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衆院選×LGBTQ、テレビや新聞はどう報じたか(3)

2021年10月29日

 衆院選特集で、今回の選挙は史上初めて同性婚やLGBT平等法が争点の一つになった衆院選ですとお伝えしましたが、この間、テレビや新聞などのメディアでも連日のようにLGBTQの権利と選挙をからめた報道がなされています。地方紙でも(LGBT新法の時と同様に)同性婚の実現を訴える社説や当事者に寄り添う記事が掲載されていて、全国的な世論のうねりを感じさせます。そうしたニュース・記事をまとめてご紹介します(日付順。すでに衆院選特集でお伝えしているような各党の公約を比較した記事は割愛いたします)
※とても長くなりそうですので、いくつかに分けてお送りします。
 
 10月28日にはTBSで「衆院選 どうなる同性婚・“LGBT法案”」というニュースが流れ、都内で不動産会社IRISを経営するを経営する須藤啓光さんや、全員当事者であるというIRIS従業員の方たちが登場しました。お客さんのほとんどが性的マイノリティの方で、相談しづらいとか、物件の選択肢が少ないということで相談に来る方が多いそうです。
 トランス女性の従業員の齊藤亜美さんが「私はやっぱり名前と戸籍、性別が違うっていうところがいちばんストレスでした。どこの病院に行ったらいいのかわからなくて、結局、市販薬買って我慢するとか」と語り、須藤さんが「生きるか死ぬかの世界が関係してくるわけなんだからね。もっと真剣に取り組みをしてほしいよね」と語る場面もありました。
 須藤さんは今、弁護士をしているパートナーの「たつきさん」と暮らしています。二人が結婚を強く希望するようになったきっかけは、須藤さんが急性扁桃炎で救急車を呼ぶ機会があって、緊急連絡先として彼の連絡先を出したところ、『そういうのは認められないんですよね』と言われたことだそう。「もうこんなのは耐えられないなと思って」。たつきさんも、「もし万が一のときに何かあっても、私の方に連絡が来ない可能性があって、ちょっとそれが怖いなって。異性の方々が普通にできることを同性でも認めてくださいっていうことだけ。今って関係性が社会で認められているわけではないので」と語ります。
「結婚して、自分たちの関係を社会に認めてもらいたいと語る二人。衆議院選挙では、この同性婚やLGBTをめぐる問題も争点のひとつになっています」

 同日、AERA dot.で小島慶子さんの「夫婦別姓、同性婚、皇族の結婚…個人の尊厳や自由よりイエの形が大切ですか?」という記事が配信されました。先日の金沢プライドウィークにも参加してくださった強力な味方(アライ)である小島慶子さんは、「今回の選挙で注目されている課題に「選択的夫婦別姓制度」と「同性婚」があります。これらを認めようとしない人たちの多くは、“伝統的な家族の形”が崩れることを懸念しています。夫婦が同じ姓になること(ほとんどの場合は女性が男性の姓になること)、異性愛のカップルのみに結婚が認められることが「あるべき家族の形」を守るという発想は、個人の尊厳や自由よりもイエの形を優先する価値観の表れです」と指摘しています。
「他人が誰と結婚しようと、その夫婦が異なる姓を名乗ろうと、同性カップルだろうと、自分の人生には無関係です。家族の形が崩れることを心配するなら、他人の結婚に口を出すより、自分と家族との関係を見直した方がいいでしょう。同じ姓を名乗っていても、完全に心が離れている夫婦や親子はいくらでもいます。異なる性の夫婦で、愛情のない関係もいくらでもあります」
「人は皆、個として尊重され、選択の自由があり、幸せになる権利がある。それが当たり前の世の中になりますように」
 
 同じくAERA dot.の「コムアイらYouTubeで「私も投票します」と呼びかけ 若者の投票率を上げる新たな試み」では、「水曜日のカンパネラ」として2019年の東京レインボープライドに出演してくださったコムアイさんが、「政治家たちは投票率でどの世代の意見を重視した政策を打ち出すか見ている。若者がないがしろにされない政治、たとえば奨学金制度の充実や若者の最低賃金、労働環境、ひとり親の支援、LGBTQへの偏見改善などを求めているなら、投票率で示すことが大事だと思います。実は投票行動そのものよりも、各党の政策に対して議論が盛り上がることのほうが大事かなと思っています」とコメントしていました。

 同日の読売新聞九州版「LGBT政策を注視、『「普通」「当たり前」はまだ遠い』…家族「宣誓」後、初の衆院選」では、福岡県古賀市の「パートナーシップ・ファミリーシップ宣誓制度」第1号となったレインボーファミリーが紹介されていました。女性2人で子どもたち5人を育てている家族です。「幼なじみの二人はともに結婚、出産を経験したが、元夫からの暴力などを機に互いを思いやるようになり、3年前の春から交際を始めた。「家族として一緒に暮らしたい」と願っても、現状では法的に婚姻が認められないこともあり、借家探しは難航した。二つの母子家庭が共同で暮らすという名目で「シェアハウス可」の物件に絞り、家賃月4万5000円の古い木造平屋を借りるまでに4か月かかった。それでも、市が制度を設けたことで、できることは増えた。市営住宅に入居することが可能になり、制度に賛同する医療機関では、宣誓を証明するカードを提示すれば、パートナーの子の病状説明を受けることもできるようになった。二人は「世の中が変わりつつあることを実感している」と話す。制度を機に、職場の上司や一部の友人に家族の関係をカミングアウトした」。古賀市で家族と認められたお二人は、日本で自分たちのような少数派が暮らしていくことが「『普通』や『当たり前』とは、まだ遠い」と感じているといいます。
「衆院選でも、各党がこぞってLGBTへの偏見をなくすための政策を公約などに挙げている。立憲民主党や共産党などの野党が同性婚を可能とする法改正にまで踏み込む一方、自民党は「LGBTに関する広く正しい理解の増進を目的とした議員立法」という形にとどめるなど、立場に違いが表れている」

