門作品賞をはじめ4部門で受賞したことでしょう。
 今作は、E・M・フォスター(ゲイの作家です)の小説『ハワーズ・エンド』を下敷きに米劇作家でマシュー・ロぺス(ゲイの方です)が脚本を書き、『リトル・ダンサー』『めぐりあう時間たち』『愛を読む人』『ビリー・エリオット・ザ・ミュージカル』のスティーブン・ダルドリー(バイセクシュアルの方です)が監督しています。三世代のゲイたちが描かれており、かつてエイズが猛威を振るった時代のゲイのリアリティと、ほぼエイズについての偏見を持たなくなった若者のリアリティを追体験させるような作品だそうです。
 30代前半のユダヤ系インテリ男性エリック・グラスは、過去のトラウマを抱えたパートナーのトビーと同棲中。2人は年配のゲイカップル、ヘンリーとウォルターと親しくしており、さらにゲイの若手俳優アダムとも仲良くなる。だがエリックが豪華マンションからの退去を命じられ、日常にひずみが生じ始める。トビーは脚本家として脚光を浴び、ウォルターは癌で急逝…といったストーリーです。
 今回の受賞によって、日本でも注目を集め、いずれ日本でも翻訳上演(日本版のプロダクション)が実現するのではないでしょうか。

 それから、ミュージカル部門で総なめに近い10部門を受賞した『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』。バズ・ラーマンの映画もたいへんゲイ好みだったと思いますが(SATCでも「『ムーラン・ルージュ』好きなの? じゃあゲイね」的なセリフがあったくらい)、ミュージカル版もエルトン・ジョンやレディ・ガガ、ホイットニー・ヒューストンのヒット曲を使い、しっかりゲイ好みな作品になっているそうです。なお、『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』に出演していたソーニャ・タイエンは、クィアの俳優だそうです。
 
 アラニス・モリセットをフィーチャーした『Jagged Little Pill』に出演したローレン・パッテン(バイセクシュアルの方です)は、ミュージカル部門助演女優賞に輝きました。ローレン・パッテンが演じたJoというキャラクターは、もともとノンバイナリーという設定だったのに、ブロードウェイ版でシスジェンダー女性に変えられ、LGBTQコミュニティから批判されたそうです。ローレン・パッテンは受賞スピーチで「私はキャラクターの変更に抗議しました。そしてトランスやノンバイナリーの同僚がJoのキャラクターについての対話に参加してくれたことを感謝しています。ブロードウェイが将来、こうした正直な、エンパシーに満ちた、ヒューマニティを尊重する声を聞き入れ、変わってくれることを信じています」と語りました。
 
 ステージ・パフォーマンスでは、タイタス・バージェスとアンドリュー・ラネルズ(二人ともゲイの俳優です)がミュージカル界のレジェンド、スティーヴン・ソンドハイム(ゲイの作曲家です)の作品を振り返るコーナーで「It Takes Two」(『イントゥ・ザ・ウッズ』より)をデュエットしたのが素敵でした。パン屋(映画ではジェームズ・コーデンが演じました)と妻が森の中でお互いの愛を再びよみがえらせる場面の歌ですが、妻のパート(つまり女声)をタイタス・バージェスがものすごいハイトーンで歌ったり、二人が見つめあって手をつないだりして、とてもキュートです。



 また、イディナ・メンゼルとクリスティン・チェノウスが『ウィキッド』の「For Good」を歌ったり、『RENT』の25年前のオリジナル・キャストであるアダム・パスカルとアンソニー・ラップが再び共演し、「What You Own」を熱唱したのも、感涙モノの名場面でした。

 


参考記事:
米トニー賞2年ぶり開催、作品賞に「ムーラン・ルージュ」など(ロイター)
https://jp.reuters.com/article/awards-tonys-idJPKBN2GN09B
『ムーラン・ルージュ』がミュージカル作品賞、主演男優賞など最多10部門を受賞(spice)
https://spice.eplus.jp/articles/293187
ニューヨークのゲイ社会劇が、ニューヨークでウケない理由(ニューズウィーク日本版)
https://www.newsweekjapan.jp/stories/woman/2020/02/nyny.php
6 unapologetically queer moments from this year’s show-stopping Tony awards(Pink News)
https://www.pinknews.co.uk/2021/09/27/tony-awards-2021-lgbt-broadway/
Tituss Burgess & Andrew Rannells Duet on Classic Love Song at Tony Awards Concert(Advocate)
https://www.advocate.com/theater/2021/9/27/tituss-burgess-andrew-rannells-duet-classic-love-song-tonys

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