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米下院が、同性婚の権利を覆そうとしている最高裁に対抗して同性婚擁護法案を可決しました

2022年07月20日

 米下院本会議は7月19日、同性婚の権利を擁護する「Respect for Marriage Act(結婚尊重法)」法案を賛成多数で可決しました。最高裁が同性婚の権利を覆そうとしていることに対抗し、先手を打つねらいがあります。この後、同法案は上院に送られますが、可決されるかどうかは不透明だそうです。


 今年6月、最高裁で人工妊娠中絶の憲法上の権利(1973年の「ロー対ウェイド」判決)を否定する判決が出ました。米最高裁では先例がある判決を覆すということは通常行なわれません。そしてこれは過去50年近く行使されてきた女性の権利です。その権利が保守派判事により覆されたという事実は、最高裁判事のうち少なくとも5人が司法と宗教を分離していないという事実の表れにほかなりません。NBCによると、この判決により、全米で共和党多数派の13州では自動的に中絶禁止法が施行され、今後、他の9州でも禁止になる予定だそうです。今年のニューヨークやサンフランシスコのプライドパレードではこれに抗議する声が上がりました。
 判決のほかに多くのアメリカ人を驚かせたのは、最高裁のクラレンス・トーマス判事が、この判決についての多数派意見で「次はグリスウォルド、ローレンス、オーバーグフェルを含む実質的法の適正手続きの判例を考慮し直すべき」と発言したことです。グリスウォルドとは1965年の「グリズウォルド対コネチカット」で避妊の権利に関する判例、ローレンスとは2003年の「ローレンス対テキサス」で、全米で同性愛行為を合法とした判例、そしてオーバーグフェルとは「オーバーグフェル対ホッジス」で、2015年に同性婚を合法とした判例である。つまりトーマス判事は次に避妊の権利と同性愛・同性婚の権利をキリスト教保守思想に従って覆そうとしているのです。
 民主党議員のなかにはトーマス判事だけでなく、トランプ大統領が最高裁判事に指名したニール・ゴーサッチ、ブレット・カバノー、エイミー・コニー・バレット各判事が指名承認公聴会で「ロー対ウェイドは長い間続く最高裁の判例であり、覆さない」と嘘をついたことに対しても弾劾を呼びかける声も高まっています。また、現在は保守派に傾いている最高裁のバランスを取るため、最高裁判事を増やすという議論もあります(詳細はこちら
 
 こうしたなか、右傾化を強める最高裁が同性婚の権利を覆す前に先手を打って法的権利を確立することを目指し、「Respect for Marriage Act(結婚尊重法)」法案が下院に提出されました。この法案が成立すれば、最高裁が同性婚の権利を覆した場合に州レベルで同性婚を制限することが可能になるものの、そのような州も同性婚が認められている州で成立した結婚を承認するよう義務付けられます。人種の異なる者どうしの結婚についても法的保護を与えるとしています。
 採決の結果、賛成267、反対157となり、共和党からも47人が賛成に回りました。共和党指導部は「良心に従った投票」を促していました。
 法案はこのあと上院に送られますが、民主党と共和党が50議席ずつで拮抗しており、審議を進める手続きには60人の賛成が必要となるため、可決されるかどうかは不透明な情勢です。共和党上院トップのマコネル院内総務は19日、米メディアに法案への賛否を問われ、立場の表明を避けたそうです。

 今年11月には中間選挙があります。中間選挙の結果、民主党が上下両院で過半数を占めることができれば、上記のように(判事を増やすなどの措置をとり)最高裁のバックラッシュに立法で対抗し、同性婚や避妊の権利を守る道が拓けます。そうなることを祈ります。



参考記事:
同性婚保護法案を可決 「右傾化」最高裁に対抗―米下院(時事通信)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2022072000664
米下院、同性婚擁護法案を可決 最高裁判決に対抗(日経新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB202EW0Q2A720C2000000/
米下院、同性婚の権利保護する法案可決(ロイター)
https://nordot.app/922293379100950528?c=768367547562557440
米下院、同性婚保護法案を可決 共和党からも多数が賛成(BBC)
https://nordot.app/922436059568881664?c=426126268348957793

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