 同日の日刊スポーツ「益若つばさ高まる政治への関心「今年はみんなで」衆院選投票呼びかけ」では、モデルの益若つばささんが選挙への投票を呼びかけたことが話題になっていました。益若さんは「私も詳しくないので立候補者のアンケートなど、どの政策に力を入れていきたいかを見れるアンケートが載ってるのでそれを見てます。推しの政党調べたり。今でいうと同性婚だったり、夫婦別姓婚のアンケートなどもあるのでそれで自分の意思と合うもので判断しても良いかと!」とコメントしていました。

 同日の週刊朝日「室井佑月「まだ議論すんの?」」では、作家の室井佑月さんが、選択的夫婦別姓制度と同性婚の導入について慎重な姿勢を示す岸田文雄首相に苦言を呈していました。
「本当に「性的指向や性自認を理由とする差別や偏見があってはならない」と考えるなら、同性婚が認められてもいいのにね」
「我が国の家族のあり方の根幹に関わる問題? 戸籍で家族ごと一括するのが、我が国の家族のあり方? 古臭いったらありゃしない」

 10月29日の新潟日報の社説「多様化する社会 政治が道筋示さなくては」では、選択的夫婦別姓制度やLGBTQについての各党の公約を比較したうえで、「少数派の人が生きやすいと感じる社会は、大多数の人が生きやすいはずだ。そんな視点でも各党の公約を見比べたい」と述べられていました。

 同日の佐賀新聞の社説「衆院選・ジェンダー政策 危機意識の低さ露呈」では、女性の議員の少なさ、ハラスメントの防止、コロナ禍で失職やDVが増えたことなどジェンダー問題に切り込み、選択的夫婦別姓制度とともにLGBTについての各党の立場を紹介したうえで、「少子高齢化が進む日本で、女性や若者、マイノリティーの視点を取り入れ、世界の急激な変化に対応していかないと、日本は取り残されるのではないか」と述べられています。

 同日の茨城新聞「《連載:衆院選 わたしの一票》(5) 共生社会」では、水戸市在住の大学生で、今年5月にNPO法人「RAINBOW茨城」の新会長に就いた飛鳥斗亜さんがフィーチャーされていました。

 同日のYahoo!「みんなでゆすってヤシノミ落とすぞ~! 明るく楽しい「落選運動」で、選択的夫婦別姓&同性婚の実現を」では、「定形外かぞく」の大塚玲子さんが「ヤシノミ作戦」の青野慶久さん(サイボウズ)とRainbow Tokyo北区の時枝穂代表を招いたトークイベントを開催した時の模様がレポートされていました。
「選択的夫婦別姓と同性婚は、一見異なるテーマですが、問題の本質は同じです。家族のかたちは、それぞれの人が望む形でつくればよいはずです。法的な家族の間で姓が異なっても、同性同士が結婚しても、本人たちがそれを望むのなら誰も困ることはなく、幸せになる人が増えるだけです。それを可能にするためには、これまでの「ふつう」だけを基準にした制度を、変えていく必要があります」
「筆者が定形外かぞくを始めたのも、同様の思いからです。家族や生活スタイルは、いろんな形があっていい。ひとり親家庭、再婚家庭、LGBTの家族、養子縁組や里子を迎えた家族、生殖補助医療でできた家族もあれば、おひとりさまで生きる人もいるし、児童福祉施設で育つ人たちもいる。その他もろもろ、どんな形も、本人たちがそれを望んでいるのであればそれでよく、ほかの人が「その形はいい」とか「ダメ」とかジャッジするものではないと思うのです」
「それぞれの人が望むかたちで、他人とつながったりつながらなかったり、家族をつくったりつくらなかったりできる、そんな社会になれるよう、制度がととのっていくことを、願っています」
 
 10月30日の埼玉新聞「<衆院選>LGBTQ当事者ら、法や環境整備求める 風向きに変化感じ「みんながもらえる権利欲しい」」には、川越市でパートナーシップ宣誓をしている会社員の渡辺勇人さんとゴードン・ヘイワードさんのカップルが登場しました。お二人は「気持ちの面で安心はあるかもしれないが、制度を活用すること自体はそれほど多くない」と語ります。渡辺さんは「私が亡くなった場合、彼(ゴードンさん)を受取人として指定することができた」と言いながらも、実効性に関しては疑問が残ると話します。「具合が悪くなった時、医療機関で使えるのか。突然の場合、カードだけで家族とみなされるのか」。埼玉県でLGBTQ支援活動を行なうレインボーさいたまの会も「手術同意が可能になるなど、一定の安心感を持って暮らせるが、制度に法的な保障はない」と話しています。カードを提示される側への周知も不可欠となり、制度を運用するための環境が十分整っていないのが現状です。
 「特別な権利が欲しいわけではなく、みんながもらえる権利がほしい」「法的に保障されることで悩む人も少しは減ると思う。もし理解のある社会だったら私もこんなに悩んでなかった」とお二人は訴えます。今回の衆院選では風向きの変化も感じられ、各政党がさまざまな発信をするなか、LGBTQに向けた動画を視聴したゴードンさんは「日本の政治家が(性的少数者に関して)はっきり言うことはあまりなかったので、うれしかった」と語りました。

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