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欧州議会が台湾との関係強化を促す報告書を可決「LGBTQの権利の擁護者にもなっていることは称賛されるべきだ」

2021年10月24日

 欧州議会は10月21日、台湾との関係強化を欧州連合(EU)に求める報告書を圧倒的賛成多数(賛成580、反対26、棄権66)で可決しました。EUと台湾の関係に関する報告書が可決されるのは初めてです。台湾外交部(外務省)は同日、報道資料で、大きな歓迎と心からの感謝を表明しました。

 報告書では、EUの駐台湾出先機関、欧州経済貿易弁事処の名称を「EU駐台湾弁事処」に変更することや、EUと台湾の二者間投資協定(BIA)締結に向けた影響評価など準備作業への早急な着手、台湾が直面する中国の軍事的圧力に対してより多くの措置を講じることなどをEUに対して求めました。
 民主主義や人権問題に長年関心を寄せるスウェーデンの与党・社会民主労働党のEvin Incir欧州議会議員は採決後、中国の在スウェーデン大使館から数ヵ月前に台湾への支持を撤回するよう脅迫されたと明らかにしたうえで、台湾が東アジアにおいて民主主義の手本であるだけでなく、LGBTQ+の権利の擁護者にもなっていることは称賛されるべきだと述べました。また、今回の報告書の可決によって、欧州は台湾支持のメッセージを台湾の人々に届けるとともに、台湾は孤独ではないと世界に伝えることにもなるとも語りました。

 アジアで初めて同性婚を実現し、LGBTQの権利擁護の先進国として認められたことが、台湾自体に好影響を与えた事例と言えるでしょう。


 EUは、LGBTQなどのマイノリティの権利を含めた人権尊重を謳うEU基本条約を加盟国間で締結し、基本原則としています(つまり、EU加盟国ではLGBTQ差別は許されず、LGBTQの権利の尊重が求められます)
 しかし、2004年にEUに加盟したポーランドハンガリーで昨今、アンチLGBTQの動きが強まっていることに対し、EUの基本原則に反するとして毅然と対処し、法的手続きも進められています。この手続きには複数の段階があり、最終的には欧州司法裁判所への提訴と経済制裁につながる可能性があります。欧州委員会は両国に通知書を送付し、2ヵ月以内に十分な対応がなければ、制裁を求めて欧州司法裁判所に提訴すると報じられています。
 ポーランドではさらに、最高裁に懲戒機関を設け、裁判官の判断が"政治活動"や"司法機能の妨害"に当たると見なされた場合、免職などの処罰を受ける"司法改革"を進めようとしています(政権に都合の悪い判決が出ないようにする司法への介入だと見られています)。EUは、EUの基本理念である法の支配や裁判官の独立を損ねるとして撤回を求め、同国に罰金を科すようEU司法裁判所に求めています。ポーランドのマテウシュ・モラウィエツキ首相は19日の欧州議会でEUを非難し、欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長と激しい応酬を繰り広げたと報じられています。ポーランドで今月、最高裁に当たる憲法裁判所がEU法の中心原則を否定する判断を示したことも問題視されました。フォン・デア・ライエン委員長は「欧州の法秩序の一体性に真っ向から挑戦するものだ」と述べ、法的に争う、EU基金からの拠出を停止する、加盟国としてのポーランドの権利の一部を停止するという3つのいずれかを検討するとしました。
 7月時点で、コロナ禍からの経済再生をめざすEU復興基金について、ポーランドが約240億ユーロ(約3兆1000億円)、ハンガリーは約70億ユーロ受け取ることを見込んでいるものの、欧州委は両国の申請の最終承認をしていないと報じられていました。こちらの報道によると、ポーランドには復興基金が支払われていないだけでなく、EUの一般予算も執行停止の対象となる可能性があるそうです。
 ハンガリーとポーランドは2004年にEUに加盟。飛躍的な経済成長を遂げた一方で、西欧との賃金格差や難民問題が表面化しました。国民の不満をすくい上げる形でハンガリーは2010年、ポーランドでは2015年に右派のポピュリズム(大衆迎合主義)政権が誕生し、地方の保守層や高齢者の支持を集めるために、法の支配や民主主義、人権尊重と逆行する政策を次々と打ち出しました。 
 オランダのルッテ首相はハンガリーについて「もはやEUにいる資格がない」と述べています。今後、両国はEUからの脱退を迫られるかもしれません。
 
 
 こうして見ると、LGBTQなどのマイノリティの権利を含めた人権を尊重する国かどうかということが、国際社会において非常に重要な意味を持っていることがわかります。台湾は人権外交によって見事に国際社会でのプレゼンスを高めることに成功しています。日本も(東京五輪開会式直前のゴタゴタで人権後進国であることが露呈してしまいましたが)LGBTQ差別禁止法や婚姻の平等を実現し、台湾の後に続くべきではないでしょうか(そのためにも選挙に行くことが大事ですね)



参考記事:
欧州議会、台湾との関係強化を促す報告書可決 外交部が感謝(フォーカス台湾)
https://japan.cna.com.tw/news/apol/202110210009.aspx
EUとハンガリー・ポーランド、深まる溝 LGBT権利で(日経新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR27BEP0X20C21A7000000/
EU、ポーランドへの罰金要求 「司法の独立損なう」(共同通信)
https://nordot.app/807958004960509952?c=39546741839462401
ポーランド首相、「EUに脅迫されている」 法の支配めぐり衝突(BBC)
https://www.bbc.com/japanese/58965374

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