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ゲイバッシングの被害を受けたK-POP歌手・ホランドに人気俳優がエールを送りました

2022年05月07日

 韓国初のオープンリー・ゲイのアイドルであるHolland(ホランド)が5月6日、突然「汚いゲイの子」と罵られ、顔を殴られるという暴行の被害に遭いました。明らかな憎悪犯罪(ヘイトクライム)であり、LGBTQの子どもたちのためにもこんなことは二度と起こってはならないと語るホランドに対し、俳優のイ・ジョンウォンが温かい応援のメッセージを送ったそうです。

 
 ホランドは2018年、ゲイであることをオープンにした初のK-POPアイドルとしてデビュー(オランダを意味するHollandという芸名にしたのは、初めて同性婚を実現したオランダへのリスペクトだそう)。デビュー曲「Neverland」では、差別のない、自由に愛しあうことができる場所に逃避行したいと願う男の子の感情を歌い、MVではHollandと男の子のキスシーンも描かれています(MV公開後24時間で160万再生を記録したそう。トータルでは1200万回を超えています)。続く「I’m Not Afraid」「I'm So Afraid」「Loved You Better」などのシングルのMVも数百万回再生されるなど、多くのファンを獲得しています。
 『Vogue』誌のインタビューでホランドは、「僕が若かったころ、LGBTQ+であることをカミングアウトしている韓国のアイドルは1人もいなかった。学生時代、特に辛いことがあると、僕は欧米のLGBTQ+のポップアーティストに力をもらっていたんだ。だからこそ、韓国にも同じような存在が必要だと思った」と語っています。「韓国社会は残念ながら、まだLGBTQ+やそのコミュニティを広く受け入れる状況にない。だから、これからは同性愛についてオープンに語る機会が増えればと期待しているんだ。そうした対話を広げていくためにも、僕の音楽が役に立てばと願っている」「ファンからはDMやファンレターを通じて、また、直接会った機会などに、いろいろなかたちでメッセージをもらっている。僕のおかげで家族や友だちにカミングアウトできた、と言ってくれる人も多いんだ」「(カミングアウトを考えているLGBTQ+の若いファンに対して)君は絶対に悪くないし、何も悪いことはしていない。君は愛されるに値する人間だ。そして、誰よりも愛さなくてはいけないのは君自身。何があっても、自分を好きでいてほしい」とも。(素晴らしいですね)
 
 そんなホランドが5月6日、自身のSNSに「今日未明、友人とマネージャーとともに梨泰院(イテウォン)の道を歩いている途中、「ある知らない男性が“汚いゲイの子”と言い、私をゲイという理由で顔を2回殴りました」と投稿し、鼻に痛々しい傷がある写真も上げました。「顔に傷が残り、まもなく病院に行く予定です」と言い、今回の暴行について「明白な憎悪犯罪(ヘイトクライム)」と述べました。
 また、「私がカミングアウトしたゲイだという理由で暴力に出することは絶対にあってはならないことです。2022年の韓国でこのようなことが起きるのは、同性愛者の人権がどれほど保障されていないかを示す事例です。警察に通報し、警察官の方々がうまく解決してくださると信じています」「このようなことは二度と起きてはならず、(これから)育つLGBTQを含むすべてのマイノリティ弱者、そして子どもたちに、嫌悪と暴力よりも希望と愛だけを見せることができる世の中が来ることを期待します」と語りました。
 
 これを受けて、『賢い医師生活』シーズン2に出演した俳優のイ・ジョンウォンが、ホランドにSNSのDMを通じて温かい慰労の言葉を伝えました。「君は誰にも殴られる理由がない。どんな人も君がゲイだという理由で殴ることはできない。誰かが君に暴力を加えたとすれば明らかに誤ったことであり、許せないが、もう一方でこのように不平等に直面する子どもたちもいるということを知らせることができると思う」「そのような奴らはいてはいけないし、知らせれば知らせるほどなくなると思う。君が手本になったのは本当に心の痛むことであってはならないことだが、逆に最近はメディアを利用する人が勝ち、それだけの力がある。だから勝ち抜いて知らせろ! 二度とそんな悪い奴らが出てこないように! 君はできると信じている。ホランドに再び誰も触れないように」
 イ・ジョンウォンの力強い応援のコメント、沁みますね…。韓国でもこうしたアライの人たちが増えていくといいですね。
 
