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青森県で県営住宅への入居や病院での家族としての扱いが認められることになりました

2022年03月17日

 青森県は、2月に施行した「県パートナーシップ宣誓制度」を利用した同性カップルを法律婚と原則同じ扱いにすることに決め、県立中央病院(青森市)でのパートナーの手術に際しての同意や、世帯向け県営住宅への入居など具体的な行政サービスを受けられるよう整備を始めたことを明らかにしました。4月以降に順次導入するそうです。
  
  
 2月7日、青森県は東北で初めて、全国でも6番目となる県としての制度導入を果たしました。しかし、先行導入した5府県では証明書の提示によって公営住宅への入居や医療機関での手術時の同意など「家族」として扱われる実益がありましたが、青森県ではそうした行政サービスの整備が全く進んでおらず、当事者団体などから批判の声が上がっていました。
 制度導入が発表された2月4日、三村申吾県知事は記者会見で「制度創設をきっかけにより一層、性的マイノリティの方に寄り添いたい」と意義を強調しました。
 一方、同日午後には、早期導入を求めて昨年11月に要望書を県に提出していた青森レインボーパレード実行委員会の岡田実穂共同代表が記者会見を開き、「中身が追い付いていない」「形だけのパフォーマンスではないか」と批判しました。要望書では、パートナーシップ制度に加え、その子どもを家族として公認する「ファミリーシップ制度」や、その家族向けの各種手続きへの対応も求めていました。
 県青少年・男女共同参画課は「まずは県民の理解促進」と導入を急いだ理由を説明し、「当然、これで終わりではない。制度充実への思いは当事者の皆さんと同じだ」と述べましたが、岡田さんは「理解は十分進んでいる。望んでいるのは困っている人の権利保障。ステージが違う」と批判しました。岡田さんは、パートナーの宇佐美翔子さんががんで闘病していた際、二人の関係性を公的に証明できず、病院を移らざるをえなかったという苦しい経験をしています。そして、翔子さんは制度実現を見ることなく、昨年9月末に亡くなりました。
 青森レインボーパレード実行委員会のサポーターである山下梓弘前大助教(国際人権法)は、「当事者が日常生活で直面しているマイナス部分を是正することが必要だ。青森県には当たり前の権利を享受できるような制度構築が求められる」と述べました。
 
 3月1日、三村県知事は記者会見で、制度に不足があることを認め、陳謝しました。行政サービスの提供に至っていないことについて「法律の部分を乗り越えて段取りを進めるのが非常に難しい」と釈明しました。
 東奥日報によると、制度導入から1ヵ月が経っても、申請はゼロのままでした。
 県内在住の当事者の方からも「今の制度では私たちの支えにはならない。内容を充実させてほしい」との声が上がっていました。
 
 こうした声を受けて、県は3月16日、県営住宅に関して、現行の「青森県県営住宅規則」で入居が法的な家族や婚約中の世帯に限られているのを、パートナーシップ証明を受けた同性カップルも入居が可能となるように改正する方向で、パブリックコメント(意見公募)を開始しました。4月14日まで募集し、意見を集約したうえで5月中に改正を実施し、早ければ6月から入居申込みが可能となるそうです。
 また、青森市の県立中央病院では4月から、パートナーシップ証明を受けた同性カップルも、パートナーが意識がない状況になった際の手術や検査の同意が認められるよう、院内の指針を見直す手続きを進めているそうです(事前に本人の同意があればパートナーのカルテの開示の申請もできるそうです)
 県の担当者は「性的少数者の方が自分らしく暮らせるために民間、公共問わず利用できるサービスを広げていく必要がある」と話しています。
 
 また、県によると、3月15日時点で制度の利用者はいませんが、問い合わせは数件あったそうです。利用を検討している方から、二人そろって県庁に出向くのは負担が大きいなどの声が寄せられているそうで、県は手続きを簡略化するかどうか今後の申請状況などを見ながら検討したいとしています。県男女共同参画課は「一つずつサービスを増やし、性的少数者を特別視しない社会の実現につなげていきたい」としています。
 
 「自治体にパートナーシップを求める会」の世話人を務めるなど同性婚や同性パートナーシップ証明制度に詳しい鈴木賢明治大教授は、「世帯向けの県営住宅の入居はすぐにできることなので実現していただきたい。制度をほかの行政サービスに波及させることは可能なので、県で実施している配偶者に対するサービスをすべての部局で点検し、性的マイノリティのカップルに適用が可能かどうか洗い出しをすべきだ」と指摘しています。
 
 ともあれ、コミュニティのみなさんの要望が聞き入れられ、県営住宅への入居や病院での家族としての扱いが認められることになって、よかったです。鈴木教授がおっしゃるように、配偶者に対するサービスで適用可能なものは様々あり、県としてできることはまだまだあるはずですので、一つずつ平等を達成(権利を回復)していって、LGBTQが生きやすい青森県に、そして「故郷が帰れる街に」なるといいですね。
 

 なお、青森レインボーパレードは昨年、パレードを立ち上げた宇佐美翔子さんが亡くなったため、延期を余儀なくされ、12月の寒いさなかに開催されました。彼女を偲ぶ方たちが県外からも駆けつけ、また、出発直前に虹が出るという奇跡が起こり、涙、涙のパレードとなりました(レポートはこちら
 今年は例年通りプライド月間の6月に開催される予定です。日程は6月5日(日)となります。
 その前に、3月26日(土)の午後、AiSOTOPE LOUNGEで宇佐美翔子さんを追悼するクラブイベントも開催されます(詳細・申込みはこちら
 


参考記事:
青森県のパートナー宣誓制度、低調 「形だけ」当事者ら批判(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20220227/ddl/k04/040/046000c
性的少数者パートナーシップ制度、導入1カ月で申請ゼロ 青森県 当事者、実益なくためらい(東奥日報)
https://www.toonippo.co.jp/articles/-/910271
パートナーシップ宣誓制度利用者 県営住宅入居へ規則変更へ(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/lnews/aomori/20220315/6080015506.html
「パートナー制度」で県営住宅入居可に 規則変更へ意見公募 青森(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20220316/k00/00m/040/094000c
青森県パートナー制度 県営住宅入居可能に(東奥日報)
https://www.toonippo.co.jp/articles/-/932190
県営住宅、入居可能に 青森県のパートナーシップ宣誓者(デーリー東北)
https://nordot.app/876579893705457664?c=39546741839462401

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