 
 映画『夜間飛行』で描かれたような凄惨な暴力ではないかもしれませんが、今でも韓国の学校では、まだまだLGBTQの生徒に対するひどいいじめや嫌がらせ、差別があるそうです(昨年、ヒューマン・ライツ・ウォッチが報告しています)
 世論調査機関「韓国ギャラップ」が2019年5月に実施した調査では、同性婚の法制化に56%が反対と答えており、シンクタンクの韓国行政研究院が2020年に実施した世論調査では、同性愛者が自身の「隣人」「職場の同僚」「親友」になることを「受け入れる」と答えた人は、それぞれ24.8%、13.8%、4.3%しかいませんでした(毎日新聞より)
 昨年2月には、韓国で強制的に除隊させられたトランス女性ピョン・ヒスさんと、済州のパレードの主催者キム・ギホンさんが相次いで自死するという悲しい報せもありました。
 こうした社会の不寛容、LGBTQの生きづらさの背景には、保守派キリスト教勢力が激しい反対運動を展開してきたことがあるといいます(ソウルのパレードもこうした人たちの激しい妨害に遭ってきました)
 
 そんななかでも、少しずつ、LGBTQの権利擁護に向けた動きも見えてきています。
 ソウル市教育庁は昨年4月、人権保障に関する総合計画に初めて性的マイノリティの生徒に対する支援策を盛り込みました。当事者への相談支援、教員や生徒に対する人権教育、教育に関する資料や広報物に差別的な表現がないかチェックする機能の強化などです。(ソウル市は2012年に性的指向や性自認に基づく差別を禁止する条例を制定しています)
 2020年には、イテウォンのゲイクラブで集団感染が確認され、アウティングやゲイバッシング的な書き込みが横行したことを受けて、国は感染者の個人情報を流出させたり根拠のない噂を広めたりする行為は罰するとして同性愛者を擁護し、ソウル市では匿名検査を導入して同性愛者のプライバシー保護に徹しました(結果、検査数が8倍に上昇したそうです)
 ソウル市は条例で性的指向に基づく差別を禁止しているわけですから、今回起きたヘイトクライムを差別に基づく重大な暴力行為と見なして対応するべきではないでしょうか。
 
 
 
参考記事:
LGBTQ+認知拡大を目指すK-POPスター、ホランドが語る音楽の力。(VOGUE)
https://www.vogue.co.jp/change/article/k-pop-holland-on-coming-out-cnihub

「カミングアウト」Holland、梨泰院で暴行被害(朝鮮日報)
http://ekr.chosunonline.com/m/svc/article.html?contid=2022050685232
性的マイノリティという理由で暴行被害のK-POP歌手、「明白な嫌悪犯罪」と怒り…人気俳優はエール(スポーツソウル)
https://sportsseoulweb.jp/star_topic/id=49703
LGBTQ+をカミングアウトした歌手Holland、イテウォンの路上で暴行され負傷…「ゲイという理由で…」(wow!korea)
https://s.wowkorea.jp/news/read/346637/
カミングアウトした歌手HOLLAND、梨泰院で暴行被害に…痛々しい写真も「知らない男性に顔を殴られた」(Kstyle)
https://news.kstyle.com/article.ksn?articleNo=2192360

性的少数者の権利が保障されない韓国 差別の背景にあるものは(毎日新聞)
https://mainichi.jp/premier/politics/articles/20210604/pol/00m/010/012000c

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